メルカリで不用品を売っていたら、いつの間にか“マーケティング脳”が鍛えられていた話

メルカリで不用品を売っていたら、いつの間にか“マーケティング脳”が鍛えられていた話

「どうすれば商品やサービスがもっと魅力的に見えるんだろう?」そんな顧客の視点に立って考えることを、よく「マーケティング思考」と呼びます。

「マーケティング思考を身につけよう」という言葉、SNSや本で見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。マーケティングの仕事をしている人はもちろん、それ以外の分野でも大切だとされる考え方ですよね。

でも、実際に「身につけろ」と言われても、何から始めればいいのか分からないし、本を読んだだけでスッとできるようになるものでもないと思います。

私も広告デザインの仕事をするなかで日々「どうすれば伝わるか」を考えていますが、そのときふと「あれ?この考え方、学生のころから自然とやっていたかも」と気がついたんです。

そのきっかけが、メルカリでした。

当時はただ不要になった服を出品していただけなのに、気がつけばすっかりハマっていて、数年間、試行錯誤しながら続けていました。「どうしたら売れるだろう?」と試行錯誤を重ねるプロセスそのものが、私にとっての楽しみでした。振り返ると、そのときの小さな工夫の積み重ねが、今の仕事にもつながっています。

商品の魅力をどう伝えるか。ユーザーの反応を見て何を変えるか。それってまさに、広告運用やデザイン制作で繰り返している「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のサイクル(PDCA)と同じ流れなんですよね。

今回は、そんな私の体験をもとに「メルカリ出品とマーケティング思考の共通点」を4つのポイントで紹介します。読んでいただければ、マーケティング思考をちょっと身近に感じられるはずですし、ついでに断捨離も進んで一石二鳥かもしれません。

1.商品説明で「買う必然性」を演出する

売れる商品説明文は、「買う必然性」が演出されています。

逆に、淡々とスペックが書かれているだけでは、なかなか売れません。

メルカリで古着を出品した当初、私は「ブランド名」「サイズ」「採寸」「素材」「状態」など、主に商品のスペックを記載し出品をしていました。

ブランド名:〇〇

サイズ:M

採寸:着丈◯㎝ 身幅◯㎝ 肩幅◯㎝ 袖丈◯㎝

素材:ナイロン

状態:新品ではありませんが、使用感の少ない美品です。

しかし、売れ行きは芳しくありませんでした。

当時、私が出品していた商品は、有名なブランドの古着でした。「アイテム自体にポテンシャルはあるのになぜ売れないのか」と感じていました。

そんな時、ノーブランドの古着に「〇〇な着こなしが好きな方におすすめ!」と一言添えられただけの出品が、自分のブランド古着よりも高値で売れているのを目にして私は衝撃を受けました。

【例】
数年前にリユースショップで購入したデザインニットカーディガンです!

ブラウスの上から着ても可愛いですしワンピース、ロングスカートやデニムに合わせても◎

ヴィンテージ、アメカジ、昭和レトロ、モダンな着こなしが好きな方にもおすすめ!

「確かに、商品のポテンシャルがきちんと活かされた説明文だ」と納得したことを鮮明に覚えています。アイテムが売れる理由はスペックだけではないということを感じとった瞬間だったのです。

それでは、買う必然性のある商品説明文にするには、どのような工夫が必要でしょうか。

商品のベネフィットを伝える

まず重要なことは、「ユーザーが買いたいと思う理由」、つまりベネフィットを加えることです。

わかりやすい例では、「当時即完売するほどの希少商品」や「人気の商品が新品未使用」といった希少性のある商品であれば、希少性を具体的にアピールすることはとても有効です。

希少性がある商品は、この機会を逃すと巡り合う機会が二度と訪れないかもしれません。これは買う必然性をわかりやすく演出できます。

仮に希少性はあまりない商品だったとしても、「デザインディティールと着合わせ」をベネフィットにすることもできます。

たとえば、ほんのりラメの入ったベロアスカートを出品するとしましょう。

「ふわっとなびくたびに輝く、自然なラメがコーディネートのアクセントに!」「スニーカーはもちろん、ローファー等のクラシックなアイテムにも合うので、幅広いスタイリングが楽しめます!」などの文言を入れることで、アイテムそのものに強烈な希少性がなくとも、ユーザーの選択肢に十分に入り込むことができます。

