Web広告の計測精度を高める4つの手法|Cookie規制時代の実践ガイド

Web広告の計測精度を高める4つの手法|Cookie規制時代の実践ガイド

「広告の成果が正しく測れていないかもしれない」そんな不安を感じたことはありませんか?

実は今、多くの企業がこの問題に直面しています。原因は、iPhoneのブラウザ「Safari」に搭載されたプライバシー保護機能(ITP)と、広告をブロックするツール(アドブロッカー)の普及です。

これらの影響で、広告をクリックしたユーザーが後日購入しても「どの広告経由か分からない」状態が起きています。特に日本はiPhoneユーザーが多いため、影響は小さくありません。

なぜ今、Web広告の計測精度向上が重要なのか

計測できないデータが増えると、次のような問題が起こります。

  • 広告の自動最適化(機械学習)がうまく働かない
  • 効果のある広告を「効果なし」と誤って判断してしまう
  • 広告費の使い方を間違える

本記事では、この問題を解決する4つの計測手法を、仕組みから効果まで分かりやすく解説します。専門用語もその都度説明するので、初めての方も安心して読み進めてください。

なお、すべての企業に高度な計測手法が必要なわけではありません。広告予算が小規模な場合や、計測の課題が顕在化していない場合は、基本的な計測で十分なケースも多いです。一方、広告費を増やして成果を伸ばしていきたい企業にとっては、計測精度の向上は優先度の高い施策になります。

この記事で分かること

  • なぜ今、広告の計測が難しくなっているのか
  • 問題を解決する4つの計測手法の違い
  • 自社に合った手法の選び方

対象プラットフォーム

本記事の用語はGoogle広告に準拠していますが、Meta広告、Yahoo!広告、GA4など他の媒体にも応用できます。


Web広告計測の基礎知識

計測精度を高めるには、まず「なぜ誤差が生まれるのか」を正しく理解する必要があります。その前提となるのが、Cookieやタグを中心としたWeb広告計測の基本構造です。

このセクションでは、Cookieの役割、保持期間、計測期間(ルックバック期間)への影響など、基礎知識を整理します。

Cookieの役割と種類

Cookieとは、Webサイトがブラウザに保存する小さなデータファイルです。Web広告計測では、このCookieに「クリックID」と呼ばれる広告識別子(gclid、yclidなど)を保存します。これにより、ユーザーの行動を継続的に追跡し、どの広告経由でコンバージョンが発生したかを特定できます。

ファーストパーティCookieとサードパーティCookieの違い

Cookieは発行元のドメインによって、大きく2種類に分かれます。

ファーストパーティCookieは、訪問中のサイト自身が発行するCookieです。たとえば、example.comを訪問中に、example.comが発行するものが該当します。

サードパーティCookieは、訪問中のサイトとは別のドメインが発行するCookieです。example.comを訪問中に、広告媒体のドメインが発行するものがこれに当たります。

※参考:Cookie(クッキー)とは?広告運用者が押さえておきたい基本の「き」|アナグラム株式会社

SafariのITPでは、この2種類のCookieの扱いが大きく異なります。現在の広告計測では、各媒体がファーストパーティCookieを利用する仕組みに移行しています。

次のセクションでは、この移行がどのように行われているかを解説します。

計測方法の変化(サードパーティCookie → ファーストパーティCookie)

従来、広告媒体は広告配信サーバーのドメインからサードパーティCookieを発行し、コンバージョン計測を行っていました。

しかし、ITP(Intelligent Tracking Prevention)などプライバシー保護機能によりサードパーティCookieがブロックされるようになったため、各広告媒体は計測方法を刷新しました。Google広告の場合、自動タグ設定(GCLIDのURL付与)とGoogleタグ(コンバージョンリンカー)を組み合わせることで、広告主サイトのドメインからファーストパーティCookieを発行し、コンバージョン計測を行う仕組みに移行しています。

