「勝ちクリエイティブ1本勝負」では新規層に届かない?Meta広告で”パターン”を増やすとリーチが広がる仕組みと設計のコツ

「勝ちクリエイティブ1本勝負」では新規層に届かない?Meta広告で”パターン”を増やすとリーチが広がる仕組みと設計のコツ

Meta広告の機械学習は「どのクリエイティブが、どの配信面で、どのユーザーに反応されるか」を学習・最適化しており、パターンを増やすほど接触できる層の広がりが期待できます。

一方、複数のクリエイティブを掲載する中で、成果の向上を目指して、パフォーマンスの高いクリエイティブのみに絞り込むケースも多いですよね。この場合、短期的にはパフォーマンスが向上するものの、リーチが狭まりだんだんとパフォーマンスが落ちてきてしまう……と悩むケースも多いのではないでしょうか。

そこで今回おすすめするのが、複数パターンのクリエイティブを配信する方法です。

これによって、新しい層への接点を広げながら、長期的に安定した成果の向上を目指すことができます。

本記事では、Meta広告で成果を持続的に伸ばしていくために、なぜ「複数のクリエイティブを用意すること」が重要なのか、そしてどのようにパターンを展開していくべきなのかを、Meta広告の最適化アルゴリズムや実際の事例をもとに解説していきます。


なぜ「複数のクリエイティブを用意する」ことがリーチ拡大につながるのか?

Meta広告でリーチを広げる上で、複数のクリエイティブを用意することが重要なのは、配信の最適化においてクリエイティブが最も強く影響する要素の一つだからです。

Metaの配信システムは、ユーザーごとの行動や反応データをもとに「どの広告を、どのユーザーに届けるか」を学習・最適化しています。

そのため、クリエイティブが1種類しかないと、反応しやすい一部の層に配信が偏りがちになります。

一方で、異なる訴求やデザインのクリエイティブを用意すると、それぞれに反応しやすいユーザーへリーチを広げようとするため、結果的に接触できる層の幅が広がります。

このように複数のクリエイティブを用意することがリーチ拡大につながる背景には、大きく分けて3つの理由があります。

1.ユーザーの多様な嗜好に対応できる

同じ商品でも、重視するポイントや動機は人によって異なります。そのため、「何をどのように訴求するか」を変えることで、新たなユーザー層に届く可能性が生まれます。

事例:異なるニーズへの訴求で新規顧客を獲得

全年齢を対象とした転職サイトの会員登録を目的とした広告配信では、基本的には年齢のみでターゲティングをして広告配信していました。

  • キャンペーンA
    • ターゲティング:30歳~
    • クリエイティブの訴求:パパママが働きやすい求人の豊富さ
  • キャンペーンB
    • ターゲティング:40歳~
    • クリエイティブの訴求:高い役職の求人の豊富さ

成果の良かった訴求軸の中でクリエイティブのPDCAを回していましたが、CPMが高くなる一方で獲得の増加にはつながりませんでした。

そこで、新たに以下のような異なるニーズに対応したクリエイティブを追加したキャンペーンを作成し、配信しました。

  • 「得意なスキルを活かしたい」
  • 「自由な働き方を叶えたい」

ターゲティング設定は既存キャンペーンと重複していましたが、訴求内容を変えたことで新しい層へのリーチが広がり、結果として全体の獲得数を伸ばせました

2.配信アルゴリズムの探索範囲が広がる

Metaの最適化はクリエイティブごとにユーザーの反応傾向を学習し、それぞれに最も反応しやすい層へ配信を広げていきます。

そのため、訴求内容やデザイン、フォーマットの異なるクリエイティブを用意すると、AIが探索できるユーザーの範囲が拡大し、結果的にリーチの最大化につながります。

【事例】クリエイティブで配信デモグラフィックが変化した

全年齢を対象とした求人メディアの会員登録を目的とした広告配信で、Advantage+ ショッピングキャンペーン(ASC)を活用し、性別やデモグラフィックを絞らずに配信を実施しました。