出品物が持つスペックがもたらすデザインディティールや着合わせは、「買うワクワク感」を演出しユーザーのファッションを豊かにする、立派なベネフィットです。

“お得感”を作り出す

定価と販売価格が離れている場合は、その差を伝えることも有効です。

 ネット通販でも活用されている見慣れたシンプルな手法ですが、ユーザーにとって「お買い得」はれっきとしたベネフィットであり、実際にインパクトも大きかったことを覚えています。

ただ商品の特徴を羅列するのではなく、「買いたくなる構造」まで含めて情報を設計することで、メルカリの売れ行きは大きく変わります。

そして、「単にスペックを列挙するだけでは売れない」ということと「買う必然性を演出することが重要」であるということは、LPやバナーなどのクリエイティブ制作でも全く同じと言えます。

2.買う人の気持ちで情報を整理する

出品で大切なのはベネフィットを追加することだけではありません。購入者が知りたい情報を優先して商品ページを整えることもポイントです。

重要なのは、出品者のセールスアピールを優先せず、あくまでユーザーが本来知りたいはずの情報を、見やすく分かりやすく提示することです。

購入者は商品を直接確認できないため、知りたい情報が見つからずに不安が残れば購入をためらってしまいますよね。情報が整理され、知りたい情報がわかりやすく記載されていることで初めて購入者に安心感が生まれます。出品時の情報整理は、購入をスムーズに行ってもらうために欠かせません。

素材が伝わる画像と説明を用意する

画像でパッと見た時の印象が類似したアイテムでも、綿ではなくリネン素材のアイテムが欲しいとき、素材の情報が明確にされた状態で出品されていると迷わずに済みます。

素材の質感がわかりやすいアップの写真や、タグの素材表記がしっかり映った写真を掲載し、スムーズに検討できるようにすると、ユーザーの知りたい情報をわかりやすく届けることができます。

伝える情報の順番を整理する

メルカリでありがちなことは、説明文に値引き交渉に関する文言を盛り込みすぎて、サイズや状態などの基本情報に辿り着きづらくなってしまうことです。

伝える情報の精査と伝える順番は工夫の余地があります。アイテムの一番の強みは上の方に、アイテム詳細は中盤に、値引きのオファーは下の順番にすると、ユーザーの知りたい順序で情報を整理することができます。

このように、自身が感じた体験をもとに、購入者がストレスなく検討・購入できるよう出品の仕方をアップデートし続けていました。

商品を売るためには、まず商品の特徴をユーザーにわかりやすく伝えなくてはいけません。これは、LPや動画を制作するうえでも全く同じです。 

あるいは、マーケティングという枠を超えて、仕事に関わるあらゆるコミュニケーションに必要なスキルかもしれません。

「伝わるように情報を整理する」というスキルを、売れる・売れないというわかりやすいフィードバックを得ながら誰でも磨くことができるのは、メルカリならではだと思います。

3.商品が気になっている人の背中を押す「リマインド」

どんなに魅力的な出品物でも、他の出品物と比較したり、購入までに検討期間を要することはよくあると思います。しかし、検討し続けて時間が経つうちに、出品物自体に興味が薄れてしまうこともあります。

ユーザーへの後押しとしておすすめなのが、メルカリの「いいね」と「コメント」機能を用いた商品のリマインドです。

メルカリの機能をリマインドとして使用する

メルカリでは「いいね」ボタンを押すと、気になっている商品をいいね一覧からいつでも見ることができます。

また、いいねした商品にコメントがつくと、「いいね」済みのユーザーに通知が飛びます。(ユーザー設定によってはOFFになっていることもあります)

これら機能を活かし、いいねが多数ついている商品にコメントをすることによる「リマインド」を行っていました。リマインドは、「いいね」による検討で止まっているユーザーに有効です。筆者の場合、以下のような内容のコメントでリマインドをしていました。

「皆様、いいねありがとうございます!ただいま出品額を大幅値下げし、期間限定価格で出品しております!!限定価格は◯日までです!気になっている方やお値引きをご希望の方はお気軽にコメントください!」

