
LP(ランディングページ)を改善しようとすると、多くの人がメインコピーやデザインなどの目立つ要素に注力します。
一方で、見逃されがちですがCTA(Call To Action)や入力フォーム周辺に添える「マイクロコピー」も、成果を左右する重要なポイントです。
- CTAボタンの下に「※キャンセルはいつでも可能」と一言添えたことで、登録率が向上
- ホテル予約サイトで、空室状況を「残り3部屋!」と表示することで予約数が大幅に増加
たとえばこのように、たった数文字の違いがユーザーの背中を押し、成果を改善するケースは少なくありません。
そこで今回は、普段から広告クリエイティブやWebサイトの企画・制作・ディレクションを行っている筆者が、効果的なマイクロコピーの作り方を事例とともに紹介します。
「既存のマイクロコピーをもっと効果的にしたい」「最小工数でLPの成果を改善したい」 という方は、ぜひ最後まで読んでみてください!


目次
マイクロコピーとは?
マイクロコピーとは、CTAや入力フォーム周辺などに配置される、ユーザーの行動を後押しするための短い補助的なコピーのことを指します。
たとえば、画像の赤枠部分では「広告運用などサービスに関するご質問やご相談はこちら」という一文が添えられています。これは「お問い合わせフォームへ」というボタンの文言だけでは伝えきれない、具体的な利用シーンや目的を補足する役割を果たしています。
このようにマイクロコピーは、ユーザーの疑問や不安をあらかじめ想定して解消したり、行動に迷っているユーザーの背中をそっと押したり、最終的なアクションのハードルを下げる重要な要素です。
マイクロコピーに注力すべき理由
マイクロコピーは、すでに行動直前まで来ているユーザーに向けたごく短い表現であるため、訴求軸の検討が必要なメインコピーやデザインなどと比べて、少ない工数で成果改善につなげやすいのが特徴です。
また、スタンフォード大学の行動科学者・B.J.フォッグ氏が提唱した『フォッグ式消費者行動モデル(FBM)』によれば、人が何かしらの行動を起こすには、「モチベーション」「実行能力/行動障壁」「きっかけ」の3つの要素が揃っている必要があるとされています。
CTAの文言は「購入」や「資料請求」など、ユーザーにしてほしい“行動そのもの”を表しますが、マイクロコピーは、その行動を引き起こすために「モチベーションを上げる」「行動障壁を下げる」「きっかけを作る」役割を担っているのです。
ここからは、3つの目的別に具体的なマイクロコピーの事例をご紹介していきます。
目的別のマイクロコピー事例
優れたマイクロコピーを作るには、事例からヒントを得るのが有効です。
ここでは、「モチベーションを上げる」「行動障壁を下げる」「きっかけを作る」という3つの目的に分けて、さまざまな企業のWebサイトを参考に作成したサンプル事例をご紹介します。
モチベーションを上げる
ユーザーが行動を起こすためには、「やってみよう」と思える気持ち=モチベーションが欠かせません。「お得そう」「便利そう」「安心できそう」といったポジティブな要素を伝えることで、行動を促す工夫をしている事例を見ていきましょう。
便利さやお得さを具体的に伝える
以下のオンライン講座の事例では、「24時間・365日どの講座も受け放題!」というコピーで、忙しい人でも自分のペースで利用できることを伝えています。
またCTAボタンには「90日100円で試してみる」と具体的な金額や日数を記載し、低コストで長い期間試せることをアピールしています。
CTAを押すと何ができるかを伝える
以下の法人向けサービスの事例では、CTAの上部に「設定から運用までサポート」という文言を添えることで、ユーザーに安心感とサポート体制のイメージを伝えています。
「設定から手伝ってくれるなら……」と、相談への心理的ハードルを下げ、アクションの後押しにつなげています。
他にも利用している人が多くいることを伝える
以下のマッチングアプリの事例では、「利用者数No.1」というコピーで「みんなが使っている」という事実を数字で示して安心感を高め、アプリを使ってみようという気持ちを後押ししています。
