エンゲージビューコンバージョンは一度見ておかなくちゃ

エンゲージビューコンバージョンは一度見ておかなくちゃ

P-MAXやデマンドジェネレーションキャンペーンを運用していて、「管理画面のコンバージョン数がやけに多い」と感じたことはありませんか。その原因かもしれないのが「エンゲージビューコンバージョン」です。

動画を見て気になり、後から検索して購入する。そのような行動パターンはよくありますよね。視聴がコンバージョンに貢献していることを評価したくなる気持ちもわかります。ただ、本当に視聴が購買意向を高めたのか、それとも広告がなくても購入していたユーザーを拾っているだけなのか。この区別がつきにくい点が、エンゲージビューコンバージョンの厄介なところです。

本来の意図とは違ったコンバージョンもチラホラ起きています。検索キャンペーンにはない、動画広告特有のコンバージョン計測方式で、知らないうちに成果が過剰に計上されているケースも少なくありません。

本記事では、エンゲージビューコンバージョンの仕組みと注意点を整理し、運用現場で使える対処法を解説します。


エンゲージメントビューコンバージョンの基本

Googleの公式ヘルプをもとに、計測条件や対象キャンペーンを整理します。設定変更の手順も併せて確認しておきましょう。

エンゲージメントビューコンバージョンとは?

エンゲージビューコンバージョンとは、動画広告を一定時間視聴したユーザーが、クリックせずに別経路でコンバージョンした場合にカウントされる指標です。

参考:エンゲージ ビュー コンバージョンについて - Google広告 ヘルプ

YouTubeのユーザーは、コンテンツを観たいという意図を持ってYouTubeにアクセスするため、動画コンテンツの視聴中に広告が表示されても視聴を継続する可能性が高いです。

YouTubeユーザーは動画を観る目的でアクセスするため、広告が流れても視聴を続ける傾向があります。Google/Talkshoppeの調査(2020年、米国)によると、YouTubeユーザーの70%が「YouTubeで見たブランドの商品を購入した経験がある」と回答しています。(出典:動画アクション キャンペーンにアップグレードして成果を高める - Google 広告 ヘルプ)。

つまり、広告をクリックしなくても購買行動に影響を与えている可能性がある。この「視聴後の間接的な貢献」を評価するために設計されたのが、エンゲージビューコンバージョンです。

エンゲージビューコンバージョンの計測条件

エンゲージビューコンバージョンとして計上されるには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

①視聴条件

広告フォーマット視聴条件
スキップ可能なインストリーム広告10秒以上視聴(10秒未満の動画は完全視聴)
インフィード広告 / YouTubeショート広告5秒以上視聴

②コンバージョン発生期間

視聴条件を満たした後、設定した計測期間内(デフォルト3日間)にコンバージョンが発生すること。計測期間は1日〜30日間の範囲で変更可能です。

まとめると、エンゲージビューコンバージョンは「ちゃんと広告を見た」と思われ、かつ「記憶が新しいうちに行動した」場合にカウントされる仕組みです。視聴の質や、コンバージョンとの因果関係までは問われません。

対象となるキャンペーンタイプ

動画アセットを使用する以下のキャンペーンタイプが対象です。

  • 動画キャンペーン
  • アプリ キャンペーン
  • ディスプレイ キャンペーン
  • デマンド ジェネレーション キャンペーン
  • P-MAX キャンペーン

ただし、動画キャンペーンでもバンパー広告やスキップ不可のインストリーム広告は対象外です。これらはTrueView(視聴課金型)ではなく、インプレッション課金のため、エンゲージビューの計測対象になりません。

数値の確認方法

エンゲージビューコンバージョンは、レポートの「コンバージョン」列に合算されて表示されるため、通常は内訳がわかりません。確認するには、以下の手順で分類表示を使います。

  1. レポート画面で「分類」アイコンをクリック
  2. 「コンバージョン」→「広告イベントタイプ」を選択
  3. 分割表示された「エンゲージビュー」行の数値を確認

