美容部員歴20年のプロに教わった、「手」で商品価値を高める4つの方法

美容部員歴20年のプロに教わった、「手」で商品価値を高める4つの方法

皆さんは、広告の動画撮影で「手元カット」を入れるとき、何を意識していますか?

商品名が隠れないようにする。もちろん大切です。ですが、それだけでは商品の価値を最大限に引き出せていないのかもしれません。

私も以前は「持ち方は重要じゃない」「商品以外は特に見られていない」と思っていました。しかし、前職の化粧品会社で美容部員として20年以上勤務していた大先輩から、手の見せ方についてこんな言葉を言われました。

「手の使い方で、ブランドの品位が決まる」

まさに雷が落ちたような感覚でした。「そんなに手って重要なのか!」と。

手は、単なる"添え物"ではなく、商品の印象を底上げしてくれる存在です。だからこそ、ディレクターとして指示を出すときに「商品名が隠れていない」だけで終わってはもったいない。今回は、動画のクオリティをもう一段上げたいときに試してほしい、商品価値を高める「手の使い方」を紹介します。


そもそもなんで手が重要なの?

人は本能的に、動いているものを目で追う傾向があります。人間の体の中でも手は、小さな動きだけで注目させることができる部位です。

映画やアニメでも「手の動き」を主役にしたカットがよくありますよね。これは手で動きを出すことによって、視線を誘導できるから。

広告でも同じで、手元カットはユーザーの注意を引きつける役割を果たします。加えて手元が映ることで、商材理解を一段深める情報まで一気に渡せるのもポイントです。手が入れば商材の大きさが一瞬で伝わるし、触り方や握り方から硬さも想像できる。使い方だって直感的に伝わります。

つまり、手元は「なんとなく入れる」場所ではなく、見られる前提で細かくこだわるべきポイントです。

「手」で商品価値を高める4つの方法

手に関するテクニックや表現はたくさんありますが、今回は広告表現に使いやすい4つの考え方をご紹介します。手のひらの見せ方、指の開き方、指差しの使いどころ、そして手の動きによる質感表現。それでは早速見ていきましょう。

1. 手のひらを見せると「信頼」が生まれる

飲食店で席を案内されるとき、指さしで「あちらです」と言われるよりも、手のひらを上に向けて「あちらです」と案内されると、なぜだか安心しませんか? これには心理学的な理由があるとされています。

動物が急所を見せて降参するのと同じように、手のひらを見せる行為は「攻撃する意思がありません」「隠しごとがありません」というサインになります。つまり、誠実さをアピールするのにもってこいの動作。指を揃え、手のひらを見せることで、高めの商材やBtoBの商材にふさわしい上品な印象を伝えることができます(参考: アラン・ピーズ/バーバラ・ピーズ『ボディランゲージ辞典』)。

【実践編】安心感や誠実さを見せたいときに使える手の表現

上記の考え方を活かして、広告に使える表現方法を見ていきましょう。

例えば価格が10,000円と高めの化粧水を紹介するとき、下記のような持ち方はどうでしょうか。

商品の半分以上見えないのはもちろんNGですが、持っているというより握っているという言葉が相応しく、雑な印象を与えてしまっています。

ではこちらの持ち方は?

なかなかいいですよね。しかし、片手で持つことによりカジュアルさが生まれてしまっています。価格帯が10,000円で高級感のある化粧水という商材イメージとは少し離れてしまう。

では、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。

このように手のひらの上に商材を置き、指を揃えて優しく包み込むことで丁寧な印象が生まれます。

丁寧に持つだけで、見ている人の頭の中に「それだけの価値がある商品なのでは」という印象が自然と湧いてきます。手のひらを見せることで「誠実さ」や「丁寧さ」も同時に表現できている。

こうした手の表現は化粧品に限った話ではありません。「高級感を演出したい」ときや「BtoB向けの商材」など、親しみやすさよりも「誠実さ」や「丁寧さ」が欲しいときに適しています。

2. 指先を揃えるか、開くかで印象が180度変わる

なかなか意識できないことですが、指先の開き方も重要です。なぜなら、指先を揃えているときと開いているときとでは、見た人が受ける印象がまるで異なるから。

コップを持った2つの写真を見比べてみてください。左と右、どちらのほうがより丁寧だと感じるでしょうか。

右側のほうがより丁寧に感じますよね。指先が揃えられていると「丁寧」「誠実」といった印象を与え、逆に指先が開いていると「元気」「フレンドリー」といった印象になるとされています。

もう一例見てみましょう。

幼稚園児の子がお辞儀をするとき、指を開いてお辞儀をしていたら元気で親しみやすい印象を受ける。閉じてお辞儀をしていたら良い子な印象を受ける。

指の開き加減で捉えられ方が180度違うことが伝わったでしょうか。手軽さや親しみやすさを伝えたいなら指を開き、丁寧さや上品さを伝えたいなら指を揃える。商材の特性やターゲットとしているユーザーを考えて、手の開き方に気をつけてみてください。

【実践編】手軽さ・親しみやすさを出したいときに使える手の表現

上記の考え方を活かして、広告に使える表現を見ていきましょう。

定期配送してくれるパンが商材です。価格帯は手頃で、仕事と家事を両立しているお母さんをターゲットとした商品。

下記のように手のひらを広げて中身を見せているシーンにしたいのですが、このとき手はどうしたら良いでしょうか。

まずは指を揃えてみます。

なんというかお上品で、お手頃価格感がいまいちないですよね。

では次に、指先を開いてみましょう。

どうでしょうか。指先を開くことにより、先ほどよりも元気で親しみやすい印象になりました。

手のひらを見せることで「安心感」を与えるとともに、指を開くことで「フレンドリーさ」を表すことができています。価格帯が手頃で忙しいお母さんに向けた商材として、手の使い方はバッチリです。

