「顧客解像度が成果改善のカギ」BtoB向けSEOと検索広告の改善手法

「顧客解像度が成果改善のカギ」BtoB向けSEOと検索広告の改善手法

BtoBビジネスのデジタルマーケティングに関する業務をされている方の中には、SEOや検索広告の成果改善のためにリサーチをするものの、結局具体的に何をしたらよいかわからないと言ったお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回、デジタルアイデンティティさまと弊社の共催で「BtoB市場での検索広告とSEOのベストプラクティス」と題したウェビナーを開催しました。

本レポートでは、ウェビナーの中で解説されたSEOと検索広告の成果改善に繋がるポイントを紹介していきます。すぐに取り組める施策もあるため、ぜひチェックしてみてください。

ウェビナー概要

【7/24(水)15:00】ウェビナー「BtoB市場での検索広告とSEOのベストプラクティス」をデジタルアイデンティティさまと共催します
開催日時:2024年7月24日(水)15:00〜16:00
場所:Zoom
主催:株式会社デジタルアイデンティティさま、アナグラム株式会社

スピーカー

株式会社デジタルアイデンティティ
田中 雄太

2023年2月に株式会社デジタルアイデンティティ社にジョインした株式会社アダムテクノロジーズ元執行役員。SEO対策歴15年以上のアダムテクノロジーズで、SEOコンサルタントとして幅広い業界・業種のSEO上位表示を実現。SEO集客からの売上・問い合わせ増加など、セールスファネル全体のコンサルティングが可能。特に大規模な求人サイト、EC・通販サイト、不動産サイト、口コミサイトなど、データベース型サイトのSEO対策に強みを持つ。

アナグラム株式会社
二平 燎平

BtoB中心に数十社以上の広告運用やコンサルティングを経験。前職にて中小企業向けERPのセールスやCS、マーケティングなどTheModelの全工程に従事した経験と運用型広告の知見を合わせた売上を伸ばすBtoBマーケティングコンサルティングに定評がある。アナグラム社では主にBtoB向けの支援や情報発信を担当。2024年3月に新刊「BtoBマーケティング“打ち手”大全 広告運用で受注を勝ち取る 最強の戦略 88 (できるMarketing Bible)」を出版

キーワードごとに考えるBtoBのSEOで成果を出すためのポイント

BtoB企業が狙うべきキーワード軸を次の3つに分け、それぞれのキーワード軸ごとの成果を出すポイントについて解説が行われました。

  • 指名系キーワード
  • サービス系キーワード
  • 一般系キーワード

指名系キーワードは顧客の記憶の中で1位を獲得するのが重要

まず指名系キーワードに関して、検索エンジンの順位ではなく、顧客の記憶の中で1位を獲得することが重要と説かれました。

検索エンジンの順位ではなく、顧客の記憶の中で1位を獲得すること(=第一想起を獲得すること)がSEOの最終的なゴールだと考えている。これがブランド力です。ある機会でブランドが想起され、競合比較させずに検索行動に移ってもらう状況を作れるかが大事。

デジタルアイデンティティ 田中さん

第一想起を獲得し、指名検索されやすくするためには下記を行い、「ブランド力」を高めることが重要と田中さんはおっしゃいます。

  • 他社にはない独自性を一言で表現したサービス名をつける
  • 自社のターゲットとブランドに合った認識施策を行う

たしかに、指名検索をされるためには、ユーザーに自社のサービス名を覚えておいてもらう必要があり、そもそもサービス名を知ってもらう機会も必要ですよね。

ユーザーの記憶に残るサービス名を作る上で知っておきたい、検索行動を左右するのは次のような要素が挙げられます。

  • 既存の潜在ニーズ=インサイトに訴求
  • キャッチーなネーミング
  • 文字の読みやすさ
  • 印象に残す工夫
  • 一言でサービスを紹介

上記の検索行動を左右する要素を踏まえて「だれに」「何を」といった情報を、他社にはない独自性を一言で表現できるかがポイントとして紹介されました。

その上で、TVCM、チラシ、SNS広告など様々な手段がある認知施策では、自社のターゲット・ブランドに合った方法を選ぶことが重要と説かれました。

効果的な認知施策の手法を選ぶためにも、まずは顧客解像度を上げることに時間を当てられると良いでしょう。

指名系キーワードは、マーケティング部署の中だけでは本質的な改善に繋がらないケースも出てくる可能性があるため、社内の様々な部署と連携して対策を行っていきたいですね。

