運用型広告の指標の裏にあるコンテクストも考えよう ~うわべだけの数字が教えてくれないこと~

運用型広告の指標の裏にあるコンテクストも考えよう ~うわべだけの数字が教えてくれないこと~
  • 「高いクリック率とは結局、何パーセント?」
  • 「クリック単価はいくらになったら安いと言えるのか?」
  • 「『成果が良い』は何をもって『良い』のか?」

そもそも「高い」「安い」「良い」などは曖昧な表現であることは別として、上記のような質問を考えたことがある広告運用者は少なくないでしょう。世の中に出回っているベンチマーク指標を見れば、ある程度の肌感覚は得られても、実際に確信を持てる答えはなかなか見つけにくいものですね。

運用型広告はパフォーマンスの良し悪しを判断するにあたって、「そもそもどの指標を見るべきか」、「その数字をどのような観点から評価したらよいのか」などに困ることも珍しくありません。ただし、それは管理画面や計測ツールに上がっている各種指標を見る際、その水面下にあるコンテクストまで想像していないことによって発生する問題なのではないかと思います。

「すべての指標は平等」ではない

運用型広告に限らずビジネスの数字の話になると、KPI(Key Performance Indicator)という概念はよく使われますね。本来ならばKPIは、コンバージョン単価やROIなどのような、ビジネス目標の達成において有意義な評価や判断が可能な指数のことですし、場合によって軌道修正されることはあっても明確な目標設定もあるわけです。

ただし、本質的にはKPIと呼べないものをKPI扱いされてしまうケースも多いのではないかと思います。「品質スコア」や「クリック率」などはよくKPIのように語られることがあるでしょう。一方、大事な指標や参考値でありながらも、やはりこれらを見るだけでは目標達成について特にこれといった見解は得られないのもまた事実です。

指標をKPIと呼べるものとそうでないものという軸から考えていくと、だいたい広告運用者が評価に困っているのはKPIではない数字の方が多いのではないか、と思います。明確な目標値や判断基準がそもそも存在しないからです。しかもこれらは、広告がいつ、どこで、だれに表示されるのかというコンテクストによって判断基準が変化していくのもまたちょっと厄介です。いくつかの例を挙げましょう。

指標のコンテクストの重要性を示す例

①クリック率って必ずしも重要じゃない

広告のパフォーマンスと言えば、やっぱり「クリック率」「コンバージョン率」という単語が広告運用者の頭をよぎることは少なくないでしょう。広告に新しい訴求を持たせてテストをする際などに、よくその指標にフォーカスが当てられているので、無理はありませんね。もちろん、クリック率の向上を図ること自体は決して間違ったことではないのですが、広告は単純に「クリック率さえ高ければ良い」で正確に評価できるという訳ではありません。

数週間前にSEM・SEOなど検索エンジン情報専門メディアのSearch Engine Landより出された、Google 広告の「レスポンシブ検索広告」の導入に際して、その実態にメスを入れた記事で、筆者のAndy Taylor氏が唱えていたのは、「クリック率・コンバージョン率はいうほど重要じゃない」ということです。わざわざ運用型広告の通念を覆すような、多少煽情的な切り口ではありますが、コンテクストから考えていくと正しいことを言っています。

参考:Google is right; click-through and conversion rates kinda don’t matter

Andy Taylor氏は、クリック率がある一定期間で複数ある広告訴求の優劣を判断するような場合には有効だという前置きをしつつも、広告運用者が追いかけるべきKPIではないと述べています。その理由は次のようなものです。

入札単価を高くしても必ずしもCTRが高くなるわけではない。入札するキーワードが多ければ多いほどページの下部に表示される機会が多くなる。CTRは平均値なので、キーワード郡の順位が低いほどクリック率が悪化し、入札単価が高くなる可能性がある。
[…] レスポンシブ検索広告(RSA)がこれまでの広告でカバーできていなかった新しい掲載場所(検索語句)へ範囲を広げる仕組みは、CTRなどの指標に影響を与える可能性がある。

a higher bid doesn’t necessarily mean higher CTR, as bidding more for a keyword might enter the keyword into more auctions in a position lower on the page. CTR is an average, so with lower positions in the mix, the CTR might look worse with a higher bid. This is comparable to Matt’s explanation of how ads might occupy new placements with RSAs they wouldn’t have entered with ETAs, and that can have counterintuitive effects on metrics like CTR.

