
近年、リテールメディア(小売企業が自社プラットフォームで広告を展開する仕組み)が注目を集めています。ECサイトでも取り組みが増えてきている手法ですが、月間約2,300万人が利用するフリマアプリ「メルカリ」も、2025年2月6日より「メルカリAds」の提供を開始しました。
参考:メルカリ、「メルカリ」内での広告事業「メルカリAds」を本格開始
メルカリのユーザーは、欲しい商品を検索して購入する傾向が強いため、広告主は 「すでに購入意欲の高い層」へピンポイントにリーチ できる点が特徴です。さらに、購買データや検索キーワードを活用したターゲティング、商品フィードを利用した広告配信が行える点も大きな魅力です。
この記事では、メルカリAdsの仕組みや広告の種類、効果的な運用のポイントについて詳しく解説します。(本記事は2025年2月時点の内容をもとに執筆しています)


目次
メルカリAdsを活用するメリット
メルカリAdsを活用することで、広告主は「今まさに商品を探している」ユーザーにリーチできるため、高い広告効果が期待できます。ここでは、メルカリAdsの具体的なメリットを詳しく解説します。
興味関心や検索履歴と組み合わせた精度の高いアプローチ
画像引用元:「メルカリ」における取引件数のカテゴリー比率
メルカリは、一般的なECサイトや広告プラットフォームとは異なり、中古品・新品を問わず、あらゆるカテゴリの商品が出品されるマーケットプレイスです。そのため、活用の仕方次第でユーザーの趣味や興味、ライフイベントなどさまざまなユーザーの「今の関心」に応じた広告配信も可能です。
たとえば次のようなアプローチが考えられます。
- 「ベビーカー」「チャイルドシート」を閲覧 → 子育て関連商品の広告を配信
- 「スーツケース」「旅行バッグ」を検索 → 旅行保険や航空券の広告を表示
- 「スキンケア商品」「化粧品」を検索 → エステ・美容サプリ・デパコスブランドの広告
このように、ユーザーの「今の関心」にダイレクトにアプローチできるのが、メルカリAdsの大きな強みのひとつです。
購買意欲の高いユーザー層に直接アプローチできる
また、メルカリの利用者はすでに欲しかったり気になっていたりする商品を検索し、購入する目的でアプリを開いています。そのため、メルカリAdsを利用することで、購買意欲の高いユーザー層に直接的にアプローチが可能です。
また、メルカリAdsは、ユーザーが特定の商品を検索した際に、その検索結果と馴染む形で広告を表示できます。商品の画像や値段を確認したうえで商品詳細ページへ遷移できることでスムーズな商品購入が期待できます。
季節やイベントなどトレンドを捉えた広告配信ができる
メルカリでは季節やイベントごとに検索される商品が大きく変化します。たとえば、次のようなトレンドやイベントに応じたターゲティングも有効です。
ユーザーの行動 | 配信する広告 |
---|---|
「ハロウィン衣装」「コスプレ」を検索 | ハロウィンパーティーグッズ・イベントチケットの広告 |
「クリスマスツリー」「イルミネーション」を検索 | クリスマスプレゼント・レストラン予約・ホテル宿泊の広告 |
「バレンタインチョコ」「ラッピング用品」を検索 | 高級チョコ・ギフトショップ・デートスポットやレストランの広告 |
「プロ野球グッズ」「サッカーユニフォーム」を検索 | スポーツ観戦チケット・スポーツ動画放映のサブスクの広告 |
「花火セット」「浴衣」を検索 | 夏祭りイベント・旅行プラン・花火大会チケットの広告 |
このように、フリマアプリの「メルカリ」としての特性をよく理解し、発想次第でさまざまなアプローチが可能となるのがメルカリAdsを活用するメリットです。
メルカリAdsの種類
メルカリAdsには、広告の目的やターゲットに応じて選べる2つの配信方法が用意されています。それぞれの特徴を理解し、最適な手法を活用することで、効果的な広告運用が可能になります。
①オフサイト広告:外部サイトへ誘導する広告
②オンサイト広告:メルカリ内の「メルカリShops」へ誘導する広告
この記事では、自社ECなどへの集客に利用できる「オフサイト広告」について解説していきます。
オフサイト広告では、「Product Ads」「Infeed Ads」の2つの広告フォーマットが利用できます。
広告フォーマット | Product Ads | Infeed Ads |
---|---|---|
特徴 | ・商品データフィードを連携して利用する広告フォーマット ・通常の出品情報と同様のクリエイティブ(商品画像と価格)で広告配信が可能 ・主にEC事業者向け | ・画像とテキストをセット表示する広告フォーマット ・業種を問わず利用可能 |
クリエイティブ | 商品データフィードから自動生成 | 画像+テキスト |
リンク先 | 商品データフィード内で設定する商品ページ | 広告主サイト内の任意のページを設定可能 |
