『氷菓』の名言に学ぶ広告運用者の心得

『氷菓』の名言に学ぶ広告運用者の心得
この記事は最終更新日から約4年が経過しています。

皆さんは、『氷菓』という作品をご覧になったことはあるでしょうか。筆者は米澤穂信の原作の小説は学生時代に読んでいたのですが、社会人となり運用型広告に携わって以降とある動画配信サービス内にこの作品のアニメがあるのを発見し改めてこの作品に触れました。

作品概要

省エネを信条とする高校一年生、折木奉太郎は、ひょんなことから廃部寸前のクラブ「古典部」に入部することに。「古典部」で出会った好奇心旺盛なヒロイン、千反田える。中学からの腐れ縁、伊原摩耶花と福部里志。彼ら4人が神山高校を舞台に、数々の事件を推理していく青春学園ミステリ。

~京アニ公式ホームページより~
http://www.kyotoanimation.co.jp/kotenbu/

魅力的なキャラクターやストーリー展開も良いのですが、登場人物たちのセリフが、運用型広告のビジネスにおいても普遍的に役立ちそうな内容が多かったのです(筆者による脳内変換で作品内の意味合いとはだいぶ離れ、拡大解釈したものが多いです…)。そこで今回はアニメ『氷菓』の中から広告運用者の心得となりそうなセリフをいくつか紹介してみたいと思います。


「やらなくてもいいことならやらない。やらなければいけないことなら手短に。」折木奉太郎

主人公の折木奉太郎は省エネに灰色の高校生活を送るはずが古典部に入部することになり、同じく部長でありかつこの作品のヒロインでもある千反田えるの底なしの好奇心によって学園内の謎に首をつっこんでいくことになっていきます。そんな省エネ主義を信奉している奉太郎のモットーでもあるのがこのセリフです。

さて運用型広告の現場について考えてみましょう。

広告文一つとってもいくらでも時間をかけてこだわることができるし、管理画面上やGoogle アナリティクスのデータだけでも、いくらでも掘り進んでいくことができます。業務に関する知識も、周辺領域を含めればとてつもなく広いです。クライアントからの依頼も多々発生することもあるでしょう。やるべきことは数多あり、すべてやろうと思ったら時間はいくらあっても足りません。

そんな時にこの奉太郎のこのセリフを思い出しましょう。まずは、「やらなくてもいいこと」「やらなければいけないこと」の見極めが大事です。名著『7つの習慣』内の時間管理マトリクスで仕分けしていってもいいかもしれません。このように手当たり次第にタスクに取り掛かる前に、まずはタスクの整理をしていきましょう。


『7つの習慣』内の時間管理マトリクス

そうしてタスクを整理したら、次は”手短”に。最近はツールやテクノロジーを活用すれば、タスクを手短に片付けることも可能です。集計やレポートなどは便利なツールがいくつもありますし、分厚い資料だけが価値ではない場合も多いです。そういった風に、できるだけ手短に済ませたいものです。実行の前に一度、どうしたら手短に済むか考えてみるのが良いでしょう。

ただ気をつけたいのは、「(重要だけど今すぐ)やらなくてもいいこと」はやらなきゃいけません。省エネ主義の盲信は良くないです。やらなければいけないことが手短に済んで時間を捻出できたなら、こうした第二領域(=重要だけど緊急でないもの)にしっかり取り組んでいきたいですね。

「データベースは結論を出せないんだ」福部里志

奉太郎の親友、福部里志は、自身をデータベースと称するほど校内の情報をはじめ一般常識や雑学などあらゆる知識に精通しています。作品内ではそんな福部里志のデータが奉太郎の問題解決をするための糸口になったりしますが、里志自身だけではなかなか解決することはできません。そして自嘲気味に、時に悲哀を込めて言う口癖が「データベースは結論を出せないんだ」です。

さて運用型広告の現場ではどうでしょうか。広告の管理画面やアクセス解析ツールの管理画面などデータは山ほどありますが、ここでも”データベースは結論を出せません”。では誰が結論を出すのか。そう人間である広告運用者が出していかないといけないのです(最近はGoogle広告の最適化といった機能はありますが、それを実行するかどうかの意思決定していくのは結局、運用者の役目です)。

