BtoB企業で運用型広告を担当している方は、他業務と兼任していたり、代理店に委託していたり、あるいは独学で進めてきたものの知識に自信がなかったり、最適なBtoBの広告運用ができているのか不安に思う方は少なくないのではないだろうか。
今回、HubSpot Japan社、インプレス社、弊社の3社共同の主催で、「事例で学ぶBtoB広告運用実践 成果につながる最適な広告運用の戦略立案と実践のポイント」と題したオンラインイベントを開催。
セミナーでは押さえておくべき基本のセオリーだけではなく、事例やケーススタディを用いて、商材に合わせた最適な広告運用に焦点を当て、戦略立案とその実践ポイントについて詳しく解説された。
BtoB企業で広告運用に関する何らかの課題をお持ちの方にとって、自社の取り組みを成功に導くヒントが詰まったセミナー内容をレポートしていく。
イベント概要
- 4/17(水)【事例で学ぶBtoB広告運用実践】成果につながる最適な広告運用の戦略立案と実践のポイント | HubSpot
- 開催日時:2024年4月17日(水)11:00〜12:00
- 場所:Zoomでのオンライン配信
- 主催:HubSpot Japan株式会社さま、株式会社インプレスさま、アナグラム株式会社
アナグラム株式会社
運用型広告事業部 マネージャー
二平 燎平(にへい・りょうへい)
アナグラム社マネージャー。BtoB中心に数十社以上の広告運用を経験。前職での中小企業向けERPのセールスやCS、マーケティングなどTheModelの全工程に従事した経験と運用型広告の知見を合わせた売上を伸ばすBtoBマーケティングコンサルティングに定評があり、アナグラムでは主にBtoB向けの支援や情報発信を担当。
2024年3月に新刊「BtoBマーケティング“打ち手”大全 広告運用で受注を勝ち取る 最強の戦略 88 (できるMarketing Bible)」を出版。
目次
成果を出すために押さえておきたいポイントとは?
今回のセミナーでは、前半パートでBtoB広告運用に重要なポイントを説明し、後半パートは実践編として、事例を基に、前半パートで説明した観点から考察を行う流れとなっている。まずは、BtoB広告運用において成果を出すために押さえておきたいポイントの解説から本題がはじまった。
業務内容とその課題を理解しているか
セミナーは、顧客解像度を上げることの重要性の説明からはじまった。業界問わず、広告運用に携わる方であれば、顧客理解について一度は考えたことがあるのではないだろうか。
「特にBtoBはそれが顕著であると思っている。なぜかと言うと、BtoBの商材は業務を改善する商材を扱うことが多いため、まずはその業務内容や、業務の中で起きている課題を理解しなければ正しいコミュニケーションやアイディアは生まれてこないからである」(二平)
例えば、経理業務では「消込」という業務がある。入出金情報と売掛金情報を突き合わせて、金額が一致していれば、会計帳簿から消す作業を意味している。しかし、この業務自体を知らなければ、「消込」に関連する訴求文や、「消込」に関連するキーワードに配信を行うといったアイディアを思いつくことはできないだろう。
BtoBの商材は、その業務プロセスの中のシステムや、業務そのものを改善するものが多いため、業務内容やその課題についての理解が重要になってくるというわけである。
では、BtoBの領域において、顧客解像度を高めるにはどうすればいいのか。
推奨しているのは、営業担当者にインタビューを行う、または、N1インタビューとして顧客であるエンドユーザーの声を聴くという方法だ。そして、インタビューを通じて、自社でしか訴求できない独自性のある部分、いわゆるバリュープロポジションを見つけていくことを意識して行うことが重要であるという。
顧客本人、またはBtoBだからこそできる、顧客解像度が高い営業担当者に直接話を聞くということが顧客理解への近道であり、この顧客理解へのプロセスを丁寧に行っていくことが成果に繋がる広告運用の第一歩なのだろう。
BtoB広告運用における商材タイプの見分け方
次に「商材タイプを正しく理解しないと適切な施策の優先順位をつけることができなくなる」と自社の商材タイプを把握する重要性が唱えられた。
自社の商材の特徴は社内の人間であれば知っていることがほとんどだが、広告運用における商材タイプとは一体どのようなものなのか。
