ECの広告運用で避けて通れないのが、「在庫切れ」問題です。
「在庫がないならしょうがない」と考えがちだった私ですが、最近は意外と代理店側でもやれることがあると感じるようになりました。
本記事では、現場で実際にやってみた3つの打ち手を整理して紹介します。
ECの広告運用を担当している方や、在庫制約に向き合っている代理店担当者の参考になれば幸いです。
目次
「在庫がない」を言い訳にしていた
ECブランド(以下A社)の看板商品の在庫が、底をつきました。
広告でも主力商品だったので、広告のROASも徐々に悪化。日に日に在庫切れカラーが増えていく商品ページを見ながら、次に何をすべきか考えあぐねていました。
クライアントには在庫切れによる広告成果への影響を報告しつつ、在庫要因であれば広告運用側で出来ることは限られていると思っていました。在庫という制約を運用設計の外側に置いていたのです。
「発注すれば解決」ではない
「在庫がないなら発注すればいい」と最初は単純に考えていました。ところが追加発注はすでに実施済みで、それでも生産が追いつかない。職人による手作業を含む工程があり、こだわりのものづくりを維持しながら短期間で増産できるほど、生産体制は単純ではありませんでした。
「発注すればいい」という前提は崩れ、「ただ売れる商品を売る」のではなく、「いま売るべき商品、クライアントが売りたい商品を売る」に切り替える必要が出てきました。
それでも、何から手をつければよいかわかりません。これまでECの広告運用で私は、「たくさんある商品の中で、広告の最適化をどう効かせるか」という感覚で運用していたことを痛感しました。在庫という制約条件を、運用設計の前提に入れていなかったのです。
実際にやってみた3つのこと
手探りながら、当時やってみたことを振り返ります。
①在庫数を見える化する

まず行ったのは、在庫数の可視化です。ECカートの管理画面の権限を共有いただき、重点商品の在庫を代理店側でも確認できるようにしました。
インハウス運用の場合はすでに在庫状況を把握しているケースが多いと思いますが、広告代理店に委託している場合は、代理店側が在庫状況を把握できていないことも少なくありません。重点商品については代理店とも在庫情報を共有しておくことをおすすめします。
全商品を見るのは現実的でないので、次の条件で対象を絞り込みました。
- 単価が高い商品
- 売上上位商品
- 広告投資額が大きい商品
これらを定例前に手早く確認し、クライアントと目線合わせをするようにしました。
「この人気品番、欠品カラーが増えてきたらデマンドジェネレーションで出すのをやめようか」「逆にこのカラーは在庫に余裕があるから、画像を入れ替えてみる?」といった相談が、定例で作戦会議のようにできるようになります。
「在庫がなくなった時に大慌て」という事態を防げるようになりました。
②フィードを品番単位からSKU単位に切り替える

広告フィードが品番単位の場合、品番を代表した画像が広告表示されます。それだと、一部の在庫ありカラーの配信ができず、配信から漏れてしまうことがあります。
そこで、商品フィードをSKU単位(カラー単位)で管理するように変更しました。
利用しているECカートシステムでは、1つひとつフィード用の商品画像を設定する必要があったため、人気品番だけ対応する形にしました。Shopifyなど、他のカートシステムでは品番単位からSKU単位への一括切り替えが可能なところもあります。より細かい粒度で在庫の出し分けができる設定がベストです。
特に同じ商品でもカラーやデザインによって、在庫数や人気に差が大きい場合は、品番単位にフィードを分けることで機会損失を最小限にしていけます。
③次の売上の柱を育てる