自動タグの仕組みと設定方法

自動タグ設定をオンにすると、広告クリック時にURLへ「クリックID」がパラメータとして自動付与されます。この仕組みにより、クリックIDをファーストパーティCookieとして保存できるようになりました。

ファーストパーティCookieへの保存プロセス

自動タグによるCookie保存は、以下の流れで行われます。

  1. ユーザーが広告をクリックすると、URLにクリックIDが自動付与される(例:https://example.com/?gclid=123xyz)
  2. サイトに設置されたタグ(gtag.js等)がこのIDを読み取る
  3. 広告主サイトのドメインで、ファーストパーティCookieとして保存される

主な広告媒体で用意されているクリックIDは以下のとおりです。

媒体パラメータ名備考
Google広告gclid(Google Click ID)gclid=abc123xyz自動タグ設定ONで付与。GA4やCAPIとも連携可
Yahoo!広告
(検索・ディスプレイ)
yclid(Yahoo Click ID)yclid=abc123xyz自動タグ設定ONで付与

※YDAは日本のみ
Meta広告fbclid(Facebook Click ID)fbclid=abc123xyz自動的に付与
LINE広告lclidlclid=abc123xyz2024年以降対応
Microsoft広告msclkidmsclkid=abc123xyz自動タグ設定で付与

ポイント

Google広告、Yahoo!広告、Microsoft広告では、自動タグ設定のオン/オフを選択できます。計測精度の観点から、基本的には「オン」を推奨します。ただし、パラメータ付与がサイトや外部システム(URLルール、決済、リダイレクト等)に影響する場合は、オフにする判断が必要なケースもあります。

計測期間(ルックバック期間)への影響

計測期間(ルックバック期間)とは、広告のクリックや表示から、その広告の成果としてコンバージョンを記録できる有効期間です。たとえばGoogle広告のデフォルト設定では、クリックから30日以内に発生したコンバージョンが広告の成果としてカウントされます。

この計測期間は、Cookieの有効期限によって制限を受けます。コンバージョンを広告に紐づけるには、クリック時に発行されたクリックIDをCookieに保存しておく必要があるためです。Cookieが削除されると「どの広告経由だったか」が分からなくなり、成果として計測できません。

たとえば、SafariのITPでは、広告クリック経由で訪問した際のCookieが24時間で削除されます。そのため、管理画面で計測期間を30日に設定していても、広告をクリックした翌日に購入したユーザーは広告経由の成果として認識されないのです。

Cookieの保持期間が短いと、さまざまな問題が発生します。家具やBtoB商材など検討期間の長い商材では、成果が正しく計測されにくくなります。また、コンバージョンデータが不足することで媒体の機械学習が停滞し、広告の自動最適化がうまく働きません。さらに、実際は成果が出ている広告が「効果なし」と誤って判断され、有望な施策が打ち切られるリスクもあります。

このように、Cookieの保持期間は単なる技術的制約ではありません。広告の最適化精度や、施策評価の公平性に直結する重要な要素です。

Web広告計測の基礎知識 まとめ

このセクションで解説した用語を整理します。

用語定義
Cookie広告クリックIDを保存し、コンバージョンを特定するための仕組み
自動タグURLにクリックIDを自動付与し、ファーストパーティCookieとして保存する機能
ルックバック期間広告クリックからコンバージョンまでの計測可能期間

ポイント

現在の広告計測は、自動タグによるファーストパーティCookie活用が主流です。しかし、SafariのITPによってファーストパーティCookieの保持期間が制限されるため、ルックバック期間の上限も短くなります。

つまり、ファーストパーティCookieの保持期間をいかに延長するかが、計測精度向上の鍵となります。

広告計測に影響を与える外部要因

ここまで、Web広告計測の基本的な仕組みを解説しました。このセクションでは、計測精度に影響を与える外部要因として、Safari ITPとアドブロッカーの影響を詳しく見ていきます。

