アナグラムでデザイナーをしている私が、広告運用の兼務を始めました。運用経験ゼロからのスタートです。
もちろん日々できることが増えている最中ですが、「兼務」によって得られたものは想像以上でした。この記事では、デザイナーが広告運用も担当するという少し珍しい働き方のリアルと、そこで感じた可能性について、私の体験をもとにお話しします。
目次
「運用」と「デザイン」を兼務するハイブリッド型の働き方
運用型広告において、クリエイティブと広告運用は切っても切れない関係にあります。どれほど優れたデザインでも、配信設定やターゲットが的外れでは届きませんし、逆に緻密な運用ができていても、クリエイティブに魅力がなければユーザーの心は動かないものです。
だからこそ、その両方を高いクオリティで理解し、実行できる人がいたら、こんなに頼もしいことはないですよね。
アナグラムは「運用コンサルタント」と「デザイナー」で職種が分かれていますが、中には一部「ハイブリッド」な働き方をしている社員がいます。広告運用の傍らでクリエイティブ制作も行うコンサルタントや、コンサルタントからデザイナーへ転身し双方に知見のある人など、そのかたちはさまざまです。
そして、デザイナーである私自身も「広告運用の兼務」を始めた一人。デザイン専任だった私が、今ではデザインから運用までを担うようになりました。
そもそも、なぜデザイナーが広告運用を?
なぜデザイナーである私が広告運用までやってみたいと思ったのか。
理由はいくつかありますが、デザイナーとして働く中での「もどかしさ」が原点でした。
クリエイティブ施策についてコンサルタントと話していると、運用側の専門的な話がよく出てきます。「媒体の設定を活かしてこんな訴求ができるんじゃないか」「配信方法に変化を加えたらこんな示唆があった」など、どれもとても有益な情報です。
でも、当時の私はその多くが「知らないこと」でした。
クリエイティブの数値分析はできても、その数字が「どの媒体の、どんな設定で、どう配信された結果」なのかが、解像度高く理解できない。広告運用の知見がないばかりに、せっかく作ったクリエイティブの活かし方を最大限把握しきれていない感覚。
「運用の知識を身につければ、コンサルタントとより有意義な議論ができるのに」「この配信設定、もっと早く知っていればさらに視野の広い施策が出せたのに…」と感じたのが、広告運用挑戦への第一歩でした。
なぜ「知識ゼロ」の状態から運用を学ぶことができたのか
知識ゼロからのスタートながらも、運用業務をキャッチアップできているのは、環境による後押しが大きかったと感じています。具体的には以下の3点です。
実践を「少しずつ」任せてもらえていたから
いきなり「今日から運用も担当してね」と放り出されたわけではありません。
最初はデザイナーの役割のみで案件に参加しつつ、運用者が何を見ているのかを観察するフェーズでした。上長が「どう思います?」と運用周りの意見を求めてくれることもありました。「試しに自分で設定してみようか」と、実践の機会を少しずつ与えてくれていたのです。
自分で考え、実践し、フィードバックをもらう。このサイクルがあったからこそ、着実に経験と知識を積み上げることができました。
「やったことない分野はわからなくて当たり前」という風土
入社から数か月経った頃の話です。
当時、業務はまだまだわからないことだらけで気持ちがすっかり落ち込んでいました。1on1で自信喪失していることを正直に話したところ、「知らないんだからできなくて当たり前。学ぶ姿勢があれば大丈夫」と上長に言われたことをよく覚えています。
アナグラムは「わからない」ことを責め立てず、むしろ「積極的に質問すること」を推奨する文化があります。「こんな初歩的なこと聞いて良いのかな…」とためらうような質問も、気軽に答えてもらえる環境があるのです。媒体ヘルプやブログでは補えない、「今の案件の状況に合わせたアドバイス」も都度もらいながら進めています。
参考:
アナグラムは学ぼうとする人に寛容ですし、周りに支えてもらえる環境も整備されている。「新しいことをする」「仕事を広げる」のが非常にやりやすい環境だと思います。
定例会はインプットの最高の機会
知識を仕入れるチャンスは日頃の業務にも潜んでいます。それはクライアントとの定例会です。
定例会は「専門外の人にもわかるように、成果と要因を説明する場」です。運用コンサルタントが「結果」「要因」「改善策」を話し、理論立てながらディスカッションする。クライアントに話すからにはわかりやすい伝え方をしているので、他の職種の人でも十分に理解できる内容になっています。
デザイナーとして定例会に参加するたび、コンサルタントの報告に聞き耳を立てながら「こんなやり方があるんだ」「ここに目をつけて運用しているんだ」と、実際に運用をしている人の知見を仕入れていました。
特に運用者の経験則による見解などは、媒体ヘルプを読むだけでは得られない情報でした。
このような積み上げで、なんとかフロントに立てるレベルまで引き上げることができたと思っています。
デザイナーが運用を兼務して良かったこと
現在、私はある案件で「制作・運用・報告」をメイン担当として一気通貫で担っています。
ここで感じたメリットは想像以上のものでした。
案件全体を俯瞰し、施策を最適化できる
デザインも運用も担当するということは、広告に関わるほぼすべての意思決定に触れるということです。
以前の自分は「クリエイティブ施策」という「点」で考えていました。運用担当に立つと、「いつ・どこに予算とリソースを注ぎ込むか」「過去の配信構成」「クライアントの事業状況」など、案件の全体像を把握できるため、「点」から「面」で施策を捉えられるようになったと感じています。
