運用型広告の中でも特に重要な指標の一つに「インプレッション」があります。実際にどれだけ広告が表示されているかは、広告のパフォーマンスを測る上で重要ですよね。
とはいえ、入札をすれば広告が必ず表示されるとは限りませんし、表示されているからといってもユーザーが見ているとは限りません。
今回は、ユーザーが視認できる範囲の広告表示回数である「ビューアブルインプレッション」の定義や活用方法を解説していきます。
目次
ビューアブルインプレッションとは?
ビューアブルインプレッションとは、実際にユーザーが視認できる範囲で広告が表示されたインプレッションのことを指します。
導入背景や、インプレッションとの違いについて見ていきましょう。
広告の透明性向上のために導入されたビューアブルインプレッション
ビューアブルインプレッションの指標としての重要性を知る上では、その誕生背景を知ることも大切です。
従来、アドネットワークやDSPで配信されるディスプレイ広告の多くには、「インプレッション課金(広告表示回数に対してコストが発生する課金方式)」が用いられていました。
しかし、インプレッションはWebページ上で広告が読み込まれたタイミングで計測されるため、広告主はユーザーの目に触れていない配信に対してもコストを支払うことになってしまいます。
これら透明性の課題に対処すべく、Googleなど一部のアドネットワークは「ビューアブルインプレッション」と、「ビューアブルインプレッション課金(vCPM課金)」を取り入れるようになりました。ビューアブルインプレッションがあれば、広告主は実際にユーザーに閲覧された表示回数に対して課金をすることができるので、本当にユーザーの目に触れた可能性の高い広告に対して広告費を活用できます。
ビューアブルインプレッションとインプレッションの違い
「ビューアブルインプレッション」と、通常の「インプレッション」の違いを詳しく見ていきましょう。
まず、インプレッションはページが読み込まれた段階で発生します。ユーザーが特定のサイトにアクセスすると、サイト側からアドサーバーに向けて広告リクエストが送られますが、この広告リクエストの回数が「インプレッション数」になります。
しかし、広告リクエストが行われたからといって(インプレッションが発生したからといって)、その広告をユーザーが視認したとは限りませんよね。実際、アドベリフィケーション・ソリューションを牽引する米Integral Ad Science(IAS)社が行った調査では、日本のディスプレイ広告で発生したインプレッションのうち、PCは54.3%、モバイルは63.6%がユーザーに視認されていないことが分かっています。
参考:メディアクオリティ レポート 2020年下半期版(資料ダウンロードページ)
これに対し、ビューアブルインプレッションなら、ユーザーが広告を視認したと判断された場合にのみインプレッションを計測できます。ビューアブルインプレッションを正しく把握することで、広告が「見られていないからクリックされていない」のか、「見られているけどクリックされていない」のかの判断がつき、より精密な分析や計測ができるようになります。
媒体ごとのビューアブルインプレッションの定義
米国の著名な業界団体であるメディア測定評議会(MRC=Media Rating Council)および双方向広告業界団体(IAB=Interactive Advertising Bureau)が定めたガイドラインでは、ビューアブルインプレッションは下記のように定義されています。
- 広告ピクセルの50%が、スクリーンに1秒以上(動画の場合は2秒以上)表示された、広告インプレッション
- ビューアブルインプレッション=広告掲載インプレッション×ビューアビリティ(%)
参考:MRC Viewable Ad Impression Measurement Guidelines(PDF直リンク)
しかし、何をもってしてユーザーが “見た” と判断するのかというビューアビリティの業界標準については議論が続いています。したがって、各媒体でもビューアブルインプレッションの呼称や定義が異なることに注意しておきましょう。
媒体 | 呼称 | 計測の条件 |
---|---|---|
視認範囲のインプレッション | ディスプレイ広告の場合は 1 秒以上、動画広告の場合は 2 秒以上にわたって 50% 以上の範囲が表示された場合 | |
YDA | ビューアブルインプレッション | 広告の50%以上の範囲が1秒以上連続して表示された場合 |
インプレッション | 広告が初めて画面に表示された場合。動画の場合、動画が再生されなくても広告のインプレッションはカウントされます |
特に、Facebookの場合は他の媒体でいうところの“通常のインプレッション” がビューアブルインプレッションにあたります。ビューアブルインプレッションを活用した分析をする上では、媒体別の定義を正しく理解しておくことが大切です。
参考:インプレッション
ビューアブルインプレッションに関連する重要な指標一覧
ビューアブルインプレッションに関する各種指標を解説します。
