【イベントレポート】ANAGRAMS Meetup~ポストCookie時代/運用型広告の今と未来について~

【イベントレポート】ANAGRAMS Meetup~ポストCookie時代/運用型広告の今と未来について~

本記事は2021年11月17日に開催したAnagrams Meetup『ポストCookie時代/運用型広告の今と未来について』のイベントレポートです。

ポストCookie時代、運用型広告の領域において実際に何が起きているのか、またこの先どのようなことが起こりうるのかをお伝えしたうえで、皆様の今後のキャリアや業務へのヒントを得ていただくことを目的としています。イベントではご参加者から事前に頂いたご質問に対し、登壇者3名が回答していく形で開催いたしました。

登壇者プロフィール

阿部 圭司

アナグラム株式会社 代表取締役

2001年3月文化服装学院卒業。卒業後はアパレル・EC事業を対象としたフリーランスとして活動。2010年4月アナグラム株式会社設立 代表取締役就任(現任)。2020年フィードフォースグループ株式会社 取締役就任(現任)。

田中 広樹

アナグラム株式会社 シニア テクニカルアカウントマネージャー

エンジニア、大手広告代理店を経て、2012年~アナグラムへ。リスティング広告の運用からGoogleアナリティクスやタグマネージャ導入と運用の支援、データフィードを用いた広告の導入支援や運用などを行っている。

岡田 吉弘

アナグラム株式会社 監査役 兼 株式会社リワイア 代表取締役

2001年成城大学文芸学部卒業後、SIer、広告代理店、グーグル、アタラ合同会社等を経て現任。



第一部:運用型広告と広告代理店のこれから

広告が持つ役割は変わらない

Q.広告運用の変化と広告が持つ役割は変わっていきますか?

阿部:広告運用は常に変わるものです。ただし、本質的になところは変わらない。誰に・いつ・どこで・どのような広告を届けるのか、それを時代に合わせてやるだけです。今回のテーマに絡めると、今後はプライバシーを尊重しながらという部分がより重要になります。

広告の役割も大きくは変わりません。「企業は良い製品を、いち早く人々に知らせる義務がある」というのは松下幸之助氏の有名な言葉です。Cookie規制によって計測などの細かい部分が変わるだけであり、広告が持つ根本の役割は変わりません。

岡田:一方で、広告運用における時間の使い方は変わってきていると感じます。2000年代は入稿作業が大変でしたからね…。そこからGoogle AdWords エディターが出てきて、業務が大幅に効率化されました。入札も計測も、以前とは業務の水準がずいぶん違いますよね。

そういった変化は常にありつつも、広告が持つ役割はあまり変わらないですよね。インハウス・広告代理店・ベンダーなど、今いるそれぞれの立場によって考えるべき役割やポイントが変わるのかなと思います。

Q.今後の広告配信の考え方は変わっていきますか?

田中:最近はGoogleでP-MAX キャンペーン(※1)が出てくるなど、広告運用者が触れるレバーはますます減っていますよね。そのうえで何を考えて広告配信するべきかといえば、クリエイティブや媒体のポートフォリオを考えることがメインになると思います。

10年前は1日の大半をレポート作成に費やすのが日常でしたが、今の業務はもっと上流工程にシフトしています。とはいえ上流を見つつも、触れるレバーをしっかり触ることも重要です。

(※1)P-MAX キャンペーン

自動化された新しいキャンペーンタイプのことで、Google 広告のチャネル(YouTube、ディスプレイ、検索、Discover、Gmail、マップなど)の広告枠に、1 つのキャンペーンで広告を配信できるもの。

広告代理店は「どうありたいか?」が問われる時代に

Q.広告代理店のあり方は変わっていきますか?

