株式会社βace(Minimal)
株式会社βace
ECチームリーダー 兒嶋さま前職は大手日用品メーカーにてデジタル施策を統括。2021年にMinimalへ入社し、ECを中心に商品企画、撮影、販促物制作、メルマガ・LINE設計など幅広く担当。「CHOCOLATE ADDICT CLUB」など新施策も多数手がける。

クラフトチョコレートブランド Minimalさまは、これまでPRを軸にファンとの関係性を築いてきました。本格的に広告に取り組み始めたのは、コロナ禍が一段落した2021年のことでした。

以前は、“お取り寄せスイーツ”ブームもあり、毎月新作を発表するスタイルで多くの注目を集めていたMinimalさま。しかし、ブームも落ち着き、次なるフェーズとして直面したのが「ブランドの思想に共感してくれるファンを、いかに増やし、長く関係を築いていくか」という課題でした。

けれども、そこに“売る”という文脈を持ち込んでしまうと、Minimalの世界観が損なわれてしまう懸念があったといいます。

そこで、アナグラムとの取り組みを通じて、広告を「売るための手段」ではなく、ブランドの想いや哲学を“共感”という形で届けるコミュニケーションへと再定義。

ブランドの“らしさ”を守りながらも、購入につながる導線を丁寧につくり上げていったお取り組みについて、お話を伺いました。

このインタビューは、2025年4月に行われました。

聞き手:アナグラム株式会社
広告運用事業部 チームリーダー 北島 舞
書き手:アナグラム編集部

初めての広告運用に必要だったのは、“共に考える伴走者”

──Minimalさんは、これまでPRを軸にファンとの関係性を築いてこられましたが、本格的に広告に取り組み始めたのはいつ頃からでしょうか?​

兒嶋さん:私が入社した2021年頃までは、広告らしい広告はほとんど行っておらず、PRを軸にメディアやSNSでの話題づくりに注力していました。​

しかし、コロナ禍で“お取り寄せスイーツ文化”が一気に広がり、月替わりのスイーツをオンラインで販売しては毎月完売するほどの盛り上がりでした。​その一方で、「これはブームだから、いずれ落ち着くぞ」という危機感も持っていました。​

実際、コロナが収束した2021年を境に、一過性の熱狂は少しずつ落ち着き始め、「ちゃんとグロースさせなければ」となったんです。​私の入社も、まさにそのタイミングで「本格的に広告に取り組み始めるしかない」という空気でしたね。​

──そこで、アナグラムにご依頼頂いたのですね。その理由も伺いたいです。

兒嶋さん単に「広告を出して売上を伸ばす」っていうパートナーではなく、「ブランドの想いに寄り添って、どう広告を設計するか」を一緒に考えてくれる存在が必要だと思ったんです。

アナグラムさんは、最初のやりとりからその姿勢が伝わってきて。お願いするならここだな、って思いました。

――「一緒に考える」って、簡単なようで実は難しい部分ですよね。

兒嶋さん:形式的に「これが成果出るのでやりましょう」ではなく、「Minimalならどうするか」を常に一緒に考えてくれる。実直に向き合ってくれる方が多くて、今も本当に信頼しています。

失敗と改善を重ねた1年間の軌跡。UGCシリーズの動画が開いた表現の幅

──ブランドの世界観を大切にされているMinimalさんにとって、広告クリエイティブを任せるのは勇気のいることだったのでは?​

兒嶋さん:最初はかなり私から「指示ガチガチ」でしたね。Minimalの世界観を壊したくないという思いが強く、写真も動画も「ここはこうして」「この角度で」と細かく指示することが多かったです。​

