リスティング広告のパフォーマンスを大きく左右するといっても過言ではないアカウント構成。広告運用者の皆さんは常に成果の出るアカウント構成を試行錯誤して取り組んでいるのではないでしょうか?できればアカウント構成の勝ちパターンを知りたいのですよね。筆者も知りたいです。
では、まず質問。リスティング広告の最適なアカウント構成はどのようなものでしょうか?筆者の答えは“ない”です。一つひとつのビジネスや商品・サービスによって最適なアカウント構成は変わってくるものと考えています。
※もし、どんなビジネスでも絶対的に勝てる構成がありましたらご連絡ください。
商材の業種・タイプによってはある程度似たような構成(型・ポートフォリオ)になることはあります。ただし大枠が似ているだけで、やはり商材が変わるとアカウント内のどこかで違いが出てきます。それは狙うターゲットの違いや、限界CPA・予算の違いなど、その商材同士の大小さまざまな違いによって、アカウント構成の組み方が変わってくるからです。
このようにアカウント構成の”型”という点については、正解はありません。ただしアカウントを作る際の”考え方”という点については、普遍的なものがあると筆者は考えております。その”考え方”について本日は述べたいと思います。
仮説を持っている
そのアカウントは仮説を持っているか?この視点は重要です。仮説がそのアカウントを成長させるからです。仮説と言っても全てが立派な仮説というわけではありません。大事なのは、アカウント内の隅々まで常に仮説を持つことと(仮説を持っているというのは”なぜそうしたのか”を説明できる状態のことです)、そして次の一手もセットで考えておくことです。
例をあげましょう。
例1)
仮説:最もコンバージョンが獲れるのは、検索連動型広告の●●●というキーワードだろう。その商材は、どのメニュー(のどんなターゲティング)が一番獲れるか。キーワードの検索ボリュームはどれくらいあって一日あたりの予算はいくらくらいが妥当か。
目標CPAから考え、商材との親和性から仮のコンバージョン率を定めた場合、入札単価はどのくらいまで許容できるか。部分一致の拡張でどんな検索語句を拾ってきそうか。最初から完全一致や絞り込み部分一致で登録すべきキーワードは何か。
このようにアカウント内でコンバージョンの獲得が最も期待できそうなところには、広告表現にこだわったり、掛け合わせキーワードなど細かいターゲット設定にこだわったりと、しっかり思考のエネルギーを割いていきましょう。
- 仮説が当たった → 他の効率悪いメニューから予算を移す、入札価格をあげる、クリエイティブテストを行うなど
- 仮説が外れた → 予算を縮小して他の効率の良いメニューに予算を振り分ける、入札価格を下げるなど
例2)
仮説:広告文は価格訴求が刺さるだろう。
広告文はその出来具合によって大きく成果が左右されるものの一つです。そのターゲティングには、どのような広告文が刺さるのか。広告文1本だけで回すのではなく、複数本入れてテストしておきましょう。
また広告文は、初期の段階でプロダクト・ライフサイクルに合わせて、その商品がどのステージにいるのかを見極めていくことが大事です。機能なのか、価格なのか、それとも情緒的価値を推すべきなのか。そうして効果の良い訴求軸を検証することができたら、次はその訴求軸で別の表現方法を試すといったように、広告文を常にブラッシュアップしていきましょう。
- 仮説が当たった → 価格訴求の広告文に絞る、別の価格訴求の表現を試すなど
- 仮説が外れた → 機能訴求の広告文に絞る、別の機能訴求の表現を試すなど
例3)
仮説:ひょっとしたら■■■というキーワードでもコンバージョンが獲れるかもしれない。
日々の成果が安定しているアカウントであれば、特にこうしたテスト的な新しい試みにチャレンジしていくことが重要です。その際には、リスクを最小限にとどめるために予算・入札価格を低めに設定しておくことはもちろんですが、損切りのラインを決めておくことも重要です。もし仮説が外れてもアカウント全体では痛手にはいたりません。
- 仮説が当たった →予算・入札単価を上げるなど
- 仮説が外れた →検索語句レポートを見て除外キーワードを設定する、入札単価を下げる・停止する
繰り返しになりますが、大事なのは、この2点です。
- 荒くて良いのでしっかり仮説を考えて設定していく。
- 次のアクションをセットで考えておく
アカウント内に常に仮説を持っておく状態にしましょう。
機能美がある
アカウント構成をキレイにしておくことは重要です。では、どのような視点で整理しておくべきか。以下、3つの視点を持つことが重要だと考えます。
管理・運用しやすい
運用型広告と言われるようにリスティング広告は、広告運用者が毎日接していくものです。そのためアカウント構成には”管理・運用しやすい”といった視点がとても重要です。
