株式会社ミルボン(milbon:iD)
株式会社ミルボン
蓑原 弘樹さま(写真右)
石橋 舞さま(写真左)

オージュア」をはじめとする、美容室専用のヘアケア製品やヘアカラー剤などの製造・販売を行う株式会社ミルボン。1960年の創業以来「すべては、ヘアデザイナーとともに」という理念のもと、美容室・美容師を通じて高品質なヘアケア商品を提供し続けています。

2020年から利用者のさらなる増加を目指し、ミルボン製品をオンライン通販で購入できる公式オンラインストアーズ「milbon:iD」(ミルボン アイディー)をスタート。しかし、トライアルセットの販売からデジタルポップアップ施策などミルボンさまにとって初めてのダイレクトマーケティングの取り組みは、事業部としても大きなチャレンジだったといいます。

当初は、期間限定の販売キャンペーンとして始まった今回のチャレンジ。弊社は、デジタルポップアップストアの立ち上げから「milbon:iD」への会員登録への導線を、広告運用でサポートをさせていただきました。1年間の販売実績により、2024年春から「milbon:iD」の常設の事業のひとつとなりました。

今回はミルボンさまのご担当者さまに、施策の立ち上げから常設化までを伴走したアナグラムとのお取り組みについてお伺いしました。

このインタビューは、2024年4月に行われました。

聞き手:アナグラム株式会社
米田 早希
松本 涼花(執筆者)

ご利用サービス: リスティング広告運用代行

強みと課題は表裏一体。より良い購買体験のための初の試みとは

「オージュア」など人気のヘアケア商品を展開する御社ですが、販売チャネルをサロン経由に限定しているユニークなビジネスモデルをされていますよね。

美容師を通して、プロダクトの良さを十分に実感いただいた上でご使用いただきたいという想いから、ミルボンのプロダクトは正規取扱サロンで美容師によるカウンセリングを受けた方のみご購入いただける仕組みになっています。創業以来、美容室・美容師あってこそのミルボンです。そのため、サロンを通じての商品販売は、弊社の重要な文化だといえます。

しかし一方で、「商品が欲しいときとサロン来店のタイミングが合わない」というお客様からのお声を頂戴することも多々ありました。そこで、ミルボンに関わってくださっているサロン、お客様にとってより良い販売の仕組みを作りたいという思いから、2020年に公式オンラインストア「milbon:iD」をオープンしました。

「milbon:iD」は、オンラインストアへの会員登録や商品の購入にはサロン来店時に発行される二次元コードが必要な設計になっていますよね。「milbon:iD」の設計にもオンラインストアが単なる直販のプラットフォームではない、「サロンを大事にする」という御社のこだわりを感じます。

「milbon:iD」では、お客様が欲しい時に商品を購入できるだけではなく、ユーザーの「milbon:iD」での売上が登録したサロンに計上される仕組みになっているのもポイントです。

画像引用元:「milbon:iD」美容室の売上になるビジネスの仕組みより引用

商品購入と美容室来店の時期が合わない、そんな継続の壁を「milbon:iD」が支援できればと思っています

ミルボンはサロンや美容師さんと二人三脚で歩んできた歴史があります。そのため、従来の販売販路の仕組みを継続することを大前提としてオンラインストアの施策も始めています。

「milbon:iD」立ち上げのお話を伺った時から、御社だけではなく、ユーザーさん・サロンを含めた「三方よし」の仕組みが確立されているのが印象的でした。
御社にとって初めてオンラインストアで数量限定のトライアル商品の販売を始めることになった経緯を教えていただけますでしょうか。

2022年に実施した認知度調査で、ミルボンや「milbon:iD」の認知度が直近数年間で横ばいの結果になっていることを課題に感じていました。過去には、トライアル商品の配布や交通広告の取り組みも行っていましたが、よりサロンに貢献できる企画ができないかと考えていました。

そこで、ミルボンの認知拡大と同時に「milbon:iD」の新規会員を増やしていくためには、これまでチカラを入れて取り組んできたSNSを活用してなにかできないかと考えたんです。

御社は、XやInstagramのフォロワー数からも分かるように、独自コンテンツを定期投稿していたり丁寧にオーガニック運用をされていますよね。

オーガニック運用の実績があったからこそ、媒体に合わせたユーザーとのコミュニケーション設計次第で、「オージュア」を手にとってもらう機会をオンライン上で増やすだけではなく、使い続けたいと思ったユーザーが実際にサロンに来店してもらう導線を構想として持っていました。

しかし、いざWeb広告を活用して認知と販促を行うにも社内に知見もなかったので、プロフェッショナルにWebマーケティングの知見をお借りできればと思いアナグラムさんにお声がけさせていただきました。

徹底した仮説検証で初のダイレクトマーケティングをサポート

今回、ミルボンさんにとって初のダイレクトマーケティングを弊社でサポートさせて頂きました。初めての試みで不安もあったと思いますが、なぜ私たちに依頼を決めたのか教えてください。