単に商品を思い出してもらうために通知を送るのではなく、セール価格である旨や「値引き交渉も可能」など購入ハードルを下げる一言も添えると、より効果があります。

たとえばECサイトにおいても、商品をカートに入れたまま離脱したユーザーへのリマインドメールは常套手段ですよね。同じように、メルカリの販売においても「リマインド」は有効な手段です。広告では「リターゲティング」がリマインドの役割を果たすことも。

ただし、あまりに頻繁なリマインドはユーザーに不快感を与える可能性もあるため、値下げなど明確なメリットを提示するタイミングに絞るなど、相手への配慮が大切です。

4.購入前〜購入後までの「導線設計」

ここからは少し上級編です。

アイテムを効率的に売ることに慣れてきたら、リピーターを集めることで、売れるサイクルを短くできます。マーケティングにおいても、会員制度を作ることで、リピーターを増やそうとしますよね。

メルカリには「フォロー」という仕組みがあり、フォロー中のユーザーが出品すると通知を受け取ることができます。

「フォローで値引き」でフォロワーを増やす

フォロワーを増やす上で効率的な手段が、「アカウントをフォローすると10%オフ」というオファーを打ち出すことです。フォローしているユーザーであれば、新規・リピーター問わずフォロー割引を適用するのがおすすめです。

実際、フォローで値引き制度を始めてから、複数回商品を購入してくれる方も増え、フォロワーが増えるにつれて出品物が売れるペースも早くなりました。

フォロワーにとっても、リピーターにもフォロー割が効くことで購入自体のハードルも下がりますし、過去無事に取引を終えた相手から再び商品を購入すれば、取引上での安心感に繋がりますよね。

出品者だけでなくフォロワーにとってもメリットがあるシステムだからこそ、フォロワー増加の取り組みは売上の支えになっていると感じています。

フォロー機能を活用して値引き交渉を規則化

「フォローで値引き」には、もう一つのメリットがあります。それは面倒な値引き交渉を減らせることです。

フリマサイトでは、コメント欄や専用機能を用いて値引き交渉を行うことができます。「値引き交渉ができる性質」は購入者にとって大きなメリットであり、出品者も「アイテムが売れるなら」と提示された値引き額を受け入れるケースが多数あります。

しかし、値引き交渉はフリマサイトの運営が面倒になる原因にもなります。出品者からすれば値引き交渉のコメントのやり取りはそれ自体が面倒ですし、時には不躾にさえ思える大幅な値引き交渉を受けることもあります。「そんな価格じゃ売らないよ……」と思いながら、丁寧にコメントを返すのは面倒ですよね。

また、購入者にとっても、「失礼にならないかな……?」と思いながら値引き交渉を行うのは、多少なりとも疲れるやりとりです。

そこで有効なのが、「アカウントをフォローすれば10%オフ」などの条件を出品者側から提示し、値引きまでのステップを規則化するというものです。「何をすればどれくらい値引きされるのか」が明文化されているので、ユーザーは迷うことなく値引きの交渉ができます。また、出品者にとっても無理な値引き交渉が減るため、スムーズな取引を増やすことができます。

私がメルカリを趣味として続けられた背景に、このような値引き交渉の規則化の恩恵があったと思います。

このように「リピーターの大切さ」を肌で感じることができるのも、メルカリの奥深さの一つです。

マーケティングを学ぶ機会は身近にある

フリマアプリで不用品を売ることは今や世間で一般化している行動ですが、実際に自分のお金で購入したものを人に売るという行為には、机上の学びでは得られない"臨場感"があります

もちろん事業と同列に語るのは大げさかもしれません。ただ「不用品をできるだけ高く売りたい」という気持ちが自然に湧いてくるのは、リアルなお金のやりとりを伴うからではないでしょうか。

ただの古着を出品していただけなのに、気づけば趣味と言えるほど没頭し、デザイナーとしての今に活きる学びを得ることができました。私にとって身近で始めやすかったのが「メルカリ」だっただけで、このような臨場感ある体験は他にもあります。地域のフリーマーケットでの出店や、学生であれば文化祭の模擬店などもそうでしょう。人に買ってもらう側に立つと、必ず何かを感じ取れるはずです。

「マーケティング思考を身につけたい」と思ったら、こうした臨場感ある機会に真剣に取り組んでみると、大きな学びにつながるはずです。

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