
TikTokの国内市場は急成長を遂げており、いまやTikTok広告は広告ポートフォリオにおいて主要なものになりつつあります。
しかしながら、TikTokはまだまだ新しいプラットフォームがゆえに売り上げにつなげるためにはどのようなポイントを抑えればよいのか分からない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回、「売り上げにつながる、TikTokを活用した認知施策と広告運用の手法」と題し、TikTokを活用したプロモーションのエキスパートであるNateeさまとセミナーを開催しました。
このレポートでは、セミナーの中でも特に重要だと思った、ショートムービー市場動向と今すぐTikTokを始めるべき理由、TikTok広告を売上につなげるためのポイントを紹介します。
ウェビナー概要
「売り上げにつながる、TikTok広告を活用した認知施策と広告運用の手法」
開催日時:2024年5月8日(水)14:00-15:00
主催:株式会社Nateeさま、アナグラム株式会社

株式会社Natee
取締役CRO 朝戸 太將 氏
東京大学を卒業後、リクルートキャリアを経てNateeに創業メンバーとしてジョイン。創業期よりTikTok事業の統括を務め、広告主の認知や購買促進など多様なニーズに対してTikTokを軸としたソリューションを提供し続けてきた。2020年末には「TikTok For Business Award」でブロンズ賞を受賞するなど、Nateeの成長をけん引している。2023年2月に初の著書「TikTok活用大全」を幻冬舎より出版。

アナグラム株式会社
運用型広告事業部 リーダー 仙座 樹
学生起業し、主に広告運用・SNS広告運用を経験した後に、アナグラムにジョイン。金融、保険、不動産、自動車、美容系商材などBtoC、BtoB問わず幅広い業種の広告運用を経験。広告運用に限らない事業理解まで踏まえた視野の広い支援を得意とする。


目次
盛り上がりを見せるショートムービー市場
まずは、朝戸さんのクイズから始まりました。
Q 日本一のYouTuberは誰でしょう?
ヒカキンさんをはじめとする、いわゆるトップYouTuberと呼ばれる人を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は違うんです。
2024年の日本のYouTuber登録者数1位~6位(2024年1月時点)は全員、TikTokなどのショートムービーを入り口にYouTubeに進出した方々だと、朝戸さんは話します。
加えてYouTubeショートで再生回数を伸ばしている人たちがYouTubeの再生回数ランキングの上位に入ることが増えてきていることにも触れ、ショートムービー市場が盛り上がりを見せていることを改めて認識してほしいと、仰っていました。
ショートムービーをきっかけにYouTubeに進出し、トップYouTuberになっているなんて知らなかったという方も多いのではないでしょうか。
続いて、TikTokの市場についてお話がありました。
急成長を遂げるTikTok。グローバルMAUは史上最速で10億人突破!
盛り上がりを見せるショートムービー市場のなかでも、最も勢いがあると言っても過言ではないプラットフォームがTikTokです。
Natee 朝戸さん
TikTokの国内MAUは2,600万人と、いまやFacebookに並び、視聴時間もYouTubeほどではないものの、今にも追いつく勢いで利用者のエンゲージメントが高まっています。
なぜこんなにもTikTok市場は盛り上がっているのでしょうか?
急速に市場を拡大するTikTokの勢いに乗るためには、プラットフォームの特徴を理解しておく必要がありそうですね。
朝戸さんから、TikTokの特徴について説明がありました。
TikTokの3つの特徴と今すぐTikTokを始めるべき理由とは?