提供ターゲティング | 商品データフィードの内容と自動でマッチング | ・ユーザーターゲティング ・検索キーワードターゲティング ・除外キーワード |
広告掲載面 | 検索結果画面 | 検索結果画面 |
次より、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
Product Ads
Product Adsは、商品データフィードを連携することで、商品単位の広告配信ができるメニューです。
フィードに登録している商品画像・商品価格・タイトルがクリエイティブとして表示され、広告をクリックすると商品ページに遷移します。
広告を表示するタイミングは、商品フィードの情報をもとに、ユーザーが入力する検索キーワードや興味関心と関連性の高いものが自動的に選出されます。
そのため、広告を表示したいユーザー属性や検索キーワードを手動で指定することはできません。
商品点数の多いECサイトで、直接商品ページに送客したい場合には、Product Adsが効果的です。
商品データフィード
商品データフィードを特定のURLにアップロードして連携し、指定の頻度で自動更新します。
使用するデータフィードは、下記の2つの方式から選択することができます。
Google ショッピング 広告用のデータフィードを連携
Google ショッピング広告用のフィードをそのまま使用する方法です。
すでにGoogle ショッピング広告を実施している場合は、データフィード作成の手間をかけずに出稿することができます。
Mercari Ads用のデータフィード形式に合わせてデータフィードを作成し連携
メルカリAds用の独自データフィードを作成しサーバーにアップロードする方法です。
前述のGoogle ショッピング広告用フィードの連携だと、一部項目の上書きができないため、URLの計測パラメータや商品タイトルを使い分けたい場合は、こちらの方法がおすすめです。
データ定義の詳細は、媒体問い合わせ後に提供されるデータフィードガイドを参照してください。
Infeed Ads
Infeed Adsは、画像とタイトルテキストを入稿することで配信できる広告メニューです。
表示するクリエイティブを柔軟にコントロールすることができるほか、ユーザー属性や検索キーワードターゲティング・除外キーワードの設定を併用することで、広告を表示したい対象の指定も可能です。
例えば女性向け美容商品や、育児関連サービスなど、特定の商品カテゴリに関心が高いユーザーにピンポイントで広告を届ける際にはInfeed Adsが向いています。
広告クリエイティブ
広告管理画面で入稿する前に、事前に入稿内容(画像・テキスト・遷移先URL)をメルカリ社に共有し事前審査を行う必要があります。
入稿規定は下記のとおりです。
画像 | サイズ | 縦横とも250px以上(500px以上推奨) |
---|---|---|
アスペクト比 | 3:2(横長)~1:1 | |
ファイルサイズ | 最大5MB | |
形式 | JPG/PNG | |
タイトル | 文字数 | 最大全角100文字(全角30文字以内推奨) |
ターゲティングの種類(Infeed Adsのみ)
Infeed Adsでは、ユーザー属性/検索キーワードを使ったターゲティング設定が可能です。
キーワードターゲティング
ユーザーがどのようなキーワードで検索した際に広告表示をするかを指定することができます。
キーワードは1広告グループあたり最大100件登録することができます。カテゴリ検索する際のカテゴリ名もキーワードとみなされるため、カテゴリ名に合わせたキーワードを設定すると、配信ボリュームを担保しやすくなります。
ユーザーターゲティング
性別や年齢など、広告配信の対象とするユーザーの属性情報を指定することができます。
複数の属性をそれぞれ指定した場合は、かけ合わせで一致するユーザーのみ(And条件)が配信対象となります。
現時点で設定できる属性項目は以下の通りです。
属性 | 選択肢 |
---|---|
性別 | 男性/女性/不明 |
年齢 | 18-19 / 20-24 / 25-29 / 30-34 / 40-44 / 45-49 / 50-54 / 55-59 / 60-64 / 65-69 / 70+ / 不明 |
居住地 | 都道府県単位 |
職業 | 会社員・団体職員 / 会社役員・団体役員 / 公務員 / 個人事業主・自営業 / 契約・派遣社員 / パート・アルバイト / 専業主婦・主夫 / 年金受給者 / 学生 / 無職 / 医師 / 弁護士・会計士・税理士・司法書士・その他士業 / 教職員 / 不明 |
デバイス | iOS / Android / PC |
プラットフォーム | App / Web |
メルカリAdsの出稿手順
ここからは具体的なメルカリAdsの出稿手順についてみていきましょう。大きく分けて次の4つのステップが必要です。
