ゲーム内広告にこれから期待できる理由

ゲーム内広告にこれから期待できる理由

ゲームは数十年前から非常に人気のある娯楽であることは言うまでもないことでしょう。しかも現在は、世界のゲーマー人口が30億人をも超えると言われていることや、ゲーム関連の広告技術も進歩をしていることを加味すると、広告の対象としての「ゲーマー」にブランドの関心も高まっています。

そのため、今回はゲーム内広告の市場、チャンスと課題などについて詳しく見ていきたいと思います。



広告媒体としてのゲーム

ゲームと広告の接点は、実は古くから存在しています。かつてはゲームコードに直接組み込まれたプロダクト・プレイスメントだったり、広告商品として依頼されたゲームだったりでしたが、特にスマートフォンの普及によって広告プラットフォームとしてのゲームの市場が大きく進化し、それを取り巻く複雑なエコシステムができています。

つまり、「ゲーム内広告」を語るとき、この言葉が今やさまざまな種類の広告を包含していることを心に留めておくことが重要です。運用型広告では、モバイルゲームアプリのディスプレイ広告や動画広告が大きな存在感を持っているかと思われますが、同時にPCや据え置き型のゲーム機に関しては、ゲームの世界に違和感なく浸透している広告(例えば、スポーツゲームの会場内広告看板など)も増えてきています。

このように、広告の用途や戦略的な位置づけは、さまざまなマーケティング目標を高いスケールでカバーすることができるため、多くのブランドの広告ポートフォリオにおいて、ますます重要な位置を占めるようになってきていると思われます。

着実に成長する市場

近年、ゲーム内広告の市場が拡大していることが明らかになっています。

市場調査会社のAllied Market Researchのレポートによると、2021年のゲーム内広告の市場規模は既に68億米ドル(約9,100憶円)に達しています。

参考: In-Game Advertising Market Statistics | Forecast - 2030 - Allied Market Research

画像引用元:In-Game Advertising Market Size to Grow by almost USD 3.54 Billion| Forecasting Strategy for the New Normal | Technavio

そして、その傾向はますます強まっている模様です。市場調査会社Technavioの予測では、2020年から2025年にかけて35億4000万米ドル(約4,800憶円)の増分成長が予測されています。

また、広告に限らずゲーム市場自体も引き続き成長を遂げておりますが、コロナ禍で家で過ごす時間が増えていることは、その原動力の一つと言えるでしょう。

参考:3, 2, 1 Go! Video Gaming is at an All-Time High During COVID-19 | Nielsen

このような多くのユーザーの消費行動の変化こそが、広告ニーズへの追い風となっています。

ゲームを通じて幅広い層にリーチ

しかし、広告媒体としてのゲームの興味深いところは、30億人という膨大なユーザー数とそれに対応するリーチだけでなく、幅広いユーザー層でもあります。

画像引用元:In-game advertising is ramping up, but consumers are worried - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

ゲームは娯楽の文化として世代を超えた現象なのです。米国の大手監査企業のDeloitteがゲーマーの年齢層について行った調査によると、米国ではZ世代とミレニアル世代がそれぞれ96%、X世代も89%と非常に高い割合を占めていることが分かります。上の世代は、57%と確かにジェネレーションギャップがあるにも関わらず、それでも比較的高い数字だと言えます。

もう少し細かく見ていくと、広告主にとって戦略的に興味深い、ゲーム機器別の傾向も見えてきます。

画像引用元:Gaming’s popularity offers marketing opportunities for US brands - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

例えば、デジタル市場分析を専門とする企業のComscore社によると、「モバイルアプリのみ」のゲーマーは75%が女性であるのに対し、PCやコンソールゲーマーは65~66%が男性であることが分かりました。こうした軸を基に宣伝したい商品のターゲット層を絞ってみたり出し分けたりする場合も効果的かもしれません。

アトリビューションとUXに関する課題も

ゲーム内広告の分野では、多くのチャンスがありつつも、課題もまだあります。マーケティングのメディアサイトのthe Drumが2021年10月に発表した調査によると、メディアバイヤーの93%が2025年までにゲーム内に広告を出すことに前向きな姿勢を示しており、81%が今後12ヶ月間にゲーム広告にもっと投資する(またはこのまま投資する)と答えた一方で、31%はゲーム内広告に関して躊躇していると回答しています。

