BtoBビジネスではホワイトペーパーを利用したリード創出を行っている企業も多いのではないでしょうか?そのような中で「多くのリードを得られたが、商談までつながらなかった」という悩みをよく聞きます。
また、インハウスでマーケティング部署やチームを設けている企業では「コンテンツの企画から広告運用まで対応できるマーケターが採用できず困っている」というケースも少なくありません。
今回のセミナーでは、「ホワイトペーパー×運用型広告でリードと受注を生み出す方法」を弊社マネージャーの二平より解説しました。また、フリーランスマーケターのエージェントサービスなどを運営する株式会社Digital Arrow Partnersの小畑さまからは「勝てるインハウスマーケチームの構築方法|採用〜パートナー活用まで」として、マーケター採用の失敗パターンや即戦略化の秘訣までを伺いました。
ウェビナー概要
「勝てるインハウスマーケチームの作り方とホワイトペーパー×運用型広告でリード創出する秘訣とは?」
開催日時:2024年6月19日(水)14:00-15:30
主催:株式会社Digital Arrow Partnersさま、アナグラム株式会社
株式会社Digital Arrow Partners
ASP事業部長 小畑 匡平 氏
慶應経済を中退し、フリーランスを1年(VR,受託開発,デザイン,仮想通貨)
その後、株式会社Branding Engineerへ入社(現 株式会社TWOSTONE&Sons )
・キュレーションメディアで0PVから2000万PVまでを編集長ポジションにて達成
・アパレルD2Cブランドを初年度1億程度を事業責任者として達成
・広告代理店の立ち上げを0から年商4億までを事業部長として達成
・ASP事業の立ち上げを事業部長としてアフィリエイト広告をメインとして月間2億円以上を運用中
現在は、フリーランスマーケターのマッチングサービス「Expert Partners Marketing」を立ち上げ、サービス提供1年で登録者5,000人を達成
アナグラム株式会社
運用型広告事業部 マネージャー 二平燎平
BtoB中心に数十社以上の広告運用やコンサルティングを経験。前職にて中小企業向けERPのセールスやCS、マーケティングなどTheModelの全工程に従事した経験と運用型広告の知見を合わせた売上を伸ばすBtoBマーケティングコンサルティングに定評がある。アナグラム社では主にBtoB向けの支援や情報発信を担当。
目次
ホワイトペーパー×運用型広告でリード創出する秘訣
まず二平さんからは、ホワイトペーパー施策を検討する前に考えておきたいBtoBマーケティングの定石について語られました。
ホワイトペーパー施策は、顕在層向けの施策をやりきってから
BtoB領域のリード創出においては、「問い合わせ」や「サービス資料ダウンロード」など、商談に近いCVポイントに向けた施策から実施していくことが定石です。これらをやりきってから、「ホワイトペーパー」施策を考えていきましょう
アナグラム二平
検索広告は能動的に検索しているユーザーに広告配信できるため、商談につながりやすいです。これに対してディスプレイ広告では、移動や休憩中になんとなく見ているケースが多く、受動的なことが多いです。ホワイトペーパーはMetaなどディスプレイ広告で活用されるケースが多いため、検索広告と比べてハードルが高くなる傾向があります。
もし「問い合わせ」や「サービス資料のダウンロード」に向けた施策がやり切れていない場合、優先順位を確認したほうが良いかもしれません。
ホワイトペーパーの制作を始める前に、押さえておきたい2つの要素
ホワイトペーパーを作ろうとなったとき、コンテンツは何でも良いわけではありません。まずはホワイトペーパーをどのようなものにするのがいいのか、その考え方が紹介されました。
ホワイトペーパーはサービスと連動した内容にする
企業側からすると、あくまでホワイトペーパーを通じて増やしたいのはリードです。そのため、広告主の提供するサービスに連動したコンテンツである必要があります。
ホワイトペーパーをダウンロードしてもらうこと自体が目的となってしまうと、「マニュアル作成代行」を提供しているのに「最新Webマーケトレンド5選」のようなサービスへ興味を持ってもらいづらいコンテンツを提供してしまいがちだそうです。
ホワイトペーパーのコンテンツを企画する際には、広告主のサービスと連動しているかに気をつけ、ダウンロードしてくれたユーザーがサービスにも興味を持ってくれそうかを十分に検討したいですね。
営業体制を整えておく必要がある
2つ目の要素として、リード獲得後のフォロー体制が重要だと二平さんは言います。
せっかくホワイトペーパーをダウンロードしてもらっても、すべての方が広告主のサービスを気になり具体的にお問い合わせをいただけるわけではありません。むしろ大半はホワイトペーパーを得て満足してしまうでしょう。
そのため、営業体制(インサイドセールス(IS))が整備されていなければ、ホワイトペーパーの効果は半減してしまうと言っても過言ではありません。十分なフォローが行える営業体制を用意できるかはあらかじめ確認しておくのがよいでしょう。
リソースを確保できたあとは、ホワイトペーパーの種類に応じて、得られたリードに対してどのようなアプローチを行うか決めておくと成果に繋げられる確率が高まります。
リード獲得だけでなく、顧客のステータス把握にも役立つ
ホワイトペーパーはリード創出を目的とするケースが多いですが、同時に顧客のステータスの把握にも役立ちます。ダウンロードされたコンテンツを確認し顧客の検討フェーズをキャッチして、適切なアプローチを行っていきましょう
Digital Arrow Partners 小畑さん
ホワイトペーパーを使ったリード創出の多いBtoBビジネスでは特に、リードタイムは長めです。そのため、顧客の検討段階が進むタイミングをキャッチするのは、密なコミュニケーションをする以外には困難ではないでしょうか?