サービス系キーワードは、自社が勝てる場所を見極めて選ぶ

サービス系のキーワードに関しては、広すぎず狭すぎず自社が勝てる場所を見極めることが重要と田中さんは言います。

本ウェビナーでも紹介されたポジショニングマップなどのフレームワークを使って整理をしていくと、自社の勝てる場所を見つけやすくなるでしょう。

自社が勝てる場所で戦うことは、限られたリソースを効率的に活用できるだけでなく、競合との差別化を図った上で顧客に対して明確な価値提案ができるため、この機会に改めて自社のポジショニングを確認してみてはいかがでしょうか。

一般系キーワードでの集客には、ユーザーのステップアップにつながる導線設計を

一般系キーワードからの集客では、最終的なゴール(たとえば受注)までの距離が遠いため、ユーザーがうまくステップアップして最終的に受注に繋がるような導線設計が重要と田中さんは語られました。

資料ダウンロード、セミナー参加、メールマガジンへの登録などユーザーのカスタマージャーニーにおける段階に応じたコンテンツを届けることが大切ですね。

コンテンツの2次・3次活⽤で見込み顧客との接触機会を増やす

しかしながら限られたリソースの中では、新しいコンテンツをすぐに作ることが難しかったりしますよね。そこで検討したいのが、過去のセミナーなどで利用したコンテンツの2次・3次活用です。

本ウェビナーでは、例として、セミナーを行った後の活用イメージが紹介されました。

社内にある過去のセミナー資料やブログ記事など既存コンテンツを改めて見直すと、2次・3次での活用の可能性を秘めた眠れる資産が意外と多く見つかるかもしれませんね。

BtoB向け検索広告の改善を入札・ターゲティング・クリエイティブで考えるポイント

SEO対策の他にも検索エンジンで表示できる検索広告があります。検索広告は他の広告と比べると、能動的にリサーチをしているユーザーが多いことから商談や受注に繋がりやすい傾向であるため、BtoB企業にとっても非常に重要な集客チャネルの1つとなっていますよね。

しかし、具体的にどう取り組めばいいのかわからないという方も少なくないでしょう。

本ウェビナーの後半では、検索広告の改善方法を入札・ターゲティング・クリエイティブという3つの要素で考え、それぞれの改善ポイントの解説が行われました。

入札はデータ量とコンバージョンポイントの設計が大切

BtoBはその特性上、検索数やCV数など、データ量がBtoCに比べて少なくなりがちです。そのため、入札に関する悩みを抱えるケースも少なくありません。

まず、検索広告の入札に関して押さえるべき次の2つのポイントが紹介されました。

  • データが少ない場合は自動入札を利用しない
  • ハードルの低いコンバージョンポイントでデータ量を担保する

データが少ない場合は自動入札を利用しない

自動入札を活用するにあたっては、一定期間で一定数のCVを獲得した後に活用することが推奨されていたりします。例えばGoogle広告では、1ヵ月以上の間に30件以上のCV数を獲得した場合に活用することが推奨されています。

参考:スマート自動入札について - Google 広告 ヘルプ 

もしCVが少ない場合に自動入札を利用すると下記のデメリットが生じる可能性があるため、拡張クリック単価で狙った検索語句を中心に広告が出るように調整するのがベストです。