今回の件で一番痛感したのが、「人気商品に頼りすぎていた」ということです。リスクを分散させるためにも、複数の主力商品の柱を作っておくことが大事だと感じました。
どうしてもROASを合わせるために、「CVRの高い商品をもっと強化しよう」「単価の高い商品をもっと売り出そう」という方向に施策を考えがちです。それだと、その商品が在庫切れになった時のリスクがどうしてもついてきます。
A社の場合は、デマンドジェネレーションやMetaで次の柱になりそうな商品ブランドを積極的に強化することにしました。実際にやってみた配信例を2つ紹介します。
施策例1:売れ筋商品と類似した機能・デザインの商品を配信
在庫切れだった人気品番(A社の高価格帯ライン)のサイト来訪ユーザーに対して、似た機能・似た見た目の商品をリターゲティング配信でおすすめしました。
しかし結果として、ほとんど売上にはつながりませんでした。クリックはされるのですが、購入には至りません。
検討していたお客様は、あくまで「高品質・高価格・高性能なブランド日傘」を探している層であり、スペックや見た目が似ていてもダメで、ブランドそのものを大事にされている方たちだったのかなと思います。おそらく、同カテゴリの競合ブランドに流れたのではと推察しています。
施策例2:テキスト掛け合わせで魅力が伝わる商品を発掘する
人気商品の代替が難しいなら、人気商品にすがらず全く新しい商品を売り出そうということで、ちょうど次の季節商材が立ち上がるタイミングだったこともあり、別ラインの秋向け商品でデマンドジェネレーションを配信しました。
この配信は成功しました。デマンドジェネレーションで媒体計測のROASが約500%。このサイトのショッピングキャンペーンのROAS平均と同水準なので、大きな手ごたえを感じました。
デマンドジェネレーションならではの「テキストがちゃんと見える」という点が、この商品とマッチしたのではないかと思います。
画像で見ると一見わかりにくい商品なのですが、テキストで「見た目からは想像できない魅力」を言語化して伝えることで、その意外性が印象に残りやすかったのかもしれません。
ショッピング広告枠などの画像と価格しか表示されない広告と違い、「テキストが強い訴求になる商品を発掘できる」のがデマンドジェネレーションの強みだなと感じました。
第二弾として配信したのは、秋をイメージさせるモチーフをあしらった商品です。こちらもデマンドジェネレーションで売れてくれました。商品画像だけでは伝わりにくいコンセプトも、デマンドジェネレーションならテキストがしっかり出てくれます。商品の背景にあるストーリーや世界観を補足できたことが、成果につながったのかもしれません。
売上を上げればいい、というわけではないのかも
今回の件を受けて、ROASをとにかく合わせれば良い、売上をとにかく上げれば良い、というわけではないのかもしれない、と感じるようになりました。
ちょうどその頃にローカルをテーマに書くライター・ジャーナリスト・編集者の甲斐かおりさんの『ほどよい量をつくる』という本を読んだこともあり、「お客様に情報を届ける側の仕事の仕方によって、作る側の在り方まで変わってしまうこともある」と思うようになりました。
売れる商品だけをひたすら売っていたら、生産側もどんどん効率化されていって、本来こだわっているものづくりができなくなるかもしれません。
実際に今回の商品は、職人さんが手作りしていました。たくさん売ることを目的にしてしまうと「非効率だけどこだわりたいモノづくり」ができなくなり、そのブランドじゃなくても良いものができあがってしまうことになりかねないのだと感じました。
在庫の話から少し飛躍してしまいましたが、売れている商品をさらにたくさん売るだけではなく、これまで売れていなかった隠れた素敵な商品の魅力を発掘していく運用も、楽しいと感じています。
まとめ
ECの広告運用で在庫切れに直面したとき、代理店側でできることは意外と多くあります。今回紹介した3つの打ち手は、次のとおりです。
- 在庫数を見える化する(重点商品の在庫を代理店側でも確認)
- フィードを品番単位からSKU単位に切り替える(在庫ありカラーで配信を継続)
- 次の売上の柱を育てる(依存リスクを分散)
ROASをとにかく合わせる発想から一歩引いて、「いま売るべき商品は何か」を一緒に考える姿勢が、クライアントとの信頼関係につながると感じています。在庫の制約に向き合うことで、新しい商品の打ち出し方や切り口を見つけるチャンスにもしていきたいですね。



