
2025年9月、LINEヤフー株式会社は、LINE広告とYahoo!広告を統合し、新たに「LINEヤフー広告」として提供する計画を発表しました。統合の対象はディスプレイ広告を中心としつつ、ブランド名称の刷新やネットワークの再編にも及びます。提供開始は2026年春頃とされ、詳細は開始の2か月前を目処に案内される予定です。

この発表の背景には、同社が掲げる「Connect One」という構想があります。これは、LINE公式アカウントを起点に、広告や販促、コマース、予約、顧客分析など多様なビジネスソリューションを統合的に提供していく考え方で、広告統合はその一環として位置づけられています
今回の統合は、利用者にとって大きな変化を伴います。管理画面の仕様がYahoo!広告に統一されることや、移行ツールを用いたアカウント移行が必要になること、タグやAPIの取り扱いに整理が生じることなど、日常の業務に関わる部分で対応が求められます。一方で、両プラットフォームのデータを組み合わせることによる広告最適化の精度向上など、長期的には運用効果の改善も期待されます。
ここでは、現時点で公開されている情報をもとに、広告運用者が把握しておくべき主要なポイントを整理します。
参考:【重要】広告プラットフォーム統合について|LINEヤフー for Business


目次
新プラットフォームは「Yahoo!広告」基盤に統一
2023年10月1日に正式に統合・合併し「LINEヤフー株式会社」となり、Yahoo!ディスプレイ広告とLINE広告の相互配信やIDの連携も進んでいたため、いずれは…と思っていた方も少なくないと思います。いよいよ来年春に統合が実現されることとなりました。
統合後に提供される「LINEヤフー広告 ディスプレイ広告」は、Yahoo!広告 ディスプレイ広告の仕組みを基盤として構築されます。

これにより、管理画面の操作性やフローはYahoo!広告仕様に統一され、これまで別々に存在していたプラットフォームが一つにまとめられます。
Yahoo!広告を日常的に利用している広告主にとっては移行後も大きな違和感はなく運用できる一方、LINE広告を主に活用してきた場合には操作感や設定手順が変わる可能性があります。単なる名称変更ではなく、運用の前提そのものがYahoo!広告の設計に寄せられるという点で、今回の統合の根幹に関わる重要な変更といえます。
- 統合後の基盤は Yahoo!広告 ディスプレイ広告
- 管理画面のUI/UXはYahoo!広告仕様を引き継ぐ
- LINE広告ユーザー:操作方法や設定フローが変化
- Yahoo!広告ユーザー:従来仕様の延長で利用可能
ブランド刷新とネットワーク統合
今回の統合はディスプレイ広告に限らず、Yahoo!広告、LINE広告というブランドそのものが「LINEヤフー広告」へ刷新される点に大きな特徴があります。
検索広告を含め、Yahoo!広告の名称が全面的に変更されるため、マーケティング資料や業務で使用する表記もすべて新ブランドに合わせる必要が出てきます。LINE広告も同様ですね。
また、広告配信ネットワークについても統合が行われ、これまで分かれていた「Yahoo!広告ネットワーク」と「LINE広告ネットワーク」が一元化されます。これにより、両媒体の掲載面を一つの「LINEヤフー広告ネットワーク」から管理できるようになります。名称の変更にとどまらず、配信基盤全体を再編成する大規模なリブランディングと言えるでしょう。
- ブランド名変更
- Yahoo!広告 → LINEヤフー広告
- Yahoo!広告 検索広告 → LINEヤフー広告 検索広告
- Yahoo!広告 → LINEヤフー広告
※仕様変更はなく、名称のみの変更
- ネットワーク統合
- Yahoo!広告ネットワーク+LINE広告ネットワーク
- → LINEヤフー広告ネットワークへ一本化
- Yahoo!広告ネットワーク+LINE広告ネットワーク
注目ポイントは「機械学習モデルの改善」
統合の背景には、単なる管理効率化以上の狙いがあります。
それは、LINEとYahoo! JAPANという二大プラットフォームのユーザーデータと広告実績を横断的に活用し、機械学習モデルを進化させることです。
これまで別々の環境で最適化されていた広告配信アルゴリズムが、一つの学習基盤に統合されることで、ターゲティングの精度や広告効果の改善が期待されます。開発リソースも集約されるため、新機能の提供スピードや配信精度の向上も加速していく見込みです。
- データ統合
- LINE:コミュニケーション基盤に基づくユーザー行動データ
- Yahoo! JAPAN:検索・ニュース・ポータルでの行動データ
- LINE:コミュニケーション基盤に基づくユーザー行動データ
- 機械学習モデルの改善
- 行動データ+広告実績を横断的に学習
- ターゲティング精度の向上
- 行動データ+広告実績を横断的に学習
- 期待される成果
- 広告効果の改善
- 運用工数削減
- 新機能の開発スピード向上
- 広告効果の改善
今から準備すべき技術的ポイント
統合に向けて、広告主や代理店が早めに確認しておくべき領域は、アカウント連携・タグ・APIの3点です。
これらは移行作業の円滑さや計測精度に直結するため、事前に状況を把握しておくことが重要になります。
特に、LINE広告のみを利用している場合には、Yahoo!広告の仕組みに合わせた追加設定が必要になるケースが多く想定されます。統合直前になってから対応を迫られることがないよう、開発チームやサイト管理者と情報を共有しておくことが望まれます。
- アカウント連携
- 認証済ビジネスマネージャーとLINE広告アカウントを接続
- 移行ツール提供後にスムーズに利用可能に
- 認証済ビジネスマネージャーとLINE広告アカウントを接続
- タグ
- Yahoo!広告タグを利用中 → そのまま利用可
- LINE広告タグのみ → Yahoo!広告で利用できる「計測タグ」の新規設置が必要
- Yahoo!広告タグを利用中 → そのまま利用可
- API
- Yahoo!広告API利用中 → 名称変更(LINEヤフー広告API)に伴う実装変更は不要
- LINE広告APIのみ利用中 → 新たにYahoo!広告API(名称変更後はLINEヤフー広告API)で開発が必要
- Yahoo!広告API利用中 → 名称変更(LINEヤフー広告API)に伴う実装変更は不要
- コンバージョンAPI
- 従来版:利用可能だが将来的に終了予定、新APIへの移行推奨
- 新API:そのまま利用可能
- 従来版:利用可能だが将来的に終了予定、新APIへの移行推奨
APIに関しては、Yahoo!広告API利用中であれば名称変更のみで大きな影響はありませんが、LINE広告APIを利用している場合には新たな開発対応が必要になります。
特に外部ツールやレポーティングサービスを利用している場合、各ベンダーがどのように対応するかによって実務への影響が変わるため、公式情報とあわせてベンダーからのアナウンスを確認することが重要です。
移行は「公式ツール」を待つのが吉
統合にあたり、LINE広告から新しい「LINEヤフー広告 ディスプレイ広告」への移行は、公式に提供される「移行ツール」を利用することが前提とされています。
現時点ではLINE広告の方がLINE面における配信最適化データを豊富に保持しているため、移行ツールが提供される前にYahoo!広告 ディスプレイ広告へ移行すると、期待される広告パフォーマンスが得られない可能性があります。

