入札単価調整とはユーザーの属性や端末、地域などのセグメントで基準となる入札単価から「+20%」や「-30%」というように比率で入札単価を調整する機能です。
活用することで、費用対効果の良いセグメントへの入札金額を引き上げたり、逆に費用対効果の悪いセグメントへの入札金額を抑えたりすることが可能となります。
たとえば、男性よりも女性の方が広告のパフォーマンスが良い場合、女性への入札金額を引き上げた方が、パフォーマンスが向上する可能性が高くなりますよね。
今回は、Google 広告とYahoo!プロモーション広告で、入札単価調整が適用可能な対象単位や調整範囲、また適用ができないケースと自動入札との併用についてご紹介します。
目次
入札単価調整が適用可能な対象単位
入札単価調整できる項目にはどのような種類があるのでしょうか?Google 広告、スポンサードサーチそれぞれを見ていきましょう。
Google 広告で利用可能な入札単価調整
以下は入札単価調整の種類やそれらの対象範囲や調整範囲をまとめた表です。
種類 |
対象単位 |
調整範囲 |
|
端末 |
・パソコン ・タブレット ・モバイル端末(スマートフォン) |
キャンペーン 広告グループ |
-100%~+900% |
地域 |
・都道府県または市町村(一部) ・範囲(地域や住所、座標を選択してその地点から半径何㎞) |
キャンペーン |
-90%~+900% |
広告のスケジュール設定 |
・曜日 ・時間帯 |
キャンペーン |
-90%~+900% |
ユーザー属性 |
・年齢 ・性別 ・世帯収入 |
広告グループ |
-90%~+900% |
上位のコンテンツ |
広告グループ |
0%~+500% |
|
ターゲティング方法 |
・トピック ・プレースメント |
広告グループ |
-90%~+900% |
オーディエンス |
・リマーケティング ・類似ユーザー ・その他オーディエンス情報 |
キャンペーン または 広告グループ |
-90%~+900% |
インタラクション |
・電話 |
キャンペーン |
-90%~+900% |
端末で-100%に設定することでその端末には広告が配信されなくなります。キャンペーン単位で-100%を設定した場合、広告グループで調整をかけてもその端末には配信されません。
Yahoo!プロモーション広告で利用可能な入札単価調整
GoogleとYahoo!では適用可能な調整幅やキャンペーンタイプが異なります。
調整幅は以下の通りになります。
- スポンサードサーチ:-90%~ +900%
- ディスプレイアドネットワーク(以下、YDN):-90%~ +100%
入札単価調整が設定可能な、ターゲティング方法は以下の通りになります。
スポンサードサーチ |
YDN |
対象範囲 |
|
デバイス |
可 |
可 |
スポンサードサーチ:キャンペーン・広告グループ YDN:広告グループ |
地域 |
可 |
可 |
スポンサードサーチ:キャンペーン |
曜日・時間帯 |
可 |
可 |
スポンサードサーチ:キャンペーン |
ターゲットリスト |
可 |
不可 |
キャンペーン・広告グループ |
インタレストカテゴリー |
不可 |
可 |
広告グループ |
サイトカテゴリ |
不可 |
可 |
広告グループ |
ユーザー属性 |
不可 |
可 |
広告グループ |
サーチターゲティング |
不可 |
不可 |
-- |
プレースメント |
不可 |
不可 |
-- |
たとえば、Googleではターゲットリストごとにグループを分けずに、入札単価調整を活用して配信を行うことが可能です。しかしYDNの場合はターゲットリストでの入札単価調整を利用することができないため、ターゲットリストごとに広告グループを分ける必要があります。(2019年6月現在)
複数の入札単価調整の場合
基準となる入札単価に複数の入札単価調整が設定されている場合、基本的にはそれらの値の全てが掛け合わされます。
例)入札単価:100円
ターゲティング設定
地域:東京 +20%(×120%)
性別:女性 +30%(×130%)
デバイス:PC -50%(×50%)
上記のターゲティングが全て当てはまる場合の計算式が以下の通りになります。
なお、同時に複数の入札単価調整を設定した場合の引き上げ率の上限は 900%、引き下げ率は90% です。
値が全て掛け合わされないケース
通常では、複数の入札単価調整を設定すると、先ほどの例のようにそれらの値をすべて掛け合わせたものが実際の入札単価調整の値になります。ただし、端末と地域の場合には計算方法が少し異なります。
端末
キャンペーンと広告グループで同じ端末の入札単価を調整している場合、広告グループの入札単価調整に基づいて、その端末の最終的な入札単価が決定されます。
で設定されている場合は広告グループで設定されている+20%のみが適用されます。
地域
同じ地域に対して複数の入札単価調整が設定されている場合、最も細かい地域の調整比が適用されます。
で設定されている場合、より細かい地域にあたる渋谷区の調整比が適用されることになり、調整比は+80%となります。
キャンペーン、広告グループでの使い分け
入札単価調整はキャンペーン、広告グループ単位の両方で調整をかけることが可能な場合があります。このような場合、どのように調整をしていくのが良いのでしょうか?
