広告運用をしていると、「クリック率には問題が無く、しっかり集客はできているが、コンバージョンが付かず頭を抱える」といったシーンは多いのではないでしょうか?
そんな時、コンバージョンまでの導線のどのステップに問題があるか、サッと分析できたら嬉しいですよね。
本記事では、「ファネルデータ探索」を使って、ウェブサイト上のユーザー行動を元に、コンバージョンに至るまでのフローを可視化する方法をご紹介したいと思います。
一見難しそうに見えるかもしれませんが、視覚的にわかりやすいUIとなっており、基本的な使い方をする上では、設定の複雑さはありません。GA4初心者の方にとっても、面白さを感じていただきやすい機能だと思います。
監修:
森野 誠之(運営堂)
運営堂代表。
名古屋を中心に地方のWeb運用を支援する業務に取り組む。豊富な社会・業務経験と、独立系コンサルタントのポジションを活かしてWeb制作や広告にこだわらず、柔軟で客観的な改善提案を行っている。
理系思考&辛口の姿勢とは裏腹に皿洗いを趣味にする二児のパパ。尊敬する人はゴルゴ13。
目次
GA4のファネルデータ探索とは?
元々はGoogle アナリティクス 360(有償版ユニバーサルアナリティクス)のカスタムファネルという機能でしたが、GA4になって無料版でも使えるようになりました。
主な用途として、ユーザーがコンバージョンに至るまでの一連の流れを、複数ステップに分けて可視化することで、ボトルネックとなっている箇所を特定する等が挙げられます。
「ファネルデータ探索」では、これまで有償版UAで提供されていなかった「セグメント比較機能」を使うことで、ユーザーの属性(年齢や性別等)別や、デバイス別の比較が可能になり、より効率的に分析できるようになりました。
では早速、具体的な使い方を解説していきます。
事前準備
「ファネルデータ探索」レポートを作成する前に、コンバージョンに至るまでのステップをどのように分割するかを決めましょう。
最大10のステップまで設定可能ですが、細かく区切り過ぎるよりは、4〜6ステップ程度を目安に、過不足無く分割する方が分析がしやすいです。
今回は、ステップごとのURLを指定する、オーソドックスな方法をご紹介します。(※独自に設定したカスタムイベントをステップとして設定したい場合は、別途カスタムイベントの設定が必要となります。)
例として、ECサイトなら以下のようなプロセスのイメージとなります。
- 初回ショップページ訪問
- 商品詳細ページ閲覧
- 商品をカートに追加
- 購入完了
上記のようにステップを分解できたら、各地点のURLに共通して含まれるパス等を確認して控えておきましょう。これで事前準備は完了です。
レポートの作成方法
左側カラムより、[探索]メニューを開き、[データ探索]内の[ファネルデータ探索]を選択します。
選択すると、サンプルの値が既に入った状態の「ファネルデータ探索」レポートが表示されるので、こちらの設定を適宜変更していきます。
各ステップの編集
[設定] > [ステップ]より、編集できます。マウスオーバーすると[×]ボタンが表示されるので、不要なステップは削除できます。編集を加えるには、右上のマークを押します。
実際に、事前準備の項目で例示した以下4つのステップを設定していきたいと思います。
- 初回ショップページ訪問
- 商品詳細ページ閲覧
- 商品をカートに追加
- 購入完了
各ステップに名前を付ける
まず、それぞれのステップに名前を付けていきましょう。ルールは無いので、第三者から見て分かりやすいものならば良いでしょう。
ステップ1「新規ユーザーの初回訪問」でステップ完了の設定
最初のステップとして「サイトを初めて利用するユーザーの訪問」を設定するケースが多いかと思います。
こちらについては、初期設定のままで問題ありません。
ステップ2の編集箇所の直前に、「次の間接的ステップ」と「次の直接的ステップ」のいずれかを選択できるプルダウンメニューがあるかと思います。大抵の場合は「次の間接的ステップ」を選択する形で十分です。
次の間接的ステップ:設定したステップの条件が満たされていれば、ステップ完了とみなす。ステップ間で(この場合、ステップ1と2の間)設定したステップの条件以外の操作が行われてもよい
次の直接的ステップ:ステップ間で、設定したステップの条件以外の操作が実行されると、ステップ完了とみなされない
「次の直接的ステップ」の設定を使用した厳密なステップ管理が必要になるシーンは限定的と言えます。
ステップ2・3「特定のパスを含むページを閲覧」でステップ完了の設定
各ステップを編集し、[ページ/スクリーン] > [ページロケーション] を選択します。「ページロケーション」には、ドメインとパラメータを含むURLの情報が保持されています。
「事前準備」の項目で確認した、各ステップの完了となる到達先URLの条件を設定します。
ステップ2の「商品詳細ページ閲覧」なら、商品詳細ページに含まれる共通部分を指定してください(https://~ を含む)。
ステップ3「商品をカートに追加」についても同様です。
ステップ4「コンバージョン」で最終ステップ完了の設定
最終ステップ完了の条件には、コンバージョンイベントとして設定しているイベントを利用します。今回のケースでは、GA4の標準イベントである「購入イベント」を利用します。
もしeコマースが未設定で、利用できるイベントが無い場合、ステップ2・3と同様に、完了画面URLを、”含む”、もしくは”先頭一致”で設定ください