例えばツールを使って作ったようなアカウントは網羅性も高く、非常に細かく設定されていて、一見キレイに見えます。ただそれが実際に管理・運用しやすいかというと、必ずしもそうではありません。必要以上に細かく複雑なアカウントは、数値が分散していて傾向が見えづらかったり、確認すべき項目が多すぎて運用に必要以上に負荷がかかったりする場合が多々あります。
またレポートも仮説を検証するためといった面で運用の一部です。そのためレポートしやすいといった視点でアカウントをキレイにしておくこともパフォーマンスの改善につながります。レポートのためのデータを出力すること自体は”作業”であり何も産まないので、単純にレポートの時間を短縮することも重要です。
ルールに則している
リスティング広告の機能(ルール)を理解していることも重要です。キャンペーン・広告グループなど、各レイヤーの役割・機能はなにか。
※基本は媒体のヘルプページを参考にします。ルールに則してアカウント構成を設計する方法については、例えばunyoo.jpさんのこちらの記事などが参考になります。
コンバージョンオプティマイザーなどの自動化をしっかりワークさせていくためにはどのような構成にすべきか。基本的なルールをしっかり踏まえているからこそ、それをリスティング広告で最大限のパフォーマンスを発揮していくことができるのです。
ミスを防いでくれる
ミスの発生は成果の面もありますが、それ以上にクライアントからの信頼喪失といった面で非常に大きなマイナスとなります。ただリスティング広告は人が運用するといった性格上、ミスをゼロにしていくことは困難です。それでもアカウント構成をキレイにしていくことでミスの発生をある程度抑えることが可能だと思います。
今回タイトルで単に”キレイ”という表現を使わずに”機能美”といった表現を使っているのにも意図があります。それはある目的を達成させるために突き詰められたモノというのは、どれにも”美しさ”といったものが備わると考えております。
例えばプロの道具ってなんかカッコよくないですか?それに近しいです。システマティック(Excel的な、シンメトリーな)な”キレイさ”も重要ですが、人が運用していくといった点で考えると人間工学的な美しさのほうが目指すべき方向性だと考えます。一見不格好なアカウントでも、その裏にしっかりとした思想があると、美しさを感じます。
アカウントは単純な”キレイ”ではなく、”機能美”を目指していきましょう。
アカウントは単なる広告運用者の仕事道具
前章でアカウント構成をキレイにしておくことの重要性を述べましたが、あなたのアカウント構成がいかに素晴らしかったとしてもクライアントからその点で評価されることはまずありません。なぜならクライアントはアカウント構成自体には興味がないからです。当たり前の話ですが、リスティング広告で一番大事なのは広告の成果(コンバージョン、CPAなど)です。結果を出すことが全てなのです。
この辺は、スポーツの世界とも似ているのかな、と思います。スポーツでは観客の一番の関心事は選手のプレーやチームの勝利です。選手はそうしたプレーで最高のパファーマンスを出すために、体調・メンタルの管理をはじめ対戦相手の分析や競技道具など、観客の目に見えないところでも非常にこだわっています。
リスティング広告のアカウントというのは広告運用者にとっての仕事道具とも言えます。一流のスポーツ選手が仕事道具にもこだわるように、一流の広告運用者も最高のパフォーマンスを出すためにアカウント構成にこだわるのです。
アカウントは構築できてからがスタート
リスティング広告のアカウントを作るのはそれだけで一苦労です。作り終えたら達成感もあります。が、そこからがスタートです。配信を開始し、市場へ仮説を投げかけ、検証し、次のアクションをとっていく。PDCA。リスティング広告は、運用型広告という名の通リ、そうした”運用”によってパフォーマンスを上げていくものなのです。
また運用初期の仮説はひどいくらいに外れます。そのためスピーディーに仮説検証を進めていくことが重要です。仮説が大外れした際には、アカウントを全部バラして作り直すことも時には効果改善の近道となりうるのです。冒頭で、アカウント構成には正解はない、と述べました。ただしっかりと考えて運用していれば最適な方向性というものは見えてきます。運用はその最適な方向へ進めていく歩みなのです。
リスティング広告では、日々新しいキーワードが生まれ、配信先のメディアが増え、媒体側の機能も頻繁にアップデートされ、競合も容易に参入してきます。このように戦況は常に変化し続けています。1年前に成功した攻法が、今だと逆効果だったりすることもありうるのです。そのためアカウント構成もそうした戦況に合わせて、常に変化し続けていかなくては生き残っていくのは難しいでしょう。
「もっといい方法があるはずだ」その視点で、アカウント構成をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。