TikTokは、TwitterやFacebookをはじめとするこれまでのプラットフォームと違い、次のような特徴があると朝戸さんは仰います。
- すべてのコンテンツがフェアに配信される
- フォロワー数に関係なく拡散される
- 認知だけではなく興味・関心、購入まで、ファネルを超えていく力がある
すべてのコンテンツがフェアに配信される
TikTokは、すべての動画が等しく流れる仕組みになっています。
Natee 朝戸さん
どんなコンテンツであろうと、面白く楽しめるものであれば視聴され、つまらないものであればスワイプされる。TikTokはすべてのコンテンツがフェアなところが特徴です。
つまり、自分が見たいコンテンツのみを見ることができるという点で、これまでのプラットフォームとは大きな違いがあります。
TikTokでは様々なジャンルの動画が流れてきますが、確かに興味がある動画はついつい手を止めてしまいますよね。
フォロワー数に関係なく拡散される
また、TikTokはフォロワーやファンというくくりに関係なく拡散されるという特徴があると、朝戸さんは話します。
witterやFacebookなどのこれまでのプラットフォームは、フォロワーや特定のユーザーなど、顕在化されたターゲットに対してコンテンツを届けるのが主流でしたが、TikTokをはじめとするショートムービーはAIを活用したレコメンド機能で、コンテンツに関心がありそうな層に情報が届くようになっています。
Natee 朝戸さん
TikTokはまだあなたが出会っていない新しい好きに出会えるプラットフォームと位置づけしているように、次に好きなもの(※)といった、潜在的に好きなものが流れてくるため、極論を言えばファンやフォロワーが0でも、コンテンツ次第で100万再生、10万再生が可能なことに大きなポテンシャルがあると言えます。
※2020年に放映された、TikTokのCMコンセプトのフレーズです
参考:新アンバサダーは成田凌&小日向文世!雷が落ちて2人が入れ替わる⁈TikTok新CM『meet your X』公開
100万回再生やいいね数が1万以上ついている、いわゆるバズ動画のアカウントのフォロワー数を見てみると、意外と少ないことはよくあります。
TikTokではフォロワー数が必ずしも重要ではないという点が、他のSNSと大きく異なるのではないでしょうか。
認知だけではなく興味・関心、購入まで。ファネルを超えていく力がある
続いて、ショートムービーがもたらす影響力についてお話がありました。
TikTokなどのショートムービーは、時間当たりの情報量が圧倒的なため、商品の認知を高めるだけでなく、さらには興味・関心を引きつける、ファネルを超えていく力があります。
Natee 朝戸さん
もちろん、すべての動画が購買につながるわけではありませんが、ショートムービーには人を動かす力があります。
ファネルを超えていく力があるからこそ、話題になりやすく、売上にもつながるというのがTikTokの特徴です。
筆者も、TikTokで初めて見た商品なのに、なぜか魅力を感じて買ってしまったという経験があります。
また、セミナーではクリエイターを起用したTikTokライクな動画で認知から獲得まで一気通貫で成果を出した事例も紹介いただきました。クリエイターを活用すると、表現できる幅も広がりそうですね。
ショートムービーをハックするための大原則
さて、ショートムービーの特徴が一通りわかったら、次は、ショートムービーをどのように制作していけば良いのかが、気になるポイントではないでしょうか。
そこで、実際にNeteeが動画を分析する際に利用している「ショートムービーをハックするための大原則」を朝戸さんから紹介していただきました。
最も重要な要素は、「冒頭の興味喚起」です。
動画はスキップされるとそこで終わってしまうので、スキップされないための工夫として、商品の登場のさせ方や投稿の時刻などはぜひ押さえていただきたいポイントになります。
Natee 朝戸さん
TikTokは特に、冒頭だけを見て、見続けるかスキップするか判断しがちですよね。
また、商品をどのように登場させるのか、いつ投稿するのかなどもショートムービーの制作において重要なポイントだと、改めて認識することができました。
TikTokの認知施策を売り上げにつなげるためには?
ここからは、TikTokの認知施策を売り上げにつなげるためのポイントを、朝戸さんに解説いただきました。
動画に広告を載せる
ショートムービーを活用して商品の売り上げアップを目指す際に、広告を作ろうという発想をするよりも重要なことがあります。
Natee 朝戸さん
それは、「動画に広告を載せる」という発想です。
TikTokは、コンテンツが命です。企業の動画であれ、一般の方の動画であれ、視聴者に受け入れられるかどうかは、コンテンツが面白いかどうかに左右されます。
広告として何かを売り込みたいという発想よりは、TikTokというプラットフォームに合う動画に広告の要素を載せるという順番で考えていくことが、TikTokでは非常に重要だと朝戸さんは話します。
確かに、TikTokの雰囲気に合わない動画は、すぐにスキップされてしまいそうです。「動画に広告を載せる」という発想を持って、動画クリエイティブの制作に取り組みたいですね。
評価指標を決めて運用をする
ショートムービーの効果に再現性を持たすには、TikTokなどのショートムービーのプラットフォーム上でどのようなクリエイティブが受け入れられるのか、どんなクリエイターを活用するのが適切なのかといった評価指標を設定し、運用し続けることが大切だと朝戸さんは仰います。
ショートムービーに限らず、配信結果を踏まえ、どこを修正すればより成果が出るのか評価指標をもとに何度も施策を考え、実行していくことが成果を出し続けるためには重要です。
縦型動画を配信するメリットは一石二鳥以上!
ここからは、アナグラムの仙座のパートになります。はじめに、縦型動画を配信するメリットについて紹介がありました。
縦型動画は始めるだけで、一石二鳥…三鳥、四鳥、五鳥くらいのメリットがあります…!
