運用型広告の担当者なら持っておきたい、コンバージョンの価値に関する3つの視点

運用型広告の担当者なら持っておきたい、コンバージョンの価値に関する3つの視点
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「最近、コンバージョン数が伸びている。」

一見とても喜ばしいことですが、それだけで喜んでいて良いのか、と問われれば必然的に答えはNOでしょう。コンバージョンによってはそもそもの価値がないものもある場合があり、本当にビジネスの成果につながっているかは、今一度考えてみる必要があります。

この記事では、そんなコンバージョンの価値を見定めるための3つの視点について解説していきます。


そのコンバージョンは、実際に成果につながっているか?

そもそもビジネスの最終的な成果につながらなければ、どれだけ広告投資をしても意味がありません。そのコンバージョンが、本当に成果につながっているのか?という観点は常に持ちましょう。必ずしも成果につながっているとは限らない、要注意なコンバージョンの代表例としては、以下の5つがあげられます。

無料登録系

無料会員登録、資料請求などをコンバージョンとして設定している場合は、そのまま成果とはいえない例の一つです。なぜならビジネス上、売上につなげるためのファーストステップに過ぎないからです。

せっかく大量に会員を獲得したり資料を送付したのに、成約につながりにくいユーザーばかり集めてしまい結局成果にはならなかった、ということも考えられます。可能であれば、広告経由で獲得した見込み顧客のその後の成約率まで、運用者は把握しておくべきです。インハウス主導であれば社内で運用者が成約率を把握できる状況にあるべきですし、代理店の広告運用者などであればクライアントから聞き出しておきましょう。

モニター系

こちらも無料登録系と同様、一般的にそれ自体では成果とはいえないものです。なぜなら本商品を買ってもらうことで利益になるビジネスモデルであることがほとんどであるからです。モニター商品が大量に売れても、本商品まで購入してくれるユーザーの割合が低ければ、広告投資の効果があったとは言えません。本商品への引き上げ率も把握しておきたいですね。

問い合わせ系

フォームやメール、電話での問い合わせは、それ以降のビジネスサイドでのコミュニケーションを経て最終的に一部が成果になるものですから、コンバージョンがダイレクトに成果と言えないものです。特に問い合わせ内容が自社で扱っていない商品やサービスに関するものだったとしたら、そもそも対応できないため問い合わせの意味がなかったということにもなります。

なるべく成果につながりやすい問い合わせを集められるよう、広告訴求やキーワード選定を工夫しましょう。

電話コンバージョン

電話コンバージョンは、Google アドワーズやYahoo!スポンサードサーチで設定できるものですが、スマートフォンで発信ボタンをタップするだけでコンバージョンが計測される仕様になっています。すると管理画面上はコンバージョンが計測されていても、それは誤タップ等によるコンバージョンであり、実際に電話がかかっていないという危険性があるわけです。可能であれば実際の電話件数と照らし合わせてみたいところです。

そして無事電話につながっていたとしても、事業者側で電話に出られなかったという可能性もあり得ます。受電率が7割を切るとかけ直しの多発により回線が混み、悪循環で一気に2割まで落ち込むという例もありますから、受電率も分かる範囲で確認しておくと良いでしょう。

このように電話によるコンバージョンは不確定要素も多いので、実際に売上につながっているかはしっかりチェックしたいものです。

参考:Google アドワーズ・Yahoo!スポンサードサーチ、電話発信コンバージョンの基本と設定方法

その他

その他、ECサイトで在庫以上に過度な注文を受けてしまい発送が遅れる・発送出来ない等、対応できる範囲を超えてコンバージョンを取り過ぎてしまう場合や、会員登録やお問い合わせ系でフォームを簡略化しすぎるなど、ハードルを低くしたコンバージョンが最終的な成果につながらないという場合にも注意しましょう。

以上のように、コンバージョンがそのまま成果とならず、ツーステップで成果を作っていくビジネスの場合は気をつけましょう。

そのコンバージョンは、ビジネスにとって重要なものか?