その点、ホワイトペーパーであれば、たとえば以下のようにダウンロードされた種類や内容によって、おおよその検討段階を把握できるため、適切なアクションを行いやすくなります。
ダウンロードされたホワイトペーパー | 検討段階 | アクション |
---|---|---|
入門書、用語集、調査レポート | 情報収集 | すぐに電話することは避け、開催予定の自社セミナーについてメールでご案内 |
比較表、チェックリスト | 比較 | ・メールでセミナーのご案内を送る ・メールや電話で商談を打診 |
事例集、サービス資料 | 広告主に興味を持っている | ・ダウンロード後1時間以内に電話 ・メールで商談を打診 |
検討が進みそうなタイミングを分かる仕組みを構築しておくことも鍵になりそうです。
ホワイトペーパーの種類
ホワイトペーパーには調査レポート・セミナー資料・入門書・用語集・事例集・比較表など複数の種類があります。縦軸をCPA・横軸を商談までのスピードで分類すると、おおよそ次のように分類できます。
広告主の活用しているホワイトペーパーがどの領域に該当するか、CPAや商談化スピードを踏まえ目的に対してどの種類のホワイトペーパーを用意するのかを検討するのがおすすめです。
セミナーでは、架空の企業をもとにホワイトペーパー種類別にその特徴やメリットが示されました。
調査レポート
- 特徴:独自の自社データやアンケート調査の結果をレポートにまとめたもの
- メリット:PR TIMESなどプレスリリースと組み合わせられる
入門編・用語集タイプ
- 特徴:初心者向けの内容をまとめたもの
- メリット:情報収集中の初期段階にいる人にアプローチできるため、CPAが安め
チェックリストタイプ
- 特徴:何かを開始するための項目や、状況を把握するための項目をまとめたもの
- メリット:自社が提供している商材に関するノウハウをチェック化すれば良いため、作成しやすい
セミナー資料タイプ
- 特徴:自社のセミナー向けに作成したコンテンツを再利用したホワイトペーパー
- メリット:セミナー開催後のレポートをホワイトペーパー化するなど、過去データを活用して作成できる
事例集タイプ
- 特徴:自社商材を利用している顧客の事例をまとめたもの
- メリット:自社商材への興味関心を高めたり、社内稟議を通すときの説得力を高められる
比較表タイプ
- 特徴:自社と同ジャンルの他社商材を比較したもの
- メリット:比較している時点で自社商材に興味を持っていることが多く、商談化に進みやすい
運用型広告を活用して、リードを創出する3つのSTEP
最後にホワイトペーパーを活用し、広告運用でリードを創出するための手順について説明がありました。
STEP①:Metaで勝ちクリエイティブを見つける
「どの媒体から広告をはじめればいいかわからない」という方にはMeta広告のリード獲得広告がおススメです。実名・実年齢で登録するためターゲティング精度が高く、クリエイティブさえしっかり作れば成果がでやすい媒体のためです
アナグラム二平
「リード獲得広告」は外部サイトに遷移せず、Meta内のフォームを入力するだけで完結します。入力がカンタンなので、CVRが高くCPAが下がるケースが多いようです。
実施するメニューが決まったら、複数のクリエイティブを試してみましょう。
テキスト中心クリエイティブ、文字×カルーセル、書籍風クリエイティブ、資料チラ見せクリエイティブを同時配信して、成果がでやすい勝ちクリエイティブを見つけましょう。
STEP②Meta広告の勝ちクリエイティブを他媒体で展開
勝ちクリエイティブを他媒体に横展開していく際、媒体を選定する重要な基準として「1.ターゲットユーザー数」「2.BtoBターゲティング」「3.クリエイティブ情報量」が挙げられた。
1.ターゲット数
ターゲットユーザーが媒体上に一定数存在するか?を確認することが重要です。例えばWEBマーケターのリードを増やすため、X広告を検討しているとします。WEBマーケターはX広告で情報収集することが多いため、一定数のターゲットが存在すると言えそうです。一方でM&Aで事業売却したい年齢層高めのユーザーの場合どうでしょう?ターゲット数が減りそうなので、他媒体のほうが良さそうです
2.BtoBターゲティング
BtoB商材はBtoC商材に比べてターゲットが少なくなることが多いため、媒体のターゲティング機能をうまく活用できないと成果につながらないことがあります。活用できそうなBtoBターゲティングがあるか事前に確認しておきましょう
(例)
LinkedIn広告・・・会社情報、学歴、職経験、興味、デモグラフィック
