
突然ですが、あなたはどちらがお得だと思いますか?
- 人気シューズ!5,000円
- 人気シューズ!通常価格10,000円のところ、いまならなんと5,000円!
おそらく多くの方が後者を選んだのではないでしょうか。
日常でも、こうした魅力的なオファーを目にすることは多いですよね。一見して ”お得だ!” と思う背景には、「アンカリング効果」という心理効果が働いている可能性があります。
このような心理効果をうまく活用すれば、価格の提示方法ひとつで商品やサービスの本来の価値を引き立て、マーケティングや広告運用の成果をより高められるかもしれません。
この記事では、マーケティングや広告施策の活用例や、アンカリング効果の概要、取り入れる際のポイントをご紹介します。


目次
アンカリング効果のマーケティング活用例
実際に、アンカリング効果がマーケティングや広告施策に活用されている例をみてみましょう。
複数プランを提示
異なる価格プランを提示する際、最初にあえて高めのプランを見せたり、分かりやすい比較表を使うことで、次に提示するプランがお得に見える、という効果を狙えます。
プラン | 価格 |
---|---|
プレミアムプラン | 10,000円 |
スタンダードプラン | 5,000円 |
図の例は、最初に提示されたプレミアムプランの「10,000円」が基準となり、あとからスタンダードプラン「5,000円」をみると”(最初にみた「10,000円」よりも)安くてお得だ!”と感じられます。
それによって 「5,000円の価値があるか」よりも「お得だから買う」「割安だから買う」と判断軸がズレてついつい購入してしまう、ということが起こります。
サブスクリプションの価格設定
例えばサブスクリプションモデルでは、「月額払い」と「年間一括払い」を併記することで、トータル価格の差を提示しています。
支払い方法 | 価格 |
---|---|
月額払い | 10,000円 |
年間一括払い | 86,000円(実質 8,000円/月) |
年額一括払いの方が結果的に安くなることを明確に示すと、ユーザーの購入・契約意欲を高められるかもしれません。
また年間一括払いが選ばれることで、より多くのユーザーの長期契約(少なくとも1年間は解約がない)を見込めます。
組み合わせを活用した価格提示
例えば以下の例をみてみましょう。
- NoteBook PC:198,000円
- NoteBook PC + アクセサリセット:208,000円(通常より3万円お得)
NoteBook PC単体でみると高額な印象を受けますが、ここに 「NoteBook PC + アクセサリセット」という3万円もお得なセットを用意します。
すると、「NoteBook PC:198,000円」が基準(アンカー)になり、“たった1万円上乗せで、アクセサリが3万円分お得” という印象を与えます。
そうすることで、NoteBook PC と アクセサリをそれぞれバラで買うよりも、最初からセットで買ったほうがコスパが良い、と感じ、単価の高い商品(この場合、MacBook Pro + アクセサリセット)を購入しやすくなります。
このように感じる心理効果を「アンカリング効果」と呼びます。
アンカリング効果とは?
