Googleが提供するデマンドジェネレーションキャンペーンは、YouTube・Discover・Gmailといった、Googleが持つ主要な配信面へ横断的に広告を配信できるキャンペーンです。2025年3月のアップデートでは、GDN(Googleディスプレイネットワーク)への配信拡張に加え、配信面ごとの成果確認やチャネルの選択が可能になりました。
しかし、内訳が見えるようになったものの、実際に確認して運用に活かしているケースはまだ多くないのではないでしょうか。
この記事では、配信面の内訳を確認したことで見えてきた課題と、コンバージョン数を約2.4倍に伸ばした改善アプローチをご紹介します。なお、今回の事例はGDNへの配信拡張前に実施したもので、対象となる配信面はDiscover・YouTube・Gmailの3面です。
目次
配信の9割以上が「Discover」面に集中していた
今回の事例では、獲得を伸ばすために配信量を増やそうとすると、CPAが上がるという課題がありました。そこで、配信面ごとの成果を確認したところ、配信の9割以上が「Discover」面に集中していることが判明しました。
なぜDiscover面へ配信が偏るのか
デマンドジェネレーションキャンペーンは「限界費用の最適化(marginal cost optimization)」という仕組みで配信先を決定しています。Google公式ヘルプでは、この仕組みについて「チャネル横断でROIが最も高い、またはCPAが最も低いコンバージョンに焦点を当てる。その結果、特定の配信面のボリュームが想定より少なくなることがある」と説明されています。
つまり、アルゴリズムは全チャネルの中から「次の1件のコンバージョンを最も安く獲れる面」を常に探しており、CPAが低い面に予算が集中する構造です。
今回のケースでは、入札戦略に「目標コンバージョン単価」を採用していました。そしてDiscover面は、他の面と比べてCPAが低くなりやすい構造的な特性を持っていたと推察しています。その背景には、配信面ごとのコンバージョンまでの導線の違いがあります。

| 配信面 | コンバージョンまでの導線 |
|---|---|
| Discover | 広告クリック → LP → コンバージョン |
| YouTube | 広告クリック → LP → コンバージョン |
| Gmail | 広告を開く(ティーザー展開) → CTAクリック → LP → コンバージョン |
Gmail面では、受信トレイに表示されるティーザー(件名)をクリックすると広告が展開され、そこからさらにCTAをクリックして初めてLPに遷移します。LPに到達するまでに2回のアクションが必要なため、離脱ポイントがDiscover面より多くなります。なお、Google公式FAQによると一部のフォーマットでは最初のクリックで直接サイトへ遷移するケースもありますが、基本的にはこの2ステップ構造が前提です。
YouTube面は、Discover面と同様に1クリックでLPへ遷移します。ただし、ユーザーは動画を視聴する目的でYouTubeを利用しているため、クリック後にテキスト主体のLPが表示されても読み込む姿勢になりにくく、コンバージョンに至りにくい可能性があります。この点はあくまで筆者の推察ですが、結果的にDiscover面と比べてCPAが高くなる傾向が確認されました。

こうした導線の違いにより、Discover面のCPAが相対的に低くなり、限界費用最適化のアルゴリズムがさらにDiscover面へ予算を集中させる。「CPAが低い → 配信が増える → 学習データが溜まる → さらにCPAが下がる」という循環が生まれ、配信の偏りが固定化されていたと考えています。
この結果を踏まえて、さらに成果を伸ばすために次の2つの施策を実施しました。
アプローチ①:配信面ごとにキャンペーンを分割し配信量をコントロール
まず着手したのは、これまで一つにまとめていたキャンペーンを、配信面ごとに分割する施策です。
Google推奨の手法と、今回の選択
2025年3月のアップデートにより、広告グループ単位でチャネルを選択できる「チャネルコントロール」機能が実装されました。
Google公式ヘルプでは、特定のチャネルに予算を配分したい場合に「そのチャネルを個別の広告グループに分離し、他のチャネルより高い目標CPAを設定する」方法が案内されています。
一方で、「このアプローチでは、すべてのチャネルでキャンペーンを実施するよりも効率が低下する可能性がある」とも注意喚起されています。さらに「個別のチャネルだけを見ると効率が良く見えても、全体としては十分なコンバージョン数を確保できない場合がある」という指摘もあります。
つまり、Google自身がチャネル分離には全体最適を損なうリスクがあると認識しています。