Google 広告・・・業種・社員数、検索語句を活用したターゲティング
3.情報量
BtoBの商材は理解が難しい商材が多いため、情報をしっかり伝えないとコンバージョンに至らないことも多いです。クリエイティブの情報量が多い媒体も、BtoB広告配信で成果を出しやすい媒体といえそうです
STEP③SFA、MAを活用し成果を可視化
媒体を増やしてリード獲得数が増えてくると、どの媒体が商談に繋がっているかなど、リード管理の難易度が高くなります。そこで、商談や売上に繋がったチャネルを可視化できるMAツールやSFA/CRMツールを活用することが重要になってきます。
そこで二平さんは、ツール上でのリード管理をイメージできるよう、顧客接点の情報を1つに集約するカスタマープラットフォーム「HubSpot」と広告媒体との連携を例に取り上げました。このように商談を創出したチャネルを可視化することで、分析を行い、施策改善に繋げることができそうです
インハウスマーケティング組織をどうやって構築する?
インハウスでマーケティングのチームなどを用意するケースも増えています。その中で耳にすることが多いのが採用に関する悩みです。
「勝てるインハウスマーケチームの構築方法」というテーマで「Expert Partners Marketing」の小畑さんに採用からパートナー活用までご説明いただきました。
採用における、よくある失敗例
セミナーではまず、採用でのよくある失敗例が紹介されました。
前半のホワイトペーパーの活用においても、社内の企画体制や営業体制が重要です。ただし小畑さんいわくそもそも人材が採用できず困っていたり、誤った採用によりミスマッチが起きている企業が多いようです。まずは採用における、よくある失敗例からご説明いただきました。
失敗例①:多岐に渡るマーケティング業務をひとりで賄おうとする
マーケティング業務を、一人の人材でカバーできる正社員を採用することでマーケティングの広い業務を任せようとする企業が多いとのことですが、そのハードルは高いと小畑さんはおっしゃいます。
マーケティングは製品企画・プレスリリース企画・広告運用・タイアップ立案と業務範囲が広く、それぞれ専門的なスキルが必要です。これらの業務を一人でこなせる人材は少ないですし、採用がうまくいっても特定の領域でスキルが不足している可能性もあります。一人のマーケターを採用できればリード獲得が続くという考え方は現実的ではないです
Digital Arrow Partners 小畑さん
例としてホワイトペーパーの業務を考えてみると、まずはコンテンツの企画を考える必要があります。企画ができたあとは実際に広告運用をしていく必要がありますし、Meta・X・LinkedInのように複数の媒体を運用する必要があるかもしれません。コンテンツ企画から複数媒体運用まで、業務範囲が多岐にわたるため、一人でカバーしようとするのではなく、業務を分割して複数人での対応を検討するのもひとつです。
失敗例②:自社の業務を外注先に任せきりにする
広告代理店に依頼をすれば、上記のような課題は解決できるかもしれません。ただし広告費に加えて外注の手数料がかかりますし、広告代理店に対してディレクションを行う時間も手間もかかります。また、広告代理店に任せきりだと自社にナレッジが貯まらなかったり、社員のスキルを習得する機会が減るリスクもありそうです。
フリーランスの活用が、成果をあげる一つの勝ち筋
正社員を採用してもマーケティング業務を一人でカバーするのは難しかったり、外注先に任せきりにするのもリスクが高いことを学びました。そのような中で「フリーランスを活用すること」でマーケティングの専門知識やスキルを補完することができると小畑さんは言います。
自社ではやりきれていない領域や不得意領域のみ外注することで、足りない要素を埋めることが重要です。正社員とは異なり、フェーズに合ったスキルと経験をもつマーケターをピンポイントで起用できるため、コストを最小限に抑えつつ高い成果を期待できます
Digital Arrow Partners 小畑さん
ホワイトペーパーの業務ついても「コンテンツの企画~広告運用まで一気通貫で対応できる人材」だと採用ハードルが高そうですが、コンテンツのみ社内で企画し、SNSの広告運用やホワイトペーパーのデザイン・制作はフリーランスに外注することで業務を細分化すれば、業務を遂行できるイメージができそうです。
まずは要件定義からはじめよう
さきほどのような失敗を減らすには、「要件定義」をしておくことが重要だと小畑さんは言います。
どのKPIをどれくらいまであげる人材が必要か?どれくらいの年収レンジで採用したいか?
