なぜBtoBでもYouTube広告は効果的なのか?

なぜBtoBでもYouTube広告は効果的なのか?

BtoBマーケティングといえば検索広告や展示会といった定番の手法が思い浮かぶ方も多いでしょう。しかし実は昨今、YouTube広告を活用して成果を上げるBtoB企業が増えています。「YouTube広告はBtoC向け」というイメージのせいで導入を敬遠していませんか?

実際にはブランド認知から見込み客の育成まで幅広く効果を発揮し、高い費用対効果を狙える可能性があります。これまで手を出してこなかった企業が新たな顧客層を開拓し、競合との差別化を図る手段としても注目を集めています。なぜBtoBでも有効なのか、そして具体的にどのように活用すればよいのか。本記事ではその疑問を解き明かし、成功のポイントを分かりやすく解説します。


BtoBでもYouTube広告活用できる3つの理由

ではなぜBtoBでもYouTube広告は活用できるのか?

3つの観点から紹介します。

高精度なBtoBターゲティングが可能だから

YouTubeはGoogleの広告ネットワークに含まれており、検索行動・視聴履歴・デバイス情報など、豊富なシグナルを活用したターゲティングが可能です。

たとえば次のようなアプローチができます。

  • 「CRM 比較」「SFA 導入」などのキーワード検索者に動画広告を配信
  • 特定業種・企業規模・職種(例:従業員100人以上の人事担当)に絞った配信
  • ビジネス系YouTubeチャンネルの視聴者にアプローチ

これにより、ターゲットが少なくなりがち、なおかつセグメントが難しいBtoBでも十分な粒度でリーチ先を絞り込むことが可能です。

無形商材でも「伝わる」情報量を確保できるから

画像引用元:動画広告フォーマットの概要 - YouTube ヘルプ

BtoBの商材は、SaaSやコンサルティングなど、複雑で抽象的なものが多いのが特徴です。こうした商材をテキストやバナーで伝えるのは限界があります。

YouTube広告では、動画を用いることで次のような点で商品やサービスの魅力や特徴を効果的に伝えやすくなります。

  • 課題提示→解決策→導入イメージのストーリーを組み立てられる
  • 実際の画面操作や成果物の紹介など「理解を深める」情報が盛り込める

静的な広告よりも圧倒的に訴求力が高く、比較検討フェーズの後押しにも最適です。

たとえば、コンサルティングサービスであれば、担当者の人柄や思考の深さ、実際の支援プロセスなども映像で伝えることで、「この人に頼みたい」と感じてもらいやすくなります。

また、テキストよりも動画のほうが「理解が早く、記憶に残る」という特性も見逃せません。つまり、情報量が多いだけでなく、理解速度と感情の訴求力も備えているのがYouTube広告の強みなのです。

ビジネス動画の視聴が当たり前になっている

画像引用元:ビジネス映像メディア「PIVOT」

かつてはYouTubeといえばエンタメや趣味の場という印象が強く、ビジネス用途での視聴は限定的でした。しかしここ数年で様相は大きく変わっています。

「移動中にPIVOTを見る」「朝の通勤でNewsPicksの解説をチェックする」といった行動は、働く人々にとって日常的なものとなりつつあります。筆者自身も、移動時間などにビジネス系YouTubeを見て情報を得ることが増えたと感じています。皆さんも、数年前に比べてビジネス系YouTubeを見る機会が増えたのではないでしょうか。

画像引用元:【YouTube調査】約4割がビジネス系動画を視聴すると回答|2023年10月実施「ナイルのマーケティング相談室」調べ

ナイル株式会社が2023年に実施した調査では、「YouTubeでビジネス系動画を視聴している」と回答したユーザーは約4割にのぼりました。視聴層も20代から40代を中心に広がっており、これは多くの企業にとってターゲットとなる購買・選定関与者層にあたります。この調査は2023年10月時点の情報であり、視聴者数はさらに増えていると考えられます。

このように、ビジネスシーンにおける動画視聴の文化が根付き始めている現在、YouTubeは単なる認知媒体にとどまらず、意思決定の手前の情報収集フェーズにも入り込める場になっています。特に、テキストベースのLPでは伝えきれなかった商材の魅力を「動画なら理解してもらえる」というニーズが、広告側・視聴者側の両方に高まっている点も見逃せません。

YouTube広告の活用に向いている企業やケースとは?

