
コロナ禍以降、企業と消費者がオンラインでコミュニケーションを取る方法としてライブコマースのニーズが高まりました。
今回は、新しいショッピングの形態として近年大きな注目を集めているライブコマースについて、市場規模やメリット、事例、国内SNSが行っている取り組みをまとめました。


目次
ライブコマースとは
ライブコマースはECサイトにおいてリアルタイムの動画配信により商品の購入を促すオンラインでの顧客コミュニケーションの手法です。
オンラインで商品やサービスを購入することが当たり前になってきている中、新しい接客方法としてグローバルで注目されています。
ライブコマースで視聴者に商品やサービスの魅力を紹介する方法として、企業のスタッフやインフルエンサーを起用する方法があります。
ライブコマース市場を牽引している中国ではKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーを起用することが多いのに対して、国内ではアパレルや化粧品企業のスタッフを起用する方法が主流です。
どちらの手法を用いても、従来のテキストと画像のコミュニケーションと比較して視聴者とリアルタイムでやり取りを行える点で優れており、今後オンラインでの接客手法として市場の成長が期待できます。
ライブコマース市場の展望について
ライブコマース市場はソーシャルコマースに関連して話題性があるものの、現時点では国やエリアによってリアクションが異なる状況です。
例えば、中国ではライブコマースを通して商品を購入することが一般化しており、網経社電子商務研究センターの統計によると2021年のライブコマース流通総額は2兆3615.1億元(約48.7兆円)と、小売チャネルとして存在感を大きく示しています。
それに対して欧米では、中国ほどライブコマース市場は拡大しておらず、コマース機能拡充に向けて動いていたTiktokやMetaがライブコマースから撤退しつつある状況です。
国内のライブコマース市場は欧米のライブコマース市場同様に現時点で大きく拡大している様子は見られませんが、今後オンラインで消費者とコミュニケーションを取る一手法として一定の地位を得られる可能性があると考えています。
そう考える理由は、コロナウイルスの感染拡大をきっかけにB to CのEC市場が拡大し、オンライン接客の需要が増加しているためです。
B to C-EC市場の拡大
経済産業省が発表したデータによると、物販系分野におけるBtoCのEC市場は2013年から2021年にかけて5.99兆円から13.2兆円規模に拡大しています。
特に新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年以降はEC化率上昇を受け、市場規模の拡大が加速している状況です。
また、経済産業省発表の『令和3年度 電子商取引に関する市場調査』によると、スマートフォン経由の物販系EC市場は2015年から2021年にかけて1.98兆円から6.94兆円へ3.5倍以上に拡大しています。
オンライン接客の需要増加
また、オンライン接客の需要増加がライブコマースの成長に影響することが考えられます。
緊急事態宣言など実店舗の営業が制限を受けた際に、これまで実店舗で顧客とコミュニケーションを取って商品を販売していた業種においてオンライン接客の重要性が高まりました。自粛期間中にライブ配信を開始していた事業者が、規制緩和後に接客手段の一つとしてライブ配信を残している印象を受けます。
店舗に訪れなくても商品の魅力を詳細に知ることができるという点においてユーザーにメリットがあるため、今後は業種問わず広がっていくと予想されます。
ライブコマースのメリット
実際にライブコマースに取り組むメリットについて触れていきます。
実店舗のようにリアルタイムで双方向コミュニケーションが取れる
ライブコマースではリアルタイムによる動画配信を通して接客を行えます。
ライブ配信の中で、動画の視聴者から届くコメントに回答することでオフライン店舗での接客同様に顧客の不安を解消し、商品購入を後押しできるのがメリットのひとつです。
例えば、アパレルブランドでは商品が自身の体型に合うかどうかが不安要素になると思います。ライブ配信で体型の異なるモデルに商品を着てもらうことで視聴者に着用イメージを持ってもらうことができ、不安を解消できます。
また、匿名だからこそ視聴者はコメントしやすく、率直な意見を伝えてくれる点が利点です。。
コメントを通してこれまで実店舗で聞けていたお客様の声を聞くことができ、商品開発に活用できる点で静止画や文字でのコミュニケーションと比較して優れています。
後ほどご紹介するヤッホーブルーイングはライブコマースならではの双方向でやり取りできる点を活かして商品の販売に成功した事例といえます。
モバイルデバイスを利用中のユーザーにリーチできる
ライブコマースとテレビショッピングでは商品の様子を動画で確認できる点が同じですが、視聴するシーンが限定されない点が異なります。
テレビショッピングはテレビを見ているユーザーに対してのみリーチできますが、ライブコマースではPCやスマートフォン等モバイルデバイスを利用しているユーザーにリーチできる点が特徴です。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った調査から、ユーザーが場所を選ばずライブを視聴、商品購入できる点でライブコマースに魅力を感じていることがわかります。
ライブコマース活用事例3選