※AG = Ad Group(広告グループ)
それでも今回キャンペーンレベルでの分割を選択したのは、配信面ごとの日予算上限を明確に管理したかったためです。広告グループの分離とCPA調整による配分制御は間接的で、想定どおりの予算配分にならない可能性がありました。
ただし、この判断はGoogleが推奨するクロスチャネル最適化のメリットを手放すトレードオフであり、すべてのアカウントに適用すべき手法ではない点に留意してください。
仮説
Discover面へ配信が集中していたことで、他の配信面で本来獲得できたはずの見込みユーザーを取りこぼしていた可能性があります。
キャンペーンを分割して配信量をコントロールすれば、YouTubeやGmail上の見込みユーザーにもアプローチでき、獲得を積み増しできるのではないか。そう仮説を立てました。
結果
デマンドジェネレーションキャンペーン全体で、コンバージョン数が約2.4倍になりました。

配信面ごとの内訳は以下のとおりです。
| 配信面 | CV倍率 | 補足 |
|---|---|---|
| Discover | 約1.37倍 | 分割前から大半のCVを占めており、倍率は控えめだがCV実数への貢献が最も大きい |
| YouTube | 約40.7倍 | 分割前のCV数がごくわずかだったため倍率が大きい。CV構成比としてはDiscoverに次ぐ |
| Gmail | 約9.1倍 | 同様に分割前の母数が小さく、倍率の大きさがそのままインパクトの大きさを意味するわけではない |
| 全体 | 約2.4倍 | 許容CPA内での増加 |
YouTube面の約40.7倍、Gmail面の約9.1倍という数字は、分割前の配信量がごく少なかった状態からの伸びです。全体のCV増加に最も貢献したのは、もともとの配信量が大きかったDiscover面の1.37倍であり、YouTubeとGmailはそこに上積みを加えた形です。
これまでリーチできていなかった見込みユーザーにもアプローチが広がったことで、許容CPA内でコンバージョンが増加しました。
再現性に関する注意
同様にキャンペーンを分割しても成果が出なかったアカウントもあります。
今回成果が出た要因は、該当アカウントの配信量が十分に大きく、キャンペーンを3分割しても各キャンペーンでGoogle推奨の予算水準(目標CPAの15倍以上の日予算)を確保でき、機械学習の最適化に必要なコンバージョン数を維持できていたことだと考えています。
配信量が少ないアカウントでは、キャンペーン分割ではなく、まずは広告グループ単位でのチャネルコントロールと目標CPA調整から試すことをおすすめします。
広告管理画面の数字だけでは見えなかったこと
キャンペーン分割後、管理画面上のコンバージョン数だけでなく、その後の転換率(実際の成約や申込完了に至る割合)も配信面ごとに確認しました。