YouTube広告はBtoBマーケティングにおいても有効な手段ですが、すべての商材に対して一様に成果が出るわけではありません。効果の出やすさには「商材の特性」「市場規模」「ターゲットの情報行動」といった複数の要因が関係しています。

この章では、YouTube広告と相性が良い商材とそうでない商材を、3つの軸に沿って整理しながら説明します。

① 動画との相性:情報伝達のしやすさ

YouTube広告の最大の特徴は「動画による情報伝達」です。これは、複雑な機能や仕組みを持つ商材、または無形で言葉だけでは伝えづらい商材にとって、大きな武器になります。

向いている商材の例:

  • SaaSプロダクト(業務改善ツール、クラウド会計、CRMなど)
  • 無形のサービス(人事・組織コンサルティング、研修・教育サービス)
  • サポートが重要な商材(導入支援付きツールなど)

例えば、コンサルティングやSaaS(Software as a Service)などの無形商材が当てはまります。SaaSであれば、利用シーンや使い勝手が気になるポイントでしょう。コンサルティングなら、仕事の進め方、担当コンサルタントの人柄、期待できる成果物などが知りたいはずです。

これらは、画像やテキストでは伝えきれない特徴や導入イメージ、ベネフィットを、ストーリー形式の動画で視覚的・感情的に訴求できるため、非常に相性が良いと言えます。

② 市場規模とターゲットの広さ

YouTube広告は、一定の配信量(インプレッション)があって初めて最適化が進み、効果を最大化できます。そのため、ターゲットが極端に少ない商材は、配信効率が悪く、費用対効果が合わなくなるリスクがあります。

向いている商材の特徴:

  • 多くの業界・企業にニーズがある(例:会計、人事、営業支援ツール)
  • SMB(中小企業)やスタートアップなど、広範囲なセグメントが対象
  • 特定業種に限られず、「従業員数50名以上の企業すべて」が対象になりうるもの

相性が良くない商材の特徴:

  • ごく限られた業界・企業のみが対象(例:船舶管理、化学設備特化型SaaS)
  • キーワード検索数も月間数十件以下で、Webマーケティング全般と相性が弱い

商材と施策との相性を見極める上で「カテゴリーキーワードの検索数×ターゲット数」から施策を考えることをおすすめしています。詳しくは以下の記事に書いていますので参考にしてみてください。

参考:BtoB企業の広告運用で押さえておくべき施策の優先順位と広告媒体の選定基準

上記の図のようにどのような業界でも入るようなサービスやSMB向けの商材のようなターゲット数が多い商材がYouTube広告と相性が良い傾向にあります。

③ 顧客の行動様式と購入プロセス

YouTube広告は、検索行動のような「顕在層」だけでなく、「まだ課題に気づいていない潜在層」にもアプローチできるメディアです。そのため、比較検討フェーズ前の段階にアプローチしたい企業にとって、有力な手段となります。

向いている導線例:

  • ホワイトペーパーのダウンロード
  • セミナーへの誘導
  • サービス資料の請求 など

ただし、導入決定に至るまでに「関係構築」や「対面営業」が不可欠な商材の場合は、YouTube広告だけで成果を完結させるのは難しいかもしれません。

相性が悪いケース:

  • 決裁者との面談が必須で、かつ紹介経由やFAX、テレアポが主力チャネルである業界
  • ITリテラシーが低く、YouTube視聴習慣がないセグメント(例:一部の建設・製造系企業)

成果を出すための4つのポイント

YouTube広告をBtoB領域で活用するにあたって、「とりあえず動画を作って流す」だけでは成果に直結しません。特にリード獲得を目的とする場合、以下の3つのポイントを押さえて初めて、効果を最大化できます。