- 掲載ポリシー・出稿禁止業種の確認・アカウント開設
- 計測タグの設置
- キャンペーンの設定
配信開始までに必要な手順を1つずつ説明します。
1.掲載ポリシー・出稿禁止業種の確認・アカウント開設
メルカリ社の問い合わせフォーム(https://about.mercari.com/contact/ads-sales/) もしくは取り扱い代理店に問い合わせて、配信したい商材・サイトが掲載できない商品・業種に該当しないかを確認しましょう。
たとえば、情報商材やマッチングサイト、医薬品などの商材のほか、メルカリ社が提供しているサービスと競合する場合は出稿できない場合があります。
出稿可能な場合は、メルカリ社もしくは取り扱い代理店にアカウント開設を行ってもらいます。
2.計測タグの設置
購入などのイベントを計測するためのタグを設置します。
コードスニペット | ドメイン内全ページの、head.タグ内に設置するタグ |
アクティビティ計測タグ | ユーザーの主要な行動をイベントとして計測 |
- 商品 / アイテムの詳細表示('view_item')
- カートに追加('add_to_cart')
- 購入('purchase')
Product Adsを利用する場合は上記すべてのアクティビティを各ページに設定する必要があります。GA4のデータ定義に沿ったデータレイヤーがある場合は、GA4のイベント(view_item,add_to_cart,purchase)をそのまま使って測定し、追加で設置するタグを少なく済ませることも可能です。
参考:e コマースを測定する | Google Analytics
計測タグの詳細については、媒体問い合わせ後に提供される計測タグ 導入ガイドを参照してください。
3.キャンペーンの設定
キャンペーン・広告グループを作成し、1日の予算・入札額を設定します。
キャンペーンタイプがInfeed Adsの場合は、広告グループ設定画面でターゲティングを設定し、審査済みのクリエイティブを設定します。キャンペーンタイプがProduct Adsの場合は、広告グループ設定画面で配信対象にする商品を選択しましょう。
上記設定が完了したら、キャンペーンのステータスをオンにすることで配信が開始されます。
メルカリAdsを効果的に運用するためのポイント
設定ミスや運用ルール違反に注意するのはもちろんですが、メルカリAdsの効果を最大化するための運用ポイントをご紹介します。
フリマアプリの特性を理解
メルカリはフリマアプリであり「お得に買いたい」「他のお店には出回っていない商品を見つけたい」といったニーズで中古商品や廃版アイテムを探す人も多く、そういった人にメルカリAdsでこれらに該当しない商品・サービスを訴求することになる点に留意したクリエイティブ設計が重要です。
お得な初回価格を目立たせたり、セールアイテムやアウトレットアイテムといったお得感を感じやすい商品を訴求するなど、フリマアプリを使うユーザーの特性を踏まえた商品選定・訴求の設計が重要です。
検索結果画面で目に留まるクリエイティブ
メルカリAdsのバナーは、検索結果一覧に馴染むように通常出品のサムネイルと同サイズで表示されます。そのため、たとえばInstagramのフィード用に作成したバナーをそのままメルカリAdsで入稿すると、画像内のテキストが小さすぎて読みづらくなります。
掲載面を意識して、バナーの構成要素をシンプルにしたり、画像内テキストは大きくするなどの工夫をすることで、視認性の高いクリエイティブに近づけられるでしょう。
まずは購買層に合わせたターゲティング設定から始める
メルカリAdsは購買意欲が顕在化しているユーザーにリーチできる反面、欲しいものが明確になっているユーザーが多い分、自分と関係のない広告が表示されれば「邪魔だな」と思われてしまいます。
Product Adsは検索キーワードと関連性の高い商品を自動で表示することができますが、Infeed Adsを利用する場合は、まずは自社サービスと同じカテゴリのキーワードや、購買層に近いユーザーターゲティングから始めてみましょう。
ターゲティングを無理に広げなくても、CTRが高いクリエイティブを開発できれば配信ボリュームは増やしやすいため、CTRやCPAを見ながら、徐々にターゲティングを拡張していくのがおすすめです。
まとめ
1秒間に売れる商品個数が7.9個というメルカリ内の膨大な購買データによるターゲティングや、ユーザーの検索意図に合わせた広告を表示できるなど、メルカリAdsは使い方次第で非常に有効な集客手段のひとつになりえるでしょう。
すでに広告運用に必要な機能は用意されていますが、今後ターゲティング機能や配信面がより充実し、活用の幅も広がることも期待されます。
弊社でも多様な広告主さまが出稿しており、実績をもとに効果的な活用方法をどんどん見つけていければと思います。新しいリテールメディアへの広告出稿方法として、引き続き注目していきます。
