
運用型広告を導入している企業からよくある相談として「リードは取れるのに、なかなか商談や契約につながらない」というものがあります。話を伺うと、多くの場合で営業とマーケが連携できておらず、目線があってないことが原因となっていました。
なんとなく営業とマーケは連携したほうがいいと分かっていても、具体的に動けていないというケースは少なくありませんよね。
この記事では、なぜ営業とマーケが連携するべきなのか、またどのように連携していけばいいのか、その具体的な方法をご紹介していきます。


なぜ営業×マーケの連携が大切なのか?
部署間の連携が重要である理由は、どちらか片方だけの力では拾いきれないニーズや改善のヒントを相互に補完し合えるためです。
たとえば、営業が把握している「現場のリアルな課題」や「顧客の購買プロセス上の懸念点」を、マーケティング施策に的確に反映できます。
顧客が抱えている問題の優先順位を営業が正確に掴んでいれば、広告やLPに盛り込むキーワードや訴求内容も自然と具体的になります。すると、質の高いリードが増えるだけでなく、見込み顧客が「これは自分の悩みを解決してくれそうだ」と感じやすくなり、商談化率や受注率の向上につながるのです。
逆に、営業がマーケティングの成果データを把握することで、どのような課題を持つリードかが掴め、商談に発展させやすくなる効果も期待できますよね。
どのような内容が連携できる?
部署間で連携するといってもどのような内容が連携できるでしょうか?
おすすめしたいのは、①ターゲットのすり合わせ ②クリエイティブのすり合わせの2つです。これにより商談化率を高めることに繋がります。
それぞれ順番に確認していきましょう。
①ターゲットをすり合わせよう
ターゲットのすり合わせとは、「どのようなユーザーが商談や受注につながりやすいのか?」を営業とマーケティングで共通認識を持つこと です。これができていないと、次のような失敗が起こる可能性があります。
- ターゲットを狭めすぎて、潜在的な顧客を逃してしまう
- 対象外ユーザーの広告クリックが増え、費用対効果が下がる
- 収益につながりづらいサービス(低価格プラン、継続率が低いプランなど)の申し込みが増えてLTVが下がってしまう
これらの失敗を事前に防止するためにも、営業とマーケティングで、商談や受注につながるターゲット像を明確にしましょう。
②クリエイティブは、マーケティング部署だけでなく営業部署と連携しよう
ターゲットが明確になったあとは、「どのようなクリエイティブや訴求がターゲットに響くのか?」を考える必要があります。その際、マーケティングと営業が連携することが大切です。
マーケティング部署だけで広告クリエイティブ(バナーやLPなど)を作成すると、顧客に響かず、伝えたいことがずれるリスクがあります。営業は日々顧客と接しており、「どのポイントが響きやすいのか?」をよく理解しています。この知見を活かさないままクリエイティブを作成すると、次のような問題が起こりがちです。
- 本来響くはずの、魅力的な訴求を見逃してしまう
- 顧客の興味・関心に合っていないクリエイティブになり、成果が出づらくなる
営業の知見を施策に反映することで、より効果的なクリエイティブを作成していきたいですね。
連携によって得られるメリット
ターゲットやクリエイティブを部署間で連携することで、どのようなメリットがあるのか具体的な事例を交えて紹介します。まずはマーケティング側のメリットから確認していきましょう
マーケティング側での活用①:優先すべき顧客が明確になる
営業と連携することの大きなメリットは、「どのような顧客を優先するべきか」が明確になることです。営業は日々の商談を通じて、受注に至りやすい顧客の特徴を深く理解しています。マーケティング側にこれらの情報を共有することで、限られた予算を成果の出やすい顧客に集中して投資できます。
あるコンテンツ制作会社では、動画制作や写真撮影など複数のサービスを提供しており、検索連動型広告を運用する中で「広告経由のリードのLTVが低く、費用対効果が合わない」という課題を抱えていました。
そこで営業チームと連携して顧客分析を行ったところ、「タクシー広告の動画制作」を発注する企業のLTVが高いことがわかりました。この情報を踏まえて、「タクシー広告の動画制作」の広告グループの目標コンバージョン単価(tCPA)を引き上げ、配信を強化しました。一方、LTVが低いと判明した「写真撮影」の広告グループはtCPAを引き下げて配信を抑制した結果、LTVが高い案件の獲得が増え、広告の費用対効果が改善しました。