阿部:不可逆の時代なので、基本的には変化に対して向き合うほかありません。運用型広告はリアルタイム計測ができるという点がそれまでの広告とは大きく異なり、キャズムを超えました。そういった意味においては、計測は今後も担保しなくてはなりません。アナグラムでも全社を挙げて取り組んでいるところです。

岡田:我々がいま特別なことをしているのか?と言われると決してそうではないんですよね。「何かの仕事を代理する」という商売の基本が変わるわけではないし、変化に対応していかないと生き残れないのでやっている。代理した結果、運用した結果、お客さまや市場にどんな価値を返せるのか?を常に問われているという意味では、あり方はそれほど変わらないのかなと思います。

Q.広告代理店の差別化は、今後どのように行っていくべきですか?

阿部その代理店が「どうありたいか?」次第です。我々が言及するべきことではなく、各代理店さんが考えるべきことだと思います。「どんな寿司屋をやりたいですか?」という質問と同じですよね。一皿100円の回転寿司をやりたいのか、一人3万円の寿司屋をやりたいのか、まずはそこからじゃないですかね。

岡田:丁寧に運用するとか、業種を絞るとか、コマースに特化するとか、特定の規模に特化するとか、ポイントは色々あると思いますが、それは阿部さんが仰る通り「どうありたいか?」次第だと思います。

例えばウォルマートは小売の巨人ですが、コロナ禍以降で急速に広告事業を伸ばしています。他にも変化のタイミングをとらえて業態を変えたり、売上を伸ばしている企業は多いです。そう考えると、もはや差別化ってなんだろう?と感じますよね。結局はその場にいる人たちで必死に考えて、リスクを取るしかないのかなと。

阿部:変化の道を歩むのも良いですし、我々のように広告運用を専門にするのもひとつの戦略です。時代が大きく変わるさまを見るのは楽しいですよね。

第二部:ポストCookie時代のコンバージョン計測

まずは媒体推奨の計測を把握するべき

Q.ポストCookie時代の計測はどうなりますか?今できること、必要な対策はありますか?

田中:程度の差はあれど、もちろんCookieを使っている媒体は影響を受けています。たとえばGoogleは非常に影響を受けているはずですね。ただし、そうは見えないぐらい機能改善も進んでいます。

基本的に計測手段は媒体側から与えられるので、我々はそれを正しく理解して実装すれば問題ありません。ポストCookie時代に突入するのは我々では変えられない事実なので、ルールに則るしかないのです。

Q.対策に優先順位はありますか?

田中:3rd party Cookieが使えなくなると、特に計測とターゲティングが大きく影響を受けます。そのなかで「どちらを優先的に対策するべきか?」と問われれば間違いなく計測ですね。昨今の広告プラットフォームは自動入札が主流ですが、これはコンバージョンが正しく計測できることを前提に機能しています。そのため、計測ができないと自動入札の恩恵を受けられません。最悪の場合、成果の悪化にも繋がってしまいます。

Q.ポストCookie時代で身につける知識やスキルは、どのように習得するべきでしょうか?

田中:なにか特別な知識やスキルが必要と考えている方もいるようですが、基本的には媒体から出されている公式情報を見て、正しく理解するほかありません。まずはCookieを使ったコンバージョンの計測がどのように成り立っているか?を知ることから始めましょう。そうすれば自然に「3rd party Cookieが使えなくなったあと、どのような計測を実装するべきか?」興味が出てくるはずです。

Cookie規制は暗い話ではない。ポジションを取るチャンスである

Q.3rd party Cookieが使えなくなることで、リマーケティング(リターゲティング)の利用も厳しくなると思います。なにか代替策はありますか?

田中:たとえばGoogle社は、Google アカウントのアクティビティやChromeから得られるデータを活用することによって、Cookieに依存せずGoogleアカウントから収集したデータでモデリングできるでしょう。そう考えると、媒体側は相応のターゲティングを出してくるはずなので、我々が悲観する必要はありません。

そもそも「とりあえずリマーケティングに配信しよう」という旧来の悪しき文化も疑うべきではないでしょうか。それを考えるぐらいなら、新規顧客をいかにして獲得するかを考えるべきです。また、リピーターが増えればとりあえずのリマーケティングなんて必要ないですからね。