行動障壁を下げる
ユーザーが「このサービスを使ってみたい」と思っても、心理的なハードルが残っていると、途中で離脱してしまうことはよくあります。たとえば「登録が面倒そう」「費用がかかりそう」「失敗したらどうしよう」といった不安です。
ここでは、そうした行動の妨げとなる要素を取り除くマイクロコピーの工夫を紹介します。
実績で不安を払拭する
以下の法人向けサービスの事例では、サポート体制を記載するだけでなく「継続率98%」「導入実績700社以上」といった、訴求している内容の裏付けとなる実績もアピールすることで、信頼性を高めて不安を払拭しています。
キャンセル可能なことを伝える
以下のサブスクサービスの事例では、「いつでもキャンセルOK」と明記。「解約できるか心配」と感じているユーザーに対して、“試してみよう”と思える心理的余白をつくっています。

個人情報が不要なことを伝える
以下の保険会社の事例では、「個人情報の入力不要」というコピーによって、「営業されるかも」「入力が面倒」という不安を解消。
さらに「5秒でかんたん」という一言を添えることで、“手軽さ”をしっかり伝えて行動を後押ししています。
“ついで感”でハードルを下げる
以下のブライダルフェアの事例では、「デート気分で楽しめる」というマイクロコピーによって、「結婚準備=大変そう」という印象をやわらげています。
“デートの延長で参加できる”と伝えることで、気軽に踏み出してもらうための心理的工夫となっています。
きっかけを作る
モチベーションが高く、行動の障壁が低くても、「いつ申し込むか」「どのタイミングで決めるか」が曖昧だと、ユーザーは後回しにしがちです。そのため、行動を後押しする「きっかけ(トリガー)」を用意しましょう。ここでは、「今行動する理由」を明確に伝えるマイクロコピーの事例を紹介します。
期間限定であることを強調する
以下のジムの事例では、「3/31までの入会で初月無料」というコピーで期間限定の特典であることを強調しています。「今申し込まないと損をするかも」と思わせることで、後回しにせず申し込むきっかけをつくっています。
手順やステップを見せて「すぐできる感」を出す
以下のオンライン相談サービスの事例では、CTAの近くに「3STEPで完了」「予約不要ですぐ始められる」といった表現を添えることで、「難しそう」「面倒そう」と感じる余地を減らし、「今やってみよう」と思えるハードルの低さを伝えています。
オススメのプランや利用イメージを伝えて迷わないようにする
以下の食品ECの事例では、おすすめのプランを強調したり、「まずは少量でお試し」「いろいろ楽しむなら〇〇セット」など、プランごとの利用イメージをマイクロコピーで補足しています。
何を選ぶか迷っているユーザーに対して、選択のきっかけとなるヒントを与えることで、行動までの迷いを減らす工夫です。
マイクロコピーの効果を最大化するために押さえておくべきポイント
ここまで具体的な事例を紹介しましたが、単に事例を真似したり、伝えたい情報を詰め込むだけでは成果につながりません。
ここでは、実際にマイクロコピーを設計する際に押さえておくべき3つのポイントを紹介します。
①ゴール(促したい行動)を明確にする
まずは、ユーザーにどんな行動をしてほしいのか、最終的なゴールを明確にすることがマイクロコピー設計の出発点です。
具体的には以下のように、CTAの文言(=行動)とその行動を後押しするマイクロコピーは、目的に応じてセットで使い分けましょう。
目的 | CTAの文言 | マイクロコピー(補足) |
---|---|---|
購入を促す | 今すぐ購入 | 限定特典つき/本日限り |
会員登録を促す | 無料で会員登録 | 1分で完了/SNS連携OK |
資料請求を促す | 資料ダウンロード | 料金プランあり/導入事例あり |
ゴールが複数あると、ユーザーの迷いを招く可能性があります。基本的には一つの行動に絞るのがおすすめですが、高単価商材やBtoB商材のように検討期間が長い場合は、「無料相談」「資料請求」など複数の選択肢を用意するケースもありますよね。