すると、管理画面上ではDiscover面が最もCPAが低く好調に見えていたものの、コンバージョン後の転換率を加味した最終的な獲得効率では、他の配信面の方が優れているケースが見られました。
Google公式ヘルプでも「個別のチャネルだけを見ると効率が良く見えても、全体としてはキャンペーン目標の達成に十分なコンバージョン数を確保できないことがある」と指摘されていますが、この事例ではさらに踏み込んで、管理画面上のCPAと最終成果の乖離が確認されたということです。
配信面の評価は、管理画面の数字だけで完結させず、後工程のデータまで含めて行う必要があると実感しました。
アプローチ②:配信面の特性に合わせたクリエイティブ調整
Discover面以外でもコンバージョン獲得につながることが確認できたため、次は各配信面でさらに獲得を伸ばす方法を検討しました。
仮説
YouTubeで動画を探しているとき、Gmailでメールチェックをしているとき、Discoverでテキストコンテンツを読んでいるとき。ユーザーの心理状態や情報の受け取り方はそれぞれ異なります。
そこで、各配信面のUIや閲覧文脈に馴染むコミュニケーションを設計すれば、より多くの見込みユーザーにクリックしてもらいやすくなるのではないかと仮説を立てました。
施策内容
これまでは、すべての配信面に同一のクリエイティブ・広告文を配信していましたが、配信面ごとの特性を踏まえて以下の調整を行いました。
Gmail面:メールボックスに馴染む広告文を追加
Gmail面では、広告は受信トレイ上にティーザー(件名)として表示されます。この時点ではバナーや説明文は表示されず、クリックして初めて詳細な情報が表示される仕様です。
ユーザーはメールを確認するために受信トレイを閲覧しているため、広告感の強い見出しは「自分が今見たい情報ではない」と判断され、スルーされてしまう可能性があります。
そこで、通常の件名と並んでも違和感なく受け取られるよう、メールの件名のような広告文を新たに追加しました。
例:
| パターン | 広告見出し |
|---|---|
| 従来 | 【今だけ半額】エアコン掃除をプロが代行 |
| メールの件名風 | 【今が始めどき】エアコン掃除代行が半額 |
YouTube インフィード面:動画サムネイル風のバナーを追加
YouTubeのインフィード面では、広告はホーム画面や検索結果上で、一般の投稿動画のサムネイルと並んで表示されます。
この画面を閲覧しているユーザーは、次に視聴する動画を探しています。広告色の強いバナーはその文脈と一致せず、クリック対象として認識されにくい可能性がありました。
そこで、投稿動画のサムネイルに近いデザインを新たに作成しました。具体的には、サービスのメリットを前面に押し出した従来のバナーに対し、ユーザーの悩みや状況に寄り添うコピーを主軸としたサムネイル風のデザインに変更しています。
例:
従来:サービスのメリットを前面に出したバナー