同一キャンペーン内で複数の訴求を持つクリエイティブを投入した結果、配信されるユーザー層に明確な違いが見られました。

  • 主婦層を意識したクリエイティブ
    • 内容:30代以上の女性の画像を使用し、子育て中の悩みに共感するコピー
    • 結果:35歳~54歳のユーザーにリーチが拡大
  • 40代以上の男性を意識したクリエイティブ
    • 内容:40代以上の男性の画像を使用し、将来の悩みに共感するコピー
    • 結果:45歳以上の男性ユーザーにリーチが拡大

このように、狙うユーザー層を意識してクリエイティブを切り分けることで、リーチの幅を広げることができました。

3. 学習に必要なデータ数が確保しやすい

Meta広告には、最適な配信パターンを見つけるための「学習期間」があります。

この期間に十分なデータが集まらないと、学習が完了せず、配信が不安定になったり、クリック単価やCPAが高騰したりする原因となります。

複数パターンのクリエイティブを配信することで、「誰にどんな表現が刺さるか」というデータが早く集まります。その結果、学習期間を短縮し配信精度とリーチの拡大を両立できます。

クリエイティブのパターンを広げる4つの切り口

ここまでの内容で、「ニーズ」や「性別・年齢」といったパターン展開の例を交えながら、多様なクリエイティブを追加することの重要性について解説してきました。

しかし、単にパターンを増やすだけでは、広告に反応する層が変わらず、リーチの拡大にはつながりません。

この章では、どのような切り口で考えるべきかについて解説します。

1.オーディエンス

Meta広告の配信最適化は、既に反応したユーザーやその類似ユーザーに偏る傾向があります。

そのため、広告のリーチを広げたい場合は、既存の反応層とは異なる属性や状況のユーザーに合わせた訴求を設計することが重要です。

具体的には、以下のような切り口で考えるのがおすすめです。

  • デモグラフィック:性別・年齢・職業など。ライフステージによって重視する点が異なる。
    • 例:同じ転職を考えている人でも、20代は「スキルアップ・挑戦」、40代は「安定・働きやすさ」を求める傾向が強い
  • 検討段階:興味関心、情報収集、比較検討など。行動段階ごとに求める情報量や意欲が違う。
    • 例:興味がない段階では「自分ごと化できるきっかけ」が大事だが、検討段階では「他社との違いや具体的な条件」に目が向きやすい
  • 趣味嗜好:感性や好みなど。同じ属性やニーズでも、感覚的な好みによって意思決定が変わる
    • 例:同じ形状・機能の家具でも、ナチュラル調を好む人もいればモノトーンを好む人もいる

2.ニーズ

同じ商材で同じ属性のユーザーをターゲットとする場合でも、その人が「何を求めているか」によって、響くメッセージは異なります。

たとえば、ある人は「価格の安さ」を重視し、別の人は「使うことで得られる満足感」や「多くの人に選ばれている安心感」を重視するかもしれません。つまり、求めているものが違えば、購買や反応の決め手も変わるということです。

そのため、商品の特徴や強みを整理し、ターゲットの価値観に合わせて伝える切り口を変えることで、これまで反応しなかった層にもリーチを広げられます。

主な切り口としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 機能軸:商品の特徴・スペックを訴求。具体的な数値や性能を重視するユーザーは、客観的な根拠によって納得・行動しやすい
    • 訴求例:「業界最軽量の〇〇g」
  • 感情軸:使うことで得られるポジティブ体験を訴求。 機能では伝わりにくい価値を、体験や気分の変化として具体的に想起させやすい
    • 訴求例:「休日の朝がもっと楽しみになる」
  • 社会的証明軸:第三者評価や実績で信頼性を訴求。他者の評価や実績を判断基準にするユーザーに対して、安心感や信頼性を補強できる
    • 訴求例:「利用者数100万人突破」