ポイント1:“軽め”のCV設計でリードを取りこぼさない

BtoB商材の意思決定は慎重で、比較検討のプロセスも長期にわたることが一般的です。そのため、「まずは話を聞いてみる(問い合わせ)」のような重めのコンバージョンポイント(以降、CVポイント)は、スキマ時間にYouTubeを見ているユーザーにとってはハードルが高くなりがちです。

よくある失敗

  • 動画の最後に「まずはお問い合わせを」と誘導
  • 高単価商材でいきなり無料相談をCVとして設定

いきなり問い合わせを獲得するというよりも資料請求やホワイトペーパー、セミナーなどまずは気軽に情報収集してもらうようなCVポイントが望ましいです。

おすすめの“軽め”なCVポイント

  • サービス資料のダウンロード
  • ホワイトペーパーや成功事例の閲覧
  • セミナー参加登録
  • メルマガ登録(情報提供の継続)

軽いアクションからリードを獲得し、その後ナーチャリングやインサイドセールスで商談化を狙う設計が有効です。

また、広告媒体のポテンシャルを最大限引き出すためにも一定数のコンバージョンが発生する状態にすることで機械学習が進みさらにリード数増加や獲得単価の改善が進むのも期待できます。

ポイント2:CV後の設計もYouTube広告の成否を左右する

加えて、YouTube広告で多くのリードを獲得した後は、インサイドセールスやMAツールによるリードナーチャリングの体制構築が不可欠です。

CVポイントごとに商談化や受注に繋がるタイミングが異なります。サービスに興味のある状態の問い合わせや資料請求は商談にすぐにつながりやすい一方でセミナーやホワイトペーパーは少し時間がかかります。

そのため、上記の図のようにホワイトペーパーやセミナーなどの検討段階の浅いリードに対してはアプローチを変えて商談を生み出していくことが重要になります。

CV直後の行動だけで完結しないのがBtoBの特性です。リード獲得だけで満足するのではなく、その後の“育成”フェーズも見据えた設計が、YouTube広告の真の成果を左右します。

ポイント3:成果を出すには「優れた台本と動画表現」が不可欠

YouTube広告でリード獲得などの成果を上げるためには、「獲得型クリエイティブ」の設計が欠かせません。獲得型クリエイティブとは、単なる認知を目的とした短尺動画ではなく、視聴したその場で「資料請求したい」「セミナーに申し込みたい」と思わせるような、行動を引き出すための構成を持つ動画を指します。

その中でも最も重要な要素が「優れた台本(スクリプト)」です。映像のクオリティや演出よりも、まず伝えるべき内容をどう構成するかが、成果を大きく左右します。

優れた台本の3つの条件

優れた台本を作るためには次に紹介する3つのポイントを意識してください。

1.顧客解像度を上げる

ターゲットがどのような悩みを抱えているのか、業務上どこでつまずいているのかを深く理解することで、共感を得られる台本になります。顧客の“夜も眠れない悩み”を捉えることが出発点です。

2.最初の5秒で自分ごと化させる

スキップ可能なインストリーム広告では、冒頭5秒が最重要。ここで興味を引けなければ動画は最後まで見てもらえません。

「●●担当の人は絶対見て!」「採用面接でこんな間違いしていませんか?」など、ターゲットを直接呼びかける冒頭が有効です。これは心理学で言う「カクテルパーティー効果(自分に関係ある情報だけが強く届く)」を活かしたテクニックです。

また、「ビリーブの否定(相手が信じている前提を崩す)」「質問形式(視聴者が考える時間を与える)」も、関心を引きつける効果的なフォーマットです。

 > 例:「キャッシュレス決済は手数料で選ぶと失敗するのをご存知ですか?」

3.CTAが明確で、最後まで見るとCVしたくなる構成

動画は「課題提起 → 解決策提示 → ソリューション紹介 → CTA」の構成にすることで、視聴者を自然に次のアクションへ導くことができます。
CTAには「今すぐダウンロード」「無料で資料を見る」など、視聴直後に動ける導線が必要です。