参考:93% Of Media Buyers Intend To Run In-game Advertising By 2025 – Despite Misconceptions | The Drum

ここでのハードルは多岐にわたると思われますが、例えばPC/コンソールゲームのブランディングの文脈ではアトリビューションが一つの課題かもしれません。「プレイヤーは本当にクリエイティブを見ているのでしょうか?」「ゲーム内のオブジェクトに遮られて広告の視認性に問題はないか?」などの疑問がある中、つい最近、IAB(Interactive Advertising Bureau)がゲーム内のインプレッションをカウントする基準を新しく設けました。

参考:Why the IAB's updated measurement guidelines could be a watershed moment for in-game advertising | Digiday

今後も、こうしたハードルが次から次へと解消されていくことも期待できるので、ゲーム内広告が徐々に導入しやすくなっていくでしょう。

また、ユーザー体験そのものも重要な課題となりそうですが、ゲーム内広告プラットフォームのAnzuの調査が貴重な洞察を提供しています。

画像引用元:How in-game advertisers can level up, according to gamers - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

回答者(18~34歳のゲーマー)に対して、ゲーム内広告について広告主にどのようなアドバイスをするか尋ねたところ、2番から4番に多かった回答が「ゲーム体験を邪魔したり中断させたりしないように広告を改善して欲しい」という内容で、特に興味深いものでした。

そして最近の技術分野においても、ユーザー体験を重視したイノベーションがうかがわれます。

大手テック企業からの投資も多数

最近、ゲームに対するアドテクノロジー投資が大きく進展しています。

比較的目立つ発表としては、マイクロソフトが2022年第3四半期から基本無料のゲーム内広告サービスを広告主に開放する予定であることが挙げられます。ここで注目すべきは、ゲームプレイを邪魔するような広告がないだけでなく、マイクロソフトが広告予算について追加料金を課さない意向であることです。

競合のソニーもいち早くこれに追随するためか、今年末には基本無料のタイトルで、プレイヤーの邪魔にならないゲーム内バナーなどの広告配信を可能にする計画を発表しました。

参考:Microsoft And Sony Are Looking At Ads On Free To Play Video Game | Forbes

また、ゲーミング・プラットフォームそのものだけでなく、他のサービスも台頭しています。例えば、ロンドンを拠点とするスタートアップ企業Admixは、プログラマティック広告と同様にゲーム内広告の取引きを可能にする技術を持ち、昨年末に2500万米ドル(約34億円)の資本金を獲得することができました。

参考:Admix raises $25M Series B to scale up in-game ads, and prep for metaverse gaming | TechCrunch

上記の例を見るだけでも近い将来、ゲームにおける広告は、より自然にゲームに浸透し、より機動的なものになる可能性が高いと言えます。

ユーザーファーストの広告に

ゲームであれ、ポッドキャストやビデオストリーミングなどの電子メディアであれ、遅くともコロナ以降、多くの人のメディア消費の習慣は変容し、また細分化されています。

そして、人がたくさん集まっているメディアやコンテンツに広告が表示されるようになることは、もはや自然の法則のようですが、最近のデジタル広告における「ユーザーを邪魔しない」アプローチは、明確にユーザーファーストの視点に立ったイノベーションとして評価に値していると思います。

特にゲーム内広告は「ユーザーの行動に干渉せず、有益な情報を提供するにはどうしたらいいか」ということが問われる分野なのではないでしょうか。そのため、今後は「メタバース」や「DtoA」(Direct to Avatar=プレイヤーの仮想人物に直接販売するデジタル商品)といった文脈でのマーケティングを想像していく意味も含めて、ゲーム内広告はすでに興味深くかつ重要な学びを提供してくれるでしょう。

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Jan Hugendick

Jan Hugendick

ドイツの出版社でマーケティングやSEOに携わることをきっかけにリスティング広告に興味を持ち、 ドイツの某メディア大企業直属のWeb広告代理店に転職。そこで5年間、多国・多業界 のアカウントを担当することを経て、2016年にアナグラムに参画。広告運用の他、ブログ執筆と編集を行っています。

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