「The State of PPC 2022」から見えてくる、運用型広告の現在のトレンド

「The State of PPC 2022」から見えてくる、運用型広告の現在のトレンド
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2021年に開始した「PPCSurvey.com」の取り組みから、運用型広告の動向や発展、課題をグローバルに把握するための大規模な調査研究「The State of PPC 2022」が2022年4月末に発表されました。

参考:The State Of PPC Global Report 2022

本件では、各国の運用型広告の専門家540名を対象に調査を行い、その結果を様々な主要トピックに集約しています。今年のPPC界の注目のテーマ、課題や懸念は何か、詳しく見てみましょう。



調査対象について

まず、回答者自身について簡単に紹介していきます。グローバルな視点(ヨーロッパ、中東、アフリカ、アメリカ、アジアと太平洋地域のPPC専門家を対象に実施)に加え、必要に応じて結果を適切な文脈に置き換えることができるよう、雇用状況や役職・役割などの異なる特性を考慮する形で本調査が行われました。

配分は以下の通りです。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

地域別のシェアでは、EMEA(欧州・中東・アフリカ)地域が66%と最も多く、その次に多いのは24%を占める米国・カナダとなっています。一方、APAC(アジア太平洋地域)は9%、中南米は1%にとどまりました。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

回答者がどのような環境で運用型広告に取り組んでいるかを見ると、半数強が広告代理店(53%)、その次にインハウス・広告主(28%)、フリーランサー(19%)という配分です。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

ポジション・役職別では、割と均等に分布しています。3分の1が広告運用者で、28%がチームリーダー、25%が管理職・役員で、14%がフリーランスまたは契約社員です。

ポストCookie時代を見据えた目標

回答者が短期的に持っている目標を詳しく見ていくと、サードパーティCookie廃止後の時代を比較的明確に意識していることがわかります。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

例えば、56%の回答者が、「ポストCookie時代に備えて計測を改善」というのが重要な目標になると答えました。

しかし、他の回答の中にも、同様の文脈で読み取れるものがあります。例えば、「カスタマーマッチや顧客データに基づくキャンペーンの実施」(20%)と「顧客レビューの獲得」(16%)からは、今後より重視されるであろう「ファーストパーティデータ」の戦略的な重要性が垣間見えている、とも捉えられます。

依然としてGoogleとFacebookの優先順位は高い

世界規模のデータを集めているため、広告媒体のミックスも非常に興味深いポイントです。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

一見すると、GoogleとFacebookが上位2位に鎮座していることが分かりますが、投下した広告予算の規模によってデータを分けてみると、分布が少し変わってきます。

広告予算の月額が5万ドル(約630万円)以上の場合、MicrosoftやYouTubeをはじめ複数のチャネルがより大きなシェアを占めるようになります。また、月に50万ドル(約6,300万円)も超えると、全体的に媒体の数が増えるだけではなく、MicrosoftとYouTubeのシェアがFacebookを上回ることも興味深いです。

ただし、このパーセンテージはあくまで、回答者による言及頻度を示すものであり、広告予算そのものに占める割合ではないことに注意が必要です。また、比率は全国の合計から算出されており、欧米からの回答が非常に多いため、一定の地域に限定されるチャネルに関しては、上記の割合と本国の実際の利用率に乖離が生じることも考慮する必要があります。例えば、今回の調査結果でYahoo!JAPANが全体で2%しかないのは、このためです。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

媒体ごとの成長も目を見張るものがあります。2020年から2021年の広告費を比較すると、GoogleやFacebookのように3割~4割伸びた媒体が多いのですが、中でもAmazonが前年比で58%と非常に大きい成長を遂げました。

導入率の高いGoogle 広告のプロダクト

今回の調査で印象的な統計の一つは、グローバルで見ても自動化を利用したGoogle 広告のプロダクトの導入率が高いということです。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

回答者の97%がレスポンシブ検索広告(RSA)を使用しています。ここまで高い使用率を打ち出しているのは、今後検索広告の標準フォーマットになる、という背景があるでしょう。

スマート自動入札(tCPA)も95%という高い導入率を記録しましたが、Googleのプロダクト、自動最適化がいかに普及しているかを明確に示している数字です。目標ROASのスマート自動入札は、前者に比べて若干パーセンテージが低かったのですが、83%とそれなりに高い導入率を見せています。

また、「最適化案」のタブも91%と、非常に高い利用率が目立ちました。

ただし、導入率の高さとプロダクトへの満足度は必ずしも相関しないことも忘れてはなりません。以下のグラフが示す通りです。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

スクリプトや自動入札ソリューションのような、満足度が高い機能は確かにありますが、広告運用者からあまり評判が芳しくないプロダクトもあります。

特に「最適化案の自動適用」については、83%の回答者が不満を持っていることが分かりました。そして、前述のように91%の利用率を誇る「最適化案」のタブに対しても回答者の63%が満足していない、という結果でした。こちらの2つの機能に不満の声が目立った理由として、業種特有のニーズによって合う・合わないが大きくに分かれることが考えられます。

サードパーティツールが普及していない分野が意外と多い

Google 広告の領域では、タスクの自動化に対するハードルは回答者にとってそこまで高くないようですが、サードパーティーによる自動化ソリューションの利用頻度は、分野によってまちまちです。

 まず、回答者が特によく利用しているのは、レポート作成(87%)とタスク管理(83%)の自動化ツールです。使っているレポート作成ツールの中ではGoogle Data Studio(Googleデータポータル)という回答が最も多く(69%)、タスク管理ではTrello(33%)やAsana(29%)を利用しているケースが多い模様です。

一方、それ以外の領域においては、サードパーティツールの使用率が大幅に低下しています。「サードパーティツールを使用していない」と回答した割合は、「競合分析」で39%、「パフォーマンス分析と最適化」で63%、「AIライティングアシスタント」で69%、「クリック詐欺/アドフラウドの対策と検出」で74%と、いずれも高い割合を示しています。

引用元:The State of PPC - Global Report 2022 | PPCSurvey.com

しかも、回答者が「自動化したいタスクは何か」という質問に対して、クエリーマイニング(21%)、レポーティング(19%)、予算管理(10%)という、サードパーティーツールで充分にカバーできそうなタスクを挙げているものの、利用率が低いのはまた興味深いことです。

一方、使用料などの金銭的な理由でツールを導入しないケースもあるでしょうが、サードパーティツールの利用が比較的少ないということは、最適化からクリック詐欺検出などに至るまで、既に多くの機能を備えた広告プラットフォームそのものでカバーできていて信頼が厚いために、サードパーティーツールを敢えて選ばない、という風にも解釈できます。

希少かつ重要な調査

もちろん、グローバルなスケールの調査とはいえ、回答は明らかに欧米が中心であり、日本など一部の地域のデータはあまり有意性を示さないことを念頭に置かなければなりません。

また、参加者が500人程度と決して少なくはありませんが、十分ではないともいえるため、こちらをベースに断定した解釈をするよりは、あくまで参考データとして慎重に取り扱うのが無難かと思います。

しかし、このような運用型広告の業界の課題や注目のテーマを幅広く網羅した調査結果は、非常に貴重な資料であることに変わりはありません。願わくば、運用型広告に関するもっと多くの調査などの情報が出てきてほしいと思ってはいますが、言い換えれば割と希少な調査だからこそ、運用型広告に携わるすべてのプレイヤーに目を通すことをおすすめしたい調査でもあります。

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