どれくらいの期間(数ヶ月~数年単位)で達成する必要があるのか?正社員、代理店、フリーランスどちらが適しているか?マーケティングのKPIと同様、採用においてもこれらを定義したうえで採用に臨みましょう
Digital Arrow Partners 小畑さん
失敗例①でもあったとおりマーケターの業務は幅広く、専門性が必要です。全ての分野をカバーできる人材を見つけるのは難しいですし、各領域毎に正社員を採用するのも販管費がかかり現実的ではありません。
だからこそ要件定義を行い、どのような人を採用すればよいか可視化しておくことが重要です。要件定義ができていれば、どの領域を正社員でカバーし、どの領域まではフリーランスに委託するかも決めやすくなりそうです。
また、面接時にこれらについて候補者に伝えることで、候補者自身も自分がその役割に適しているかどうか判断しやすくなります。これにより、採用後のミスマッチを減らすことができるでしょう。
メンバーを戦力化するために必要な要素とは?
一方で、フリーランスや業務委託の場合、会社のカルチャーを十分に理解してもらえないのでは?と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
小畑さんによれば、次の2点を実施することでそのような問題を回避できるようです。
外部の人として扱わないのが大切
自社の情報はなるべくすべて共有しましょう。社内における前提条件やお客さまの情報がないとマーケティングの成果に結び付けることができませんし、チームの仲間としていかに引き込むことができるかが重要です。人事情報やセンシティブな内容以外、なるべく情報を共有しましょう。
Digital Arrow Partners 小畑さん
(共有しておきたいデータ一覧)
- 社内ルール一覧、社内用語集
- 営業資料
- 案件進捗のスプレッドシート
- お客さま情報(インタビュー情報など)
- 競合の情報
- 研修資料
- セミナー資料
- 案件の受注、失注理由
- 過去の成功事例、失敗事例の施策
情報を共有したくないということではなく、単純に気が回っていないことはよくありますよね。外注先に共有できていないものがあれば、先回りしての情報共有を検討してみるのはいかがでしょうか?
組織の暗黙知や社内事情も踏まえたフィードバックを
2つ目として、できるだけ細やかなフィードバックを行うことが重要だと小畑さんは言います。
経験豊富なマーケターほど、その人なりの成功法や型があります。余すことなく使っていきたいところですが、「ちょっと違うな」や「自社のサービスには合わないかも」というケースもあるかと思います。これらの認識を合わせるため、施策を実施したあとは必ずフィードバックを行いましょう。
Digital Arrow Partners 小畑さん
施策単独の良し悪しだけではなく、今までの経験則を踏まえたうえで施策がうまくいった理由や、相性が合わなかった理由など、組織の暗黙知になっている部分までフィードバックできるのが理想的だそうです。社内の事情まで共有してもらえたことで、チームの一員として更に成果をだしたいというモチベーションにもつながりそうですね。
まとめ
Metaでホワイトペーパーを活用した広告や投稿を見かけることが増えました。しかしながら、表面的に同様な施策を行っても必ずしも成果は出ないでしょう。広告主の見込み顧客に必要な情報であったり、ダウンロード後の体制が整えられていなかったりすると成果につながるどころか、ただ手間や時間だけかかってしまう可能性がありますよね。
今回のセミナーを通して、ホワイトペーパーに取り組む「前」に、目的や役割を明確にし、ダウンロード後も踏まえた計画を立てることの重要さをよく理解できました。
また、採用はどの企業も課題を感じているトピックです。組織の考え方や体制にもよりますが、業務の分解を考えたり、外部の人材を活かしたりと、やり方次第で可能性が広がるというのも新たな発見です。
施策にしても採用にしても、組織の文化や考え方が色濃く出てくるため、まずはその会社の理解を深めるのが大切ではないでしょうか。
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