生成AIは検索エンジンのあり方を変えるか?GoogleのAI Overviewsのアップデートがユーザーと広告主にもたらすもの

生成AIは検索エンジンのあり方を変えるか?GoogleのAI Overviewsのアップデートがユーザーと広告主にもたらすもの

グーグルは8月に、生成AIによる検索結果「AI Overviews」のアップデートをいくつか発表しました。

参考:New ways to connect to the web with AI Overviews

内容から察すると、このプロダクトが今後より多くのユーザーが利用できるようになる他に、使い勝手も改善されると期待できそうです。

これらのアップデートが、今後の検索エンジンのあり方とデジタルマーケティングの未来にどのようなインパクトがありそうか、詳しく見ていきましょう。


「AI Overviews」とは

AI Overviews(旧Search Generative Experience/SGE)は、Googleの検索エンジンに入力した検索クエリに対してAIが生成した回答を表示できる機能です。

※画像引用元:Generative AI in Search: Let Google do the searching for you

(この機能はGoogle Search Labsから利用可能で、今後日本にも一般公開される予定です。) 

こうして、検索結果ページに掲載される通常のリンクに加え、ページ上部にAIが生成したコンテンツが専用ウィンドウに表示され、対話型でクエリに関する関連情報を提供することが可能になりますが、必ずしもすべての検索語句に対してAI Overviewsが表示されるわけではありません。

画像引用元:AI Overview Study for 8,000 Keywords in Google Search

2024年7月1日のSEOツール「Advanced Web Ranking」の調査によると、テストした8,000もの検索ワードの約12%にAIの概要が表示されたことがわかりました。また、「how」(どうやって)を含むクエリ(34.77%)と、5つの単語からなるクエリ(22.67%)に対し、AIが生成した検索結果が特に頻繁に表示される傾向が強かったようです。

この結果を見る限り、ユーザーの検索意図によってAIの出番が比較的強く左右されている動きをしていると思えます。今後細かいところが変わってくる可能性はもちろんありますが、現時点では質問形式の検索や「○○を知りたい」などの意図を持つインフォメーショナルクエリに反応しやすい模様です。

※上述のAdvanced Web Rankingは、毎週更新されるAI Overviewsの統計情報をウェブ上のダッシュボードで無料で提供しています。 データは業界と検索意図でフィルタリングできるため、生成AIによる検索結果が各業界に与え得る影響を推定するのに役立つかもしれません。

参考:Google AI Overview Tool

対象ユーザーの拡大と質の向上も

8月15日のグーグルの公式ブログ記事では、AI Overviewsをより多くのユーザーに、より広範な文脈で提供する方向性を描いているようです。

特に興味深かったニュースのひとつは、AI Overviewsが利用できる国の数を拡大する予定だということです。これまでは米国を中心に英語のみ対応だったのですが、今後は日本のユーザーを筆頭に、英国、インド、メキシコ、ブラジル、インドネシアなど他の国々にも、AI Overviewsを現地の言語で展開する方針を示しました。

画像引用元:New ways to connect to the web with AI Overviews

また、公式の発表の他に、すでにログインしていないユーザーやシークレットモードのユーザーにもAI Overviewsが表示されることが確認されているため、徐々に様々な利用状況の中で生成AIの検索結果を目にする機会が増えると見込めます。

参考:Google AI Overviews In Incognito Mode (Not Signed In)

しかも、変わるのは量だけではなく、使い勝手の面においても質的な向上があると期待できます。

画像引用元:Google AI Overview New Links UI, Save, Simpler Mode & More Countries

まず、AIが生成したコンテンツへの信頼を高めるために、AI Overviewsによって提供される情報にソースへのリンクが付加されるようになりました。グーグルのプロダクトに限らず、AIが生成したコンテンツにはどこまで信ぴょう性があるのか、という大きな課題がつきものと言っても過言ではないのですが、このような参照しているソースの記載はユーザーにとってありがたいアップデートですね。

また上記の他に、AIが生成した回答を後でも参照できるように、保存機能を追加することと、ユーザーがまだ検索したトピックに十分に精通していない場合、より簡単な言語で回答を表示するオプションの2つの機能も発表されました。(2つとも現在は英語版のみ対応)

参考:New ways to connect to the web with AI Overviews

トレンドとしては、AIに触れる回数が増えるという「量」とユーザビリティの向上という「質」の部分を同時に高める方向に動いているようで、特に後者はユーザーにとって大きなプラスになる可能性があります。

しかし、生成AIと検索の動向は、広告主にとってどうでしょうか?

