「業務スピードを上げたい」広告運用者が身につけるべき7つの考え方

「業務スピードを上げたい」広告運用者が身につけるべき7つの考え方

「1秒でも早く動けば、1秒でも早く儲かる」

ビジネスの世界ではこのような言葉がよく聞かれます。これは広告運用という仕事でも同様で、成果につながるのであればスピードは早ければ早いほどいいですよね。

一方で、多くの広告媒体や配信メニュー、クリエイティブフォーマットの増加など、広告運用ではやるべきことも多く、限られた時間のなかでは十分に手が回らないという課題をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか??

そこで本記事では、広告運用の業務スピードに定評のある筆者が、効率よく業務を進めるために日ごろ意識している7つの考え方をご紹介します。


1. プロジェクトの全体像を把握する

広告運用において、業務をスムーズに進めるためには、プロジェクト全体の流れや各タスクの相互関係をしっかり把握しておくことが重要です。全体像を見失うと、途中で重要なリソースやタスクが抜け落ち、業務進行に遅れが生じるリスクがあります。

そのため、広告運用の業務を滞りなく進行するには、プロジェクトの全体像と各タスクの進捗状況を視覚化するのが有効です。向こう数ヶ月、場合によっては1年、数年で達成すべき目標や商材の特性から逆算して、取り組むべき広告媒体・配信メニュー・クリエイティブなどを洗い出します。その上で制作や撮影の有無などを判断し、タスクに落とし込みリソースを確保します。

わたしが実践している具体的な方法をいくつかご紹介しましょう。

マインドマップツールで広告施策の全体像を把握する

例:広告施策の全体像

マインドマップツールは、頭の中で考えていることを発散させながら体系的に整理するのに適しています。特にmiromindmeisterといったマインドマップツールは共同作業ができるので、広告運用者とデザイナーなど複数名が参加するプロジェクトに適しています。新しいプロジェクトが始まるタイミングや半期に一度など、中長期的に取り組む施策を書き出すと良いでしょう。

ガントチャートでタスクの全体像を把握する

マインドマップで書き出した施策も実行できなければ意味がありません。実行可能なタスクの粒度に落とし込み確実に進めていくのが重要です。

例:広告運用開始までのタスクをガントチャートで整理

ここでは進行状況が一目でわかるガントチャートで各タスクの担当者・納期・ステータスを管理するのがおすすめです。進行が滞っているタスクやリソースが足りていないところを早めに察知できるようになり、プロジェクトメンバーの追加や自身がフォローするなどで進行の遅延を防ぎやすくなります。

2. 事前準備で時間を有効に使う

時間を有効に使えなかったなと思うとき、多くの場合に事前準備が足りなかったのではないでしょうか?多くの時間を使う会議も同様です。

広告運用者やデザイナー、広告主など複数人が関わることも多いプロジェクトを円滑に進める上で、関係者への情報共有など事前準備は時間を有効に使う上で重要です。

事前準備を怠ることによっておきる弊害は様々です。アジェンダが共有されておらず長引く会議、レギュレーションが共有されていないことによるクリエイティブの出し戻しなど、業務を滞らせてしまうことにつながります。

ここでは、わたしが特に意識的に共有している事項をお伝えします。

会議や打ち合わせのアジェンダ

何も決まらない会議やミーティングは、時間だけを浪費することにつながります。

そうならないために次の項目をアジェンダとして事前共有するようにしましょう。

①目的

②議題や確認事項

③資料や必要な準備

例:

動画制作の具体的な進め方について問題ないか確認いただきたく、◯月△△日 15:00から30分ほどミーティングのお時間いただいてもよろしいでしょうか?(①目的)

以下についてすり合わせができればと思っています!(②議題や確認事項)

  • 制作費用とスケジュール感
  • 動画構成案へのフィードバック
  • 撮影が必要な素材の確認

以下に現在の状況をまとめましたので、事前に目を通していただけると幸いです。(③資料や必要な準備)

クリエイティブのレギュレーション

広告運用者の業務のひとつにクリエイティブ制作のディレクションが含まれることもあるかと思います。デザイナーに制作を依頼するにあたりに事前共有しておきたいレギュレーションは大きく以下の3種類があります。

①広告媒体の入稿規定

②各企業固有のデザインガイドライン

③薬機法や労働基準法などの法律

これらを事前に共有することで、必要のない出し戻しややり直しを回避できます。

アウトプットの方向性

広告主や上長への報告資料、商談時の提案資料、動画広告の台本、ランディングページの構成案など広告運用者に求められるアウトプットは多岐にわたります。

アウトプットを提出したはいいものの、求められていたアウトプットと乖離があり、修正するために大幅に時間をロスしてしまった経験がある方もいるのではないでしょうか?そうならないために作成を進める前にアウトプットの方向性にズレがないか、関係者間で合意を取りながら進めるのがよいでしょう。

わたしは箇条書きでアウトプットの骨子を作成し、その段階で関係者間でアウトプットの方向性にズレがないか合意を取っています。

例:報告資料の骨子

## 先月の振り返り

・数値(広告費:200,000円/CV:5件/CPA:40,000円)

