
※2020年9月30日に最新の情報をもとに更新
運用型広告の代表的な手法のひとつに、リマーケティングがあります。ウェブサイトやアプリに設置された広告のタグを通じて、広告主のWebサイトやアプリ内での行動履歴をもとにターゲティングを行う手法は一般的ですよね。
しかしながら広告主と顧客との接点はオンラインだけではありませんし、すでに顧客から連絡先など情報を預けていただいているのであれば、これらの顧客に有意義な情報をより正確に届けたいものです。
今回は、運用型広告で利用可能なメールアドレスなどの顧客情報を活用したターゲティング手法の種類と活用例をご紹介いたします。


目次
顧客情報を活用したターゲティングとは

メールアドレスなどの情報を活用したターゲティングとは、広告主のお客さまより提供された、メールアドレス、電話番号、郵便番号などを元に、広告の配信対象となる「ひと」を絞り込む手法です。
広告タグを用いたターゲティングとどう違う?
広告タグを用いたサイト内の行動履歴によるターゲティングでは、そのユーザーの過去の行動履歴や購入の状況などを加味した広告配信は十分に行えない場合があります。
それに比べ、ユーザーの顧客情報を利用することは、過去の顧客の行動履歴などをプロモーションに活かすことができます。
たとえば、常連客か新規の方か、来店、WEBサイト購入の有無など、サイト上の行動に限らず顧客情報を活用することも可能です。
次のような使い方も考えられますよね。
- 特定の商品の購入歴のある顧客にセールや新商品の発売などの広告を配信する
- いままで一定金額以上の取引のある顧客を広告配信から除外する
もっとも顧客情報を広告配信に活用したいかたちで管理されている必要があります。望むセグメントが作成できていない場合は、まずは顧客情報の管理を見直すことをおすすめします。
メールアドレスなどの情報を活用した配信の種類
顧客データを使った配信ができる運用型広告の媒体は、おもに次の6つです。Google 広告では使えてもYahoo!広告(旧:Yahoo!プロモーション広告)では使えない顧客データなどもあるため、次の表で確認しておきましょう。
媒体 | 使用可能な顧客データ | 使用可能な配信手法 |
---|---|---|
Google 広告 | ・メールアドレス ・電話番号 ・住所 ・ユーザーID ・モバイル デバイスのID(アプリ) | ・検索 ・ディスプレイ ・ショッピング ・YouTube ・Gmail |
Yahoo! ディスプレイ 広告 | ・メールアドレス ・電話番号 ・アプリ用広告識別子(IDFA/AAID) | ・ディスプレイ |
Facebook・Instagram広告 | ・メールアドレス ・電話番号 ・モバイル広告主ID ・姓名 ・市区町村 ・国 ・生年月日 ・誕生年 ・性別 ・年齢 ・FacebookアプリユーザーID ・FacebookページユーザーID | ・ディスプレイ |
Twitter広告 | ・メールアドレス ・モバイル広告ID ・Twitterユーザー名(@ユーザー名) | ・ディスプレイ |
LINE広告 | ・電話番号 ・メールアドレス | ・ディスプレイ |
Google 広告
カスタマーマッチと呼ばれ、広告主のもつ顧客の連絡先情報(メールアドレスや電話番号、住所など)を暗号化された状態でGoogleと共有することで、顧客情報に基づいたユーザーリストを作成できる機能です。広告管理画面から直接アップロードするほかAPIの利用やパートナーとの連携、コンバージョンタグを利用した自動作成などさまざまな方法が利用できます。
既存顧客への再アプローチはもちろん、そのユーザーリストを基に類似ユーザー リストを作成することも可能です。
なお、作成したカスタマーマッチのリストは、アカウント内のスマート自動入札および最適化されたターゲティングを使用したキャンペーンに自動的に加味されます。
Yahoo!ディスプレイ広告
メールアドレスや電話番号などの顧客データを利用して、オーディエンスリストの作成が可能です。CSVファイルにまとめた情報を広告管理画面からアップロードすることで利用できます。
参考:データをインポートして顧客データのオーディエンスリストを作成する - ヘルプ - Yahoo!広告
なお、個人情報となるため広告代理店側でのファイルの扱いが好ましくない場合など、ログイン不要でアップロードする方法も用意されているのはうれしいですよね。