弊社のビジョンやビジネスモデルは複雑なため、一度の説明で十分に理解いただくのは容易ではないと思います。しかしながら、アナグラムさんは初回の打ち合わせ時点で、すでに深い理解をしてくださっていたのは心強かったです。

加えて、打ち合わせには毎回、実際に運用担当の方が同席していただけます。そのため、弊社にとっての初めてのチャレンジであっても、仮説と根拠をセットにして提案いただけたことから、「安心してお任せできるパートナー」だと感じられました。

しかし、配信開始直後はトライアルセットのCPAが想定CPAの2倍で推移した時は正直ヒヤヒヤしました(笑)。

確かにトライアルセットの購入に関しては想定の2倍のCPAとなりましたね。しかしながら、キャンペーンの最終的な目的は購入後の「会員登録」だと共通認識が取れていました。実際、会員登録率は想定を大きく上回る結果でしたよね。そのため、目先のCPAだけで広告の成果を判断してしまうことなく、柔軟な対応ができたのはありがたかったです。

CPAの推移を見ながらも、最終的な目的である会員登録数をしっかりと確認して、お互いに密にコミュニケーションを取れたことが成功の要因だと思います。

広告の配信状況も、こまめにご連絡いただいていたため、必要以上に焦らずに対応ができました。

デジタル広告は「まずはやってみて、違ったらやめる」「結果を次に活かすがすぐにできる」ことが魅力だと思っています。あらかじめ決めたKPIに縛られずに、状況に応じて運用方針の変更をご相談いただけたため、本来の目的に向けてスムーズに舵を切ることができました!

守りたい世界観を理解してくれる安心感。クリエイティブ検証で大事していたのはスピード感

アナグラムのサポートの中で特に印象的だったことはありますか?

アナグラムさんとの協働で特に印象に残っているのは、様々な広告クリエイティブにチャレンジできたことです。弊社として大切にしている世界観やブランドイメージを守りながらも、これまでにない表現方法や訴求点に挑戦するバランス感が絶妙でした。

弊社でも広告配信用のバナーを用意していましたが、アナグラムさんからいただいたクリエイティブを見た時、自社制作のものには「きれいに魅せたい」という思いが隠しきれていないことに気づかされました。

お客様の数だけ響くクリエイティブがあるということは理解しているつもりでしたが、社内から出るクリエイティブのアイデアの幅が限定的だったことに、アナグラムさんとの取り組みを通じて気付くことができましたね。

商品やサービスに詳しくなると、新しいアイデアを出すのが難しくなりますよね。よくわかります。その分、弊社からはこれまで試せていなかった、実際の使用感が伝わるようなUGCテイストなど、さまざまなクリエイティブをご提案してチャレンジさせていただきました。

弊社でも以前からクリエイティブ開発や知見の蓄積に取り組んでいましたが、配信する広告媒体ごとの検証やUGC(ユーザー生成コンテンツ)テイストのクリエイティブ開発など、まだ手を付けられていない領域が数多くありました。そのような中、御社には率先してこれらの領域に取り組んでいただき、本当に助かっています。

また、チャレンジした提案の中でも、弊社のクリエイティブレギュレーションのやり取りも最小限に、かつミルボンの守りたい世界観はしっかりと守っていただけているのが伝わってきたので安心感を持てました。その結果、訴求開発に集中して議論を深められたのもとても有意義だと感じています。

ありがとうございます。あくまで広告表現はブランドや商品をより魅力的にみせるための手段です。そのため、お得な金額を訴求する際でもいかに”特別”に感じてもらえるかを第一に、決してユーザーに「安売り」と受け取られないよう、守るべき一線は意識して取り組んでいます。

アナグラムさんとの協働で特に感謝していることは、弊社が大切にしている価値観を先回りして提案に反映してくださる点です。一つ一つ説明しなくても、アナグラムさんは弊社のブランドの本質を理解し、その理解に基づいた提案をしてくださいます。この安心感があったからこそ、クリエイティブ開発のPDCAサイクルをスピード感を持って回すことができ、結果として多くのチャレンジが実現できたのだと感じています。

こちらこそ、さまざまなチャレンジができるように配慮いただき感謝しかありません!おかげさまで、限られた期間でも多くのクリエイティブを試せました。振り返りも結果を通して十分に議論ができて、ありがたかったです。

クリエイティブごとの成果を4象限で整理いただいた資料は非常にわかりやすかったです。縦軸に「CPAの良し悪し」、横軸に「コンバージョン数の多い/少ない」を置いた表を基に、うまくいかなった訴求や、成果が良かったクリエイティブも「何が良かったのか」を要素を分解して次の検証に活かせる知見が得られました。

クリエイティブ資料より一部抜粋

新規会員数の増加と共に、オンラインでも顧客との接点を持てるように

スピード感をもってクリエイティブ検証のPDCAを回すことができたおかげで、ミルボンさまの商品を求めているユーザーにしっかりと届けることができたと思っています。その結果、トライアルセット購入後の会員登録の転換率も当初想定していたよりも高く推移しましたよね。

