
Meta社が提供するSNS「Threads(スレッズ)」は、公開からわずか数日で1億ユーザーを突破したことで大きな注目を集めました。その後も利用者は増加し、2025年には月間アクティブユーザー数が4億人を超えるまでに成長しています。
これまでThreadsは広告非対応のプラットフォームとして運営されてきましたが、2025年4月末からは本格的な広告配信が開始されました。
これは、FacebookやInstagramに続く新しい広告の掲載面として位置づけられ、広告運用者にとっては新規オーディエンスとの接点を獲得できる場が増えたことを意味します。
本記事では、Threads広告の基本的な仕組み、Meta広告マネージャーでの設定手順、メリットと注意点、そして効果的に活用するためのポイントを整理して解説していきます。


目次
Threads広告とは?
Threads広告は、Metaが提供するSNSプラットフォーム「Threads」に配信される広告です。Meta広告マネージャーから管理できる複数の掲載先のうちのひとつとなっています。
FacebookやInstagramと同様の環境で設定・運用できるため、新しい専用ツールを習得する必要はありません。

画像引用元:Threads広告について | Metaビジネスヘルプセンター
広告の表示形式は、ユーザーのフィード投稿間に自然に挿入されるインフィード型です。そのためユーザーの体験を大きく阻害しないことを前提に、自然に溶け込む表現が効果的なのが特徴です。。
現在利用可能な形式は画像広告と動画広告であり、いずれも「広告(Sponsored)」と明示されます。
なお、Threads広告を出稿するためにはInstagramアカウントが必須です。Threads単独のアカウントを新規に作成する必要はなく、既存のInstagramプロフィールを配信元として利用できます。
Threads広告のメリット
Threads広告には、他のMeta広告と異なる利点がいくつかあります。
まず大きいのは新規ユーザー層へのリーチです。X(旧Twitter)から流入したユーザーや、30〜50代のビジネスパーソン層が多く、従来のInstagramやFacebookでは接触しづらかった層に広告を届けることができます。これまでとは異なる顧客接点を築ける点は、特に新規開拓を狙う広告主にとって大きな意味を持ちます。
また、エンゲージメント率が比較的高いことも注目すべき特徴です。広告枠が飽和していない段階にあるため、ユーザーが広告を見慣れておらず、クリック率や反応率が高く出る傾向があります。
実際の報告では、質問形式を取り入れた広告が通常広告の約2.8倍のエンゲージメントを獲得した事例も確認されています。ユーザーとの対話を前提に設計することで、広告効果をさらに伸ばすことができるでしょう。
さらに、Threadsでプロフィールを作成すると、ログインしたInstagramまたはFacebookアカウントにリンクされます。Threadsでは、InstagramまたはFacebookアカウントのデータが利用されるため、Meta広告エコシステムに属し、ターゲティングの精度は他の媒体と同様だと予想されます。
興味・関心、地域や年齢、カスタムオーディエンス、類似オーディエンスといった強力な機能を活用でき、見込み顧客に対して高精度で広告を届けることが可能です。
参考:Threadsについて | Instagramヘルプセンター
Threads広告の使い方
Threads広告はMeta広告マネージャー上で設定します。
配信面とプレースメントの設定
配置の選び方には大きく2つの方法があり、それぞれメリットと注意点があります。
- Advantage+配置(自動配置)
Metaの機械学習が目的に応じて最適な配置を選択し、Threadsを含む複数の媒体に広告を配信します。初心者にとってはもっとも簡単で、運用工数も少なく済みます。 - 手動配置
配置先を自分でコントロールしたい場合に選びます。