上図の通り、ビューアブルインプレッションにまつわる指標は非常に複雑です。しかし、大まかにでもそれぞれの定義を正しく理解することで、分析の幅を広げるのみならず、アドフラウド(広告詐欺)など不正に表示回数やクリック数が水増しされていないかについて確認することができるため、下記だけでも把握しておきましょう。
Yahoo! | 定義 | |
---|---|---|
視認範囲のインプレッション | ビューアブルインプレッション数 | ユーザーの視認領域に広告が表示されたインプレッション数 |
測定可能なインプレッション | メジャードインプレッション数 | ビューアブルインプレッション数の計測が可能なインプレッション数※媒体のビューアビリティの基準を満たしたインプレッション数。ビューアブルインプレッションは掲載面によって計測できないことがあるが、メジャードインプレッションはこれらを含んだインプレッション数 |
視認可能率 | ビューアブルインプレッション率 | Googleの場合は、測定可能なインプレッションに対する視認範囲のインプレッション数の割合計算式:視認範囲のインプレッション ÷ 測定可能なインプレッション数 × 100 Yahoo!の場合は、インプレッションに対するビューアブルインプレッション数の割合計算式:ビューアブルインプレッション数 ÷ インプレッション数 × 100 |
測定可能率 | メジャードインプレッション測定率 | インプレッションに対する測定可能なインプレッション(メジャードインプレッション)の割合計算式:測定可能なインプレッション(メジャードインプレッション数) ÷ インプレッション数 × 100 |
視認範囲のクリック数 | ビューアブルクリック数 | ビューアブルインプレッションのうち、広告がクリックされた回数。 |
視認範囲のクリック率 | ビューアブルクリック率 | ビューアブルインプレッション数のうち、広告がクリックされた割合。計算式:クリック数 ÷ ビューアブルインプレッション数 × 100 |
ビューアブルインプレッションを活用した改善施策
ビューアブルインプレッションを分析することで、インプレッション単体では読み取れない問題や改善施策を見出すことができます。下記2つのケーススタディをご紹介します。
[1] 急にクリック率が下がった場合(ビューアブルインプレッション率の減少)
運用に変更を加えていないのに、急にクリック率が下がった場合を見ていきましょう。
クリック率の減少については様々な仮説が考えられますが、この時同時にビューアブルインプレッション率も減少していたとします。
全体のインプレッションに対して、視認可能な広告のインプレッションが減っていることを踏まえ、下記を確認してみましょう。
- 極端にビューアブルインプレッション率が下がっている配信先はないか?あれば除外できないか?
- 同種の商材でビューアブルインプレッション率が高い配信先を追加できないか?
広告そのものがビューアブルかどうかは、クリエイティブのサイズパターンを増やす以外にコントロールがしづらいため、配信先に問題がないかを確認してみるとよいかもしれません。
[2]急にクリック率が上がったが、ビューアブルクリック率は増えていない場合(アドフラウドの可能性)
ユーザーが視認していない場所で大量にインプレッションが増えている場合、アドフラウド(広告詐欺)の可能性を考えてみてもよいかもしれません。
アドフラウドとは、無効なインプレッションやクリックを発生させることで、課金額を不正に水増しする詐欺手法のことです。
真っ先にアドフラウドが発生したと特定することは難しいかもしれませんが、広告管理画面上のビューアブルクリック率に加えて、Google アナリティクス上でのセッション数や直帰率も踏まえた上で確認してみることをおすすめします。
なお、直近では媒体側でもこのような配信を阻止すべく広告の透明性向上に向けて動き出しており、不正なクリックやインプレッションが発生したと判断された場合は返金対応なども行われているので、疑わしい場合は媒体社に確認してみることもおすすめします。
参考:Yahoo! 広告 | 不正に広告費をだまし取る手法「アドフラウド」対策の強化について
媒体別のビューアブルインプレッションの確認方法
ここからは、Google 広告とYahoo! ディスプレイ広告の管理画面からビューアブルインプレッションを確認する方法を説明します。
Google 広告
①管理画面上の[表示項目]から[表示項目の変更]をクリック
②[視認性]タブから各種指標にチェックを入れる
Yahoo!ディスプレイ広告
①[表示項目]から[表示項目を編集]をクリック
②[ビューアブルインプレッション数]にチェックを入れる
③[ビューアブル]タブから各種指標にチェックを入れる
まとめ
ビューアブルインプレッションを毎日の配信で確認することは難しいかもしれませんが、広告配信を行っていく上で決して知って損のない大切な指標です。
なお、ビューアブルインプレッションをどこまで活用するかはブランド認知や獲得など広告配信の目的次第で変わっていきますが、より精緻な計測をしたい場合や分析の幅を広げたい場合に役に立つことは間違いありません。ぜひ、必要に応じて活用してみてください。