・CPAが低下。要因は新しく実施した①の施策がうまくいったこと。

## 実施した施策の振り返り

①〇〇訴求のクリエイティブ追加

②ターゲティングの拡大

## 今後の施策

・先月うまく行った〇〇訴求を受けて派生のクリエイティブを制作。

3. 取り組むタスクの優先順位をつける

限られた時間のなかで成果を出すためには、成果に与えるインパクトが大きな施策にどれだけリソースを配分できるかが重要です。ここを見誤るとタスクをこなしているのに成果につながらない、重要なタスクが後回しになってしまった、という事態を回避できます。

優先順位をつけるときに有効なフレームワークをご紹介します。

アイゼンハワーマトリクスで優先順位付け

優先順位をどう付けたらいいか分からない、という方は重要度×緊急度の4象限でタスクを管理する「アイゼンハワーマトリクス」がおすすめです。

4象限の各領域について広告運用の業務を例にとって解説します。前提として、重要度はKPIに対してインパクトがあるかどうか、緊急度は納期が決まっているかを判断軸とします。

とくに効果を発揮するのが「第2領域(重要/緊急でない業務)」です。重要であっても緊急性が低い業務は、忙しければ忙しいほど後回しにしてしまいがちです。手を付けなかった影響は中長期的に大きな影響となり、ときには緊急性を帯びてきて業務を圧迫するという負のスパイラルにも陥ってしまいます。

上記のマトリクスに基づいてタスクを分類し、優先すべき業務、取り組むべき業務を明確にしましょう。

パレートの法則(80:20の法則)で重要度付け

「アイゼンハワーマトリクス」を実践する上で、重要度の判断が難しいと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?そんなときにおすすめなのが「パレートの法則」です。

パレートの法則は80:20の法則とも言われ、イタリアの経済学者ビルフレッド・パレートが発見した法則です。経済において、全体の数値の大部分は、一部の要素が生み出している傾向をさします。ビジネスにおいては「成果の8割は、費やした時間の2割が生み出している」などとも言われます。

どのタスクがもっとも重要か、と判断に迷うことがあれば「どのタスクがもっとも成果に影響するか」という考え方にシフトしてみると、重要度の判断が明確になります。

4. 定型業務は自分が手を動かさない

とはいえ実際にはアイゼンハワーマトリクスでいう「重要ではないが緊急」である、やらなければならないことも山ほどありますよね。たとえば、レポートの数字の更新のような定型業務が挙げられます。

ここでは、優先度の高い施策に十分な時間を割けるように、「重要ではないが緊急」なタスクを自分が手を動かさなくても済むようにする方法をご紹介します。

各媒体の広告管理画面では非常に多くのデータが見れますが、広告媒体が多様化する現在において毎日そのすべてを詳細に見ているといくら時間があってもたりません。とはいえ適当に見ていると意思決定を誤ります。効率よく意思決定していくためには意思決定に必要なデータを一箇所に集約しておくことがおすすめです。

自動化する

まず考えるべきは自動化です。

広告運用はリアルタイムで数字が動くため、毎日の広告パフォーマンスの確認は必須です。ただし、多くの広告プラットフォームを利用している場合には、それぞれの広告管理画面にログインして数値を確認するだけでも、少なくない時間を要します。

進捗状況の確認だけであれば、Looker StudioなどのBIツールなどで各広告媒体から自動的にデータを集約する仕組みを構築しておけば、すぐに一元的に広告パフォーマンスの確認ができます。他にも、定期的な広告運用業務の自動化を実現できるツールにはさまざまなものがありますし、広告以外の業務でもRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など色々なソリューションがあります。繰り返しの作業が発生するものは「自動化できないか?」と考えることを習慣づけて置くのをおすすめします。

もちろん、広告管理画面でないと気が付けない情報も多くありますので、必ず確認するタイミングを設けられるようあらかじめスケジューリングしておくことが重要です。

ひとに任せる

繰り返し必要となるけれど自動化できない業務もあります。そんなときは自分以外の「ひとに任せる」のも有効です。

チームで仕事をしているのであれば他のメンバーに任せる、一人で行っていれば業務委託などの選択肢もあります。

ツールを用いた自動化でも同じですが、人を雇ったり業務委託だと、もちろんお金がかかることになります。それでも、その分他の重要な業務に時間を使えた場合の価値がそれを上回るのであればプラスしかないですよね。

ぜひ、その仕事は自分が手を動かしてやらなければいけないのか、と考えてみてください。

記録する

続いて紹介するのは「記録する」ことです。

たとえば数ヶ月後に振り返ったときに当時の報告内容を掘り起こすのに時間がかかったり、見つからなかったりした経験はないでしょうか?そんなときに効果を発揮するのが「記録する」ことです。