「ミルボンの商品を求めているユーザーに届ける」観点から、トライアルセットの販売を通じて、より多くのお客さまにオージュアを手に取ってもらい、お客様にその良さを実感してもらうために何ができるのかを考えました。

これまでミルボン商品の購入場所をサロンに限定していたため、商品を知る機会も限られていました。加えて、決して安くはない価格も相まってミルボン商品を手軽に試していただける機会が少ないという課題も抱えていました。

今回、初のオンライン販売によるトライアルセットの販促という未知の領域に踏み出すにあたり、ユーザーの需要や「milbon:iD」への会員登録の転換率など、不確定要素が多く不安を感じていました。そのため、まずは数量限定の売り切りキャンペーンという形で、小ロットでの販売からスタートすることにしました。

広告配信開始後、最大の懸念事項であったトライアルセット購入者の「milbon:iD」への会員登録率は、当初の予測を大きく上回る10%という結果となりました。これは、1%の転換率でも十分だと考えていた私たちにとって、驚くべき数字でした。

私自身も御社の商品を日頃から愛用していることもあり、一度使ってもらえればその良さを実感して使い続けてくれるという確信を持っていました!そのため、「まずは試してみよう」と手にとってもらえるクリエイティブの開発に力を入れていたのですが、想定以上の結果でしたね。

はい。美容関心ユーザーにアプローチし、トライアルセットをご購入頂いていることもあり、その後のLTV(顧客生涯価値)も通常の1.2倍ほど高い傾向が見られました。

また、サロンで直接購入する場合は商品を持ち帰る必要があるため、まとめ買いがしにくかったのに対して、オンラインストアでは興味のある商品をゆっくり検討しながら購入できるので、複数購入に繋がりやすいのではないかと考えています。

期間限定のトライアル商品の広告運用を通じて、ミルボンさんの商品を試してみたいと待ち望んでいたユーザーさんの多さを実感しました。今回の配信実績を振り返ってみてどのような感想を持たれていますか?

本当にありがたい限りです。弊社がBtoBtoCのビジネスモデルだったこともあり、従来はお客様とサロンを介してしかお客様の反応をうかがい知ることができませんでした。そのため、今回のデジタルポップアップ施策を通じて直接お客様のお声や反響を実感できたことも私たちにとって貴重な経験になりました。

弊社としても、オフライン・オンラインの双方でお客様との接点を持ち続けることができるだけではなく、ミルボン商品を使ってみたいと思っている方に届ける手段が増えたことはとてもポジティブに感じています。

成果はもちろん、それ以上に重視するのは「人」

これまでのお取り組みを振り返って、アナグラムのおすすめポイントがあれば教えて下さい。

アナグラムさんの強みは何と言っても「人の質の高さ」だと思います。

お取り組み当初から、迅速かつ的確なコミュニケーションが印象的でした。弊社の担当者は、実際に弊社商品を愛用されていたことで、ユーザー目線での意見を提供してくれるだけでなく、ミルボンが大切にしている「サロンに利益を還元しながら消費者の役に立つ」という考え方も十分に理解した上で提案してくれていました。

広告運用代理店への運用代行依頼は、担当者の力量によってパフォーマンスが大きく左右される実情もあると感じています。 弊社としても、代理店選定の際には「広告運用の成果」はもちろん重要視していますが、それ以上に担当していただく方の「人となり」を見極めることを重視してきましたね。

そのように言っていただけて本当に嬉しいです…!アナグラムではクライアントさんのジャンルや業界に興味・知見のあるメンバーが担当できるように挙手制を採用しています。そのため、御社も自ら挙手させていただきました。

そうだったんですね…!お問い合わせ時に対応いただいた方から「ベストなチームで行きます!」という力強いお言葉と、プロフィールやこれまで運用実績などの詳細をご連絡いただけたので、弊社として初めての取り組みに対する不安はまったくなかったです!

最後に、今後のアナグラムに期待することを教えてください。

変化の早いWeb業界で、最新の情報を共有頂きながら、プロフェッショナルにサポートいただけることはとても心強いです。

この1年のお取り組みの成果が実を結びこの春から、期間限定の売り切りでの販売だったトライアルセットは常設として1つのサービス化をすることができました。

これまでの売り切りとは異なるアプローチが必要になると思っているので、常設ならではの強みやミルボンの世界観をより多くの人に届けられるようなサポートを引き続きご協力いただきたいです。

Voice Of AdOps担当者の声

「milbon:iD」でのデジタルポップアップ施策をきっかけに、更なる事業拡大を進めるミルボンさま。新しいクリエイティブや配信媒体へのチャレンジも前向きに取り組んでいただけるミルボンさまの推進力が、今回の結果につながったと考えています。

これからも、広告運用の領域にとどまらず、さまざまな施策をご提案できるパートナーとして伴走できればと思います。引き続きよろしくお願いいたします!

株式会社ミルボン