ターゲティング論基礎

ターゲティング論基礎
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リスティング広告がここまで成長してきた理由の一つは多彩で柔軟なターゲティング機能があったからだと考えております。良くも悪くも、狙ったユーザーだけに広告を配信することができる。それ故にリスティング広告は費用対効果が高い(正確には費用対効果を制御できる)のです。ではターゲティングとはどういうものでどうすべきなのか、筆者の考えを述べたいと思います。


すべては“人”で考える。

狙ったユーザーだけに広告を配信する。では、"狙ったユーザー"というのはいったいどういう"人"なのでしょうか?まずはここをしっかり考えていくことが各ターゲティング機能を使いこなすための第一歩です。

最初に"人"を考えずに、商品・サービスを起点にすぐターゲティングを考えてしまう、そうしたことがいろんな現場で起こっているような気がします。"人"がしっかり見えてないのに、いったい誰をターゲティングするのでしょうか?この"人"をよく考えずにターゲティングを考えちゃうパターンは、リスティング広告という"道具"を使うことが目的になっている状態に近く、成功の打率も低いです。

その商品・サービスがどういった人の悩みを解決することができるのか。どんな人がお金を払ってまで利用してくれそうか。そこをまずは考えましょう。すべてはそこからスタートです。(※ランディングページをまじまじと見て"人"が思いつかない時は、おそらくそのままでは利用する"人"もほぼいないとも考えられます。その場合は購入のハードルを下げたり、コピーをより納得性のあるものに変えたり、はたまた商品自体を抜本的に変えたりして、これなら利用してくれる人がいるはずだ、という状態にしておくことも大事です。)

ターゲティングとは切り取ること

狙ったユーザーだけに広告を配信する。狙うべき"人"を仮定することができたら、次にリスティング広告のどのターゲティング機能を使えばしっかりその"人"をターゲティングできるのかを考えます。

  • 検索連動型広告で◯◯というキーワードが良さそうだ
  • Googleディスプレイネットワーク、(以下GDN)のコンテンツターゲットで◯◯を設定すればしっかりターゲティングできそうだ

そんな風に。

このターゲティングするという行為。筆者はあるイメージを持って取り組んでいます。まずは以下のツイートをご覧ください。

筆者はリスティング広告のターゲティングも上記のイメージに近いと考えております。インターネットの世界の中からターゲティング機能を使ってどう狙うべき人を切り取っていくか、それがターゲティングだと筆者は考えます。ターゲティングとは"切り取る"ことなのです。

例をあげましょう。
ダイエット食品のリスティング広告をする場合。まずは検索連動型広告で「ダイエット」といったキーワードでターゲティングすることを考えつくかと思います。これも一つの切り取り方です。では次の場合はどうでしょう。検索連動型広告で「糖質制限」。GDNのコンテンツターゲットで「モヤシ レシピ」。Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)のサーチターゲティングで「体重計」。どうでしょう、なんだかユーザーをしっかり捉えている気がしませんか?

参考:Google アドワーズ史上、最強のプロダクト、コンテンツターゲットの仕組みと設定、考え方までのスベテ

参考:キーワードで消費者をセグメントするYDNサーチターゲティングの特徴とその設定方法

1つのアカウントでも複数のキーワードを運用しているかと思いますが、このように切り取り方は複数あるのです。また検索連動型広告にしろ、コンテンツターゲットにしろ、それぞれ得意な切り取り方があります。そのため狙いたいユーザーを切り取るためにはどのような道具(ターゲティング機能)を使うのが最適なのかを考えていくことがとても重要です。リスティング広告は決して万能ではなく、時にはFacebook広告、インターネット広告に限らず業界紙(誌)、ポスティングなどなど他の手法のほうがしっかりユーザーを捉えることができることも多いです。それぞれの道具の得意なところ・苦手なところを熟知し、そしてさまざまな切り取り方ができる、そうした運用者が良い運用者と言えるのではないでしょうか。