このように、営業が持つ現場の情報をマーケティング施策に反映することで、予算を最も効果的なターゲットに集中させることが可能になります。
マーケティング側での活用②:顧客のニーズにあったクリエイティブを提示できる
次に紹介するメリットは、営業と連携することで「顧客のリアルなニーズに即したクリエイティブを提示できるようになる」ことです。実際に営業が商談で得た顧客の声をマーケティング施策に反映することで、顧客に響く訴求を考えることができます。以下では具体的な事例を紹介します。
広告運用のインハウス化を支援する広告代理店では、商談の中で「P-MAX」や「ASC」などの専門用語が頻繁に使われていることがわかりました。
これらの情報に関心を持つユーザーへ効果的にリーチするため、広告バナーに「P-MAX」「ASC」のワードを取り入れました。その結果、該当ワードに関心の高い層の反応が向上し、商談化率が改善しました。
今回の事例のように、営業が商談で得た「顧客がまさに課題だと感じているポイント」を広告の訴求に反映することで、ターゲットの共感を引き出し、商談化率を高めることができそうです。
マーケティング側での活用③:マーケティング施策の精度が上がる
営業との連携による3つ目のメリットは、「顧客ニーズの変化を迅速に捉えることで、マーケティング施策の精度を上げられる」ことです。
顧客のニーズは常に変化します。そのため、営業が商談で得る最新の情報を共有してもらうことで、タイムリーに施策の精度を高められます

今回ご紹介するのは、AIを活用した営業支援ツールを提供するSaaS企業の事例です。2024年前半は「AIの活用可能性を探りたい」と考える企業が多く、AIを前面に押し出したバナーやホワイトペーパーで獲得が好調だったのですが、徐々に商談化率が下がっていることが課題でした。
そこで営業との連携を強化し商談内容を分析したところ、2024年後半には「競合との差別化」を重視する企業が増えていることが明らかになりました。その変化を踏まえ、ホワイトペーパーやクリエイティブの内容を見直し、競合比較や独自性を強調する訴求へ変更した結果、商談化率が改善しました。
営業がリアルタイムで把握した顧客の関心や課題をマーケティングに反映し、市場変化への対応力を高めることができれば商談化率を改善できそうですね。次に、営業側のメリットについて確認していきます
営業側での活用①:顧客のニーズを事前に把握したうえで商談に臨める
マーケティング施策の情報が営業に共有されていないケースは珍しくありません。しかし、連携を強化し、営業がマーケティング施策の内容や訴求ポイントを事前に把握できれば、商談化率や受注率を大きく改善することができます。
実際にある企業では、「インサイドセールス(IS)が顧客の関心ポイントを事前に把握すれば、商談化率を改善できるのではないか?」という仮説のもと、マーケティングとの連携強化を進めました。
具体的には、リードごとに「どのバナーやLPを経由したのか」をISがテレアポの前に確認できるスプレッドシートを作成しました。その情報をもとに、ISが電話でのトークスクリプトを顧客の関心ポイントに応じて変更したところ、初回商談から的確なヒアリングができるようになり、商談化率が上がりました。
このように営業が顧客の関心ポイントを事前に把握することで、質の高い商談を実現し、最終的な成約率向上にもつながります。
営業側での活用②:商談で得た顧客の反応をマーケティング施策に反映し、リードの質を高める
営業がテレアポや顧客対応を通じて得た「顧客のリアルな反応」をマーケティング側に共有することで、マーケティングはクリエイティブやターゲティングを見直すことができます。これによりマーケティング施策の精度が向上すると、リードの質も改善され、営業側はより商談化しやすいリードを獲得できるようになります。
あるSaaS企業では、リード獲得後にインサイドセールス(IS)が電話でアプローチし、有効なリードのみ商談に進める運用を行っていました。しかし、ある時期から「誤って資料をダウンロードしてしまった」という声が増えたため、こちらの情報をマーケティング側に連携しました。
この情報をもとに分析を行った結果、P-MAX広告の配信先が適切でないプレースメントに偏っており、興味の薄いユーザーが流入していることが判明したのです。そこで、該当のプレースメントを除外したところ、リードの質が改善し、商談化率が向上しました。
このように、営業が現場で得た情報をマーケティングに伝えることで、広告施策を迅速に調整し、よりターゲットに合ったリードを獲得できそうです。
効果的な連携方法とは?