実際にライブコマースを活用している事例を紹介します。
ユニクロ
ファストファッションの代表的なブランドであるユニクロは2020年12月からUNIQLO LIVE STATIONというライブコマースの取り組みを始めました。
UNIQLO LIVE STATIONでは、ライブ配信される動画を見ながら、気になった商品をその場で直接購入できるように設計されています。また、ライブ配信後もアーカイブがストックされており、アーカイブからも同じように商品の詳細の確認や購入ができる点が特徴です。
ヤッホーブルーイング
よなよなエールなどのクラフトビールを販売している飲料品メーカーのヤッホーブルーイングもライブコマースに取り組んでいます。2020年7月の配信ではクラフトビール飲み比べセットを1万セット売り上げており、ライブコマースが自社のブランド認知向上だけでなく購買行動にも影響を与えられることが分かる事例です。
SHIPS
アパレルブランドのSHIPSは2020年5月からライブコマースの取り組みを開始しました。
ライブ配信画面の左側に紹介中の商品画像と価格を表示しており、ユーザーが気になった商品にすぐアクセスできるよう設計されています。
隔週から毎月の頻度で開催されるライブ配信では新作や人気アイテム、コーディネートを紹介しています。インフルエンサーとのコラボ商品の紹介を除き、ショップスタッフがライブ配信を行っており、スタッフのインフルエンサー化に取り組んでいる特徴的な事例です。
参考:シップス 公式LIVE通販サイト|SHIPS SHOPPING TV
ここでは、比較的有名な企業の例を挙げさせていただきましたが、大小さまざまな企業がライブコマースに取り組んでいます。一方、自社のサイトなどで展開している企業だけではなく、各SNSが提供しているライブ機能を活用している企業も多くあります。次では国内SNSのライブコマースへの取組み状況をお伝えします。
国内におけるその他のライブコマースへの取組み
ライブコマースは、中国での大きな成功によりSNSプラットフォームやツールプロバイダーなど、世界中のテック企業に急速に注目されるようになりました。
しかし、SNSの分野では、TikTokのライブコマース機能が英国で最初に欧米でテストされたことから、中国ほどレスポンスが積極的ではないことが示唆されています。そのため、中国以外への展開ペースが落ちていると見られます。あわせてFacebookのライブショッピング機能を提供したMeta社も、最近この分野ではより慎重になっている模様です。あくまでも欧米の事例ですが、やはり日本市場への展開にも影響する可能性があります。
参考:TikTok said to be launching live shopping in the US | TechCrunch
一方、日本国内では現在、LINEやYouTubeで動きは確認できています。
LINE:LIVEBUY
LIVEBUYはLINEが2022年の夏に本格提供を開始したライブコマースサービスです。LINE公式アカウントを開設しているすべての企業が利用対象となります。
2022年10月時点ではLIVEBUYの決済手段はLINE Pay残高決済のみですが、LINE Payと連携したシームレスな購買体験が特徴です。
一部の配信はアーカイブ視聴が可能なため、在庫がある商品に限りユーザーはアーカイブを視聴しながら商品を購入することが可能です。
YouTube:YouTubeショッピング
2022年7月にYouTubeはShopifyと連携し、グローバルで動画やライブ配信内で商品を購入できるYouTubeショッピング機能の提供を開始しました。
YouTubeショッピングでは動画やライブ配信内で商品のタグ付けやチャットでの商品のピン留めを行うことができます。また、決済に関してもShopifyと同期することで売り切れた商品が自動的に削除される仕組みとなっており、動画の視聴から決済までYouTube上で完結できる点が利点です。
現時点ではShopifyを利用しているマーチャント以外は利用できない様子のため、今後他のECプラットフォームでも利用できるようになるか気になりますね。
また、SNSとの連携以外にも、SaaSのライコマや楽天市場のライブショッピング機能といったライブコマースを支援するソリューションにも今後注目する価値がありそうです。
ライコマ
ライコマは、小売業者が自社サイトにライブコマース機能を埋め込み型で設置するためのソリューションです。カートシステムとの連携によるシームレスなショッピング体験に加え、今後の最適化を行うためのデータ分析機能を提供しています。
参考:ライコマ
楽天市場ショッピングチャンネル
こちらでは、配信サービス「Livepark」を通じて、厳選された楽天上のショップの様々な商品を決まった日程で紹介しています。楽天市場との直接連携により、非常に幅広い商品を提供できるだけでなく、視聴者向けにクーポンや割引を提供することも可能です。
参考:楽天市場ショッピングチャンネル|ライブ配信で商品をご紹介!
まとめ
これまでライブコマースについて国内の市場動向や活用事例、LINEのライブコマースへの取組みについて紹介しました。
ライブコマースの認知度は上昇しており、取り組みを開始した企業の成功事例も増えています。今後、オンラインで消費者とコミュニケーションを取る一つの手法として一定の地位を得ることが予想されるため、競争が激しくなる前に取り組みはじめることをおすすめします。