過去の行動や施策の結果にすぐにアクセスできて、次の施策のための意思決定をスムーズに行うために実施した施策の結果を記録しておくのがおすすめです。

例:施策管理表

たとえば、実施日・施策概要・仮説・評価指標・結果・考察・ネクストアクションなどの情報をGoogleスプレッドシートやNotionを活用してストックしておくことで、振り返りがスムーズです。

そのときには多少の手間だと感じるかもしれませんが、未来のあなたは過去の自分に「よくやった!」と感謝するはずです。

5. フォーマット化する

報告資料やメールなど、アウトプット業務の多くはまったくのゼロからではなく、一部や場合によっては大半が過去に作成したものだったりしますよね。そのため、頻繁に利用するアウトプットや、あとから使うであろう情報はフォーマット化しておくのがおすすめです。

スライドテンプレートを活用する

クライアントや上司、社内への報告にスライド資料が必要という場合も多いでしょう。スライドの作成が必要な場合は、スライドテンプレートを活用しましょう。テンプレートを活用することで細かい体裁を整えたりする作業を効率化できます。

たとえば、報告資料の作成に毎月少なくない時間を割いてしまっているという広告運用者も多いと思いますが、いくら資料作成に時間をかけても広告の成果には直結しません。

資料の体裁をきれいに整える必要があるか

もうひとつ考えておきたいのが、資料の体裁をそこまできれいに整える必要があるのか、ということです。

体裁が整っているほうが中身の信憑性が高まります。きれいであることに越したことはありませんが、本当に重要なのは中身ですし、さらにいえばその情報をもとに交わされる議論や決定です。

場合によってはテキストベースのドキュメントで成果のご報告を行うことも少なくありません。本当にきれいに整った体裁が必要かは考えてみる価値があると思います。

6. 問題を事前に回避する

スムーズに業務が進行していても人間が介在する以上、問題が起こってしまうリスクは常に存在します。

ひとたび問題が発生してしまうと、予定外の対応が必要となり、緊急度が高ければ他の業務もストップせざるを得なくなります。玉突き式に、業務全体が滞ってしまう可能性も高まります。

そのため、不要な問題は避けられるのであれば避けるのが一番です。問題を事前に回避するためにおすすめなのがチェックリストの活用です。

チェックリストを活用する

どんなに気をつけていても人間が行う以上ミスは起こるものです。特に記憶だけを頼りに業務を進めているとどうしてもヌケモレが起こってしまいますよね。弊社では致命的なミスを未然に防ぐことを目的として業務ごと(検索広告の準備や縦型動画制作などあらゆる業務を網羅)に作成したチェックリストを活用しています。

例:チェックリスト(検索広告の準備)

チェックリストを活用することで、重要なポイントを見逃さず、未然に問題を回避するのに役立てられます。毎回同じようなトラブルが発生するという場合には、一度時間をとってあらかじめ問題を回避できるチェックポイントはないか考えてみるのがいいでしょう。

7. 振り返りを習慣化する

チェックリストを設けてもミスを完全に防ぐことはできないですよね。仮に問題が起きてしまった際にできることは「いかにその経験から学ぶか」ではないでしょうか。経験から学んで成長につなげるためには振り返りが欠かせません。

過去の経験から学び、同じミスを繰り返さないためのフィードバックが得られます。また、成功体験も振り返りの中で確認できるため、次回の業務で同様のアプローチを迅速に採用できるようになります。振り返りは時間もかかるため、業務スピードを落とすと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、判断のスピードが早くなり、実行にも無駄がなくなるため、結果的には業務スピードのアップにつながるのです。

ただ振り返りはつい忘れがちになってしまうため、習慣化できるように仕組みを用意しておけるといいでしょう。弊社が取り入れている振り返りのための仕組みをご紹介します。

ナレッジシェアの仕組み化

とくに広告運用のような属人化しやすい業務は、ナレッジが個人に依存してしまうケースも多いでしょう。そうならないためにも成功事例や失敗事例をコミュニケーションツールや社内ドキュメント(Notion)にまとめてデータベース化しています。当人にとっては振り返りになり、他のメンバーにとっても事例として活かせる一石二鳥の仕組みですね。

また、ナレッジシェアを習慣化するために、ドキュメントにまとめたり、勉強会をしたりすることが推奨されており、定量的な評価制度の仕組みに組み込まれてもいます。

まとめ

重要なことは1つ1つの業務時間をマンパワーで削減することに躍起になるのではなく、時間をかけるべき業務とそうでない業務のメリハリをつけたり、仕組みで解決する視点を持ったりすることです。「がんばる」「気をつける」は解決策になりえません。

テンプレートやチェックリストなどの仕組みを活用する手法は、最初にある程度の時間を割いて土台を整える必要があります。しかし日々の業務で忙しくて着手できない……そんなジレンマを抱えている方もいるかと思います。

ただ、一度整えてしまえばその後の業務スピードの違いは一目瞭然です。錆びれた斧で木を切り続けるよりも、研いだ斧で木を切るほうが中長期でみたときの生産性は後者が高いでしょう。

一度どこかで手を止めて、業務全体を振り返ってみる時間を設けてみてはいかがでしょうか?

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