複数の商品・サービスを扱うビジネスであれば、それぞれのコンバージョンには重要度に差があります。コンバージョンが売上につながっているとしても、ビジネスにとって重要度が低いコンバージョンは単純には喜ぶべきものではありません。

そのコンバージョンがビジネスにとってどれだけ重要かどうかを判断するための代表的な軸としては、以下の3つが考えられます。

各商品・サービスが生み出す利益

一般的にはより多くの利益を生む商品・サービスのコンバージョンこそ最も価値があり、重要です。複数の商品・サービスカテゴリがあり、あらかじめ商品・サービスごとに利益率等もふまえた目標CPAが別々に設定されている場合は、そちらにしたがって運用すればまず問題はありません。しかし、全体で一つのCPA目標の下に運用している場合は、各商品・サービスが生み出している利益を把握し、考慮しながら運用すると良いでしょう。

ターゲット層ごとの重要性

同じ商品・サービスのコンバージョンでも、年代、性別、新規顧客かリピート客か、等の軸で誰がコンバージョンしたか?によってコンバージョンの価値は変わってきます。

たとえば人材系のビジネスで、同じ「応募」というコンバージョンでも、20代男性の成約率の方が60代女性のそれよりも高い、という事実があるとしましょう。この場合は20代男性のコンバージョンの方がビジネス上は価値が高く、広告投資を増やすべきという判断になりますね。

同じ商品・サービスのコンバージョンでも、どのターゲット層がコンバージョンしているのか、するべきなのかという視点が持てると強いです。

ビジネスモデル・経営判断による注力度

これまで紹介した例のように、利益を生んでいるかという観点だけでは一概に重要性を判断できません。ビジネスモデルや経営判断によっては、現状利益を産んでいなくても注力すべき商品・サービスというのもあるからです。イメージとしては長期的にリピーターを増やすため、特定の商品・サービスやターゲット層について、しばらくは赤字でも獲得していくという戦略をとっていく場合などです。

ビジネスモデル・経営方針についても、担当者とコミュニケーションを取るなりして把握しておきたいところですね。

以上のような軸でコンバージョンの重要性を判断・理解して、限られた広告予算の中でどの商品・サービスのコンバージョンを優先して取りにいくべきかを考えましょう。代理店の広告運用者であれば、自分だけではコンバージョンの重要性を判断出来ない場合もあるので、クライアントと積極的にコミュニケーションをとり、クライアントにとって重要な商品・サービス・ユーザー層はどれなのかを聞き出して理解しておくことが重要です。

コンバージョンに到達するまでの間接効果も考えているか?

コンバージョンがとれていても、CPAが高ければそのキーワードは止めてしまう、という単純な運用をしがちな人は多いです。しかし、CPAが高いからといってそのコンバージョンは価値が低いものであるとは限りません。コンバージョンに至るまでの過程で、後にリターケティング広告でコンバージョンに至るなどで、アカウント全体のコンバージョン数を支える間接効果を持っている可能性があるからです。

特に、単体ワードなど抽象度の高いキーワードは検討段階の浅い多くのユーザーに検索される傾向にあるので、多くのユーザーとの最初の接点としての価値を持つことが多いです。例えばエステサロンであれば「エステ」というキーワードは「渋谷 エステ」よりも高CPAになりがちですが、単に高CPAで価値が低いのではなく、将来の見込み客との最初の接点になるという間接効果も持っている可能性があるということです。こうしたキーワードを停止したり弱めてしまうと、掛け合わせキーワード等でリピート顧客の獲得は安定的にありながらも新規顧客が減ってしまい、1年後に振り返ってみれば停止しないほうが良かったという結果になった例もありました。こうした目に見えない機会損失を防ぐためにも、一見して高CPAの獲得効率の悪いコンバージョンだとしても、そのキーワードを止めるのはリスクがあることを理解しておき慎重に判断すると良いでしょう。

間接効果を把握する方法については、以下の記事をご参考ください。
参考:広告運用者のためのGoogle アナリティクス活用:見えない効果を可視化する、マルチチャネルレポートの使い方

最後に

管理画面上のコンバージョンを追いかけ拡大していくのは運用型広告の担当者としてまず目指したいところですが、それだけではプロとは言えません。この機会に真に本質的な運用ができるよう、今一度コンバージョンの価値について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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