
「限られた予算の中で、オーガニックと広告、どちらを優先すべきか?」
「SNS運用を行う事だけが決まって、どのように動けばよいかわからない…」
このように施策にSNS運用や広告配信の話が出てきて、目標達成のためにどちらを優先するべきか、どのように進行すればよいのか戸惑ったことのある方もいるのではないでしょうか?
この記事では、オーガニック運用と広告運用のメリットデメリットを踏まえながら、どちらを優先するべきかを判断できる基準や、実際にどちらかを行うとなった場合の具体的なアクションまで解説していきたいと思います。


目次
オーガニック運用と広告運用の特徴
オーガニック運用と広告運用は、どちらもマーケティング戦略において重要な役割を果たすという点で共通していますが、その特徴は大きく異なります
項目 | オーガニック運用 | 広告運用 |
---|---|---|
成果が出るまでの時間 | 長期 | 短期 |
費用 | 初期投資は必要だが、継続的な広告費は不要 | 継続的な広告費が必要 |
効果測定 | 売上やCVへの影響は測定しにくい | インプレッション、クリック数、CV数など数値で測定しやすい |
ターゲティング | ターゲット層へのリーチは間接的 | 詳細な条件でターゲット層を絞り込める |
信頼性 | ユーザーの信頼度が高い | 広告に対する不信感を抱くユーザーもいる |
資産性 | 長期的な資産となる | 広告停止で流入が途絶える |
運用体制 | 専門知識とリソースが必要 | 運用ノウハウが必要 |
拡散性 | 口コミやシェアによる自然な拡散 | 費用をかければ拡散可能 |
向いているケース | 長期的なブランド力向上、ファン形成 | 新商品やキャンペーンなど即効性が求められる場合 |
オーガニック運用は、長期的な資産形成と信頼性の高いファン獲得に強みを持ちますが、成果が出るまでに時間がかかるという課題があります。一方、広告運用は、短期間で目標とするユーザーに効率的にリーチできる即効性が魅力ですが、継続的な費用と運用ノウハウが必要です。
使い分けを決め、実行するまでのステップ
では、自社にとって最適な運用方法はどちらなのでしょうか?
ここからは、目的や状況に応じて「オーガニック運用」と「広告運用」のどちらを選ぶべきか、その判断軸と具体的な実行ステップをわかりやすくご紹介していきます。
STEP 1:目標とターゲットの明確化
何を達成したいのか(目的)と、誰に届けたいのか(ターゲット)を定めることで、オーガニック運用と広告運用、どちらがより効果的かの判断軸ができます。
目的の整理
まずは現在の課題から目的 を定めて、具体的な目標を設定しましょう。
- 売上アップ?
- ブランド認知の向上?
- 新規顧客の獲得?
- 既存顧客とのエンゲージメント強化?
目標設定の例)
- 売上アップ(Webサイト経由の売上を20%向上)
- ブランド認知向上(1ヶ月で1万インプレッション達成)
- 新規顧客獲得(サイト遷移からのCV数を月150件達成)
- 既存顧客とのエンゲージメント強化(SNSフォロワーの継続率を向上)
目標はできるだけ数値を入れて具体的に設定しましょう。
こうした目標は、SMARTの原則に沿って設定すると、より実行しやすくなります。
ターゲットの設定
ターゲットの設定は、「誰に、メッセージを届けたいのか?」 を具体的にイメージしましょう。
年齢、性別、職業、居住地、興味関心、ライフスタイル、悩み、ニーズなど、具体的な人物像(ペルソナ)を設定すると、より深くターゲットを理解できます。
ターゲット像が不明確なまま運用を始めても、メッセージはぼやけてしまい、効果は上がりません。
例:「30代女性、会社員、都内在住、美容に関心が高い、乾燥肌に悩んでいる」
目標とターゲットは、互いに密接に関連していて、例えば目標が「新規顧客の獲得」であれば、ターゲットは「まだ商品・サービスを知らない潜在顧客」になり、広告運用が最適な施策と判断できます。
目標 | ターゲット | 最適な施策 |
---|---|---|
新規顧客の獲得 | 商品・サービスを知らない潜在顧客 | 広告運用 |
既存顧客とのエンゲージメント強化 | 商品・サービスを利用している顧客 | オーガニックSNS運用、コンテンツ制作、CRM |
このように目標とターゲットを明確にすることで、オーガニック運用と広告運用のどちらが適しているのか、あるいは両方を組み合わせるべきなのかを判断することができます。
時には何とかして「認知拡大」と「顧客獲得」など、複数の目標を同時に達成したい場合も出てくると思いますが、リソースが限られている場合は、優先順位をつけて、まずは1つの目標に集中することが重要です。
STEP 2:運用リソースの確認
目標とターゲットが決まったら、次に「実際に実行可能な範囲」を確認します。
いくら理想的な戦略を立てても、リソース(予算・人員・時間・スキル)が不足していれば実現不可能です。
ここでは、現実的にどの運用方法が適しているか判断するためのチェックポイントを整理します。
確認すべきリソース | 詳細 |
