広告の見えない貢献度を可視化!「コンバージョンリフト調査」の仕組みと実施方法を解説

広告の見えない貢献度を可視化!「コンバージョンリフト調査」の仕組みと実施方法を解説

広告の効果を正しく測定するのは、意外と難しいものです。広告配信前後でコンバージョン数が増えても、それが本当に広告の影響によるものなのか、それとも自然な流入なのかを判断するのは簡単ではありません。

そこで役立つのが、広告が成果にどれだけ貢献したのかを可視化できる「コンバージョンリフト調査」です。名前は聞いたことはあっても、「具体的にどうやって効果を測るのか」「どのような条件で実施できるのか」について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、コンバージョンリフト調査の概要から、実施可能な媒体、実施時の注意点まで詳しく解説します。


コンバージョンリフト調査とは?

コンバージョンリフト調査とは、広告が実際にどれだけ成果に貢献したのかを測る手法です。広告に接触したユーザー(テストグループ)と接触しなかったユーザー(コントロールグループ)の行動を比較し、コンバージョンや売上などの成果指標にどれほどの差が生じたかを比較します。

この差分こそが、広告によって“追加的に生まれた”と推定される成果、すなわち「インクリメンタルコンバージョン(増分成果)」です。

この2つのグループで獲得できたコンバージョン数を比較することで、広告配信によって生まれたコンバージョンの影響度を可視化できます。主な指標は以下の通りです。

  • リフト値:テストグループとコントロールグループのコンバージョン率(CVR)を比較することで、広告がもたらした効果を測定する指標
  • 投資対効果(ROI):増分売上 ÷ 増分コストで計算するインクリメンタルコンバージョンベースの投資対効果指標

たとえば、「今よりもっと売上を伸ばすには、新しいお客さまを増やしていく必要がある。でも、そのためにセッション獲得(Webサイトへの訪問者を増やすなど)を目的とした広告を出すべきか悩んでいる」というケースはありませんか?

特に、新規ユーザーを狙った広告配信は、「どれくらいの予算で」「どれくらい売上につながるのか」といった見通しが立てづらいため、「本当に効果があるの?」と不安になることもあるはずです。

そこで、セッション獲得を目的とした広告を配信するAグループと、広告を配信しないBグループに分けて効果を検証するとします。両グループの成果を比較することで、「広告を出したことによってどれだけ新たなコンバージョンが生まれたか」を数値で可視化できます。

このように、広告の「効果」と「費用対効果」の両面を定量的に把握できるため、セッション獲得目的の広告に踏み出すべきかどうか、またどのくらいの予算を投資すべきかをデータに基づいて判断できるようになります。

各媒体ごとの実施要件

広告配信媒体ごとに定められた実施要件をクリアする必要があります。十分な分析を行うには一定のデータ量が必要なため、過去の配信実績が要件を満たしているか確認しましょう。

以下は、主要な広告媒体におけるコンバージョンリフト調査の実施要件です。事前に確認し、自社に合った広告配信媒体を選びましょう。

媒体実施方法テスト可能な配信メニュー実施要件
Google 広告媒体に依頼ショッピング広告
検索広告
Googleディスプレイ広告
目安:月間5万クリック、もしくは 1万件以上のWebコンバージョン(※)
Yahoo! 広告媒体に依頼Yahoo!ディスプレイ広告(YDA)
Yahoo!予約型広告
目安:月間2万クリック、もしくは 1,000件以上のWebコンバージョン(※)
Microsoft 広告媒体に依頼ディスプレイ広告
ネイティブ広告
動画広告
オーディエンスターゲティング利用、合計100万インプレッションの配信実績(※)
Meta 広告媒体に依頼/管理画面から設定実施要件を満たすすべてのMeta広告過去90日間で最適化対象のコンバージョン500件以上(クリックから1日間/クリックから7日間または表示から1日間)、配信金額$5,000(約75万円)以上

(※)媒体社へのヒアリング(2025年5月時点)に基づく情報です。

Google広告やYahoo!広告では、アカウントごとに要件が異なるため、営業担当者への確認が必要です。表内の数値は「この程度のデータがあれば、一定の信頼性のある調査が可能」という目安であり、絶対の実施要件ではないのでご留意ください。