参考:広告管理ツールにログインせずにオーディエンスリストに顧客データをアップロードする - ヘルプ - Yahoo!広告
Facebook・Instagram広告
顧客のメールアドレスなどの情報とMeta側が所有している情報をマッチングさせることによりオーディエンスを生成することができMetaで広告を配信できるようになります。リストを基に類似ユーザー リストを作成することもできます。
Facebookのもつ実名制を基本とした正確なデータベースによるターゲティング精度の高さを活かして、類似リストを作成することで、既存顧客とより属性が近いユーザーへ広告を配信することができます。
参考:カスタマーリストを使ってカスタムオーディエンスを作成する
X広告
X広告では、顧客のメールアドレス、各プラットフォームが提供するモバイル広告IDのほか、Xユーザー名(@ハンドル)をアップロードすることで、そのリストに該当するアクティブなXアカウントへ広告を配信できます。
テイラードオーディエンスのアカウントすべてがアクティブなTwitterアカウントとは限らないため、最終的なリストのサイズはもともとアップロードしたリストより小さくなる場合があります。
LINE広告
LINEにその情報を登録しているユーザーの電話番号とメールアドレス、IDFA/AAIDのデータをLINE広告にアップロードすることで、顧客リストを作成できます。LINEはサービス利用時に電話番号とメールアドレスの登録が必要なことから顧客リストの精度の高さが期待できます。
参考:LINE広告(LINE Ads) マニュアル | LINEヤフー for Business
顧客情報を活用した新規顧客へのアプローチ方法
顧客リストに含まれるユーザーを直接ターゲティングする他に、次のような施策への活用も可能となります。
顧客リストを使った新規ユーザーへの施策の活用
顧客リストを使用したターゲティングではリストを除外することで、顧客以外のユーザーへ配信する事もできます。
たとえば、既に会員登録済み、購入済みのユーザーリストを除外することで新規のユーザーのみへ広告を訴求することができたり、顧客リストは使い方によって新規ユーザーへの訴求手段としても有効です。
顧客リストを基にした類似ユーザー配信
Google 広告とFacebook広告、LINE広告に関しては顧客データを元にした類似リストを作成することが出来ます。類似ユーザーをうまく活用すれば成果につながる有望な見込み顧客にアピールすることができます。
注意点としては、類似ユーザーリストの元になっている顧客リストの質に依存する点です。購入者の類似ユーザーリストへの広告配信はコンバージョンへの寄与度が高いと予想されますが、全く関係のない商品であったり、未購入のユーザーが含まれた顧客リストで作成している場合は注意しましょう。
顧客情報を活用したターゲティングの注意点
正確かつ柔軟なターゲティングが可能となる一方で、次のようなポイントには注意して取り扱う必要があります。
個人情報の取り扱いには細心の注意を
いずれの媒体も顧客情報は、ハッシュ化(暗号化)されたのちサーバーへ送信するなど、プライバシーへの配慮がされています。
参考:Google によるカスタマー マッチ データの使用について - Google 広告 ヘルプ
ただし、媒体へ顧客情報をアップロードするために広告主と広告代理店で情報のやりとりが発生するケースもあります。データの取り扱い方法は事前に十分に協議しておくのがよさそうです。
顧客リストのサイズは最低でも数百以上を
これらの顧客情報を利用したリストの最低ボリューム数ですが、各媒体とも利用者のプライバシー保護の観点で100件以上から配信可能です。しかし顧客配信は広告配信時にその媒体にログインしているアクティブなユーザーに配信する仕様上、100件のリストを入稿してもそのサイズより、少なくなることが多いです。
安定した配信にするには数百以上、Google 広告、LINE広告であれば1,000ユーザー以上を推奨しています。
顧客との距離感を大切に
顧客の情報を利用した広告配信は、企業とユーザーのより密なコミュニケーションの実現にとても便利な施策です。しかしユーザーに対して一方的に新商品、新サービスの宣伝を押し付けてしまうと、ユーザーにとって必ずしも良い印象を与えないケースがあることは注意しましょう。
プライバシー保護の観点が注目を浴びている昨今。私自身も広告運用者として、家族や友人にも配信できる内容・手法なのか、これまで以上に注意を払って取り組んでいきたいです。