「最近、寝ても疲れが取れない…」。こんなコピーのバナーを見かけたことはないでしょうか。サービスの機能ではなく、ユーザーの悩みを代弁して共感から興味を引く。いわゆる「感情代弁型」と呼ばれるアプローチです。
うまくはまれば効果的ですが、「寄り添っているはずなのにクリックされない」「共感を狙ったつもりが煽りに見えてしまう」といったことも少なくありません。その原因の多くは、代弁する悩みの選び方や表現の仕方にあります。
この記事では、実際にバナー広告を制作・配信するなかで見えてきた成果につながる感情代弁型バナーの作り方を紹介します。
コピーの設計やデザインの工夫はもちろん、見落としがちな落とし穴についても、現場の視点から掘り下げました。
感情代弁型を含むバナー訴求の8つの型については、以下の記事で詳しく解説しています。
感情代弁型訴求とは?期待できる3つの効果
感情代弁型訴求とは、ユーザーが抱える「もやもや」「不安」「悩み」をフックとして興味を引く手法です。サービスの機能や特徴を先に説明するのではなく、ユーザーの内側にある言葉を先に提示します。
「まさに今自分が思っていることだ!」と感じてもらうことで、興味と行動意欲を同時に引き出せるのが特徴です。
感情代弁型の例:

私がこの手法に注目したのは、競合が多く機能面での差別化が難しい商材を担当したことがきっかけです。サービスの特徴を押し出しても競合と似たバナーになる中で、感情代弁型のバナーを作成し配信したところ、成果が大きく改善しました。
この手法には、以下の3つの効果が期待できます。
① 自分の課題に気づいていない「潜在層」にも届く
サービスの特徴やメリットを前面に押し出したバナーは、すでに解決策を探している人には有効でしょう。ただ、課題を自覚していない人や、サービスを知らない人は「自分に関係ない」と判断しスルーしてしまいます。
そこで、バナーで悩みや不安を代弁することで、「自分に関係があることだ」と気づいてもらうことができます。
マットレスのコピーを例に考えると、以下のようになります。
| 訴求内容 | コピー例 | 反応しやすい層 |
|---|---|---|
| サービスの特徴・スペック | 体圧分散!3層構造マットレス | 購入したいと思っている比較検討層 |
| ユーザーの悩み・内側の言葉 | 最近、寝ても疲れが取れない… | まだ購入を考えていない潜在層 |
このように、機能ではなく悩みから入ることがポイントです。まだ購入を検討していない段階のユーザーにも「自分ごと」として届きます。
② 「自分の状況を理解し、解決してくれそう」という信頼感を与えられる
サービスの魅力を一方的に語るだけでは、ユーザーは「売り込まれている」という印象を抱きやすくなります。
しかし、悩みを代弁することで「自分の状況をわかっている」という信頼感が生まれます。その信頼感が「解決してくれそうだ」という期待感につながるのです。
たとえば、病院でいきなり「その症状にはこの薬が効きます」と言われたら、すぐに受け入れられるでしょうか。「つらいですよね、こういった症状もありませんか?」と理解を示されてから提案される方が、信頼しやすくなるはずです。
バナーでも同じことが言えます。
③ クリックや詳細確認への意欲を高められる
こうした信頼感は、実際のクリック率にも表れます。
実際に、サービスの特徴を前面に出したバナーと、ターゲットの悩みを代弁したバナーを同一広告セットで1か月間配信したことがあります。
その結果、リーチ数は同水準にも関わらず、悩みを代弁したバナーの方が、クリック率が約2.2倍の結果となりました。
この差は、悩みへの共感が「解決できるかもしれない」という期待に変わったためだと考えています。その期待が、クリックやページ閲覧といった次の行動につながるのです。
コピーの設計:どんな悩みをキャッチコピーにするか
感情代弁型バナーでまず決めるべきは、「どの悩みをキャッチコピーにするか」です。設計のポイントは大きく2つあります。
多くの人が共通して感じる悩みを選ぶ
感情代弁型で狙うべきは、ターゲットの多くが抱えている「最大公約数の悩み」です。
なぜなら、悩みの種類によって「ユーザーのボリューム」が全く異なるからです。どれほど共感度の高いコピーでも、その悩みを抱えている人が少なければ、広告としての反応は限定的になります。
実際に、以下のような訴求のバナーを3か月間、同一広告セットで配信したことがあります。
| 訴求イメージ | 共感できる層 |
|---|---|
| 自分のスキルに自信がなくて踏み出せない… | 漠然とした不安を抱えている幅広い層 |
| 面接対策、何から始めればいいかわからない… | すでに行動を起こしている特定の層 |
その結果、幅広い層に当てはまる悩みの方がリーチ数で約7倍、コンバージョン数で約20倍の差がつきました。より多くのユーザーに「自分ごと」として受け取ってもらえたからだと考えています。
このように、悩みの選び方ひとつでここまで成果が変わります。
ただし、母数の大きさだけで悩みを選ぶと、ビジネス成果につながらないユーザーが集まるリスクもあるため注意が必要です。(後述する注意点で詳しく解説します)
共通の悩みはどう見つけるか?