サムネイル風:動画サムネイルを模したデザイン・コピーのバナー

結果
各配信面における従来クリエイティブとの比較をまとめると、以下のとおりです。
| 指標 | Gmail(件名風) | YouTube(サムネイル風) |
|---|---|---|
| インプレッション | +118.09% | +0.70% |
| クリック率 | -0.54pt | -0.13pt |
| コンバージョン率 | -0.06pt | +0.97pt |
※各数値は従来クリエイティブを基準とした変化
Gmail面:インプレッション増加、クリック率は低下、コンバージョン率はほぼ変化なし
Gmail面では、件名風の広告文にすることでクリック率の改善を期待していました。しかし結果は、クリック率が低下し、コンバージョン率はほぼ変わりませんでした。
クリック率が低下した要因は2つ推察しています。
1つめは、インプレッションの大幅な増加にともなう構造的な影響です。件名風の広告文を追加したことで、これまでリーチしていた層よりも関心の薄いユーザーにも配信が広がりました。クリックに至らないインプレッションの割合が増えた結果、率としては低下したと見ています。
2つめは、受信トレイへの馴染みやすさと訴求力のトレードオフです。馴染ませることを優先した結果、サービスのメリットが一目で伝わりづらくなり、クリックの動機づけが弱まった可能性もあります。
コンバージョン率がほぼ横ばいだった点については、関心の薄いユーザーへの配信が広がったにもかかわらず率が維持されたことから、ティーザー展開のステップで関心の薄いユーザーがフィルタリングされ、LPに到達するユーザーの質自体は大きく変化しなかったためだと解釈しています。
YouTube インフィード面:クリック率はほぼ変わらず、コンバージョン率が改善
YouTubeのインフィード面では、動画サムネイルのような見せ方にすることで、クリック率の向上につながるのではないかと仮説を立てていました。
結果としては、クリック率に大きな改善は見られませんでしたが、コンバージョン率は改善しました。
クリック率がほぼ変わらなかった理由として、2つの見方ができます。
フィード上で異質な見た目だからこそ目に留まりやすく、従来のバナーでも一定のクリックは得られていた可能性。また、YouTubeのフィード上にはユーザーの目を引くよう工夫されたサムネイルが多数並んでおり、そこに馴染むデザインに変えても特別な差にはなりにくかった可能性。
いずれも、「馴染ませること=クリック率改善」という単純な図式が成り立たなかったことを示しています。
一方、コンバージョン率が改善した要因は、見た目の変更よりも訴求軸の変化に起因すると考えています。
サムネイル風のクリエイティブでは、サービスのメリット訴求から、ユーザーの悩みや状況に寄り添うコピーへと主軸を変えました。「自分の悩みを解決できるかもしれない」という期待を持ってクリックした人は、テキスト主体のLPでも内容を読み込む姿勢ができており、コンバージョンにつながりやすかったと見ています。
つまり、YouTube面での改善は「配信面に馴染ませた」効果というよりも、「訴求軸の転換」がもたらした効果でした。サムネイル風のデザインにしたことが直接の改善要因ではなく、そのデザインを採用する過程でコピーの方向性が変わったことが、コンバージョン率の改善につながったというのが、この検証から得られた解釈です。
考察:フォーマットの最適化と、訴求の最適化は別の話

当初の仮説は「配信面に馴染むコミュニケーションにすればクリック率が向上する」というものでした。しかし、Gmail・YouTubeいずれもクリック率の改善にはつながりませんでした。
一方で、YouTube面ではコンバージョン率が改善するという当初想定していなかった成果が得られています。ただし、その要因を整理すると「配信面に馴染ませた」ことではなく、「訴求軸をユーザーの悩み起点に変えた」ことが本質的な改善ドライバーでした。
この結果から見えてきたのは、配信面ごとのクリエイティブ調整で成果を伸ばすには、見た目をその面に馴染ませるだけでは不十分だということです。
見た目のフォーマットを合わせることと、その配信面にいるユーザーの心理状態に合った訴求を設計することは、似ているようで別の話。後者まで踏み込んで初めて、コンバージョンにつながるクリエイティブになると実感しました。
まとめ
今回の取り組みでは、大きく2つのアプローチで成果を改善しました。
1つめは、配信面ごとにキャンペーンを分割し、配信量をコントロールしたこと。デマンドジェネレーションの限界費用の最適化は、CPAが低い配信面に予算を集中させる仕組みです。それ自体は合理的な動作ですが、結果として他の面の獲得機会を取りこぼしているケースがあります。今回は分割により許容CPA内でコンバージョン数が約2.4倍に増加しました。ただし、この手法は分割後も各キャンペーンで十分な予算と学習データを確保できるアカウントで有効です。配信量が少ない場合は、広告グループ単位のチャネルコントロールと目標CPA調整から試すことをおすすめします。
2つめは、配信面の特性に合わせたクリエイティブ調整です。見た目を馴染ませるだけではクリック率の改善にはつながりませんでしたが、ユーザーの心理状態に合わせて訴求軸を変えることで、コンバージョン率の改善が確認されたケースがありました。
さらに、管理画面上のCPAだけでなくコンバージョン後の転換率まで見ると、配信面ごとの評価が変わるケースもありました。管理画面で最も効率が良く見える面が、最終成果でも最も優れているとは限りません。
まずは管理画面で「配信面の内訳」を確認してみてください。特定の面に配信が偏っている場合、その裏側に獲得機会の取りこぼしが隠れているかもしれません。