複数の行動を促したい場合は、「主となるアクション」を1つに絞り、最重要のCTAやマイクロコピーが目立つよう設計しましょう。
②過去のデータや定性情報から「ユーザーが行動しない理由」を探る
マイクロコピーを考えるときは、ただ言葉を足すのではなく、「何がユーザーの足を止めているのか?」という視点から逆算するのが効果的です。
感覚だけに頼らず、以下のようなデータや定性情報からヒントを得ましょう。
<ユーザーが行動しない理由を探るために活用できる情報>
- お問い合わせ内容
→ ユーザーが何に不安を感じているかのヒントになる - SNSや口コミ・レビューサイト
→「入力しづらかった」「ここがわかりづらかった」という直接的な意見が見つけられることも - Googleアナリティクスやヒートマップツール
→ 離脱ポイントや無反応なエリアから“迷い”が見える - 競合サービスに書かれているマイクロコピー
→ 他社が先回りして伝えている内容も参考に
ユーザーが行動しない理由が複数考えられる場合は、A/Bテストでマイクロコピーを比較し、どの表現が最も効果的かを検証していくのもおすすめです。
③パッと見て伝わる工夫をする
一瞬でユーザーの行動を後押しするために、「言葉そのもののわかりやすさ」と「見せ方の工夫」の両方を意識しましょう。
コピーをシンプルにする
京都大学大学院の研究によると、人が一度に視認できる文字数は9〜13字程度とされています。
そのため、コピーはこの文字数を意識し可能な限りシンプルにすることをおすすめします。
例:
✖「最短で翌日に商品が届きます」
〇「最短翌日お届け」
しかし、ただ短くすればよいわけではありません。数文字増やすことでより理解しやすくなったり、訴求力が高まるのであればあえて長くするのも有効です。
例:
✖「かんたん登録」
〇「かんたん30秒で無料登録」
ユーザーに馴染みのある表現にする
業界用語や専門用語は、業界関係者には伝わりやすくても、一般ユーザーには意味が伝わりにくいことがあります。ターゲットが一般ユーザーであれば、できるだけ日常的な言葉に置き換え、誰にでも理解できる表現を選ぶことが重要です。
例:
✖ 「人間工学に基づいたエルゴノミクス設計」
〇 「長時間座っても疲れにくい」
✖ 「マルチデバイス対応」
〇 「スマホ・PC・タブレットで使えます」
逆に、専門知識のあるターゲットに向けたマイクロコピーでは、あえて専門用語を使うことで訴求力や信頼感を高めることもできるため、ターゲットのリテラシーに応じて言葉を使い分けましょう。
例:
✖ 「エネルギーを効率よくチャージ」
〇 「MCTオイル&BCAA配合で、運動時のエネルギー補給をサポート」
✖ 「肌にやさしい処方」
〇 「アルコール・パラベン・鉱物油フリー」
視覚的にも“伝わる”形に整える
テキストの内容だけでなく、デザインやレイアウトを工夫することで、情報を直感的に理解しやすくなります。
例1:箇条書きを活用する
✖
「このプランでは、月額980円で動画が見放題、ダウンロード機能があり、広告なしで快適に視聴できます。」
〇
このプランの特長
・月額980円で動画が見放題
・ダウンロード機能付き(オフライン視聴OK)
・広告なしで快適に視聴
例2:強調表現を活用する
・「」【】などで要素を囲う:「【今だけ限定!】」
・大きくする:「半額セール実施中」
・太字にする:「送料無料」
・文字や背景に色を付ける:「残り3日!」
例3:画像化して強調する

まとめ
ここまで書いた通り、マイクロコピーはたった数文字の違いで成果が大きく変わる重要な要素です。
以下のポイントを意識しながらマイクロコピーを設計し、仮説を持って改善を重ねていくことが、成果につながる近道です。
- ゴールを明確にする
- 過去のデータや定性情報から「ユーザーが行動しない理由」を探る
- パッと見て伝わる工夫をする
今回はマイクロコピーに注目してご紹介しましたが、CTAの文言やデザインの考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。LPの制作や改善に取り組んでいる方は、あわせてご覧ください。
