
データフィード広告は、ユーザー一人ひとりの興味関心に合わせて、商品を動的に訴求できる点が特徴です。そのデータソースとなるデータフィードは、成果に大きな影響を与えます。
しかし実務では、「必須項目に最低限の情報を入力して配信を始めた後、データフィードを放置してしまっている」というケースも少なくありません。
もし心当たりがあれば、広告の成果を十分に引き出せていない可能性があります。
なぜなら、データフィードの情報が不足していると、媒体は「誰にこの商品を届けるべきか」を判断できず、広告の配信精度が下がってしまいます。また、ユーザーが求めている情報を広告に表示できず、クリックにつながりにくくなるからです。
ではどうすれば「購入につながる可能性が高いユーザー」に広告を届け、クリックを促し、効率的に成果を伸ばせるのか。本記事では、その鍵を握る「顧客を安心させるデータフィード設計」について解説します。


目次
なぜデータフィードの拡充が広告成果の改善につながるのか?
データフィード広告では、広告媒体がユーザーの行動データや関心と、登録したデータフィードを照らし合わせ、関連性が高いと判断された商品を広告として表示します。
ユーザーに表示される広告は、データフィードに登録した商品タイトルや商品画像、価格情報などから自動的に生成されます。

つまりデータフィードは、「どのユーザーにどの商品を見せるか」という配信過程にも、そして「実際にユーザーが目にする広告クリエイティブそのもの」にも関わっているのです。
そのため、データフィードの質が広告成果を左右します。
そして、この「質」を高める具体的なアクションが、各項目に正確かつ詳細な情報を入れ、任意項目まで活用して商品情報を充実させる「拡充」です。データフィードの拡充が成果改善につながる理由は、大きく2つあります。
理由1:購買意欲の高い見込み顧客に、より的確に広告を届けやすくなるから
データフィード広告では、媒体がデータフィードの情報をもとに商品を理解し、ユーザーへ広告を届けます。そのため、データフィードの情報量が広告の配信精度に影響を与えます。
データフィードの項目は、広告を配信するために最低限必要な「必須項目」と、より詳細な商品情報を伝えるための「任意項目」に分けられます。必須項目を埋めれば広告配信は可能ですが、成果を出すにはそれだけでは不十分です。
例えば、男性用の黒いパーカーを例に考えてみましょう。
必須項目のcategoryだけでは、パーカーに興味があることしか学習できません。これでは、女性用のパーカーを探しているユーザーや白などの他のカラーを探しているユーザーにまで広告が表示されてしまう可能性があります。

そこで、任意項目であるcolor、genderなどを追加することで、「パーカー×黒色×男性用」とユーザーの趣向を具体化した学習データを与えることができ、より購入の見込めるユーザーに配信されやすくなります。

実際に、主要な広告媒体は、一貫して詳細な商品情報の入力を推奨しており、それがパフォーマンスの向上にも寄与することも記載されています。
- Google広告
- 正確で包括的なデータが掲載されるよう、商品データ仕様にリストされている、お客様の商品に該当する必須属性をすべて送信してください。また、推奨される属性をできるだけ多く含めてください。商品に関連する属性をすべて指定することで、最も関連性の高い検索語句で表示されやすくなります。
- Meta広告
- コマースマネージャのカタログは、FacebookやInstagramで宣伝・販売するすべてのアイテムを保持する場所です。カタログを正しく設定し、商品データを詳細まで入力することは、広告と販売のパフォーマンス向上につながります。
- Criteo
- 提出する商品情報は、広告やリストを成功させるための基礎となるため、正確かつ高品質であることを確認してください。
- フィールドは次の優先度レベルに分類できます。
- 必須フィールド:空欄または未入力の場合は、製品の取り込みを防止します。
- 推奨フィールド: キャンペーン管理を効率化し、製品のパフォーマンスの向上に役立ちます。
- 引用元:Criteoヘルプ
このように、データフィードの情報を充実させることは、「この商品はこのユーザーに合うだろう」という機械学習の判断を助け、配信精度を高めることにつながります。
理由2:購買意欲の高い見込み顧客からのクリックを促しやすくなるから
データフィードの拡充は、広告が誰に表示されるかだけでなく、表示後にクリックされるかどうかにも大きく影響します。広告の配信効率を高めるには、クリックの「量」よりも「質」、つまり購入意欲の高いユーザーにクリックしてもらうことが重要です。
なぜなら、広告の課金方式がクリック課金の場合、購入意欲の低いユーザーからのクリックは、広告費の浪費につながる可能性が高いからです。CPM課金でも、学習データが十分に蓄積されていない段階では、購入意欲の低いユーザーからのクリックデータが機械学習に影響を与え、配信精度を下げるリスクがあります。
反対に、質の高いクリックが増えれば、コンバージョン率が高まり、広告成果の改善が期待できます。
情報が豊富なデータフィードは、この「クリックの質」を2つの側面から高めてくれます。それは「購入につながらないクリックの抑制」と「購入につながるクリックの促進」です。
購入につながりにくいクリックを抑制する
購入につながりにくいクリックを抑制する、という考え方は、Googleショッピング広告や、ダイナミック広告の類似オーディエンス向け配信のように、まだ自社の商品を知らない新規ユーザーに向けて配信する際に重要となります。
例えば、メンズ用の防水パーカーを広告配信する場合を考えてみましょう。
広告のタイトルに「【防水素材】メンズ アウトドアパーカー」と具体的に表示することで、ユーザーの反応は下記のように分かれます。
- 見込み顧客以外(女性用のカジュアルな綿パーカーを探しているユーザー)
- 「自分の探しているものとは違うな」と広告を見た時点で判断し、クリックしません。
- 見込み顧客(男性用の防水のアウトドアパーカーを探しているユーザー)
- 「まさにこういうのが欲しかった」とクリックします。
このように、ユーザーをフィルタリングし、購入見込みの低いクリックを抑制することで、広告費の浪費を抑えられます。
購入につながるクリックを促進する
購入につながりにくいクリックを抑制した上で、次に重要なのが、購入見込みの高いユーザーの興味を引いたり、迷っているユーザーの背中を押して、クリックを促すことです。
たとえば、割引率や送料無料などの「お得感」や、商品の評価を見せて「信頼感」を訴求することで、より商品に興味を持ってもらいやすくなったり、購入の意思決定においても役立つでしょう。