---|---|
予算 | 広告費用、ツール導入費用、外注費用など、Webマーケティングに使える予算額 |
人員 | Webマーケティングを担当できる人員の有無、担当者のスキルレベル |
時間 | Webマーケティングに割ける時間、コンテンツ作成・効果測定・改善に必要な時間の確保 |
スキル | Webマーケティングに関する知識・経験、SEO・広告運用・SNS運用・コンテンツ作成などの専門スキル |
これらのリソースを確認することで、オーガニック運用と広告運用のどちらに重点を置くべきか、あるいは両方をどのように組み合わせるべきかを判断できます。
例1:予算が潤沢で、専門知識や人員が不足している場合
広告運用を外部の代理店に委託する。
オーガニック運用に関しても外注化をする。
例2:予算は限られているが、専門知識や人員が確保できる場合
インハウス(自社内)でオーガニック運用を中心に実施する。
広告運用は、必要最低限の範囲で内製化、もしくはツール等を使用して効率化をはかる。
例3:予算、人員、専門知識が揃っている場合
インハウスでオーガニック運用と広告運用を両方実施する。
より高度な分析や戦略立案のために、一部を外部の専門家に依頼する。
上記のように、リソースは量的側面だけでなく、質的側面も考慮することが重要です。
例えば、予算が十分にあっても、担当者のスキルが不足していれば、広告運用で期待した効果を得られない可能性があります。
リソースは、常に変化する可能性があります。定期的に見直し、状況に合わせて運用方法を調整することが重要です。
STEP 3:競合と自社の状況を分析
目標とターゲット、そして活用できるリソースが明確になったら、いよいよ具体的なSNS運用戦略を検討していきます。
そのために、まずは競合と自社の状況を分析・比較し、現状を把握することが重要です。
1.自社アカウントの現状分析方法
- アカウントの現状把握
現在のフォロワー数、エンゲージメント率、リーチ数、インプレッション数などを分析します。また、過去の投稿データを分析し、どのような投稿が人気だったのか、どのようなユーザーが反応しているのかなどを把握します。
投稿分析ツールなどを活用することで、より詳細なデータを得られることがあるので導入を検討してみても良いかもしれません。
- コンテンツ分析
これまで投稿してきたコンテンツの種類(画像、動画、テキストなど)、投稿頻度、テーマなどを分析します。
どのようなコンテンツが効果的だったのか、改善点はあるのかなどを検討します。
- ユーザー分析
フォロワーの属性(年齢、性別、興味関心など)を分析します。
どのようなユーザーが自社のアカウントに興味を持っているのかを把握することで、より効果的なコンテンツ配信や広告ターゲティングを行うことができます。
2. 競合アカウントの分析方法(重要)
- 競合アカウントの調査
- 主要な競合のSNSアカウントをリストアップし、それぞれのアカウントを分析します。
- フォロワー数、エンゲージメント率、投稿頻度、コンテンツの種類、キャンペーンなどを調べます。
- 競合の強みと弱みの把握
- 競合のSNS運用における成功事例、失敗事例を分析します。
- 競合の強みと弱みを把握することで、自社が参考にできる点、差別化できる点を見つけ出すことができます。
- コンテンツ・キャンペーン分析
- 競合がどのようなコンテンツを投稿し、どのようなキャンペーンを実施しているのかを分析します。
- 特に効果的なコンテンツやキャンペーンは、自社のSNS運用にも参考にできる可能性があります。
これらの分析を総合的に判断し、自社の強みを活かせるSNS、改善すべき課題、競合との差別化ポイントなどを明確化します。
分析は、定量的なデータ(フォロワー数、エンゲージメント率など)だけでなく、定性的なデータ(ユーザーの反応、コメントの内容など)も合わせて行うことが重要です。
結果は時が経てば変わる可能性もあるため、定期的に見直し、最新の状況に合わせて更新していくことが重要です。
STEP 4:施策の選択
いよいよこのステップでは、これらの分析結果を踏まえ、オーガニック運用、広告運用、または両者を組み合わせた最適な施策を選択しましょう。
1. オーガニック運用を選択する場合
- 主な目的:
- 長期的なブランド構築
- 顧客とのエンゲージメント強化
- 熱狂的なファンコミュニティの形成
- メリット:
- 広告費をかけずに運用できる
- ユーザーからの信頼感を得やすい
- 継続的な効果が見込める
- デメリット:
- 効果が出るまでに時間がかかる
- すぐに成果を求める場合は不向き
- 運用には専門的な知識やスキルが必要
- こんな場合に最適:
- 限られた予算で運用したい
- 時間をかけてじっくりと成果を積み重ねたい
- 顧客との深い繋がりを作りたい
2. 広告運用を選択する場合
- 主な目的:
- 短期的な成果の達成
- 特定のターゲット層へのピンポイントな訴求
- 新規顧客の獲得促進
- ブランド認知度の向上
- メリット:
- 短期間で効果が出やすい
- 狙ったターゲット層に効率的にリーチできる