商材タイプを理解するために、「カテゴリーキーワードの検索数×ターゲット数」のセグメンテーションを活用しているという。
カテゴリーキーワードの検索数というのは、商材を検索する際に入力するであろうメインのキーワードの検索数を示している。例えば、会計ソフトのSaaSを提供している企業であれば、「会計ソフト」といったキーワードの検索数が当てはまる。目安として月間数千以上の検索数があると多いという象限に分類できるという。
ターゲット数というのは、その商材を購入する可能性がある顧客のボリュームを意味する。業界に特化しているか否か、対象とする企業規模といった要素で、ターゲット数のボリュームが決まってくる。
この2軸を掛け合わせてできる4つのセグメントのうち、どのセグメントに当てはまるかで商材タイプを見分けることができるということだ。また、各タイプごとに取り組むべき施策の優先順位が変わってくるので、取り組むべき広告媒体も変わってくるのである。
BtoBにおける広告媒体の選定基準とは
では、なぜ商材タイプによって優先する施策が変わり、選択すべき広告媒体も異なるのだろうか。
それは媒体ごとの特性によって、その商材に合う・合わないが起きてしまうからである。例えば、Meta広告は、検索していない順顕在、潜在層にアプローチができるため、カテゴリーキーワードの検索数が少ない商材にマッチしやすいと言われている。このように、各媒体の特性を知って、BtoB広告配信に適した媒体を選択することが重要となってくる。
そこで、BtoB広告配信において媒体を選定する際の重要な基準として「ターゲティング精度」と「クリエイティブ情報量」が挙げられた。
BtoBの商材は、BtoC商材に比べて顧客層が少なくなることが多いため、ターゲティングをしっかり行わないと成果に繋がらないこともある。だからこそ、ターゲティング精度の高い媒体はBtoB広告配信との相性が良いといえる。
また、BtoBの商材は理解が難しい商材が多いため、情報をしっかり伝えないとコンバージョンに至らないことも多い。そのため、クリエイティブの情報量が多い媒体もBtoB広告配信で成果を出しやすい媒体といえるということだ。
そして、媒体のポテンシャルを示すリーチ数も加味した、広告媒体の優先度の一覧表は下記の通りである。
検索広告やMeta広告など多くの企業で配信しているであろう媒体だけではなく、BtoB広告運用でも多様な媒体を活用できるということが示されている。
BtoB広告配信の成果は、媒体選定を含めた配信前の準備の段階で決まっているのかもしれない。
事業フェーズに合わせたCVポイントの設計方法
前半パートの最後に、BtoBにおけるCV(コンバージョン)ポイントの設計方法について解説が行われた。
BtoB商材はBtoC商材と比べ、選定・導入に時間がかかるため、複数のCVポイントを設計することで受注までのフローを段階的に踏んでいくことができ、リードのステータス管理に活用ができる。
また、受注に近いCVポイントほど獲得ハードルが高くなるので、複数のポイントを設定することでハードルを下げることができ、結果としてコンバージョン数が増加することが多い。
だからこそBtoB広告運用では、どのようなCVポイントを設定するかで成果に違いが出るということだ。
ただ、CVポイントは出来る限り設計すればいいわけではない。「リードを数多く獲得できても、その後に適切な対応ができなければ意味がない」という。
そこで、重要になってくるのが、事業のフェーズに合わせたCVポイントの設計である。
例えば、事業の立ち上げ時期は、インサイドセールスなどセールスのリソースが潤沢にないことがほとんどだ。その時期に、むやみやたらにCVポイントを増やして、受注確度の低いリードを集めても、上手く対応しきれないといった事態が起きてしまう。そういった場合は、より受注確度の高い、サービス資料や価格表のダウンロードといったCVポイントを設計することで、自社のリソースにあった適切な対応ができ、リードを受注にしっかりと繋げることができるのである。
このように自社の事業フェーズを考慮して、最適なCVポイントを設計することで、最終的な受注数を増加させることが可能となる。現在設定しているCVポイントが自社の事業フェーズ・営業リソースに適しているかを今一度考えたい。
ケーススタディ:ホリゾンタル型SaaSが業界特化しリード獲得を狙う
セミナーも後半パートに差し掛かり、前半パートで学んだポイントを用いて、事例からどのように広告運用のアプローチを行うかを参加者と一緒に考察していく時間が設けられた。