基本的にはキャンペーン単位で調整することのがおすすめです。
広告グループ単位でユーザーのセグメントを大きく変えているなどの理由があれば別ですが、広告グループに個別に設定された入札単価調整を管理するのは一苦労です。必然性がないのであれば極力、シンプルに管理のできるキャンペーンレベルでの管理に留めましょう。
参考:入札単価調整を効率重視で管理する - Google 広告 ヘルプ
自動入札にて入札単価調整の使えないケース
自動入札を導入している場合、なんとなくで入札単価調整を設定していませんか?
「え、使えないの?」と思った方は要注意です。自動入札を導入している場合、利用することのできる入札単価調整は限られています。
自動入札は入札単価調整で調整できるものも含めて様々なシグナルをもとに入札を自動化する機能です。そのため、基本的には人間が入札単価の調整を加える必要はありません。
以下は、入札戦略ごとに入札単価調整を行えるものと行えないものを整理した表です。
Google 広告の場合
入札戦略 |
端末 |
地域 |
スケジュール |
上位のコンテンツ |
ターゲティング方法 |
RLSA |
ユーザー属性 |
目標コンバージョン単価 |
単価調整× 目標CPA調整〇 |
不可 |
不可 |
可 |
不可 |
不可 |
不可 |
目標費用対効果 |
-100% のみ可 |
不可 |
不可 |
可 |
不可 |
不可 |
不可 |
クリック数の最大化 |
可 |
可 |
可 |
可 |
不可 |
可 |
可 |
コンバージョン数の最大化 |
-100%のみ可 |
不可 |
不可 |
可 |
不可 |
不可 |
不可 |
目標掲載位置 |
可 |
可 |
不可 |
不可 |
不可 |
可 |
可 |
目標優位表示シェア |
可 |
可 |
不可 |
不可 |
不可 |
可 |
可 |
拡張CPC |
可 |
可 |
可 |
可 |
不可 |
可 |
可 |
目標インプレッションシェア |
-100%のみ可 |
不可 |
不可 |
不可 |
不可 |
不可 |
不可 |
Yahoo!プロモーション広告の場合
入札戦略 |
端末 |
地域 |
スケジュール |
ターゲットリスト |
目標コンバージョン単価 |
単価調整× 目標CPA調整〇 |
不可 |
不可 |
不可 |
クリック数の最大化 |
可 |
可 |
不可 |
可 |
目標費用対効果 |
-100%のみ可 |
不可 |
不可 |
不可 |
一覧から分かる通り、クリックを最適化の対象とする場合には入札単価調整はほとんどの場合に利用できます。一方でコンバージョンを最適化の対象とする入札戦略では、基本的には入札単価調整が利用できないとお考えください。
たとえば目標コンバージョン単価では、予測されるコンバージョン率をもとに入札単価が決められます。そのため、入札単価調整を有効にしてしまうとこの計算が崩れ、目標を達成することは難しくなるためです。
自動入札を利用している場合に、高くなってしまったCPAを下げようとやみくもに入札単価調整を低く設定して調整を試みているケースをみることがありますが、実際にはなにも調整されていませんので、注意しましょう。
目標コンバージョン単価では端末の入札単価調整に注意
目標コンバージョン単価では、端末に入札単価調整を設定することができますが、注意が必要です。実は調整されるのは個別の入札単価ではなく、目標コンバージョン単価の値となります。たとえば、上図ではやや極端に表現していますが、CPCを引き下げるのと、CPAを引き下げるのとでは調整している指標が異なります。目標コンバージョン単価を利用している際に、もしも現状のクリック単価を半分にしたくて「-50%」などと設定したとしても、必ずしもクリック単価は半減とはならない点に注意しておきましょう。場合によっては、意図せずコンバージョン数が大きく減少してしまったりする可能性もあります。
自動入札と入札単価調整はどうやって使い分ける?
数年前までは自動入札と手動入札(入札単価調整含む)を比べたときに、手動入札に軍配が上がるケースも多々ありましたが、現在では特別な理由がなければ自動入札を導入するのがおすすめです。
ただし、パソコンを見て電話をするケースが多かったり、ウェブで完結しない成果が多くを占めている場合などは、自動入札を行うことが難しいため、必要に応じて手動での入札を行う必要もでてきます。
自動入札で使用されるシグナルには、季節性なども追加されてより高度化しているものの、なんらかの要因でコンバージョン計測ができなくなってしまったりなど、個別の事情への対応までは当然カバーできません。
状況や要望に合わせて、どうやったら実現できるかを考えるためにも、まずは仕組みをきちんと理解しておくことが大切ですね。