なのでレポートの報告の場でただ数字の結果(データ)だけを述べているだけではだめなのです。データベース以上の付加価値を提供していくためには、しっかりと結論も出していかないといけないのです。データは活用されてその真価を発揮するのです。

「頑張れば何とかなる保証はありませんが、頑張らなければ何ともならない事は保証できます!」千反田える

神山高校の文化祭・カンヤ祭で文集を販売することになった古典部。ところが30部刷る予定が発注を誤って200部届いてしまった。部長の千反田えるは部員たちに頑張って売りましょうと部員たちを鼓舞しますが、省エネ主義・奉太郎の”頑張るだけでなんとかなるものなのか?”といった発言への返しがこのセリフ。

運用型広告の現場でも頑張りで何とかなる保証はありません。とりあえず頑張って動けば一歩ずつ着実に前進していけばいいのですが、運用型広告の世界では根性論の頑張りだけで闇雲に実行していたとしたら、むしろより悪い方向に進んでしまうこともあるので注意が必要です。そのため運用者たちは常に、冷静に、ロジカルに、より良い打ち手はないだろうかと考え、実行&検証していくことを”頑張る”必要があるのです。

そして頑張らずに何もしないこと(=現状維持)も、進歩し続ける世界から見たら衰退であることも常に頭の中に入れておきましょう。

「自分に自信があるときは期待なんて言葉を出しちゃいけない。期待っていうのは諦めから出る言葉なんだよ。」福部里志

同級生が安易に”期待”といった言葉を使ったことに対し福部里志は、”アイツは国語ができないヤツだ”と言う。その言葉の真意を伊原摩耶花に話した際のセリフです。

広告運用者が備えておくべきスタンスとして自責思考があります。「競合ガー」とか「トレンドガー」など他責思考でいるといくらでも言い訳はできてしまいますが、運用者はこうしたことも予測し対策を立て自分がコントロール可能な部分に注力し、ビジネス目標をなんとか達成していくことが求められます。

そして今回の『期待』といったワード。運用者も同様で、期待なんて最後の最後までしてはいけない。なにかに期待している時点で、能動的に行動している状態から”待ち”の状態になってしまっているのです。自責思考であり続ける限り、アンコントローラブルなものに期待などせず、しっかり自分の手で思い描いた状況になるようコトを進めていくことが重要なのではないでしょうか。

運用者は”期待する”側ではなく、常に”期待される”側でありたいものです。

「わたし、気になりますっ!」千反田える

『氷菓』では好奇心の猛獣亡者である千反田えるの「わたし、気になります」から物語が展開していきます。

運用者にとっても好奇心はとても重要です。

その商材やユーザーに対して興味を持たないと売り方も思いつきません。ユーザーはどんな理由でその商品を買っているのだろう、どういったセグメントの人が多く買っているのだろうか。そのように広告のプランニングをしていくためにも、そうしたことを調べていく際に好奇心は大きな力となります。ちょっとした違和感を大切にできるか。

また運用面においては管理画面のちょっとした数値の変化や、その要因ついて気にならないと運用で改善していくことはできません。なぜそうした結果になったのか。単純に行き当たりばったり結果だけ受け止めていくだけではなく、そうした結果になった過程や背景にまで興味を持って調べていったのでは得られる気づきが全然違ってきます。

なにごとにも「わたし、気になります」精神をもっていきましょう。

問題意識を持っていればアニメもビジネスの参考になる

今回は『氷菓』の3名のキャラクターのセリフをピックアップしましたが、この3名の要素、奉太郎の問題解決能力、里志のデータ、そして千反田えるの飽くなき探究心、は広告運用者に必須の要素といえるのではないかと感じました。

筆者自身、いろんな作品に触れていこうと日々過ごしているのですが、つい社会人以降になってからは読書はビジネス書ばかりになってしまいがちです。しかし小説やアニメ、音楽鑑賞などの作品を楽しむことも、アニメの中のセリフが今まで頭の中でボンヤリと考えていたことの言語化につながったり、小説を読むことでペルソナの策定時に役立ったり、歌詞のフレーズや言葉使いが広告文のヒントになったりすることもあるでしょう。自分の中に問題意識を持つだけで全てのことが学びにつながるので、ビジネスの記事や本ばかりに留まらずいろんな作品に触れていくことのは大事ですね。

関連記事