特にGoogleショッピング広告のように他社の類似商品が並んで表示される場合、こうした魅力的な情報が、競合への流出を防ぐための重要な差別化要素にもなります。
このように、明確かつ詳細な情報は、購入につながるクリックを促進し、同時に無駄なクリックを抑制することにつながります。
さらに、見込み顧客からのクリックやコンバージョンデータは、広告媒体の機械学習にも活用されるため、似たような他の見込み顧客へ、より的確に広告を届けられるようになります。
この好循環を生み出すことこそが、広告配信の効率を高めていく鍵となります。
顧客の安心を生むデータフィードを設計するには?
ここまで見てきたように、データフィードを最適化するには、次の2点を意識する必要があります。
- 広告媒体に対して、商品に関連する正確で大量の情報を渡すこと
- 見込み顧客が、クリックしたくなる魅力的な情報を広告で見せること
突き詰めれば、どちらも「自分に合っている」「この商品が欲しい」と思ってもらえる安心感を生むことが重要となります。
では、その安心感をどうやって実現するのか。ここからは3つのステップに分けて解説します。
ステップ1:購入見込みの高いユーザーの「ペルソナ」を考える
まずは、商品特徴から「これを最も必要としているのは誰か?」を考えます。
ここでは「最大65W出力でPCも充電でき、2ポート搭載で小型」という特徴を持つ充電器をデータフィード広告で配信する場合を例として挙げます。
- 商品を求める人物像
- 出張が多く、PCとスマホを出先で使うことが多いビジネスパーソン
- ニーズ
- PCやスマホを急速充電したい
- 荷物を一つにまとめたい
- 複数の充電器を持ち歩きたくない
ステップ2:ペルソナの「不安」を解消する情報を洗い出す
次に、このペルソナが購入前に抱くであろう具体的な「不安」を想像し、それを解消できる「安心材料」は何かを考えます。
- 「本当にPCを急速充電できるの?」
- 高い性能の証明 → 「最大65W出力」
- 「持ち運びに不便じゃない?重くて大きいのは嫌だ」
- 携帯性の高さ → 「折りたたみ式」「重量」
- 「スマホと同時に充電できる?」
- 複数の機器に対応できる利便性 → 「2ポート搭載(USB-C & USB-A)」
ステップ3:洗い出した「安心材料」をフィードに反映させる
最後に、ステップ2で見つけた「安心材料」を、実際のデータフィードに落とし込みます。ここでは、Googleショッピング広告の一部の項目を例に挙げます。
- タイトル [title]
- 実際の商品名: 急速充電器 XYZ-789
- タイトル: [PCも充電] 最大65W 2ポート急速充電器 名刺サイズ 折りたたみ式
- 商品説明 [description]
- 「MacBook Proも急速充電できる最大65W出力。USB-CとUSB-Aの2ポート搭載で、PCとスマホの同時充電が可能。GaN技術採用で、名刺サイズのコンパクトさを実現。PSE認証済みで安心。」
- Google 商品カテゴリ [google_product_category]
- 「電気製品 > コンピュータ > コンピュータ部品 > 電源装置 > 電源アダプタ・充電器」のように詳細なカテゴリを設定
- 商品画像リンク [image_link]
- 充電器本体のUSB-CとUSB-Aの2ポートがはっきりと見える画像のリンクを追加
タイトルや画像などユーザーの目に必ず触れる項目はもちろん、商品カテゴリなど媒体の機械学習が参照する項目も「安心感」という観点で充実させることで、広告の配信効率を高めることができます。
そのデータフィードは、顧客を安心させられるか?
本記事では、データフィードを「顧客を安心させる」という視点から捉え直し、広告の成果を高めるためのデータフィードの設計方法を整理しました。
ポイントは以下の2つです。
- データフィードの必須項目をただ埋めるだけでは、媒体もユーザーも判断材料を欠くため、成果が伸びにくい
- 単に項目を増やすこと自体が目的ではなく、購入前の不安を解消し、安心して検討できる情報を提供することが本質
まずは自社のデータフィードがどれくらい任意項目まで情報を入力できているか確認してみてください。そのうえでタイトルや商品画像といったユーザーに表示される主要項目を中心にテストを重ねてください。
こうした改善の積み重ねが、広告の配信精度だけでなくクリック率やコンバージョン率の改善にもつながり、最終的な売上拡大へ直結します。