計測期間の調整方法

計測期間(アトリビューション期間)は、コンバージョンアクションごとに変更できます。

設定手順

  1. 「目標」タブ →「コンバージョン」を開く
  2. 変更したいコンバージョンアクションの設定を開く
  3. 「エンゲージビューコンバージョンの計測期間」から期間を選択して保存

選択肢は1日〜7日間(1日刻み)と30日間の計8パターン。デフォルトは3日間です。質の低いエンゲージビューコンバージョンを減らしたい場合は、1日間への短縮が有効でしょう。

エンゲージビューコンバージョンが引き起こす問題点

公式ヘルプを読む限り、エンゲージビューコンバージョンは合理的な指標に見えます。しかし、実際の視聴体験を思い出してください。YouTube広告が流れている間、画面をじっと見ていますか? 別タブで作業したり、スマホを置いて離席したりしていませんか?

広告を意識していない状態でも、動画が流れきれば「完全視聴」扱いになります。インフィード広告に至っては、なんとなく5秒眺めただけで「エンゲージビューあり」と判定される。視聴の質に関係なく条件を満たせば計上されてしまうのです。

もしある動画広告が魅力的に感じた場合、CTAをクリックしてページを見にいきたくなりませんか?クリックして、もしコンバージョンした場合はエンゲージビューコンバージョンではなく、(クリックスルー)コンバージョンとして計上されます。

Google広告以外に配信していればコンバージョンすることもありますし、既存顧客であればメールマガジンなど広告以外の経路で訪問、コンバージョンすることも多いと思います。このように購買意向が高まるような視聴体験がなくても、エンゲージビューコンバージョンがあったと判定されるケースは多いです。

「そのエンゲージビューの視聴はちゃんとした意識された視聴なのでしょうか?」
「そのコンバージョンは本当に視聴によってもたらされたものなのでしょうか?」

このような観点で考えると、ヘルプページに書いてあるような行動はそこまで多くないと感じます。エンゲージビューコンバージョンが発生したとしても全体の一部くらいに思われるでしょう。しかし実際にいろんな広告アカウントを見てみると、キャンペーンで発生しているコンバージョンの大半がエンゲージビューコンバージョンというケースも散見されます。

これらのエンゲージビューコンバージョンは価値があるものなのでしょうか。筆者は以下のような問題点があると考えています。

①アトリビューション重複のリスク(実数値との乖離)

他チャネル(たとえばMeta広告やメールマガジン)で獲得したはずのコンバージョンでも、たまたま視聴条件を満たしていればGoogle広告の成果として計上されます。現実には1件しか発生していないコンバージョンが、複数の管理画面でそれぞれカウントされる。これがアトリビューション重複の正体です。

こうしたケースが増えると、管理画面のコンバージョン数値と、広告主側の基幹システムやGoogle アナリティクスなどのより実態に近い数値との乖離が大きくなります。これが成果に対する認識のズレを生む原因となってしまいかねません。

②機械学習への悪影響(既存顧客への偏り)

広告媒体にとって、エンゲージビューでの1件もクリックスルーでの1件も同じ価値です。すると機械学習は「より効率よくコンバージョンにつながる配信先」を探し始めます。

既存顧客はその条件を満たしやすいでしょう。ブックマークやメルマガ経由でも購入するため、動画を見せるだけで"貢献した"ように見せかけられる。媒体にとっては効率的でも、広告主にとっては新規獲得につながらない配信に予算が流れる状態。これは機械学習がハックされていると言っても過言ではありません。

媒体にとっては、YouTubeのヘビーユーザーである既存顧客に広告を当てるのが最も効率的です。ただ、それは機械学習が「本当に価値のあるコンバージョン」ではなく「取りやすいコンバージョン」に最適化されている状態。広告主の意図とはズレた学習が進んでいるとも言えます。

③誤った投資判断

①と②の結果、誤った投資判断につながります。管理画面上は好調に見えても、実際の売上やLTVには貢献していない。そんな本来は価値が低いはずのコンバージョンに価値があるように見えてしまうことで、実際の成果にあまり寄与していない広告配信に、知らず知らずのうちに予算を投下してしまうことが予想されます。