3.表現

ターゲットや訴求内容が同じでも、伝え方や見せ方が変わるだけで印象や反応は大きく変わります

例えば、同じ商品の紹介でも、ストーリー仕立てにするか、データで訴えるかで受け手の感じ方はまったく異なります。

そのため、「誰に」「何を」伝えるのかに合わせて、表現方法を変えることで、より幅広い層にリーチしやすくなります。

例えば、よくある表現のパターンとしては以下のようなものがあります。

  • Before/After型:使用前後の変化を見せることで、効果を直感的に理解しやすい
  • How to型:使い方や活用シーンを具体的に示すことで、利用イメージを持たせる
  • 体験レビュー型:実際の利用者が語るようなリアルなトーンで、親近感と信頼を生む
  • 問題提起型:潜在的な悩みを提示し、共感を得てから解決策へ導く
  • 中の人・専門家訴求型:開発者や専門家を登場させることで、専門性や信頼感を強調できる

興味を引いたり理解を促すために最適な表現は、ターゲットや日々のトレンドによって変化するため、固定化せずに定期的な検証と更新を行うことが重要です。

4.フォーマット

通勤中に音声オフでSNSを見る時は静止画、家でじっくり情報収集する時は長尺動画、といったように、ユーザーの状況によって最適なフォーマットは異なります。

そのため、特定のフォーマットのみで配信している場合、そのフォーマットではリーチできないユーザー層への機会損失が発生します。

露出機会を増やすために、各ユーザーの閲覧状況や利用文脈に対応できる広告フォーマットを準備しましょう。

主なフォーマットとその使い分けは、以下のように整理できます。

静止画

  • 1枚:短時間でメッセージを伝えられ、視覚的な印象で関心を引くのに適している
  • カルーセル:複数画像で商品の特徴や使い方を段階的に伝え、理解を深めやすい
  • コレクション:メイン画像とサブ画像を活用して、種類やラインナップを一目で伝えられる

動画

  • 短尺:短時間で印象を残しやすく、リールやストーリーズを流し見するユーザーの関心を引くのに適している
  • 長尺:商品の魅力や世界観をじっくり伝えられ、ユーザーの理解を深めやすい

多様な軸のクリエイティブを作成する3つのステップ

多様なユーザーに届くクリエイティブを設計するには、やみくもにパターンを増やすのではなく、ターゲット理解を起点に一貫したプロセスで整理していくことが重要です。

以下の3ステップで、効率的に設計していきましょう。

Step1:ターゲットの「ペルソナ」と「検討段階」を整理する

まず、「誰に何をどのように伝えるか」の精度を高めるために、ターゲットを整理します。この時、「ペルソナ(どんな人か)」と「検討段階」を掛け合わせて考えることで、ユーザー像が明確になり、的確な仮説を立てやすくなります。

例えば、転職サイトの場合、以下のように整理できます。

  • ペルソナA: 20代男性。キャリアアップやスキルアップを重視。
    • 検討段階: 複数の転職サイトを比較検討中。能動的に情報を探し、レビューや詳細な機能を調べている。
  • ペルソナB: 30代女性。育児と両立しながら柔軟に働きたい。
    • 検討段階:漠然と転職を意識し始めた。情報収集は受動的で、SNSを眺めることが多い。

Step2:ペルソナ別のインサイトを洗い出す

Step1でターゲットを具体的なセグメントに分解したら、次はそのセグメントごとに「なぜその行動を取るのか」「何に不安や期待を感じているのか」を整理していきます。

インサイトを起点に考えることで、ユーザーの“行動の裏にある動機”を捉えられるようになり、単なる属性ベースでは拾いきれない訴求のヒントを得られます。

ただし、インサイトは想像でつくると的外れになりやすいため、実際の声や行動データを基に見つけていくことが重要です。

たとえば以下の方法で、情報収集するのがおすすめです。

  • 顧客へのアンケートやインタビュー
    • 既存顧客に「利用のきっかけ」「選んだ決め手」「利用前の不安」などを聞くことで、行動の背景にある本音を把握しやすい。
  • SNS(特にX)の分析
    • X(旧Twitter)は日常の感情や考えをリアルタイムで投稿する傾向があり、ユーザーの本音が表れやすい。