例えば、以前なら『バナーのCTRが低い』=「クリエイティブのフック要素が弱い」と判断していたところ、運用を行うようになったことで『現状のターゲティングに対して訴求が噛み合っていないのでは』と仮説を立てることができ、クリエイティブの差し替えではなく配信設定を見直す、といった改善の仕方ができるようになりました。
クリエイティブ周りの意思決定が爆速になる
もうひとつは、デザイナーが運用を兼務するからこその、圧倒的な「スピード感」です。
アナグラムはもともと、デザイナーと運用者のコミュニケーション連携がスムーズな組織です。ただ、1人でデザインも運用もすると、コミュニケーションの経路は完全に「クライアント対自分」となるため、一味違うスピード感が生まれます。
例えば、クライアントから「こんなクリエイティブって作れますか? どれくらいで制作できますか?」と聞かれた場合。通常は制作と運用で確認を取り合うステップがありますが、兼務していれば制作リソースも配信状況も自分で把握しています。
つまり、その場で具体的な提案まで返せるのです。「できます。それなら〇日ください」「こんなターゲティングでの成果も見ると、A案やB案もいいかもしれません」と、即断できる。
もちろん、その分自分がすべての責任を負うことになるので意思決定は慎重に行います。それでも、すべてが自分の裁量になるスピード感。これが「兼務」の大きな魅力です。
兼務しなくてもできることはある
ちなみに、「兼務」でなくても、デザイナーが運用に関する視野を広げる方法はあります。完璧な兼務を目指さずとも、運用担当者と連携を取ることさえできれば、案件全体の最適化に介入することは十分に可能です。
たとえば定例会にデザイナーと運用者がペアで出る、クリエイティブ成果の振り返りを定期的に行う、配信結果のダッシュボードをデザイナーにも共有する、といった方法です。アナグラムでは、デザイナーが介入している案件の大半がこのような連携を取っています。
こうした選択肢の中で、あえて兼務をしてみて感じたのは「すべてが自分ごとになる感覚」でした。
兼務はもちろん「責任」も増える
裁量が大きくなるということは、「責任」も増えるということです。
以前クライアントとの定例会で、「前月全体は許容獲得単価(1件の獲得にかけてよい上限コスト)内で収まり、獲得数も維持できており好調です」と報告したことがありました。
すると、あるクライアントからこんな趣旨のフィードバックをいただいたのです。
「現状の数値で満足してほしくない。もっと上を目指してほしい」
言われた瞬間は頭が真っ白になりました。
「好調」と報告していても、もちろん現状の成果を今後さらに良くしたい気持ちはありました。ですが、許容獲得単価というラインをクリアしたことに安心して、「ひとまずよかった」という気持ちが強くなっていたのも事実です。
クリエイティブを作ったのも自分。配信構成をしているのも自分。案件のすべてに責任を持ち、その成果がクライアントの事業に直結する。その重みを痛感した出来事でした。
以降は「与えられた条件をクリアする」のみではなく、「クライアントが真に求めていること」まで考え、結果を踏まえた次の改善案や今後の配信方針を報告とセットでお伝えするようにしています。
しかし、この「すべての責任を負う」経験こそ、成長の大きな機会にもなるんじゃないかな、と思っています。
解像度が上がって「楽しさ」が倍になった
責任が増える、プレッシャーも大きくなる…なんてお話ししましたが、運用をやってみた最終的な感想は、「やれることが増えて楽しくなった」というシンプルかつポジティブなものです。
広告運用の勉強を始めた頃に「どんな将来像を目指しているの?」と聞かれたことがあったのですが、私は戸惑いうまく答えられませんでした。「たしかに、私の本業はあくまでデザイナーだし、業務の幅を広げて何になろうとしているんだっけ…?」と迷いを感じたんです。
そんなとき、クラシル株式会社CPOの坪田朋氏がnoteに書いた「2025年デザインはもう融けた。」という記事を読みました。デザインという専門領域が特定の職種の専有物ではなくなり、経営者やPM、エンジニアまでもがユーザー体験を考える時代になった、と語られていたのです。
モヤモヤがすべて晴れた、そんな感覚でした。
専門職の枠を超えて、案件全体の最適化を目指せるデザイナー。それが私の理想形でした。入社1年少々でそこに気づけたのは、この記事はもちろん、アナグラムに「デザイナーも成果に責任を持つ」という前提があったおかげだと思っています。
デザインのみを担当する案件でも、数字を確認し、結果から「何が良くて、何がダメだったのか」を分析してPDCAを回すプロセスが好きでした。運用も担当するということは、この楽しさの「拡大版」なんだと感じています。
クリエイティブだけでなく、予算、配信設定、ターゲティング、そのすべてを自分の裁量で動かし、結果をダイレクトに受け取る。まだまだ勉強は必要ですが、発展途上の今でも「楽しい」と心から思えています。
広告運用の知識が広がったことで、クリエイティブの適切な活用方法をクリアに思考することができていると感じています。自分が制作したクリエイティブを自身の判断で適切なユーザーに届け、ユーザーと商材の橋渡しをすることができる楽しさ。これはデザイン業務をメインとしていた頃には無かった感覚でした。
兼務してみて思うのは、「クリエイティブも運用も、結局は同じ目的に向かっている」ということです。両方を経験することで、より広く、より深く広告を捉えられるようになりました。
一個人の体験をもとにした感想ではありますが、「デザインから運用へ」(あるいは「運用からデザインへ」)と仕事の幅を広げる面白さが少しでも伝わっていれば幸いです。