手動配置で注意したいのは、Threads単体での配信はできず、必ずInstagramフィードとセットで選択する必要があることです。
このように、まずは自動配置で全体の動きを把握し、Threadsの配信量や反応が十分かを確認したうえで、必要に応じて手動配置を活用するのが現実的な進め方です。
Threadsに広告が配信されない設定
以下のオプション、タイプ、形式、フォーマット、リンク先を使用する場合、Threadsには広告が配信されません。
区分 | 不適合になる要素 | 補足 |
---|---|---|
広告オプション | Advantage クリエイティブ、アイキャッチ画像の編集機能、タイムラインの背景画像 | Threads広告では利用不可 |
広告のタイプ | Advantage+ カタログ | 製品カタログを用いた自動生成広告はThreadsに非対応 |
広告の形式 | Instagram ショップ広告 | ショッピング連携機能を持つ広告は配信不可 |
広告フォーマット | カルーセル、コレクション | 複数商品や複数画像を横スクロールで見せる形式は未対応 |
広告のリンク先 | 先のダウンロードやインスタントフォームにリンクする広告 | ダウンロード促進広告やリード獲得フォーム広告はThreads非対応 |
現状、Threads広告で利用できるのは基本的に シングル画像広告・シングル動画広告 のみです。ショッピング系、複数枚を組み合わせる広告形式はまだ対象外ですが、今後の対応も期待されます。
対応している広告の目的と最適化対象
公式情報を参考にする限り現状では以下の広告の目的に対応との記載があります。

しかしながら実際のところ私の環境では「リード」を目的にしたキャンペーンでも配信が確認できました。情報更新のタイムラグなども考えられるため、希望しない場合には配信されない目的だからと、不用意に配信対象に含めないように注意が必要です。
目的 | 説明 | 最適化の対象 |
---|---|---|
認知 | ビジネスやブランドの存在を広く知ってもらうための目的です。ブランド認知を高めたい時に活用されます。 | リーチ(できるだけ多くの人に広告を表示すること) |
トラフィック | ウェブサイトやランディングページなど、特定のリンク先にユーザーを誘導する目的です。広告からの訪問数を増やしたい場合に適しています。 | リンククリック |
売上 | 商品やサービスの購入・申し込みなど、具体的なコンバージョンを増やすことを目的とします。購買意欲の高いユーザーを特定して成果を最大化することが狙いです。 | コンバージョン(購入、申し込みなど) |
クリエイティブ仕様と入稿規定
Threads広告では画像・動画いずれも利用可能ですが、テキスト中心のSNSであるためコピーの重要性が大きいのが特徴です。
項目 | 推奨内容 | 補足 |
---|---|---|
画像形式 | JPG、PNG | 高解像度推奨。1:1の正方形は多くの配置でトリミングされず、汎用性が高い。 |
動画形式 | MP4、MOV、GIF | 短尺かつ冒頭に要点を置く設計が望ましい。 |
アスペクト比 | 1:1 または 9:16 | 9:16は没入感を演出。横長は一部トリミングの可能性あり。 |
テキスト | メイン:80〜160文字(最大500文字) | 長文は折り畳まれる可能性があるため、要点は前半に配置。 |
見出し | 40文字程度まで | Threads上では表示されないケースもあり、Instagram等他配置を意識して設定。 |
CTAボタン | 「詳しくはこちら」「購入する」など | 配置によっては一部ボタンが使えない場合もある。 |
ハッシュタグ/URL | 使用不可 | サポートされていません。 動画キャプションも現時点ではサポート対象外です。 |
「シンプルかつ自然に溶け込む表現」を意識するのがポイントです。特にテキスト部分は最初の数行で関心を引けるかどうかが勝負になります。
Threads広告を作成する際には、名義設定と既存投稿の利用にいくつかの制約があります。
名義(プロフィール)設定

広告の[名義]セクションでThreadsプロフィールが自動的に入力されていない場合には、利用したいプロフィールを手動で選択する必要があります。
もしThreadsプロフィールを持っていなければ、代わりにInstagramアカウントが広告の配信元として使用されます。
新しいThreadsプロフィールを作成することも可能ですが、その場合は注意が必要です。新しいプロフィールを作成すると、これまでInstagramアカウントを使って配信していた広告(アクティブ・非アクティブを問わず)のThreadsフィード配信が停止されます。
配信を継続したい場合には、広告マネージャの[名義]セクションでThreadsプロフィールを更新する必要があります。
既存投稿の利用