アンカリング効果は、行動経済学や心理学における認知バイアスの一種です。
先に提示された数字や情報(アンカー)が、その後の判断や評価に強く影響を与えるという現象を指します。
たとえば先ほどの例のように、「定価10,000円 → 特別価格5,000円」と “元の価格” と “割引後の価格” が示されると、私たちは「10,000円」というアンカーを基準に、「5,000円」が相対的に安く感じられます。
これは多くのセールスや広告の場面で使われている代表的な手法といえるでしょう。
人間の脳は、一度目にした数字や情報を「基準」として認識する傾向があります。
基準を提示することで、後から見る情報もその基準と比較する形で処理するため、「相対的にお得」「予想より安い」と感じやすくなるのです。
アンカリング効果を高めるためのポイント
アンカリング効果をマーケティングや価格設定でより効果的に活用するには、最初に提示する「アンカー(基準となる情報)」の使い方が重要です。以下のポイントを意識すると、より強い影響を与えることができるでしょう。
1.インパクトのある数字や具体的な情報を打ち出す
最初に見た情報が印象に残らなければ、十分なアンカリング効果は得られません。
例えば、「割引中!」とだけ記すよりも「今だけなんと2,000円(通常価格10,000円)」のように具体的な数値を打ち出すと強い印象を与えられます。
割引以外にも、お得なプランがあればその詳細を明記しておくことも効果的です。
2.視覚的にわかりやすい訴求方法を取り入れる
最初に目に入る情報が重要になるので、強調された数字や文字の大きさや配置も効果的です。
読み手にとって印象に残りやすかったり、比較しやすいように、図やグラフを活用することで「どこの差分があるのか」「どういう違いがあるのか」を瞬間的に理解してもらえるように工夫すれば、より高い効果を得られます。
3.複数案を並行してABテストする
どういった情報や見せ方がアンカリングとして効果が高いかは、ターゲットによって異なります。表現や訴求のバリエーションを複数用意して、より良い結果を得られるようにテストを行います。
テスト例:
- 割引率表示 vs. 割引額表示
- 通常価格に対して…
- 「30%OFF!(何%お得なのか)」
- 「2,000円OFF!(いくらお得なのか)」
- 通常価格に対して…
- 高額プランの先出し vs. 通常プランの先出し
- 「プレミアムプランを先に提示 → 次にスタンダードプラン」
- 「スタンダードプランを先に提示 → 次にプレミアムプラン」
特に広告文やコピー、デザインなど、あらゆる要素をテストして、効果が高いパターンを模索していきましょう。
アンカリング効果を用いる際の注意点
伝え方や見せ方次第で、マーケティングや広告において高い成果が見込める「アンカリング効果」ですが、使い方を間違えるとかえって逆効果になることもあります。
以下にあげるコトに気を付けながら、適切に扱いましょう。
過度な表現や虚偽は避ける
大前提として、実際は値引きではないのに値引きに見せたりすることはNGです。そうでなくとも人を欺いたり、だますような表現は控えましょう。
- (よっぽどの事情がない場合の)「90%」のような極端な割引
- (年間で行っているはずなのに)「期間限定で〇〇円引き!」
上記の場合、ユーザーに法律やプラットフォームの規約違反する可能性があることにくわえ、ユーザーから「なんだか怪しい」と不信感や嫌悪感を抱かれて、ブランドの信頼を損ねる可能性があります。
恐怖やコンプレックスを煽る手法は避ける
「このままでは危険です!」「早く対処しなければ大問題です!」など、過度に煽るような表現は控えましょう。
短期的に良い結果(購入数や売上が増えた、など)を得られたとしても、一部のユーザーは嫌悪感を抱いているかもしれません。また長い目でみると不信感がつのり、ブランドのイメージダウンにも繋がりかねないでしょう。
クリエイティブや表現は、”それを見たユーザーがどう感じるか” の観点から、いまいちど見直すようにしましょう。
ターゲットの状況やニーズに合うか検討する
例えば、「高額商品か低額商品」、「B to B か B to C」のように、ターゲットや商材によって重要な表現は異なります。たとえば高級ブランドなどであれば、必要以上に割引きされていると品質に不安を感じたり、騙されているんじゃないかと感じますよね。
提供する商品やサービスが、”誰に向けたモノなのか” を整理して、それぞれが受け取る商品やサービスの価値に見合った表現を探していきましょう。
まとめ
「情報の見せ方」を少し工夫するだけでも、ユーザーが受け取る印象や評価は大きく変わります。
アンカリング効果を上手に取り入れることで、価格設定やキャンペーン施策の説得力が増し、実際に売上向上やコンバージョン数増加などの成果が期待できます。
一方で、過度な誇張やユーザーの不安を過剰に煽るようなやり方は避け、あくまで信頼感を重視して施策を組み立てましょう。
また常にテストを繰り返しながら、効果的な訴求を見つけ出すことが重要です。
マーケティング施策や広告運用に取り入れることで、競合との差別化はもちろん、ユーザーにとってもわかりやすく商品やサービスの魅力を伝えるきっかけになるはずです。