3. 無意識に威圧してない?「指差し」の落とし穴

たまにドラマやアニメである、「ビシッ」と指を指すシーン。かっこいい決めポーズではありますが、広告で使うときには注意が必要です。

美容部員の先輩は雑な印象を与えるからNGとおっしゃっていましたが、指さしがダメな理由はそれだけではありません。

人から指を向けられると、多くの人は「責められているのかな」「みんなの前で注目されてしまった」と感じやすい。指先が鋭く突き出される形は、心理的に攻撃を連想させやすいとされています。実際、広告動画でも指差しを多用しているものはあまり見かけませんよね。

ただし、良い効果を発揮してくれる場面もあります。

指をさすという行為は、注目してほしいという気持ちの裏返しでもある。子供が「見てみて~」と指を差すのは、指さしが注目を集めるために有効だと本能的にわかっているからだと考えられています。

つまり、指差しは攻撃と捉えられる可能性があるため無闇に乱用すべきではありません。ただし「ここは注目してほしい!」「このCTA(行動喚起ボタン)を押してほしい」というシーンでは、その強さがそのまま武器になります。

【実践編】特に印象付けたいときに使える表現

今までのことを元に、動画で使えそうな表現を見てみましょう。

40代以上の男女がターゲットの健康食品の商材があったとします。冒頭で「〇〇している人、今すぐやめてください!」というシーンを撮りたい場合、右と左どちらのほうが迫力があるでしょうか。

左のほうが注意されているというか、自分自身に言われている雰囲気がありますよね。

前述したように指差しには人の注意を惹きつける性質があります。このようにあえて強めの口調で人を惹きつけたいときや、冒頭で注意を引きたいときなど、ここぞ!という場面には有効です。

4. 手の動きで「使い心地」を脳内再生させる

人間には「ミラーニューロン」という神経細胞があります。俗に「ものまね細胞」とも呼ばれ、他人の行動や感情を見たときに、まるで自分自身が同じ行動・体験をしているかのように脳内で反応する仕組みです。わかりやすい例としては、他人のあくびがうつる、笑顔につられる、人が怪我したときに自分も痛いと感じる、といった現象が挙げられます。

集団生活を営む人間が、相手の感情の変化にいち早く気づくための機能として発達したと考えられています(参考: ジャコモ・リゾラッティらのミラーニューロン研究)。

この仕組みのおかげで、手つきひとつで広告を見ている視聴者の脳内にはその商品の「使い心地」や「素材感」が再現されます。

ポイントは、単純な動作であればあるほど効果的だということ。不規則で予測ができない動作になると、脳内での再現が難しくなります。「頬を撫でる」「商材を押してみる」など単純な動作を意識しましょう。

【実践編】手で触感を伝えよう

例えば、マットレスのCMを作るとします。そのマットレスの触感を伝えるとき、相応しい手の動きは何か考えてみましょう。

動きが複雑なので、質感が想像しづらくなってしまっています。

では次に、ゆっくりマットレスを押してみましょう。

なんとなく「触り心地が良さそう」と思いませんか。押すスピードがゆっくりなことで、引っ掛かりのない上質な素材だということも想像できます。

このように、商品の質感や使用感を伝えたいときには「単純な動作」で「ゆっくり」を意識すると効果的です。見ている人が自然と脳内で再現しやすくなります。

どのテクニックを組み合わせれば商品がよりよく見える?

ここまで紹介した4つのテクニックは、商材の価格帯やトーンに応じて組み合わせることで、より効果を発揮します。

価格帯×トーン商材例主役テクニック補助テクニック
高価格×フォーマル高級スキンケア、ジュエリー、BtoB①手のひら+②指を揃える④単純な動き
高価格×カジュアルプレミアム家電、こだわり食品①手のひら+②指を開く
低~中価格×フォーマル機能性日用品、医薬部外品、健康食品①手のひら③指差し
低~中価格×カジュアルサブスク食品、プチプラコスメ、生活雑貨②指を開く+④単純な動き③指差し(CTA誘導)

自分の商材がどこに当てはまるかを確認して、主役となるテクニックから優先的に取り入れてみてください。

まとめ

手のひらで安心感や誠実さをつくり、指先を揃えるか開くかで丁寧さと親しみやすさを出し分ける。指差しは強い表現だからこそ使う場面を絞って効かせ、単純な手の動きで質感や使用感の「良さそう」を伝える。

この4つは、撮影の現場ですぐに使える再現性の高いテクニックです。今回の撮影、なんだか物足りないなぁと思ったときにはこのテクニックを思い出してみてください。そして実践してみてください。クリエイティブの品質を決めるのは、コピーや構成だけではありません。演者の身体表現まで考えられるかどうかが、仕上がりを大きく左右することに気づいていただけるでしょう。

撮影の際には下記のチェックリストも併せて活用してみてください。

チェックリスト

  • 手の動きで質感や使用感を表現する際、動きは単純なものになっているか(撫でる、押す、叩くなど)
  • 指の開き方は商材のイメージに合っているか
  • 頻繁に指差しを使っていないか
  • 商品名は大きく隠れてしまっていないか
  • 手のイメージが商材に合っているか(ネイルの有無、年齢、性別など)
  • フレーム内で手の位置が安定しているか(見切れない、影が邪魔しない、ピントが合う)

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