──でもそこから、アナグラムと一緒に変化していったと。

兒嶋さん:ですね。だんだん「任せたほうが、良いものが出てくるな」と実感するようになっていい意味で「溶けて」きた感覚があります。​

最近ではアナグラムさんから「こういうのどうですか?」って提案してもらえるようになり、表現の幅がすごく広がったと思います。

──「溶けてきた」って、いい表現ですね。

兒嶋さん:ありがとうございます(笑)。スイーツなので、おいしそうに撮ることももちろん大切なのですが、他の表現や手法にもチャレンジしてみたかったんです。

例えば、文字を多く入れてみたり、コンセプトを前面に出してみたり。そこからしばらく続けてみたのですが、購入を成果に置いた場合、なかなか成果につながらなくて……。​

最初は僕の考えや経験値がベースでしたけど、やり取りを重ねていくうちに、こちらの考えがアナグラムさんに伝わり、最近では、アナグラムさんから「これも試してみませんか?」みたいな提案も出してくれるようになり、クリエイティブの表現の幅が広がってきているのを感じます。

──アナグラムとの取り組みの中で、特に印象に残っている提案はありますか?

兒嶋さん:やはり「UGC(ユーザー生成コンテンツ)シリーズ」の動画ですね。あのタイミングで実施まで踏み込むことは、自分たちだけでは難しかったと思います。

当初UGC系の動画のご提案を頂いた時は、「Minimalらしさ」が損なわれるんじゃないかと思い、かなり抵抗感を持っていました。​実際、UGC動画は撮影の仕方によっては、Minimalのブランドメッセージと噛み合わないことも多いイメージで、あまり前向きではなかったんです。​

──確かに、Minimalさんの世界観を考えると、簡単には踏み切れなさそうですね。

兒嶋さん:そうなんです。しかし、「とりあえずやってみよう」と思えたのは、アナグラムさんの提案があったからですね。

もちろん、実際にやってみた結果、うまくいったものもあれば、課題が残ったものもありました。しかし、それ以上に得られた“学び”がすごく大きかったんです。

──“学び”とは具体的にどのようなことだったのでしょうか?

兒嶋さん:私たちにとって、クリエイティブで伝えるメッセージは「おいしい」だけじゃ足りないんです。

私達が何を目指しているのか、どうありたいのか——そうしたブランドの姿勢こそ伝えていきたい。だからこそ、広告もただ目を引くだけじゃなくて、ちゃんとメッセージが伝わるものであってほしいと思っています。

──なるほど、それで動画施策を進めていったんですね。

兒嶋さん:ただ、最初の頃は本当に苦労しました。 素材が足りない、音声どうする、構成どうする…。スライドショーみたいな動画ばっかりになって、「これ、Minimalじゃないな」と思ったこともありました。

そこから1年かけて、撮影から編集まで試行錯誤をし、 その成果が、商戦期でもあるバレンタインのタイミングでようやく実を結ぶことができました。

──それは感動モノですね…!

兒嶋さん:そこからは、全てがホームランでなくても、どれかしらが当たれば、次につながる。と割り切って、素材の量も質も意識して「とにかくたくさん撮る」ことを意識できるようになりました。

定期便は想定以上の反響。広告は「入口」ではなく「体験の始まり」へ

──少し話が変わりますが、今年に入って定期便の広告費用の割合が一気に増えましたよね。あれは想定内だったんですか?

兒嶋さん:ある程度は見込んでましたが、ここまでとは正直想定以上でした。ECビジネスは、既存のお客様をどれだけ積み上げて、リピートにつなげられるかが成長の鍵だと思っています。

しかしチョコレートは嗜好品なので、必ずしも毎月食べたくなるものではありませんよね。甘いものが欲しい日でも、あんこが食べたいこともあれば、ケーキの気分の日もある。

その中で、アナグラムさんとご一緒している「CHOCOLATE ADDICT CLUB」は、チョコレートを使った”月替り”のスイーツという、セレンディピティを楽しんでもらう設計にしています。さらにスキップ機能もあるので、無理なく続けられる。

この仕組みが功を奏して、解約率は一般的なサブスクリプションサービスと比べてかなり低く抑えられていると感じています。

──顧客体験を設計する上で意識している部分はありますか?