  • クリック単価が必要以上に高くなる
  • CV数が少ないと安定しづらい
  • 狙った検索語句で上位表示しづらい

ハードルの低いコンバージョンポイントでデータ量を担保する

とはいえ自動入札は使い方によっては大きなパフォーマンスを発揮することもあり、有効に使えるかは検討の余地があります。

ここでは、ハードルの低いコンバージョンポイントでデータ量を担保する設計方法について述べられました。

BtoBでは即座に商談に至るケースは少なく、まずは資料請求や情報収集から始まることが多い。資料請求、価格表ダウンロード、ホワイトペーパー、セミナー申込みなど、ハードルの低いCVポイントを用意することで、CV率とCV数が上昇・増加し、より自動入札の精度が上がっていく。

アナグラム 二平

また、価値の異なる複数のCVポイントを活用して費用対効果を最大化する方法も紹介されています。

お問い合わせ、サービス資料請求、ホワイトペーパーではそれぞれ商談に繋がる確率が違うことから、各CVポイントでの価値も違う。そのため、CVポイントごとに価値の値を割り振る設定をし、値を最大化するように動く自動入札(目標広告費用対効果、コンバージョン値の最大化)を利用するのがオススメ。

アナグラム 二平

広告の費用対効果を最大化するためにも、様々な検討段階のユーザーに対応できるCVポイントが設置されているかチェックしておきましょう。

ターゲティングでは顧客解像度を上げることが重要

ターゲットの業務プロセスと行動パターンを理解する

お客様の理解を徹底的にすることが重要。特にBtoB商材は何らかの業務プロセスに関わるもののため、業務プロセスの理解をしっかりとしていないと、良いキーワードや広告文が思いつかない。

アナグラム 二平

例えば、会計にまつわる業務では、「消込」という言葉があります。「消込」とは、売掛金の入金があった場合、支払明細と照らし合わせながら入金されているデータを消していく業務のことを指します。「消込」という言葉自体を知っていなければ、「消込 改善ツール」や「消込 楽にする」といったキーワードは思い浮かばないでしょう。

上記の例からわかるように、BtoB商材は、その業務プロセスの中のシステムや、業務そのものを改善したいと悩んでいるユーザーが多いため、業務内容やその課題についての理解が重要になってきます。ターゲットの業務プロセスへの理解を深めるには、顧客のニーズや刺さる訴求などの情報を一気にインプットできる営業の方にインタビューすることがオススメと紹介されました。

また、ターゲットが利用しそうなキーワード案の作成だけではなく、ターゲットの活動時間や利用デバイスに合わせて調整できているかも確認しておきましょう。次に紹介する3つの観点で調整を行っていくと、顧客となるユーザーに絞って広告を届けやすくなると二平さんは解説していました。

  • デバイスを調整し届けたい人に広告を配信
  • 自社の商圏内での広告配信が重要
  • 営業時間帯での配信に注力

ターゲットの解像度を上げることで現状の配信設定が適切なのかどうかが見えてくるため、まずは営業の方へインタビューなどを行うところから始めていきたいですね。

CV数が貯まったらインテントマッチ(旧部分一致)を活用して成果をさらに伸ばす

月間CV数が100件を超えるアカウントであれば、十分にCVデータが溜まっているため、BtoBでもインテントマッチ(旧:部分一致)のキーワードを活用することで、CPAを維持しながらCV数を増やせる事例が多くあると二平さんは言います。

インテントマッチのキーワードは他のマッチタイプのキーワードに比べて、参考にするデータシグナルが多いとGoogleは言及しています。そのため、CVデータが十分に溜まっているアカウントを運用されている方は、少しずつインテントマッチのキーワードを追加してみることにチャレンジしても良いでしょう。

クリエイティブでは無駄なアクセスを減らし、論理性を持たせることがポイント

法人表記を入れて顧客対象にならないユーザーからの無駄なアクセスを減らす

BtoBとBtoC両方に関連する商材の場合、法人向けに広告を配信する際は、法人向けであることを明確に伝えることが重要です。なぜなら、法人向けの広告であるとユーザーに伝わらないと、興味を持ったBtoCのユーザーが流入し、無駄な広告費が発生してしまう可能性があるからです。