ターゲット層を大まかに決めたうえで、その層に関するアンケートや調査データを調べましょう。
ただし、調査データは発信元によって信頼性に差があります。政府の統計や大手リサーチ会社のレポートなど、回答母数が多く信頼性の高いものを優先的にチェックしてください。
実際に調査結果を見てみると、自分の感覚や仮説とは異なる結果が出ることは珍しくありません。一部の人にしか響かない訴求にしないためにも、データを根拠にした悩み選びを意識しましょう。
定量データの探し方については、以下の記事で詳しく解説しています。
特定の層のリアルな声をそのままコピーにする
次に考えるべきは「その悩みをどうコピーにするか」です。
選ぶテーマは多くの人に当てはまる悩み、表現はリアルな声に近づける。この2段階で設計することがポイントです。
抽象的な悩みは多くの人に当てはまりますが、印象が薄くなりがちです。 一方で、年齢や状況を具体的に入れたコピーは、当てはまる人に「これは自分のことだ」と感じてもらいやすくなります。
| コピーのタイプ | コピー例 |
|---|---|
| 広告用に整えたコピー | 家計管理が上手くいかない… |
| リアルな声に近いコピー | 家計簿をつけたいのに、いつも3日で挫折… |
言っていることは一緒でも、下の訴求の方が共感しやすいですよね。
リアルな声の探し方
ユーザー目線の言葉を見つけるには、ユーザーが率直な言葉で感情や意見を発信している場所でリサーチするのがおすすめです。
例えば、以下のような方法があります。
| 方法 | やり方 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| SNSの投稿を調べる | X(旧Twitter)で「〇〇 つらい」「〇〇 やめたい」など、ネガティブな感情を含むキーワードで検索する | 投稿者自身の言葉で書かれた表現 |
| ブログ記事を読む | 「〇〇 体験談」「〇〇 失敗」で検索し、個人ブログの一次情報を集める | 悩みの背景や経緯が語られている部分 |
| YouTubeの体験談動画を見る | 動画本編の内容やコメント欄もチェックする | 視聴者の共感コメントに出てくる本音 |
| アンケートやインタビューを実施する | 既存顧客や類似サービスを利用したことがある人に質問する | 「サービスを知る前に感じていた悩み」についての生の声 |
これらの方法で得られた「生の声」をできるだけそのまま活かし、ユーザーの言葉でコピーを作りましょう。
デザイン制作:共感を深める5つのポイント
コピーで代弁する悩みが決まったら、次はバナーのデザインに落とし込みます。
どんなに良いコピーでも、目に止めてもらえなければ届きません。デザインがコピーの内容と合っていなければ、共感も深まりにくくなります。
デザインを制作する際は、以下の5つのポイントを意識してみてください。
ポイント① 感情や悩みのコピーを最も目立つ場所に置く
感情代弁型バナーでは、ユーザーとの最初の接点は「悩み」そのものです。ここが小さいと、自分に関係のある情報だと気づいてもらえません。そのため、悩みのコピーを最も目立つ場所に大きく配置しましょう。
具体的には、バナーの上部3分の1から中央にかけて悩みコピーを配置し、フォントサイズも大きくします。サービス名やCTAボタンは下部に配置し、情報のメリハリをつけるのがポイントです。


「サービスの紹介が少ないと成果につながらないのでは?」と思うかもしれません。ですが、悩みでしっかり興味を引けていれば、ユーザーは自然とサービス情報まで読み進めてくれます。
実際に私が担当した案件では、悩みが8割・解決策が2割という比率で制作したものも高い成果につながりました。
バナーは「すべてを伝える場所」ではなく「興味を引く入口」と割り切ることが大切です。
ポイント② コピーを視覚的に補強するイラストや写真を添える