岡田:「とりあえずリマーケティング配信しましょう」は戦略ではなく惰性ですよね。成果が出る運用をしていれば、すでにリマーケティングに変わることはやっているはず。しっかりと戦略を立てて運用すれば良いと思います。

実際にリマーケティングができなくなったプラットフォームはあります。ただし一方で、選択肢も増えているはず。とくに主要なプラットフォームではすでに対策がされています。計測の話になると暗くなる人が多いですが、決して悲観的なことはなく、むしろ武器が増えているから楽しいはずなんですよ。

広告はユーザーと企業をマッチングさせるものなので、その精度が上がれば、ユーザーが新たなサービスやモノと出会う確率も上がり、経済が回ります。真摯に実行していけば本来的には世の中に対して良いことをしているはずなので、できればもっとポジティブに捉えたいですよね。

阿部:そうなんですよ、ちゃんとやっていれば世の中にプラスになっているはずなんです。

いまは数年前と比べるとユーザーがいる場所が分散しています。検索エンジンだけではなく、SNSなどさまざまなサービスを見ていますよね。そう考えると、タッチポイントを増やせているかも重要です。求めているお客さんはどういった生活をしているのかを考え、目に留まるところにメッセージ(広告)を出せれば良いと思います。

Q.広告効果測定の展望はいかがでしょうか? 

田中:GoogleやFacebookが個人情報を使ってマッチングさせる仕組みを取り入れているところを見ると、それが今後のスタンダードになる可能性が高いですね。

ただし、来年どうなっているかは我々でもわからないです。結局は突き詰めると個人情報保護法の壁にぶつかります。いつの時代でも、技術が進歩しすぎると法律が追いつかないものです。2022年4月には個人情報保護法が改正されるので、そちらも注目したいですね。

岡田:田中さんが仰るとおり、最終的には法律の問題になります。テクノロジーと法律、それぞれの専門分野が相互に前に進めていかなければならない問題です。そう考えると、展望としては大変だなと思います。大変だからこそ「いま働かないでいつ働くんだ!」という楽しい時期でもありますね(笑)

阿部広告だけでなく、テクノロジーや法律が絡まってきたりなど、広告運用は昔みたいに一人で完結する仕事ではなくなりました。そういった背景もあり、アナグラムはフィードフォースグループにジョインしています。各分野の専門家が集まっているので、非常に恵まれた環境だと思います。

時代の転換期では、いくら業界経験が長い方でも従来の考え方に固執しすぎるとすぐに置いて行かれます。だからこそ歴が浅い人こそ、ポジションを取るチャンスでもありますね。変化をポジティブに捉えれば広告の仕事も面白くなるはずです。

第三部:広告運用者に求められる変化

広告運用者は、ひとつ尖った分野を持つべき

Q.広告運用者にはどのような変化が求められるでしょうか?

田中:ただ管理画面を触るだけの人だと、自動化の影響で媒体側のシステムに負けてしまうので、どこで戦うかを考える必要があります。ぼくはバックグラウンドが理系なのでテクノロジー分野を追求していますが、なにかひとつ尖った分野があると良いですね。

阿部:とくにテクノロジーの知識は重要になってきました。以前とある大きなセミナーで「HTMLすら書けない人が広告運用をやるのはおかしいよね」と言った方がいて場が凍りましたが、個人的には全くもってその通りだと思います。それと近い話かなと思います。広告運用に携わる人にとってテクノロジーは避けては通れないですね。

Q.広告運用といっても、営業・運用・クリエイティブ・テクノロジーなど、幅広い知見が求められます。これからの時代、ひとつの領域に強い縦型人材と、複数の領域に知見のある掛け合わせ人材では、どちらが求められますか?