営業とマーケティング部署が連携するときに重要なのは、それぞれのKPIや目標指標を、全体の成果へどのように結びつけるかという視点をもつことです。
これは両部署が同じKPIを追うということではありません。営業は「売上」、マーケティングは「リード数」など、役割が異なる以上追いかける指標が違うのは自然なことです。
大切なのは、「マーケティングが増やしたリードを、営業がどうフォローすれば受注率が上がるのか」や「営業が把握している顧客ニーズを、マーケティングでどのように広告施策に反映すれば獲得単価が下がるのか」のように、お互いの指標を連携させる仕組みを作ることです。
この仕組みを実現するために有効なのが、週次ミーティングや営業インタビューの実施です。具体的な方法を詳しく見ていきましょう。
連携方法①:週次ミーティングで目標進捗を確認
マーケティングと営業の連携を強化するためには、ミーティングの実施をおすすめします。ミーティングでは、以下のような情報を共有し、部門間の認識をすり合わせることができます。
- 全体の目標進捗を確認
- 営業が接触したリードの反応をマーケティングにフィードバック
- 広告のパフォーマンスを営業と共有し、改善点を議論
迅速にアクションを調整するため、ミーティングの頻度は高めに設定しましょう。例えば週次で実施すれば、月初の商談化率が低い場合、営業のフィードバックを受けてマーケティング施策に反映し、月内に改善策を実行できます。
月に一回などにしてしまうと、結局施策に反映するタイミングを失ってしまったり、せっかくの気付きも共有する前に忘れてしまったりしがちです。都度共有ができるのが理想ですが、難しい場合は毎週の定例会として情報共有の場を設けるのがおすすめです。
週次ミーティングでは、スプレッドシートやダッシュボードを活用し、事業全体の進捗を可視化しましょう。マーケティングはリード数、営業は商談数や受注数を指標とすることが多いです。これらのデータを共有することで、両部門の認識が揃いやすくなります。認識のズレを防ぐことで、課題を早期に特定し、スムーズな改善と連携強化につなげることができます。
連携方法②:営業インタビューを実施
マーケティング担当者が定期的に営業へインタビューを行うことです。インタビューで得た情報をターゲティングや広告クリエイティブに反映することで、成果を向上させることができます。
営業は受注しやすい企業や顧客の課題を把握しており、この情報を活かすことで、ターゲット設定のズレやメッセージの伝え方のミスを防ぐことができます。最新の顧客データをもとに施策を調整すれば、より精度の高い広告運用が実現できそうです。
連携方法①でご紹介した週次ミーティングでも営業からのフィードバックを得ることはできますが、主な目的は目標の進捗確認や施策の効果検証であり、話を聞く時間は限られます。ターゲット像や商談内容を深掘りするには、しっかりと時間を確保したインタビューの実施が欠かせません。営業が持つリアルな顧客情報を整理し、詳しくヒアリングすることで、マーケティング施策の精度をさらに高めることができます。
また、顧客の動向は市場環境や法改正の影響を受けて変化するため、半年に一度を目安にインタビューを実施することをおすすめします。インタビューを実施する際は、事前に質問を準備しておくことで、スムーズに進めることができます。
トピック | 質問 | 目的 |
---|---|---|
顧客について | 受注が多い企業の特徴は? | 商品が響いている顧客の業種・規模・役職・部署を明確化。クリエイティブ(バナー、LP)やターゲティングで活用 |
受注が難しい企業の特徴は? | 適切でないターゲットを特定。広告配信の不要な広告費を削減できるよう、ターゲティングやクリエイティブを考える | |
どのような課題を抱えていてサービスを検討するのか? | 顧客の課題を整理し、LPや広告の訴求ポイントに活用 | |
どのように情報収集を行っているか?(媒体・検索キーワード) | 広告配信する媒体の選定や検索広告・SEOのキーワード設定に活用 | |
商談内容について | 顧客に刺さるポイントは? | 響くポイント(機能・トークスクリプト・管理画面・料金・サポート体制)を特定。LPや広告クリエイティブの訴求に含める |
顧客の反応が薄いポイントは? | 反応の薄いポイントを削減し、より効果的な訴求に改善 | |
顧客が導入に当たり気にしている懸念点は? | FAQや導入事例に反映し、LPでハードルを下げる施策を検討(例:CVポイントは「問い合わせ」しかない場合、「無料トライアル」や「資料ダウンロード」を用意する) | |
商談がうまくいくときのパターンは? | 成功パターンを分析し、ターゲティングや広告訴求に活用 | |
失注する理由で多い点はなにか? | 失注要因を特定し、これらを払拭できるような内容をLPや資料に含める | |
競合について | 他社と比較検討される際、どの会社と比較されやすいか?また、どういった部分で比較されるか? | 比較ポイントを整理し、LPで差別化コンテンツを強化 |
競合との違い、独自性はどのように説明しているか? | 自社の独自性を強調し、比較検討時の優位性を打ち出す |
連携方法③:計測環境を整備したうえで、オフライン・オンラインの実績を共有
広告の効果を正しく評価するには、管理画面上のオンラインデータだけでなく、商談単価などのオフラインデータも含めた連携が欠かせません。計測環境が整っていないと、次の問題が発生します。
- 管理画面上では低単価で獲得できていたが、実際の商談単価は高かった
- 商談率の成果がマーケティング部署に共有されておらず、広告改善につながらない
これらを防ぐためには、広告管理画面とSFA(営業支援ツール)を連携し、オンライン・オフラインのデータを可視化しておくことが重要です。
まとめ
部署間の連携で商談数や契約数を高めるためには、「ターゲット像や顧客の関心ポイント」を明確にすりあわせたうえで、「週次ミーティングや営業インタビュー」などの定期的な情報共有の仕組みを整えることが重要です。これらを実践することで、広告費の無駄を削減し、質の高いリードが増えるため、最終的な商談数や契約数の向上につながります。
リード獲得はゴールではありません。獲得したリードを商談や契約につなげてこそ、広告の価値が最大限に発揮されます。営業とマーケティングが連携すれば、広告は単なる集客手段ではなく、「売上を生み出すための強力な仕組み」へと進化します。本記事を参考に、商談化率を高める広告運用に取り組んでみてください。