アナグラム 仙座
縦長動画はいまや複数の広告媒体で配信可能です。例えばTikTok広告の縦型動画から始めて、当たりクリエイティブを見つけたとします。そのクリエイティブを他の広告媒体に展開するのも良し、1:1の動画にリサイズすればさらに配信面を広げることができ、結果として獲得数の増加を期待できます。
一方で、縦長動画を配信するリスクについても触れていました。
縦長動画の良いところは、誰でも簡単にスマホで撮影から編集まで行えるところです。外注したとしても、撮影から編集まで1本1万円から制作が可能なため、リスクは低いです。リスクよりも見込めるメリットの方が大きいため、ぜひ縦長動画には注力していただきたいですと、仙座さんは話します。
また、静止画よりも動画の方がリードの商談化率が高いというお話も興味深かったです。
動画の方が伝えられる情報量が圧倒的に多いため、広告と実際の商品とのギャップが生まれにくく、BtoBにおいて、静止画よりも動画で集めたリードの方が商談化率が高い結果になったことがあります。
アナグラム 仙座
UGC風やVlog風などのタイムラインになじむ動画であれば、スマホだけでも十分な撮影が可能です。外注したとしても、そこまで高い制作費にならないのであればリスクは低く、最終的な成果も見込める可能性があるのならば縦長動画を今すぐはじめない手はないですね。
TikTok広告を売上につなげるために押さえたい4つのポイント
TikTok広告を売り上げにつなげるためのポイントを分解すると、下記の3つに分けることができると言います。
- ステップ1:クリエイティブを見て商品に興味を持ってもらう
- ステップ2:クリエイティブを見てクリックしてもらう
- ステップ3:LPで商品を買いたいと思ってもらう
今回はステップ1とステップ2に焦点を当てて解説がありました。
冒頭3秒で視聴動機と購入動機を両立させる
Nateeの朝戸さんと同様、仙座さんも動画の冒頭が大事だと話します。しかし、興味を引くだけではダメで、売り上げにつなげるためには同時にセールスの起点となる購入動機を入れることが重要だと言います。
例えば、冒頭で教材(商品)が入った箱の映像に「これが届いてから息子がめっちゃ楽しく勉強するようになった」というテキストを載せる、などです。箱の中身が気になるという視聴動機を映像で、購入動機となる便益(子供が勉強するようになる)をテキストで伝えることで、便益に興味を持ってもらったうえでセールスができるため、購入確度が高くなると仙座さんは話します。
冒頭の引きが強いだけではなく、さらにその商品に関連した便益をしっかりと伝えて興味を持ってもらうことが、売上につなげるためには重要なんですね。
動画に商品の便益とオファーを盛り込む
サービスがもたらすメリットとメリットがもたらされる理由、メリットを享受することでどんな希望や理想があるのかを想像させ、お得感や限定感を打ち出したオファーで後押しすることで、LPへの遷移が期待できます。
アナグラム 仙座
これは、動画を構成するうえで基本的な要素だと言えます。動画を制作する際は、しっかり押さえておきたいポイントですね。
続いて、ステップ2の広告をクリックしてもらうためのポイントの紹介です。
誘導アクションは手動で選択する
誘導アクションは手動での設定がおすすめだと、仙座さんは言います。
誘導アクションとは、CTA(Call To Action)のことで、TikTok広告ではCTAのテキストを次の2種類からから選べます。
- ダイナミック:ユーザーごとに最も関連性の高いと思われるCTAのテキストを自動で表示
- 標準:CTAのテキストを手動で選択
デフォルト設定では「ダイナミック」が選択されていますが、おすすめは「手動」です。理由は、意図していないCTAが自動的に表示される可能性があるからです。
例えば、店舗を持たない商材にも関わらず、「近くの店舗を見る」が表示されてしまう事態も起こりえます。誘導アクションは「標準」を選び、商材に適した誘導アクションを選ぶのが重要だと仙座さんは話します。
確かに、商材と関係ないCTAはクリックするのをためらってしまいそうです。クリックしたとしても、想定と異なる遷移先だったらがっかりしてしまいますよね。誘導アクションは、ユーザーに起こしてほしいアクションを選ぶことが不可欠ですね。
ディスプレイカードでサイトへの誘導を促進させる
最後に、これだけは押さえてほしいポイントとして、「ディスプレイカード」が紹介されました。
TikTok for Businessが公開している資料「TikTokインタラクティブアドオン“ディスプレイカード” Playbook」では、ディスプレイカードを用いることでクリック数が増加、コンバージョン率が向上し、平均獲得単価が下がったというデータも公開されています。
実際に弊社でも、ディスプレイカードを使ったクーポン訴求により、コンバージョン率と獲得単価が改善したという実績があります。広告配信の目的が売上で、まだディスプレイカードを使ったことがない場合は、一度試してみてはいかがでしょうか。
編集後記
なんとなく動画の冒頭が大事ということはわかっていても、視聴動機だけで購入動機を入れることまで意識できていなかった方も多いのではないでしょうか。
テキストやディスプレイカードを活用すれば、たった冒頭3秒でも視聴動機と購入動機を同時に喚起させることが可能なのは驚きでした。
また、TikTokは「動画に広告を載せる」という発想が重要というのも納得です。TikTokでは動画が面白いかどうかで視聴者から受け入れられるかが決まります。TikTokの雰囲気に合った動画に広告要素を取り入れるという順番で考えることを心がけたいですね。
今後のセミナー開催情報はこちら