阿部:「○○といえばこの人」と第一想起になれば、頼まれごとも増えるので縦型人材は非常にアリです。一方で、クリエイティブに関しては、簡易的なものであれば全員が自分で作れなければいけません。スピード感が圧倒的に重要なクリエイティブを全てデザイナーに依頼していると、タイムロス・機会ロスになってしまうからです。そのくらい、運用型広告の中でクリエイティブが占める重要度が上がってきているということですね。

全領域で最低限の知識は持ちつつ、そのなかでどこに強みを持つかを考えながら仕事に取り組むのがいいのではないでしょうか。

岡田:阿部さんの仰るとおりです。「できること」が増えれば、「できないこと」との線引きができるようになるので、不安になりにくくなります。できることが多い人は、おしなべて様々な領域で水準が高いんですよね。多くの領域に知見を持ちつつも「○○といえば自分だ」と認識してもらえるように、見せ方を工夫するのも大切だと思います。

変化を楽しめる人が広告運用者に向いている

Q.Webマーケターの未来はどうなりますか?

阿部:人がものを欲しがる欲求は不変なので需要は尽きません。ただし、マーケターといっても複数の領域があるので、どこでエッジを効かせるのか、どこが好きなのかは見極めるべきです。エッジを効かせても好きでなければダメですし、稼げなくてもダメですし、ここはしっかりと考える必要があります。

たとえばLINEは日本人のほとんどが使ってますよね。LINEを超える素晴らしいコミュニケーションツールが出ない限り消えないはずなので、LINE広告で頭角を表すのはひとつアリかなと。これは一つのたとえ話ですが、このように、未来を見据えながら仕事をすれば、追求するべき領域も見つけやすくなります。

岡田:広告運用者が触れるレバーは少しずつ減っているので、他にも武器を持つと良いですね。20年前のWebマーケターにはメールとホームページぐらいしかありませんでしたが、いまは武器が増えています。

一方でWebマーケターの人口も増えているので、武器を多く持ちつつも、ひとつの武器を磨かなければ生き残れません。それを面倒だなと思うのではなく「まだまだできることはありそう」と好奇心を持つことが重要だと思いますね。

ただ結局スキルや経験が身についたかどうかは、振り返ったときにしかわからないんですよね。最初はみんな未経験なので、結局大事なのはマインドです。マーケットは拡大しているので、Webマーケターの仕事は増えるでしょう。ただし、その中で居場所があるかどうかは自分次第。「面倒だな」と思いつつもやる、その繰り返しだと思います。

Q.アナグラムはどのような人材を求めていますか?

阿部変化の激しい時代を楽しめる人です。こんなに楽しい仕事は他にないと思うんですよね。自分の仮説があたって、コンバージョンが増えて、クライアントから感謝される、そんな幸せなことありますか……?

いまは全職種で募集していますが、とくに田中さんのいるマーケチームで働ける人を積極的に募集しています。このチームがCookie規制への対応など、テクノロジー分野を扱って会社をバックアップしています。積極的に情報を取りに行ったり、発信したりしているので、今が一番楽しいタイミングではないでしょうか。

田中:具体的なスキルとしては、JavaScript・タグマネージャー・サーバーの知識があると完璧です。ただし、これら知識は入社後でも身につくので、とにかく技術的なことに好奇心があって素直に受け入れられる方であれば歓迎しています。

まとめ

Cookie規制によって運用型広告を取り巻く環境は大きな変化を迎えます。しかし、いつの時代も技術は進化するものであり、悲観する必要はありません。まずはコンバージョン計測の仕組みを理解すること、そのうえで媒体推奨の計測方法を導入することが鉄則です。

そもそも広告運用は常に変化するものです。技術の発達によって、従来のような管理画面での細かな調整業務も少なくなってきました。変わりゆく時代のなかで、我々運用者は変化の中心にあるテクノロジーを理解しつつ、 自分なりの武器を身につけていきたいですね。

本イベントをとおして、これからの運用型広告についての理解が深まり、広告運用者としてのキャリアに何かヒントが見つかれば嬉しく思います。

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Shota Shimode

Shota Shimode

学生時代にSEOの業務に携わった経験から、インターネットの仕事に興味を持つ。大手IT企業のエンジニア、プログラミングスクールのWebマーケターを経て、アナグラムに参画。

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