例えば、電気代の節約に関するサービスの広告を配信している場合、電気代の節約は法人のみならず、個人も興味を持つ可能性が高いですよね。このような場合、できる限りノイズ(ターゲット外のユーザー)を減らすために、広告文に法人向けであると明確に記載することが効果的です。

ターゲットとする法人ユーザー以外の流入を完全に防ぐことは難しいですが、少しでも意図しないクリックを避けるためにすぐに実施できる施策ですので、自社の広告文にも法人表記を入れてみてください。

具体的な実績や成果の数値を入れて信頼性と説得力を高める

BtoBにおいてはサービス導入を検討する時に、売上は増えるのか、コストは下がるのかなどのロジックが求められることが多いかと思います。そのため、信頼性と説得力を高めるクリエイティブが重要になってきます。その例として、具体的な数字を使った「導入実績400社以上」といったクリエイティブが本ウェビナーでは紹介されました。

また、その他にも製品やサービスの強み(金額、スピード、柔軟性、機能など)を入れることも、信頼性と説得力を高める要素になります。本ウェビナーでは「【初期費用0円】」という見出しが例として紹介されました。

導入社数、導入後の効果など、どんな実績や強みが利用できそうか確認し、クリエイティブに落とし込んでいきたいですね。

その他の改善ポイント

BtoBユーザーの利用が多いMicrosoft広告を始める

GoogleとYahoo!の検索広告は配信しているが、Microsoftの検索広告は未配信という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

二平さん曰く、Microsoft広告を利用するとbingに検索広告を掲載することが可能です。実はPCでのbingシェアはYahoo!を超えているのです。また、Microsoftは、Googleと比較するとBtoB関連の検索ボリュームがBtoCよりも多い傾向にあったり、CV数は少ないものの成約単価や商談化率が他媒体よりも高いケースが見られたりするそうです。

BtoBにおいては、業務中にPCで検索するユーザーも多いことを踏まえると、Microsoftの検索広告は取り組むべき媒体の1つになってきていると言えるでしょう。

もしGoogle広告を既に配信されているようであれば、Google広告で設定している内容を管理画面から簡単にMicrosoft広告にインポートできるため、すぐに配信準備をしていきましょう。

記事LPの活用で潜在層からもCVを獲得する

BtoB向けの検索広告は、下記2つの課題を抱えることが多いのですが、記事LPを活用することでCV数が頭打ちの状況を打破できる可能性があると二平さんは解説します。

  • CVポイントにもよるが、獲得できるクエリが限られていることから、CV数が頭打ちしやすい
  • 年々CPCは上昇傾向にあることから、CPAが上がりやすい

記事LPとは、ニュースサイトなどに記載されている記事コンテンツのようなLPのことを指し、BtoCでよく用いられます。広告→記事LP→LPという設計にし、記事LPでサービスへの興味関心を高めた状態にしてからLPにアクセスしてもらうことでCVRの上昇とCV数の増加を狙うことが多いです。

BtoBで記事LPを活用すると、通常のLPでは獲得できなかった興味関心層からCVを獲得できたり、競合性の低い検索語句に広告を出せるためクリック単価が下がりやすいなどのメリットがあります。

ただ、記事LPを利用した配信は、作成などに手間もかかってしまうため、基本的な検索広告の運用が安定してから取り組むべき応用編と言えます。まずは通常のLPを作成し、購買意図の強い検索語句に対して効果的に広告を出稿できるようになってから、記事LPの作成を検討していけると良いでしょう。

まとめ

SEOや検索広告において設定などの技術的な対策ももちろん大切ですが、それ以上に顧客への深い理解が成果改善のカギになります。

マーケティング業務に関わる方であれば、顧客解像度を高める取り組みは過去に行っているかと思いますが、改めて営業の方へインタビューなどをすることで、新たなコンテンツ案やキーワード案などが見えてくるのではないでしょうか。

顧客解像度が高まった状態になれば、本ウェビナーで紹介された施策がより成果改善に繋がっていくかと思いますので、ぜひ活用してみてくださいね。


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