しかし現時点で利用できるのはFacebookまたはInstagramの既存投稿に限られており、Threadsのオーガニック投稿をそのまま広告に利用することはできません。
そのため、Threads向けの広告を作成する場合には、新しく作成する必要があります。
ターゲティング設定
Threads広告は、Meta広告の強力なターゲティング機能をそのまま利用できます。
- 基本属性(年齢・性別・地域)
広く設定してテストし、成果が出やすい層を見極めてから絞り込むのが安全です。 - 興味・関心ベース
特定のジャンル(例:旅行、ガジェット、健康)を指定し、潜在層に接触。InstagramやFacebookと同様に詳細なセグメントを選べます。 - カスタムオーディエンス
自社サイト訪問者やInstagramでのエンゲージメント実績者を対象に設定。温度感の高い層へのリーチが可能です。 - 類似オーディエンス
既存顧客やフォロワーのデータを基に、新たな見込み層を拡張してアプローチできます。
Threadsだけの特性を意識しつつも、Meta全体の資産をどう活用するかが鍵になります。例えばInstagramで保存やシェアが多かった層をカスタムオーディエンスにしてThreadsでも配信すれば、見込みの高い層に無駄なくリーチできます。
予算・スケジュール・最適化
Threadsはまだ広告在庫が不安定なため、配信量が想定より少ないケースがあります。手元の広告アカウントだと全配置の数%~10%程度までのリーチに留まるケースが多い状況です。
そのため予算設定では「最初から多額を投下する」のではなく、最低1週間は小さめの予算でテストし、安定度を確認してから増額するのが無難です。
また、曜日や時間帯で反応が変わる傾向もあるため、配信スケジュールのテストは重要です。平日昼間と夜間、週末などで分けて運用し、どこで成果が出やすいかを分析するのが実務的なやり方です。
最適化については、Advantage+配置で自動的に成果最大化を狙わせつつ、成果を見ながら「手動配置+予算配分」でThreadsの比率を調整するのが効果的です。
レポート分析と改善
Threads広告の効果を正確に測定するためには、配置別(プレースメント単位)レポートを活用することが不可欠です。
Instagramとセット配信になるため、全体成果だけを見ると「どちらで効果が出たのか」が分かりにくくなります。
- CTR、CPC、コンバージョン率など主要指標を配置別に分解
- 静止画 vs 動画、質問形式 vs 通常コピーなど、クリエイティブごとに比較
- オーガニック投稿の反応が良かったテーマを広告に転用し、PDCAを回す
こうした分析を継続することで、Threads広告ならではの勝ちパターンが見えてくるでしょう。
活用事例と応用的な使い方
1. オーガニック投稿のデータを広告に転用