デジタルマーケティングに与える影響は?

AIが生成した検索結果がますます頻繁に表示されるようになり、とりわけ検索結果ページの最上位で非常に目立つ位置を占めるようになれば、もちろん広告にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

少なくともAdvanced Web Rankingによる上記の調査では、AI Overviewsが表示される検索結果ページのうち、広告が上位に掲載されたケースはわずか8.7%で、ページ下位の掲載は19.5%を占めるという結果でした。

参考:AI Overview Study for 8,000 Keywords in Google Search

AIが生成した結果の表示によって広告掲載の状況が変化するかどうかが不明で影響に関して断定はまだ難しいものの、検索結果画面の見た目自体が変わることによってそれなりにユーザーの反応も変わる可能性は低くありません。

検索結果がますます対話型になった場合、広告運用面においても注意が必要でしょう。

「ターゲティングやコピーライティングにどう対処すべきか?」または「AIが生成した検索結果への広告掲載に関するレポートはあるのか、掲載面としてオプトアウト可能なのか?」などのように、AI Overviewsとの付き合い方に関して、広告主・広告運用者に柔軟性がますます求められることが想像に難くないと言えます。

これらの課題がある一方で、多くの広告主がGoogleへの投資を継続する意思に比較的自信を持っていることが興味深いです。

画像引用元:Google’s AI Overviews aren’t hurting publisher traffic yet, but it still looms large

デジタルマーケティングを専門とする市場調査会社eMarketerの調査によると、生成AIの時代においても米国の広告主が検索エンジンにアロケーションしている広告費のうち、約70%をGoogleが占めています。

一方、特に記事広告などの分野では懸念はやや大きい模様です。AdExchangerの記事では、Gartnerの調査を基に、グーグルによる最近の検索エンジンの変更は一部のパブリッシャーにとって約25%のトラフィックの損失を意味する可能性がある、と主張しており、ユーザーにコンテンツを提示するハードルが今後あがることもありそうです。

参考:Don’t Be Distracted By Cookie Drama. Google’s Search Changes Are The Real Existential Threat | AdExchanger

今後の検索エンジンはいずれ対話型に?

まず、グーグルがAI Overviewの対象地域を拡大し、利用可能なユーザーも大幅に増やす方針をとれることは、当プロダクトが最初のリリースからかなり完成度が高まったことを示唆していると言えます。そしてより多くのユーザーがこの機能を試すことができるようになり、そのフィードバックをさらなる最適化に役立てるでしょう。

一方で、拡大のもう一つの文脈として、検索エンジンにおけるAI技術の競争のプレッシャーが市場にあることも考えられます。限定的なテストではあっても、競合のOpenAIが7月中に独自の生成AI技術を搭載した検索エンジン「Search GPT」をリリースしたことも、グーグルが自社のAI検索を世界中のより多くのユーザーに拡大するという決断に一定の後押しを果たしたかもしれません。

ただ、今後のWeb検索におけるAIの活用には引き続き注目、と言いながらも、従来のセマンティックな(キーワードの文字通りの意味に対して関連した結果を返す)検索エンジンの時代から、より対話的な形への急激なパラダイムシフトが起きることは考えにくいと思います。

グーグルに関して言えば、広告が会社を収益化する重要な要素であり、その中で特に検索エンジンが中心的なアセットになっているのが一つの原因でしょう。

つまりAI Overviewsなど類似の対話型検索結果を大規模に拡大できるには、まず検索エンジン自体がユーザー・広告主の両者にとっても良いユーザー体験を提供し続けることが前提です。そのため、急な方向転換よりも、さまざまな市場で何度もテストを重ねつつ、慎重かつ着実にGoogleがAI機能を導入していくシナリオの方が、より現実的だと思います。

とにかく、AI Overviewsの国内展開まで近いようなので、Googleの検索結果画面に普段よりも注意してみると重要なインサイトは得られそうですね。

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