たとえば、P-MAXキャンペーンのパフォーマンスが表面上は良く見えても、内訳が質の低いエンゲージビューコンバージョンばかりで「中身がスカスカ」だったというケースは少なくありません。

この問題は、キャンペーンといった”配信手法”の観点だけでなく、”どのようなオーディエンスに費用を投ずるか”という観点でも発生します。既存顧客は、広告がなくても購入につながるケースが多くあり、このようなインクリメンタリティー(増分効果)がない配信に対して多くの費用が投下されてしまう状況は、広告投資としては好ましくありません。正しい投資を行うためには、正しい成果の評価が不可欠です。

エンゲージビューコンバージョンが発生しやすいケース

では質の低いエンゲージビューコンバージョンが発生しやすい状況はどのようなものがあるか具体的に考えてみましょう。

既存顧客を含めた配信

既存顧客はブックマークやメルマガなど、広告以外の経路でも購入します。動画広告の視聴とコンバージョンの因果関係が薄いにもかかわらず、エンゲージビューとして計上されやすい典型的なパターンです。

前章でも触れたとおり、機械学習はこうした「楽に成果が出る」配信先を好む傾向があるため、既存顧客への配信比率が自然と高まってしまう点に注意が必要です。

コンバージョン地点が浅い配信

マイクロコンバージョン(資料請求やページ閲覧など、購入より手前の行動)をキャンペーン目標にしている場合も要注意です。ハードルが低い分、動画広告を見なくても発生しやすく、因果関係の薄いエンゲージビューコンバージョンを拾いがちになります。

意図せず追加された動画での配信

「動画を見て印象に残り、後からサイトを訪問してコンバージョンする」。エンゲージビューコンバージョンが想定する理想的な行動です。しかし、すべての動画がこの行動を引き起こせるわけではありません。

たとえば、静止画から自動生成された動画はナレーションがなく、ブランドや商品の情報が記憶に残りにくい。また、ダイレクトレスポンス目的の動画は「その場でクリックさせる」ことを狙うため、視聴後の想起にはそもそも向いていません。エンタメ性の高い動画は視聴条件を簡単に満たしますが、商品理解にはつながりにくいでしょう。

そのため、もし「とりあえず動画アセットを入れておきました」といった動画でやたらとエンゲージビューコンバージョンがついていたら注意が必要です。動画内でブランド要素を伝え、その後の購買行動をリフトしてくれるような動画が本来意図したエンゲージビューコンバージョンを生むのだと考えています。

デフォルト設定のまま開始した配信

最近は静止画から動画が自動生成されたりする機能も登場しているため(アセットの最適化)、動画広告を追加していないと思っても実際には動画広告での配信がされ、知らないうちに価値の低いエンゲージビューコンバージョンが発生していることも多いのだろうなと想像しています。

特にGoogle広告で新たにキャンペーンを設定する際に、細かな設定を飛ばしてデフォルト設定のまま進めてしまうとエンゲージビューコンバージョンが発生しやすい状態になってしまいますので注意しましょう。

効果的な対処法

エンゲージビューコンバージョンをオフにする設定は存在しません。また、すべてが無価値というわけでもなく、本来の意図どおり視聴が購買を後押ししたケースも含まれています。

だからこそ重要なのは、「質の低いエンゲージビューコンバージョン」を減らす工夫です。以下に具体的な対処法を紹介します。

定期的なモニタリング

前述の「分類」機能を使い、エンゲージビューコンバージョンの発生状況を定期的に確認しましょう。Google広告の管理画面だけでなく、GA4など別の計測ツールのデータと照合することで、乖離の有無を把握できます。

理想的なエンゲージビューコンバージョンが発生しているなら、サイト全体のコンバージョン総量も増えるはずです。総量が横ばいなのに管理画面の数値だけ伸びている場合は、質の低いエンゲージビューコンバージョンを疑ってください。

別の計測手段の数値をレポートに追加

別の計測手段の数値をレポートに追加しておけば、都度分類から見に行かなくても異常値が検知できたりするでしょう。理想の意味でのエンゲージビューコンバージョンがもし発生しているのであれば、サイト全体のコンバージョン総量が増えるといったことも期待できるかもしれません。