ステップ4の編集箇所より、[イベント] > [purchase] と設定すれば完了になります。
もしご自身で設定済みのコンバージョンイベントを使用したい場合は、イベント内のリストを最下部までスクロールすると項目が出てくるので、そちらを選択ください。
これで全てのステップの編集について完了しました。画面右上にある[適用]ボタンを押してレポートを出力してください。
レポートの活用方法
出力されたレポートの具体的な活用方法を解説していきます。
放棄率の高いステップを特定し、CV率の改善点を見つける
レポートの使い方として、「ステップ全体の推移を確認し、放棄率が高いステップがあればその要因を分析して打ち手を考える」ことが基本になります。
上記の例では、ステップ2の「商品詳細ページ閲覧」に至ったユーザーの82.8%がそこで放棄し、次のステップである「商品をカートに入れる」アクションに至っていない状況がわかります。
このステップの完了率を改善したければ、例として「商品詳細ページの情報量が少なく、購入判断に至らなかった」等と仮説を立て、商品画像のバリエーションを増やしたり、商品説明のドキュメントを拡充するなどの対策を考えることができます。
放棄率の高いステップを特定することで、CVR改善施策の打ち手が見えやすくなるでしょう。
セグメント別に比較
[セグメント]を[セグメントの比較]に追加することで、ユーザーを絞って比較できます(最大4つ設定可能)。右上の[+]ボタンより、事前に用意されている項目に加え、自身で作成したセグメントも設定可能です。
レポートのデータを直接右クリックすることで、対象のユーザーから自動的にカスタムセグメントを作成できることも、知っておくと便利でしょう。
例として、デバイス別にセグメントを指定してみます。「モバイルトラフィック」と「デスクトップトラフィック」を追加すると、このようにファネルが複数になり、簡単に比較ができます。
上記では、モバイル環境からアクセスしたユーザー(青)の方がデスクトップ環境(紫)のユーザーに比べて各ステップの放棄率が高い傾向が読み取れます。モバイル環境のユーザー体験に改善の余地がありそうです。
ディメンションごとの内訳を確認
[ディメンション]を[内訳]に追加することで、ディメンションの値ごとの内訳を確認できます。「性別」、「経過時間」等のデータは厳密ではなく、推測値であることを踏まえてご活用ください。
例えば、ユーザーの性別ごとに遷移率に違いがあるのかを確認したい場合、「性別」というディメンションを追加することで、性別ごとのデータの内訳が見れるようになります。
時間軸で分析
平均経過時間を確認する
「平均経過時間を表示する」をオンにすることで、ステップ間の平均経過時間が確認できるようになります。ユーザーがどのような時間軸で行動しているかを把握できます。
「使用するファネルのグラフ」形式で表示し、日別データを確認する
[使用するファネルのグラフ]をプルダウンから選択することで、各ステップの推移を日別のグラフで確認できます。例えば、ある日を境に、ステップ2の商品詳細ページ閲覧後の放棄率が突如上がった場合、カートシステムに問題が起きている可能性等が考えられます。
ファネルをオープンにして分析
[ファネルをオープンにする]をオンにすると、ステップ1以外のステップからプロセスを開始した人も計測対象に変更できます。ステップ2からプロセスを開始し、3を飛ばして4に到達するような場合はカウントされません。上記の例では、ステップ3の数値の微増が可視化され、途中からプロセスを開始したユーザーがいることが伺えます。
こちらの仕様は少々わかりにくいため、詳細は以下のヘルプより、ご確認ください。
[GA4] ファネル データ探索
https://support.google.com/analytics/answer/9327974?hl=ja
活用にあたっての注意点
しきい値の適用
GA4では、探索レポートの数値が、標準レポートの数値と乖離して戸惑う方が多いです。これはデータのしきい値が適用された際に起こります。
しきい値とは、ユーザー属性などの情報からユーザーが推測されることを避けるため、レポートから一部データを除外する仕組みのことです。
その目的から、ユーザー関連のデータを利用すると適用されることが多いため、ファネルデータ探索レポートにおいて、ユーザーベースのディメンションや、指標(ユーザー数やユーザー属性)を利用して分析する際は、頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
しきい値が適用されている時は、レポート右上に三角形の通知が出ますのでご確認ください。
データの保持期間を14カ月に設定しておく
「探索レポート」のデータ保持期間は、「2ヶ月」か「14ヶ月」のどちらかを選択できます。データ保持期間を超えたデータは、自動で削除されてしまうので、「14ヶ月」に設定しておくことをおすすめします。
GA4の[管理] > [データ設定] > [データ保持] 画面より、簡単に設定ができます。
まとめ
「ファネルデータ探索」は、慣れるまでは操作が難しく感じることがあるかと思いますが、上手く活用できると、コンバージョンに至るまでのボトルネックを特定し、サイトを改善するのに非常に役立ちます。
一度手を動かして設定してみるとすぐに理解できますので、是非一度お試しください。