「画像優位性効果」といって、写真やイラストは文字よりも理解しやすく、記憶にも残りやすいと言われています。そのため、コピーが表す感情や状況を視覚化したビジュアルを添えることが重要です。
ポイントは、コピーの内容と一致するビジュアルを選ぶこと。
例えば「デスクワークで体がバキバキ…」というコピーなら、肩を押さえて疲れた表情のビジュアルが合います。コピーの状況とビジュアルが一致していると、ユーザーは「これは自分のことだ」と直感的に感じやすくなります。
逆に避けたいのは、素材サイトでよく見かける「笑顔のビジネスパーソン」のような汎用的な写真です。悩みのコピーと笑顔のビジュアルがちぐはぐだと、違和感を与えてしまいます。
ポイント③ 共感を深めるために、あえて文字数多めで伝える
広告コピーは「短く簡潔に」が基本です。とはいえ、キャッチコピーを短くまとめすぎると、表面的なコピーになってしまい、ユーザーに響きにくくなります。
多少長くなったとしても、迷いや葛藤などを含む、共感を得ることを重視したコピーにしましょう。
ただし、視認性が担保できるよう、デザインでは以下のような点を意識することが大切です。
- フォントサイズや行間に余裕を持たせる
- 改行位置を意味の切れ目に合わせる
- 背景とのコントラストを確保し、文字が埋もれないようにする
- 強調したい言葉だけ色やサイズを変えて、視線の流れを作る


文字数が多いコピーでも、こうした工夫があれば読みやすさを保ちながら共感を深められます。
ポイント④ 柔らかいフォントで「心の声」を演出する
感情代弁型のコピーは「ユーザーの内側にある言葉」を代弁するもの。フォントの印象がそのトーンに合っていないと、せっかくの言葉が広告っぽく見えてしまいます。
そのため、筑紫丸ゴシックや手書き風フォントなど、柔らかい印象のフォントを活用するのがおすすめです。「語りかけ」や「つぶやき」に近いトーンを演出できます。
ただし、すべてのフォントに適用すると可読性が下がります。悩みのキャッチコピー部分だけに使い、サービス名や補足情報はゴシック体にするなど、使い分けを意識しましょう。


ポイント⑤ 縦書きで差別化する
SNSのタイムラインやWebメディアなど、広告が表示される場所の多くは「横書き」で構成されています。そのため、横書きのバナーは周囲の情報に馴染み、差別化しづらくなっています。
そこであえて縦書きを取り入れると、視覚的なコントラストが生まれ、ユーザーの指を止めるフックになります。


また、縦書きは小説やエッセイなど「語り」の文章で馴染みのあるフォーマットです。感情代弁型の「心の声」を表現するトーンと相性が良く、私自身よく使っています。
読みやすい縦書きクリエイティブを作るためのポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
感情代弁型バナーの注意点
感情代弁型バナーは効果的な手法である一方、設計を誤ると成果を下げることもあります。3つの注意点を押さえておきましょう。
注意① 集まるユーザーの属性まで考える
感情代弁型バナーを作成する際は、「どんなユーザーが集まるか」まで考えておく必要があります。
自社で解決できない悩みや、解決意欲が極端に低い層にクリックされても、遷移先で離脱されてしまうでしょう。また、ターゲット選定を誤ると、仮にコンバージョンに至っても成約率や継続利用率が低下するリスクもあります。
例えば、高額なパーソナルジムの無料体験を訴求するバナーで考えてみましょう。
| フックとなる悩み | 集まりやすいユーザー | クリック後の行動 |
|---|---|---|
| 最近、運動不足で体が重い… | 運動習慣がなく、ジムに通う意欲も低い層 | 料金を見てランディングページを離脱、体験しても入会に至らない |