ただ総量も増えた兆候もないし、管理画面とGA4の数値も乖離しているし、分類で見た実際のエンゲージビューコンバージョンの数値が大きければ、それはきっとただの質の低いエンゲージビューコンバージョンだと思います。

アトリビューション期間の見直し

アトリビューション期間をデフォルトの3日間から1日間に短縮するのも有効です。

購買意向が本当に高まっているなら、視聴後すぐにコンバージョンに至る可能性が高い。3日間のうちに「たまたま」発生したコンバージョンを拾うリスクを減らせます。設定方法は「調整方法」セクションを参照してください。

動画広告の目標や目的の見直し

前章で挙げた「発生しやすいケース」を逆手に取り、対策を打つことも可能です。

  • 既存顧客を除外:動画広告を使うキャンペーンでは、除外オーディエンスに既存顧客リストを設定する
  • コンバージョン地点を深くする:マイクロコンバージョンではなく、購入や申込など本来求める成果地点を目標に設定する

エンゲージビューコンバージョンをオフにできない以上、意図しないコンバージョンが発生しにくい環境を整えることが重要です。

エンゲージビューコンバージョンをオプトアウトできない以上、意図しないコンバージョンが発生しやすい状況をいかに避けるかが大事です。

キャンペーン構造の分離(静止画/動画の分離運用)

デマンドジェネレーションキャンペーンでは、動画広告と静止画広告(シングルイメージ、カルーセル)を同一キャンペーン内で配信できます。しかし、動画広告のコンバージョンにはエンゲージビューが含まれるため、静止画と同じCPA基準で評価すると実態を見誤る恐れがあります。

そこで、動画と静止画でキャンペーンを分ける運用が有効です。動画キャンペーンは目標CPAを低めに設定し、エンゲージビューの影響を織り込んで管理します。

そこでデマンドジェネレーションキャンペーンでは動画広告と静止画でフォーマットでキャンペーンを別立てとし、クリックスルーのみのコンバージョンで管理するものと、エンゲージビューコンバージョンを含む形で管理するものにわけて運用できます。

エンゲージビューコンバージョンが不自然に多く発生する際は、動画広告のみのキャンペーンの目標コンバージョン単価を少し割り引いて対応することで一定の制御が可能となります。

※静止画広告でもアセットの最適化機能で動画が生成されてしまうと、動画広告として配信されてしまうため、分離運用する際はアセットの最適化の動画をオプトアウトしておく必要があります。

動画クリエイティブの見直し

エンゲージビューコンバージョンの本来の意図は、「動画視聴が購買意向を高めた」場合を評価することです。そのため、視聴後にブランドや商品が想起されるクリエイティブが理想的です。

具体的には、以下のポイントを意識してみてください。

  • 冒頭5秒以内にブランドロゴや商品名を表示する
  • 商品のベネフィットを言語化し、ナレーションで伝える
  • 視聴後に検索してもらえるよう、覚えやすいキーワードを訴求する

こうした工夫により、質の高いエンゲージビューコンバージョンが発生しやすくなります。

成果を出す縦型動画広告3つのコツをまとめた以下の記事もぜひ参考にしてみてください。

自動化時代には、何を”良し”とするかが大切

コンバージョンアクションは単なる計測手段ではありません。どんなターゲティングやクリエイティブが有効だったかを学習し、自動化の精度を左右する「運用のレバー」です。

エンゲージビューコンバージョンも、動画広告の間接的な貢献を評価する有用な指標です。ただし、本記事で解説したとおり、視聴意図の低い行動まで計上されやすい側面があります。どの行動を「成果」として認めるのか。その定義と管理こそが、自動化時代の広告運用者に求められる役割ではないでしょうか。

広告運用の自動化はどんどん進歩していきます。しかし広告媒体の推奨や最適化を盲目的に信じるのではなく、本当に広告主にとって最適な状態になっているのか?を監視し、ときには制御を加えることが大事になってくると考えています。

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