バナーを制作する上で大事なことは、ユーザーがこのバナーを見た時にどんな気持ちになるかを考えることです。この商品(サービス)に興味を持ってもらうには、どんなデザインやキャッチコピーが必要なのでしょうか?
同じ情報だとしても、言い方や見せ方を工夫することで、より成果の出るバナーを制作できる可能性があります。
本記事では「商品情報をもっと具体的に伝えたい」「今のバナーをさらにブラッシュアップしたい」という方に向けて、バナーデザインに応用できる心理学を、目的別にご紹介します。
目次
具体的なシチュエーションを想像してほしい時に「クレショフ効果」
クレショフ効果とは認知バイアスのひとつで、画像や映像を連続して見ると無意識に関連付けて考えてしまう心理作用のことを言います。たとえば、下の猫の画像であれば猫の表情は全て同じはずなのに隣に並んでいる画像によって感じるイメージが変わってくるのではないでしょうか?
「商品写真だけだと、利用シーンや使い方がわかりづらい……」という場合に、シチュエーションを明示した写真や動画を合わせれば、商品を使う様子を想像してもらいやすくなります。
たとえば、美容オイルのパッケージ画像にロングヘアの女性の写真を合わせると「このオイルは髪の毛をサラサラにする効果があるんだ」とイメージしてもらうことができますし、顔のアップの写真と合わせると「このオイルは肌に塗るものなんだ」とイメージしてもらうことができます。
より価値を見出してもらいたい時に「アンカリング効果」
アンカリング効果とは、先に提示された数値や情報によって、その後に提示された別の数字や情報への認識が変わり、意思決定に影響を及ぼす傾向のことです。
たとえばとあるECサイトで商品を注文して、3日後に届いたとします。事前に「1週間以内に届きます」と言われていたら「お、早いな」と感じるかもしれません。しかし「翌日発送」と言われていたのに3日後に届いたとしたら、ECサイトに対する好感度は下がってしまうでしょう。同じ3日後に商品が届いたのにも関わらず、事前に提示された情報によって評価が変わってしまうのです。
広告では、セール商品や期間限定のキャンペーンなどで価格が下がっている商品の元の価格はいくらだったのかを示すことで、お得感を伝えることができます。
※比較対照価格は、事実に基づいて表示する必要があります。詳しくは価格表示ガイドラインをご確認ください。
説得力を上げたい時に「両面提示と片面提示」
コミュニケーションの際にメリットだけを伝えることを片面提示、メリットとデメリットの両方を伝えることを両面提示といいます。
たとえば通常より安い価格で売られているブランド品の広告で「人気ブランドの新商品が安く買える!」とメリットだけを並べられても「そんな上手い話があるわけないじゃん」「何か裏があるのではないか」とつい考えてしまいます。
しかし、「こういう理由でお安くなっています」と得られるメリットに匹敵する障壁があると納得しやすいのです。ワケあり商品や形が不揃いの食品が人気なのも、その価格で売られている理由がはっきりしているからですね。
有名な青汁のCMも「まずい!もう一杯!」と味のデメリットを正直に伝えることで、「健康に良い」という商品のメリットがより際立ち、手に取りやすくなったのだと考えます。
もっと知りたいと思ってほしい時に「ツァイガルニック効果」
人は完了できなかったタスクや事柄の方が、完了したタスクよりもよく覚えている傾向にあるという記憶に関する理論のことを指します。
人間は時として完璧なものより未完のものに惹かれる傾向があります。テレビ番組のランキングを途中まで見たら1位が何なのか気になりますし、ドラマや連載漫画でも「え、このあとどうなるの!?」とハラハラするシーンで話が終わると、続きが気になってしまいますよね。
バナー広告は載せられる情報が少ないため、図らずともツァイガルニック効果を活用している場合もあると思います。たとえば「運用型広告の改善事例を無料ダウンロード」と資料のタイトルや簡単な概要のみをバナーで紹介したり、カルーセル広告で漫画の途中のページまで掲載するなどがこれに当たります。続きを見てもらうために、資料のタイトルをより魅力的なものに変更したり、漫画のどのページを切り取るか工夫してみたり……。限られたスペースでどうやって訴求するかを考えるのが、広告運用者の腕の見せ所ですね。
安心感を上げたい時に「バンドワゴン効果」
多くの人が支持すればするほど、よりいっそう需要が高くなる現象のことです。
たとえば、街でレストランを探す際、ガラガラのレストランと行列ができているレストランだとどちらが美味しいと思うでしょうか?また、アプリなどの評価や口コミを見て「みんなのおすすめだから美味しいに違いない」と初めてのレストランに足を運ぶこともあるでしょう。
広告でも、初めて見る商品やブランドだと本当に良いものなのかわからず、購入を躊躇してしまうことがあります。そんな時に利用者数やレビューなどの実績を載せることで、商品を買うときの不安をなくし、安心感を上げることができます。
数字がピンと来ない時に「シャルパンティエ効果」
人間はサイズが大きいものは実際よりも軽く、サイズが小さいものは重いと感じる錯覚の一種です。
広告ではさまざまな数字の見せ方を工夫することで、この錯覚に近いものが得られます。「350gの野菜が入ったスムージー」だといまいちピンと来ませんが、「1日分の野菜が取れるスムージー」だとより野菜が多く使用されているように感じないでしょうか?
また、敷地の広さを「東京ドーム○個分」と表現したり、「ビタミン5g配合」ではなく「ビタミン5000mg配合」とするなど、単位に気を配ることで数字をより効果的に使うことができます。
量や大きさをそのまま伝えても、専門的でいまいちピンと来ない……という場合に、どう言い換えればユーザーはイメージしやすくなるか、シャルパンティエ効果を意識してみると面白い発見があるかもしれません。
強く印象づけたい時に「エピソード記憶」
エピソード記憶とは、体験を通して物事を覚えることです。
たとえば「豚肉はビタミンBが豊富である」ということを概念として記憶するよりも、「病院でお医者さんから『あなたはビタミンBが足りてないからもっと豚肉を食べなさい』と言われた」というような出来事の方が頭に残りやすいのです。エピソード記憶では「お医者さんがいい人だった」や「消毒液の匂いがした」など感情や五感もセットで記憶され、それらが手がかりとなるために記憶が引き出しやすくなる場合もあります。
このエピソード記憶は商品を覚えてもらうために効果的で、テレビCMなどで多く利用されています。竹内まりやさんの「クリスマスが今年もやってくる」という歌を聞くと、無意識にフライドチキンを連想してしまいませんか?
「夏はやっぱり○○」「お腹のハリが気になるときは」のように季節やシチュエーションと合わせて商品を記憶してもらうことで、ふとした時にその商品を思い出してもらえるようになるのです。
まとめ
ここまで様々な心理学の法則とその応用例について紹介しました。今の広告をブラッシュアップするヒントが見つかったでしょうか?
これらの法則を乱用して実際より過剰に良く見せてしまうと、結果的に信用を失ってしまうことになります。ユーザーの期待に応えられる範囲で、「より魅力的に商品情報を伝えるにはどうすればいいか」を考えるヒントとして利用するのが大前提です。
今のコピーだと商品の魅力が十分に伝わっていないかも……と感じた時に「そういえばこんな法則があったな」と思い出してもらえるくらいが心理学と広告のちょうどいい関係なのではないかと思います。