以下は、拙著「BtoBマーケティング“打ち手”大全 広告運用で受注を勝ち取る 最強の戦略 88」を題材に作成した架空のYouTube広告の台本です。

冒頭で興味を引き、動画を最後まで読み進めると今すぐコンバージョンしたくなるようなストーリーに台本を仕上げる必要があります。基本的には冒頭のつかみで興味を引いた後に教育コンテンツを挟み、問題や課題を深堀りします。その後にその問題の解決策を提示し、その解決策が商品やホワイトペーパー、セミナーなどのコンバージョンポイントで解決することを伝えてます。最後に今すぐ行動してもらうために CTA(コールトゥアクション)を伝えます。

台本の流れは他にも色んなパターンがありますが、上記の流れが一番オーソドックスな形になります。

ポイント4:動画のフォーマットは目的と商材に応じて選ぶ

YouTube広告では動画の「型」にもいくつかのパターンがあり、それぞれ得意な伝え方があります。商材の特性やリソース状況に応じて適切な表現手段を選ぶことが重要です。

表現タイプ特徴と向いているケースコスト手軽さ持続性
スライドショー型低コストで量産が可能。テスト検証に向いている。
例:サービス紹介、ホワイトペーパー訴求
アニメーション型視覚的に複雑な構造や無形サービスを伝えやすい。
例:SaaS機能解説、プロセス紹介
キャスティング型信頼感や共感を演者から伝える。人柄訴求やブランド演出に有効。
例:コンサルタント紹介、対談形式

 スライドショー

スライドショー型は、テキスト・背景素材・ナレーションを組み合わせたシンプルな動画形式です。
制作コストが低く、自社でも簡単に作成できるため、複数の台本をテストする初期段階に最適です。

台本さえしっかりしていれば、この形式でも十分にコンバージョンを獲得できる実例も多くあります。成果が出たものを、後にアニメーションやキャスティングで展開していく流れがおすすめです。

 アニメーション

画像引用元:Web広告動画・テレビCM用動画 「テレ東BIZ」 動画制作実績・事例| 動画制作・映像制作のCrevo株式会社(クレボ)

アニメーション型は、After Effectsなどを使い、視覚的にサービスを説明できる形式です。
制作コストはやや高めですが、特にSaaSやコンサルなどの無形・複雑な商材との相性が良好です。

スライドショーでは伝えきれない内容を、動きとストーリーで視覚的に整理し、理解を促すことができます。

 キャスティング

キャスティング型は、タレントやインフルエンサーなどを起用し、ストーリーや会話形式で商材を紹介する動画です。有名人の起用により、認知や信頼を一気に高める効果も期待できます。

ただし、有名人でなくても親しみやすい演者で十分成果が出ることもあり、視聴者にとって“信頼できる語り手”であることが最も重要です。制作費は比較的高くなるため、ブランド訴求や商談化の後押しを狙う場面に適しています。

まとめ|BtoBでもYouTube広告にチャレンジしてみよう

BtoBマーケティングの現場では、「検索されない」「伝わりにくい」「差別化しづらい」といった壁に、多くの企業が直面しています。そうした課題に対し、動画で魅力を“見せて、伝えて、動かす”ことができるYouTube広告は、新たな打ち手としてすでに実績もでています。

形のないサービスや複雑な仕組みも、ストーリーや視覚表現を通じて直感的に伝えることができる。検索広告では届かない潜在層にも、早い段階からブランドや価値観を届けられる。この「伝わりにくさ」を乗り越える手段が、動画にはあります。

もちろん、闇雲に動画を配信するだけでは成果にはつながりません。 誰に、何を、どう伝え、どんな行動を起こしてほしいのか。設計された台本、適切なCV導線、表現手段の選択が揃って初めて、広告として機能します。

YouTube広告は、まだBtoB領域では未開拓な企業も多く、いま始めることで一歩先を行くチャンスがあります。すでにYouTube広告に取り組んでいる企業にとっても、CV設計やクリエイティブの見直し、ナーチャリング設計との連携強化など、さらなる成果につながるヒントがあるはずです。広告主の魅力を、言葉ではなく「映像で伝える」ことに一度取り組んでみてください。

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