検算しよう

狙うべき人を考え、ターゲティングも考えた、じゃあ広告を配信してみよう。と、その前にやっておきたいことがあります。算数などで計算が間違っていないかどうか確認する際に検算というものをします。リスティング広告においても算数のように検算をすることで、広告効果が高まるものと考えております。

その検算の方法が以下の通りです。

まずターゲティグを考えるときは、"人"からどのようなターゲティングがいいか、といった順序で考えていきます。
人→ターゲティング

そうしたら今度は逆に、考えたターゲティングからどのような"人"をつかまえられるかを考えます。
ターゲティング→人

そうして狙っている"人"と"ターゲティング"の整合性の確認を行うのです。これが検算ですが、わかりづらいですね……。例をあげましょう。

中古車を販売している会社のリスティング広告をする場合。利用してくれるであろうユーザーは検索で「中古車」と検索すると考えられます。その際、検索連動型広告で「中古車」というキーワードでターゲティングします。ここで検算です。「中古車」というキーワードを検索するのは、どんな人がいるだろうか。そうすると中古車を"買う人"だけではなく"売る人"もいるはずだとわかります。こうして事前に"人"と"ターゲティング"のギャップを事前に把握することができれば、あらかじめ入札単価を抑えたり、部分一致であれば"売る"や"買い取り"のワードを除外するなどの予防線を張ったりすることができます。こうして検算を行い、しっかり適切な対策をとればそのまま配信するよりも広告効果は高くなります。

参考:検索連動型広告の効果を最大化させる除外キーワード徹底攻略

このように検算をすることで、狙うべき人とターゲティングとの乖離を見つけることができます。入札単価や除外で間に合う場合もありますが、大きくズレてしまっているような時は別のターゲティングを考えるほうがベターです。特にコンテンツターゲットの場合は、ターゲティングのほうが大きすぎる場合が多いので要注意となります。

ベン図での思考

ターゲティングを考える際にベン図を描くことは有用です。前章の検算する際も頭の中では"人"と"ターゲティング"それぞれの円をイメージし、それらがどのような関係性になっているかを考えています。このベン図でターゲティングを考える際のポイントは次の3つです。"大きさ"と"濃さ"、そして"重なり具合"です。

それぞれを説明すると以下の通りとなります。

●まずは"大きさ"。
円の大きさはすなわちボリューム(インプレッション数≒人の多さ)です。

●次に"濃さ"。
濃さとはコンバージョン率、ユーザーの購買意向の高さや、そのターゲティングの中で実際に購入するユーザーの偏在している確率になります。

●最後に"重なり具合"。
これは人の円とターゲティングの円をベン図で見た際の関係性になります。

先ほどの検算で使用した中古車販売を例に考えてみましょう。"人"が中古車を買いたい人、"ターゲティング"が「中古車」の部分一致とします。それをベン図で考えると以下の通りとなります。
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中古車というターゲティングではいろいろな検索語句(意図)が含まれるため、円の濃度は薄くなります。その分コンバージョン率も低くなるため入札単価は低めに設定したほうが良いのかな、という考えに至ると思います。またそれぞれの円は重なっているのですが"ターゲティング"の円が大きいため、"人"の円よりもはみ出ている部分があります。これは別の検索意図、例えば車を売りたい、といったニーズになります。これらは"買取"や"査定"といった除外キーワードの設定をすれば余計な配信を制御することができるかと思います。このように人とターゲティングの円の形を近づけたりより濃くしたりするなどをしてターゲティングの精度を高めていきます。

まとめ

誰に何をいくらで見せるか、これを考えていくのがリスティング広告の運用です。この重要な一つの要素である"ターゲティング"。機能などに目が行きがちですが、この"誰に"という"人"ベースで考えていくことができるかどうかが成果改善の鍵を握っているのではないでしょうか。

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