| 自己流の筋トレに限界を感じてきた… | すでに運動習慣があり、次のステップを求めている層 | 高額でも価値を感じやすく、入会・継続につながりやすい |
上のコピーはターゲットの母数が多く、反応は得やすそうに見えます。しかし、呼び込みたいユーザーとは異なる層が集まってしまいます。
私も、過去に制作したバナーで同様の事象が起き、クリック数は増えてもその先の成果につながらなかったことがありました。
目先のクリック率やコンバージョン率だけにとらわれず、最終的なビジネスの目標から逆算して代弁する悩みを選定しましょう。
注意② ブランド毀損のリスクに注意する
ユーザーの心理に深く入り込もうとするあまり、不快感を与える訴求にならないよう注意が必要です。
注意を引けたとしても、ユーザーに不快感を与えてしまえば、サービスの信頼を損ねかねません。ユーザーが実際に感じている悩みであっても、広告として使うかは別の判断です。
特に、以下のような訴求は避けましょう。
| 避けるべき訴求 | 例 | 問題点 |
|---|---|---|
| 感じていない不安を作り出す | もし明日倒れたら、家族はどうなる…? | 恐怖を煽っているだけで共感ではない |
| 誰かを悪者にする | 今の会社がブラックでしんどい… | サービス自体の印象を下げる |
| コンプレックスや深刻な不安に触れる | お腹が気になって、水着が着られない… | ユーザーを傷つけるおそれがある |
コピーを作成したら、以下の観点でチェックしてみてください。
- 自分がこのバナーのターゲットだと思ったとき、不快に感じないか
- ターゲットに近い属性の人に見せて、率直な第一印象を聞く
- 「この表現がスクリーンショットでSNSに共有されたとき、ブランドイメージを損なわないか」を想像する
注意③ 常に「感情代弁型」が最適解とは限らない
ターゲットの状態や商材によっては、ほかのバナー構成の方が成果が出ることもあります。「何を伝えるのが最も効果的か」という視点で、柔軟に使い分けるのがポイントです。
以下の表を参考に、自社の状況に対応したものから試してみてください。
| 状況例 | 適したバナー構成 |
|---|---|
| モヤモヤを感じているが、悩みを自覚していない層の興味を引きたい | 感情代弁型 |
| 潜在的な悩みを抱えている層に、現状を見直すきっかけを作りたい | 啓蒙型 |
| 差別化できるポイントがあり、比較検討中の層に伝えたい | 比較型 |
| 専門家の推薦や高い満足度を活かして、顕在層に最後の一押しをしたい | 権威型 |
| 価格や実績などの数字の強みで、お得感や具体的な効果を伝えたい | 数字表現型 |
| 利用シーンや使い方がわかりづらい商材の魅力を伝えたい | 利用シーン提案型 |
| 食品や化粧品など、画像だけでは伝わりにくい食感や質感の魅力を伝えたい | 臨場感演出型 |
| 特定層向けの商材で、対象を絞って届けたい(BtoBなど) | ターゲット絞込み型 |
各訴求型の詳細は、以下の記事で解説しています。
まとめ
感情代弁型バナーは、ユーザーの悩みへの共感をきっかけに行動を生み出す手法です。しかし、共感を得ること自体はゴールではありません。
成果につなげるには、「誰の、どんな悩みを代弁するか」を根拠を持って選ぶことが重要です。
集まるユーザーの属性やブランド毀損のリスクに注意しながら、以下の流れで設計してみてください。
- 自社の商材で応えられる悩みを書き出す
- アンケートや調査データで、悩みの母数を定量的に確認する
- 最も母数が大きく、自社商材で解決できる悩みを選ぶ
- SNSや口コミからリアルな声を集め、ユーザーの言葉でコピーにする
コピーが決まったら、ビジュアルやフォントを工夫し、共感を深めるデザインに仕上げましょう。このステップを踏めば、ユーザーに響き、成果につながる感情代弁型バナーになっているはずです。