このため、移行ツールが提供されるまでは既存のLINE広告を継続利用することが公式に推奨されており、拙速な移行は避けるべきだと明確に案内されています。詳細な手順や提供開始のタイミングについては、統合開始の約2か月前を目処に発表される予定です。
- 移行は 「移行ツール」利用が前提
- 提供前に手動で移行するとパフォーマンスが悪化する可能性
- ツール提供まではLINE広告での配信継続が推奨
- 移行方法や提供終了の詳細は統合2か月前に案内予定
なお、移行ツールの利用には、すでに実装されている「ビジネスID」が必要となるとのことです。従来のIDのみを利用している場合はあらかじめチェックして早めに対応しておくのがよさそうです。
参考:【重要】「LINEビジネスID」並びに「Yahoo! JAPANビジネスID」の統合について|LINEヤフー for Business
予約型広告の今後
ディスプレイ広告の統合は運用型だけでなく、予約型広告にも影響します。これまでLINEとYahoo! JAPANで別々に提供されていた予約型商品は、統合後「LINEヤフー広告 ディスプレイ広告(予約型)」として一本化されます。

これにより、広告商品の仕様が統一されるとともに、新しい購入形式や一部商品の終了も予定されています。特に「Talk Head View Custom」などはサービス終了が案内されており、長期的なメディアプランの見直しが求められます。
- 対象商品例
- LINE Talk Head View
- LINE NEWS TOP AD
- Yahoo! JAPANブランドパネル
- Yahoo! JAPANトピックスPR
- LINE Talk Head View
- 変更点
- 仕様の統一(入稿・レポート基準の一元化)
- ビューアブルインプレッション購入型(vimps購入型)の導入
- 仕様の統一(入稿・レポート基準の一元化)
- 終了予定
- 「Talk Head View Custom」など一部商品
広告プラットフォーム統合がもたらす変化
2026年春に予定されているLINEとYahoo! JAPANの広告統合は、単なるプラットフォームの一本化にとどまらず、ブランド刷新やネットワークの再編、そして機械学習モデルの進化といった多面的な変化を含んでいます。
この統合により、広告主や代理店は以下のような影響を受けることになります。
- 基盤の統一:Yahoo!広告 ディスプレイ広告を土台にした新プラットフォームへ移行
- 移行プロセス:公式ツールを通じたアカウント・配信設定の移行
- ブランド刷新:「Yahoo!広告」から「LINEヤフー広告」への名称変更とネットワーク統合
- 学習精度の向上:両プラットフォームのデータを統合活用することで、ターゲティングや広告効果が改善
- 技術要件の整理:タグ・API・アカウント連携の確認と統合仕様への対応
- 予約型広告の再編:主要商品の仕様統一と、一部商品の終了
これらは、運用者にとって短期的には学習や調整を伴う変化である一方、長期的にはより高度な最適化や効率化を可能にする基盤整備でもあります。日本のデジタル広告市場全体にとっても、大規模な統合として印象的な出来事といえるでしょう。