レスポンシブ検索広告(RSA)に関して言えば、新しい広告の掲載場所では、コンバージョンに繋がる可能性は低いけれど低コストでクリックを獲得できる可能性がある。[…]この場合、広告主はコンバージョン率をあまり意識しすぎないほうがいい。

When it comes to RSAs, it’s plausible that new ad placements might produce clicks which are less likely to convert but which come at a lower cost, in which case Matt Lawson is correct in saying advertisers shouldn’t stress conversion rate too much.

※レスポンシブ広告は、ユーザーの検索語句に対して広告の組み合わせが最適化されるため、従来の広告では関連性が低いなどの理由で広告を表示できなかった検索語句に対しても掲載対象を広げられる可能性もあります。

つまり、クリック率・コンバージョン率だけを見るより、従来型の広告ではそもそも得ることができなかった新しい掲載場所で集客できるようになることに付加価値が存在しているということです。獲得単価が見合っている前提の上ではあるのは言うまでもないですが、たとえばレスポンシブ検索広告を入稿してから「クリック率が下がった」「コンバージョン率が下がった」などを理由に早とちりして停止してしまった場合こそ、機会損失になることさえあるかもしれません。表面的なクリック率・コンバージョン率だけでは判断しきれないわけですね。

②同じ指標でもコンテクストによって評価が違う

もう一つの例に検索広告の平均掲載順位という指標を挙げましょう。例えば、検索広告キャンペーンを運用し、その中のとあるキーワードの平均掲載順は2.0とします。上から2番目なので、パッと見てそれほど悪くないのですが、コンテクストが違えば、その平均掲載順位「2.0」が含みそうな意味も、評価基準も変わります。競争率の高いキーワードで掲載順位を2位まで獲れたら、そこそこ良いポジションに掲載できていると言えるのに対し、それがもし自社ブランドの指名系キーワードであれば、2位ではむしろ広告運用者の頭の中で警鐘が鳴るのではないでしょうか。

ただし、指名・非指名以外の軸も存在します。中でも「デバイスの違い」というコンテクストが比較的はっきりと表れているように思います。PCユーザーに見せる広告は掲載順位が2位では、だいたい画面の上部、且つ自然検索結果の上に広告を掲載できることを意味すると言えますが、スマートフォンだと大きく異なります。

スマートフォンの画面がPCに比べて小さいのでファーストビューに表示できるコンテンツの数はPCより断然少ないのは簡単に想像がつきますね。スマートフォンでは、ユーザーの検索に広告が複数表示される場合、もはや自然検索の結果がファーストビューに映るケースが少なくなっています。もっと言えば一番上にはショッピング広告、その下に辛うじてテキスト広告が一本出ていることが精一杯というのも別に珍しくないでしょう。

つまり、競争が激しいキーワードだとスマートフォンでの2位の掲載は「実際にはユーザーに見られていない」可能性が高いことを意味します。近年のモバイルシフトが進みつづけている状況を加味していると、デバイスの違いというコンテクストを無視してしまうと、スマートフォンでは大きな機会損失が生じる恐れがありますね。戦略的に重要性が高いキーワードなら尚更です。デバイスや時間帯、広告ネットワークなど複数のコンテクストを踏まえて各指標をみて判断することが非常に大事です。

数字のコンテクストを常に考えましょう

実は広告のコンテクストの重要性をGoogleの自動入札の仕様も示唆しています。複数のシグナルが加味されていることをほとんどの広告運用者は聞いたことがあると思いますが、それはまさに広告を、「だれに」「いつ」「どこで」表示するかによって評価が変わってくることを物語っています。そして、広告運用者が管理画面の数字を見てパフォーマンスについて判断する場合も全く同じです。表面的に数字が高い・低いだけで判断するのではなく、常に「あのコンテクスト」「このコンテクスト」でその数字を見た上でそのインパクトで考えるのが必要不可欠な観点だと言えます。

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Jan Hugendick

Jan Hugendick

アナグラム株式会社 クルー。 ドイツの出版社で マーケティングやSEOに携わることをきっかけにリスティング広告に興味を持ち、 ドイツの某メディア大企業直属のWeb広告代理店に転職。そこで5年間、多国・多業界 のアカウントを担当することを経て、2016年にアナグラムに参画。広告運用の他、ブログ執筆と編集を行っています。

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