Step1で整理したペルソナを例にインサイトを洗い出してみると、以下のようになります。

  • 20代男性でキャリアアップしたい/転職に向けて情報収集中
    • 不安:転職に失敗して今より状況が悪化するのが怖い
    • 期待:今より成長できる環境に行きたい
  • 30代女性で育児と仕事を両立したい/転職を漠然と検討中
    • 不安:今の会社は産休制度が整っていない
    • 期待:家庭と両立しながら、やりがいのある仕事を続けたい

Step3:インサイトに対応した複数パターンのクリエイティブを設計する

Step2で整理したインサイトをもとに、複数の角度からアプローチできるクリエイティブを設計します。

同じインサイトを抱えていても、そこに至る背景・感情・意思決定の基準は人によって異なります。

そのため、一つのインサイトに対して、複数の切り口・表現・フォーマットを組み合わせたクリエイティブを作成し、それぞれ異なる層から反応を得られるようにしましょう。

実際に一つのインサイトをもとに、整理した例が以下になります。

インサイト:転職に失敗して、今より状況が悪くなったらどうしよう

切り口表現フォーマット
サービス特徴を伝えて不安を解消する具体的なサポート内容を順序立てて紹介カルーセル広告
実績とデータで信頼を勝ち取る「転職後の年収アップ率81%」「サポート満足度95%」など、客観的なデータを大きく見せる静止画広告(インフォグラフィック風)
共感と成功体験で背中を押す同世代の男性が「私も不安でした」と語り始め、サポートを受けて成功した体験を語る短尺動画(利用者インタビュー風)

クリエイティブのパターンを増やす際の注意点

多様なクリエイティブを配信することは重要ですが、やみくもに数を増やすと学習が分散し、検証が難しくなる場合があります。

ここでは、効果的にパターン展開するための3つのポイントを整理します。

一度に多くのクリエイティブを配信しすぎない

同時にいろんなインサイトに基づいたクリエイティブを配信すると、学習が分散してしまい、狙った層への最適化が進みにくくなります。

また、単純にクリエイティブ本数が多すぎても、1本あたりの配信量が分散し、十分な学習データが蓄積されにくくなります。

そのため、以下のようにアカウントを設計するのがおすすめです。

  • 予算と想定CPAに見合った本数を設定する
    • 1広告セットあたり週50件以上のコンバージョンが得られる規模を維持できる範囲でクリエイティブを追加する
    • 参照:情報収集期間について
  • 狙っている層に応じたアカウント構成にする
    • これまでと異なるインサイトを狙う場合は広告セットを分け、同じインサイトを深掘りする場合は一つの広告セット内で検証する

効果検証を前提にクリエイティブを設計・追加する

多様なクリエイティブを一度に大量に追加すると、どの要素が良かったのか、逆に何が成果を下げたのかが判断しづらくなります。

そのため、配信前に「どのクリエイティブとどの点を比較したいのか」「検証の目的は何か」を明確に設計したうえで追加しましょう。

まとめ

本記事では、Meta広告の最適化の仕組みを踏まえ、成果を継続的に高めていくためには、媒体設定だけでなく、クリエイティブ設計も重要であることを解説しました。

ポイントは「数を増やすこと」ではなく、多様なインサイトに基づいた意図ある設計です。

新しい層との接点を広げるためには、「当たりクリエイティブ」を磨く“1本勝負”の思考だけでなく、多様なクリエイティブを継続的に試し続ける姿勢が欠かせません。

ぜひ今回紹介したステップを参考に、リーチの拡大と成果の安定を両立できるクリエイティブ設計に取り組んでみてください。

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