Threadsには、投稿の閲覧数やエンゲージメントを確認できるインサイト機能があります。
これを活用すると、費用をかけずに「どのテーマやコピーが反応を得やすいか」を検証できます。
例えば、ある企業ではオーガニック投稿の中で特に反応が良かったコピーをそのまま広告クリエイティブに採用しました。結果、初回配信から高いクリック率を記録し、テスト段階で効率的に学習を進めることができました。
ポイント
- 広告出稿前に低コストでテーマをテストできる
- 成果が見込めるコピーや画像を先に見つけられる
- 有料広告に移行する際の失敗リスクを抑制できる
2. ユーザー参加を促す「質問型クリエイティブ」
Threadsは会話型のSNSであり、広告でも一方的な訴求ではなく、対話を誘発する表現が有効です。
「あなたならどちらを選びますか?」といった質問形式を取り入れると、通常広告に比べて約2.8倍のエンゲージメント率を記録したケースが報告されています。
実際にユニクロは、ユーザーに意見を尋ねる投稿を積極的に展開し、それを広告にも活用しています。ユーザーの声を反映した形にすることで、購買だけでなくブランドへの共感を育てることに成功しました。
応用の方向性
- アンケート形式の投稿から広告に転用
- 複数商品の比較をユーザーに委ねる
- コメントでの回答を促し、エンゲージメントを獲得
3. 家庭用品ブランド「山崎実業」
山崎実業は、暮らしに密着した製品を扱うブランドとして、Threads広告を「生活者の共感」を軸に活用しています。
具体的には「こんな悩み、ありませんか?」といった課題提起型のコピーを用いて、ユーザーの日常と広告をつなげました。結果として、製品紹介にとどまらず「生活の中で役立つブランド」というポジションを築き、エンゲージメント向上につなげています。
山崎実業 キッチン_インテリア_ランドリー_収納のメーカー(@yamazaki.home.channel) • Threadsでもっと語ろう
4. BtoB領域「エレコム」
エレコムは、ユーザー参加を前提としたカジュアルなトーンでThreadsを活用しています。
専門的な製品でも、難解な説明ではなく「職場でこんな経験ありませんか?」という問いかけ型の投稿により親近感を演出しました。広告ではその路線を引き継ぎ、認知だけでなく見込み客のフォロー獲得につながっています。
エレコム株式会社(@elecomjp) • Threadsでもっと語ろう
事例から学べること
- オーガニック投稿 → 広告 という流れを作ると効率的に成果を引き上げられる
- 質問形式や課題提起型コピー はエンゲージメントを高めるうえで有効
- ブランドの姿勢やトーン を広告に落とし込むことで、単なる販売促進以上の効果を生む
Threads広告は、まだ広告慣れしていないユーザーが多く、実験的なアプローチを取りやすい環境にあります。各社の事例から分かるように「対話を重視する」姿勢が成果につながりやすく、今後の運用のヒントとなるでしょう。
参考:Threads企業アカウント フォロワー数ランキング - Threads人気ランキング ユーザーの人気投稿やフォロワー数変化がわかる https://threads-ranking.userlocal.jp/?ranking=enterprise
運用上の注意点
Threads広告は新しい媒体ゆえ、いくつかの制約や注意すべき点があります。
まず、配信量の不安定さが挙げられます。広告インベントリがまだ十分に安定しておらず、日によって成果や表示量にばらつきが出る可能性があります。そのため、短期間のデータで成果を判断するのではなく、少なくとも1週間以上の配信結果をもとに評価することが推奨されます。
次に、ブランドセーフティの課題があります。Threadsは会話が中心のSNSであるため、自社広告が不適切な投稿の隣に表示されてしまうリスクは無視できません。Metaは「インベントリフィルター」という機能で調整を進めていますが、現段階では広告主側も慎重にモニタリングする姿勢が欠かせません。
さらに重要なのは、Instagramとの同時配信が必須である点です。Threads単独で広告を流すことはできず、必ずInstagramフィードとセットで配信されます。そのため、Threadsだけの成果を切り分けて測るのは難しいのですが、Meta広告マネージャーのレポート機能を使えばプレースメント単位での数値を確認できます。分析時にはこの機能を活用し、両媒体のパフォーマンスを正しく比較することが求められます。
まとめ
Threads広告は、Meta広告エコシステムに新たに加わった注目の配信面です。
FacebookやInstagramの延長で運用できるため学習コストが低く、かつ広告の少ない今はエンゲージメント率やクリック率の面で有利な状況にあります。
ただし、いくつかの制約や注意点を踏まえた上で取り組むことが不可欠です。
特に 「Instagramと同時配信が必須」 という仕様や、「広告在庫がまだ不安定」 である点は運用計画に織り込む必要があります。
Threads広告はまだ発展途上の媒体ですが、だからこそ運用者にとって先行者メリットを得やすい領域でもあります。
InstagramやFacebookで培った知見を応用しつつ、Threads特有の文化を踏まえた運用を実践することで、新しい成果を獲得できるでしょう。