コンバージョンリフト調査の実施前に確認すべきこと

コンバージョンリフト調査をスムーズに進めるためには、事前準備が重要です。

以下のポイントを確認しておきましょう。

テストを実施したい媒体の実施要件を満たしているか

コンバージョンリフトテストを実施できる媒体は複数ありますが、その中でテストが実施できるものは過去の配信実績に左右されます。

まずは、検証を行いたい媒体や配信メニュー、ターゲティングが叶う媒体を踏まえたうえで、配信実績に不足がないかを確認しましょう。

もし過去配信のデータ量や配信金額が要件を満たしていない場合は、以下のように因果のある指標あるいは、本コンバージョンの増加が期待できる相関性のある指標の採用などの対応による条件達成も検討してみてください。

  • コンバージョンポイントを変更する(例:購入完了 → カートインに変更し、データ量を確保)
  • 一時的に広告配信を強化する(調査に必要な最低配信金額やコンバージョン数をクリアするため

実施までのスケジュールに余裕をもつ

Meta広告以外の広告媒体では、コンバージョンリフト調査の設定を広告媒体側に依頼する必要があります。そのため、希望する実施時期や予算を考慮し、十分な準備期間を確保しましょう。

特に、媒体への依頼が必要な場合は、調査開始の1〜2週間前から準備を進めることをおすすめします。スケジュール遅延によって、効果的な調査のタイミングを逃さないよう注意しましょう。

調査結果に大きな影響がある時期の実施は避ける

調査結果に影響を与える可能性のある特定のイベントやセール、季節要因のある時期は避けましょう。例えば、アパレル商材の場合、セール期間中は割引や特典の影響が大きく、本来の広告効果を正しく測るのが難しくなります。

「通常時の広告効果」と「特定キャンペーン期間中の効果」、どちらを知りたいのかを明確にし、調査期間を選びましょう。

評価方法と活用方針を決めておく

コンバージョンリフト調査では、「広告接触群」と「非接触群」の行動を比較することで、広告の影響を数値で可視化できます。

つまり、リフト値が高ければ、広告が成果に貢献している証拠です。広告予算を拡大したり、オーディエンスの広がりを試すといった次の一手につながります。

一方で、「リフト値が低い」と出ることもあります。しかし、一概に「広告の効果が低い」=「広告が悪い」というわけではありません。その結果をもとに、クリエイティブ・ターゲティング・配信戦略の見直しといった改善のチャンスと捉えるべきです。

コンバージョンリフトの調査レポートで可視化できる項目の例です。注意点として、媒体ごとに測定できる項目や条件は異なります。そのため、事前に運用担当者や媒体側に確認しておくことが重要です。

例)

  • 全体リフト値:広告がユーザーの行動変容に与えた影響
  • コンバージョンの増加数(絶対的ブランド効果測定):広告接触によって発生したコンバージョンの増加分
  • 売上リフト:広告接触によって発生した売上の増加分
  • 属性別効果:性別・年齢などのセグメントごとの反応傾向
  • 接触頻度別の効果:広告の表示回数が多すぎると逆効果になる可能性も

たとえばMeta広告では、広告に接触したユーザーと、接触していないユーザーを比較することで、全体のリフト値が可視化されます。これにより、広告がユーザーの「行動変容」にどれだけ寄与したかが明確になります。

さらに、広告接触によって発生した売上リフトも把握できるため、費用対効果の確認や、事業成長につながる判断材料として活用できます。

広告の価値を「感覚」から「根拠」へ

コンバージョンリフト調査を通じて、どれだけ売上に貢献したかの広告の貢献度を推定することができます。「なんとなく効果がありそう」という主観ベースの認識から、「これだけ効果があった」と言える、再現可能な証拠にもとづく評価になることで、結果の説得力も増しますよね。

そのため、一度きりの調査よりは、継続的に実施することで広告の改善点が見えやすくなり、長期的な効果を高めることにつながります。クリエイティブやターゲットの入れ替え、施策ごとの成果の差分、時期別の違いなどを定点観測することで、「どの広告が、どの条件で、どんな成果を生んだのか」という知見が蓄積され、広告運用の精度が高まっていきます。

まずはどの媒体で実施すべきか、どのタイミングが適切か、何を目的にするのかを整理したうえで、定期的な調査を取り入れていきましょう。

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