取り上げられたケースは、幅広い業界で活用できるバックオフィス系のSaaSを販売する企業が、建設業界に特化して広告配信する場合である。この場合は、どのようなアプローチが成果に繋がるかを考えていく。
目的に合った広告媒体を選ぶ
まず参加者に問いかけられたのは「どのような配信媒体に選定するか」である。
先ほどの前半パートのBtoBにおける媒体選定の基準で学んだ観点を生かすと、今回重視したいのは「ターゲティング精度」だと考えられる。建設業界の関係者に絞って配信できるターゲティング精度が高い媒体を選定したい。
建設業など業界に絞ってターゲティングできる媒体として、Google広告のデマンド ジェネレーション キャンペーンやYouTube広告、Yahoo!広告、LinkedIn広告、Meta広告などが挙げられたが、その中からターゲティング精度が高いMeta広告からはじめることが推奨された。
このように前半パートで「ターゲティング精度」の選定基準を学んだことで、ケーススタディで生かすことができた。
ターゲティングに合わせたCVポイントの設計
次の問いは、「コンバージョンポイントをどのように設計するか」である。
順調に契約数も伸びているフェーズということなので、前半パートで学んだように、複数のCVポイントを設計し、リード獲得数を増やすのが良いのではと考えられる。
では、具体的にどんなCVポイントを設計すればいいだろうか。
「今回のケースだと、建設業界に絞って配信を行うが、そのようにユーザー属性で絞るターゲティングを属性ターゲティングと呼ぶ」という説明がはじめられた。
属性ターゲティングの対となるのが、行動ターゲティングである。行動ターゲティングは、ユーザーのWeb上の行動履歴情報を利用してターゲティングを行う手法のことである。
属性ターゲティングは、行動ターゲティングと比較し、行動に移していない潜在層であるユーザーをターゲティングするので、コンバージョン率が下がってしまうということが多いという。
そのため、潜在層のユーザーにも興味を持ってもらえるようなお役立ち資料(ホワイトペーパー)などの活用が、業界に特化して広告配信する場合は好ましいと述べられた。
リード獲得後の数字を追いかける重要性
最後に、CPAだけではなく、商談率や受注率などリード獲得後の数字を追っていくことの重要性が説かれた。著書「BtoBマーケティング“打ち手”大全 広告運用で受注を勝ち取る 最強の戦略 88 (できるMarketing Bible)」でも下記のように述べられている。
「BtoBマーケティングはリードを獲得して終わりではありません。リードを営業担当にパスして商談につなげ、受注を実現し、カスタマーサクセスに尽力して顧客との良好な関係を構築できなければ、本当の意味での『成果』とはいえないでしょう。」
CVポイントを増やしてリード獲得数が増えてくると、結局どの媒体が商談に繋がっているかなど、リード管理の難易度が高くなる。そこで、商談や売上に繋がったチャネルを可視化できるMAツールやSFA/CRMツールを活用することが重要になってくる。
そこで二平氏は、ツール上でのリード管理をイメージできるよう、顧客接点の情報を1つに集約するカスタマープラットフォーム「HubSpot」と広告媒体との連携を例に取り上げた。このように商談を創出したチャネルを可視化することで、分析を行い、施策改善に繋げることができる。
(HubSpotのデモ画面より引用)
目先のCPAだけを追っている広告運用では、BtoB広告運用の本当の「成果」は出すことはできないのかもしれない。
編集後記
広告運用のセオリーやノウハウを知っていても、実際の現場で活かしきれていないというお悩みを抱える広告運用担当者は少なくないのではないかと思う。
今回のセミナーは前半パートでBtoB広告配信において重要なポイントを学び、後半パートでそれらのポイントの観点からケーススタディを学んだことで、学んだセオリーをどのように応用していくかという活用方法や思考法も同時に学べたのではないだろうか。
BtoB商材の広告運用は、BtoC商材と比較して複雑性が高いのではないかと思っていたが、BtoB商材に適した広告運用方法を学び、実践することで成果に繋げることができるのだと、今回のセミナーを通じて感じることができた。
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