- 費用対効果を測定しやすい
- デメリット:
- 広告費がかかる
- ユーザーに広告と気づかれると、敬遠される可能性がある
- 継続的な費用が発生する
- こんな場合に最適:
- 短期間で成果を出したい
- 特定のターゲット層にピンポイントに訴求したい
- 新規顧客の獲得を加速させたい
- ブランド認知度を急速に高めたい
3. オーガニック運用と広告運用を組み合わせる場合
- 主な目的:
- 両方のメリットを活かした相乗効果の発揮
- より大きな成果の達成
- メリット:
- 広告でリーチを広げつつ、オーガニックでエンゲージメントを深めることができる
- 互いの弱点を補完し、より効果的なSNS運用を実現できる
- デメリット:
- 運用コストが増加する
- 両方の運用を効率的に行うための戦略立案が必要
- こんな場合に最適:
- 十分な予算と人員を確保できる
- 中長期的な視点でSNS運用に取り組みたい
- より高度なSNS戦略を実行したい
ポイント
- 上記を参考に、それぞれのメリット・デメリット、費用対効果、リスクなどを考慮し、最適な施策を選択しましょう。
- 状況に応じて、オーガニック運用と広告運用のバランスを調整しましょう。
- 必要があれば、外部の専門家(代理店など)に相談してみるのも良いでしょう。
施策決定チャート
質問に迷う場合は各選択肢のメリット・デメリットを改めて確認し、自社の目標、リソース、状況に照らし合わせてみましょう。
また複数の選択肢が当てはまる場合は各選択肢の優先順位をつけ、段階的に導入していくことを検討し、どうしても決められない場合は専門家の意見を参考にしましょう。
SNS運用に関する豊富な知識と経験を持つプロに相談することで、最適な戦略が見つかるはずです。
他にも、テスト運用してみるという手もあります。
本格的に運用を開始する前に、小規模なテスト運用を行い、効果を検証してみるとより精度の高い戦略を立てることができます。
STEP 5:実行プランの具体化 - 運用体制別の準備と開始
SNS運用を始めるにあたり、運用体制によって準備すべき内容が異なります。
代理店に依頼する場合、インハウス支援を活用する場合、自社のみで行う場合に分けて、それぞれの準備と開始について説明します。
代理店に依頼する場合
代理店は、アカウントの開設、コンテンツの企画・作成、広告の配信、効果測定、レポート作成など、SNS運用に関する業務全般を代行してくれます。
運用体制 | 初期準備 | 開始準備 | 運用開始後 | ポイント |
---|---|---|---|---|
代理店に依頼する場合 | 代理店選定:目的と予算の明確化、得意分野・実績・事例・担当者との相性・見積もりと提案内容の確認このとき、ブランドイメージ・ガイドライン等があると尚よいです | アカウント情報共有、コンテンツ企画・制作、広告配信設定、目標設定とKPI設定 | 効果測定とレポート確認、改善提案と実行、定期的なコミュニケーション、契約内容の見直し | 代理店選定は慎重に行い、コミュニケーションを密にする |
インハウス支援を活用する場合 | 支援内容・自社担当者の選定、運用体制の構築、目標とKPIの設定 | アカウント設計、コンテンツ企画・制作、広告配信設定 | 効果測定と改善、ノウハウの蓄積、定期的な支援 | 支援内容を自社に落とし込み、ノウハウを蓄積する |
自社のみで運用する場合 | 担当者の選定と教育、運用体制の構築、ツール導入と設定、ガイドラインの作成 | アカウント設計、コンテンツ企画・制作、広告配信設定、KPI設定と効果測定体制構築 | 効果測定と改善、情報収集と学習、定期的なミーティング | 担当者のスキルアップが必須、最新情報を収集する |
代理店依頼のポイント
代理店選びは慎重に行い、自社のニーズに合った最適なパートナーを選びましょう。
またコミュニケーションが命です。連絡を密に取り、認識のズレを防ぎましょう。
代理店選びのポイントについてより詳しく解説している記事があるのでご覧ください。
共通のポイント
- どの運用体制でも、目標とKPIの設定は重要です。
- 定期的な効果測定と改善を行うことで、目標達成に近づきます。
- 最新のSNSトレンドやアルゴリズム変更に対応するために、常に情報収集と学習を怠らないようにしましょう。
- SNS運用は長期的な取り組みです。根気強く継続し、改善を繰り返していくことが成功への鍵となります。
まとめ
本記事では、SNSのオーガニック運用と広告運用の特徴、使い分けの基準、具体的な実施手順について解説しました。
オーガニック運用は長期的な視点で信頼性やブランド力を構築するのに適しており、広告運用は短期間で成果を出すのに効果的です。どちらを選ぶべきかは、目標、ターゲット、リソースによって異なります。
重要なのは、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に合わせて最適な戦略を立てることです。状況は常に変化するため、定期的な効果測定と改善を繰り返しながら、SNS運用を成功に導きましょう。