兒嶋さん:「Minimalらしさ」を感じてもらえるような世界観と、それにフィットするプロダクト設計ですね。メンバーシッププログラムや店舗での体験も含めて、すべてがブランドの一貫性をもってつながるように設計しています。

──つまり、広告で出会っても、その後の体験でブランドの良さを実感してもらえるようになっている、と。

兒嶋さん:はい。私たちにとって広告は、「商品を売るための手段」ではなく、「Minimalというブランドの体験の入り口」であってほしいんです。

味はもちろん、その背景にある思想やストーリーに共感してもらうための設計にしています。広告を通して、Minimalの価値観に触れてもらいたい。だからこそ、メッセージがきちんと伝わる表現にはこだわっています。

“売れる広告”より“伝わる広告”を。「一緒にブランドを育ててくれる」パートナー

──なるほど。広告の役割自体も、従来と少し変わってきているのかもしれませんね。

兒嶋さん:そう思います。どんなに好きなブランドでも、最初にどう出会ったかって、意外と覚えていないものですよね。だからこそ、“最初に気づいてもらえるか”がとても大切なんです。

ブランドの存在を知ってもらえないと、そもそも選ばれることもない。だから、日常のなかでふと目にした広告がどんな印象を残すか、その一瞬まで設計したいと思っています。

──ブランドの体験価値そのものが、広告にもにじんでいるということですね。

 兒嶋さん:最近は特にそう感じています。印象的だったのは、ECでの購入に向けた広告にもかかわらず「広告を見て店舗に来ました」というお客様が増えてきたことです。

──それは広の効果を実感できる変化ですね。

 兒嶋さん:はい。たとえばバレンタインの時期に、店舗スタッフが「どこで知ってくださったんですか?」と尋ねると、「動画を見て来ました」というお声をいただくようになりました。

ただ美味しそうに見えるだけではなく、「食べてみたい」と感じてもらえて、実際に足を運んでくださる。広告がユーザーの行動変化につながっていることが、現場でも実感できるんです。

──単に“魅せる”だけでなく、“心を動かす”広告になっているわけですね。

 兒嶋さん:そうですね。Minimalの広告では、味や品質だけでなく、信頼感や背景のストーリーが伝わるような動画クリエイティブを重視しています。いわば、“権威性”を持たせることで、お客様の背中をそっと押すようなイメージです。

広告は出会いのきっかけでありながら、そこから店舗、EC、定期便、ギフト……と広がっていく。その循環を意識して、広告設計から施策の検証・改善まで一貫して行っています。

──最後に、アナグラムと取り組む中で感じている一番の価値は、何でしょう?

兒嶋さん:やっぱり「一緒にブランドを育ててくれる」ところですね。売れるだけじゃない。Minimalの“らしさ”や思想を大切にしながら、広告という接点を一緒に磨いてくれる。それって、なかなかできることじゃないと思うんです。

僕らにとって、広告は“伝える手段”。そして、アナグラムさんはその手段を一緒に育ててくれる、心強いパートナーです。

Minimal

CHOCOLATE ADDICT CLUB

Voice Of AdOps担当者の声

Minimalさまが大切にされているメッセージや世界観を、広告を通じてどうすれば最大限に届けられるか。私たちは兒嶋さんと共に、高頻度のサイクルで検証を重ねてきました。

まずは「やってみよう」と前向きに挑戦してくださる姿勢、そして検証の結果を丁寧に振り返り、次につなげていく実直な姿勢。そうした取り組みを一緒に続けてこられたことが、成果につながったと感じています。

今後も「Minimalらしさ」をさまざまな角度から表現する挑戦をご一緒できることを、一ファンとしても心からうれしく思います。

最近では、店舗やECに加えて小売店での販売もスタートされるなど、さらなる成長を続けていらっしゃるMinimalさま。これからもそのブランドの歩みを、私たちも広告の面からサポートできれば幸いです。

この度は、インタビューにご協力いただきありがとうございました。