Safari ITP(Intelligent Tracking Prevention)の影響

広告計測に最も大きな影響を与えているのが、AppleのSafari ITPです。特に日本市場ではiPhoneシェアが高いため、この影響を正しく理解することが重要です。

Safari ITPとは

ITP(Intelligent Tracking Prevention)は、AppleがSafariブラウザに実装したユーザー追跡防止機能です。iPhoneのデフォルトブラウザであるSafariに搭載されており、Cookieを含むトラッキング関連技術を制限します。

広告業界では長年、Cookieを使ったユーザー行動の追跡により、コンバージョン計測やターゲティングを行ってきました。しかし、この仕組みが過度な個人情報収集につながるとの懸念から、AppleはITPを導入しました。

ITPはCookieの保持期間を大幅に制限し、Webサイト間でのユーザー追跡を困難にします。Appleは2017年のITP導入以降、段階的に制限を強化しており、ITP 2.3(2019年9月)以降は明確なバージョン番号なしに継続的なアップデートが行われています。

2025年現在のITP制限内容

現在のITPによる制限は、以下の表のとおりです。

Cookie種別設定方法条件保持期間
サードパーティすべて完全ブロック(2020年3月〜)
ファーストパーティフロントエンド通常の訪問7日(ITP 2.1、2019年2月〜)
ファーストパーティフロントエンド広告経由の訪問24時間(ITP 2.2、2019年4月〜)
ファーストパーティサーバーサイドIP・ドメイン一致最大400日(Safari 16.4、2023年4月〜)
ファーストパーティサーバーサイドIP・ドメイン不一致7日(Safari 16.4、2023年4月〜)

※「広告経由の訪問」とは、URLにgclidやfbclidなど、Safariがトラッキング用途と判断するパラメータが付与されている場合を指します。

用語解説:フロントエンドとサーバーサイド

フロントエンドとは、ユーザーのブラウザ上で動作する処理のことです。皆さんのスマホやPCで実行されます。一方、サーバーサイドとは、Webサーバー側で実行される処理で、企業側のサーバーで動きます。

この違いによって、Cookieの保持期間が大きく変わります。フロントエンドで設定したCookieはITPの制限を強く受けますが、サーバーサイドで設定したCookieは制限が緩和される場合があります。

参照情報:

 ポイント

多くの広告タグはフロントエンドで動作するため、SafariのITPによって広告経由のCookieは24時間で削除されます。つまり、今日広告をクリックしたユーザーが翌日以降に購入しても、広告の成果として計測されません。

特に、家具、旅行、BtoB商材など検討期間の長い商品では、データ欠損のリスクが高まります。

こうした課題への対策として注目されているのが「サーバーサイドGTM」です。

サーバーサイドGTMを利用すると、Cookieをサーバーから発行できます。これにより、SafariのITPによる24時間削除の対象外となり、Cookie保持期間を7日間、条件次第では最大400日まで延長できます。

※最大400日に延長するには、サーバーのIPアドレスとドメインの一致が必要です。詳細は「4-3. サーバーサイドGTM」で解説します。

Cookie保持期間の延長により、広告効果をより正確に評価でき、媒体の機械学習促進にもつながります。

日本市場特有の課題:iPhoneシェアの高さ

日本のスマートフォン市場におけるiPhoneシェアは約50%前後とされ、世界平均を大きく上回っています(出典:MMD研究所調査、2025年9月)。Webトラフィックベースでは約60%を超えるデータもあり、特にモバイル環境でのSafari比率が高いことが特徴です。

iPhoneユーザーはSafari ITPの影響を直接受けるため、日本市場ではITP対策の重要性が特に高いといえます。

アドブロッカーの影響

アドブロッカーは、ブラウザ上で動作する広告タグの通信をブロックし、コンバージョンデータが媒体に届かない原因となります。

世界的なデジタル消費者行動調査会社のGWIの2024年調査によると、日本の広告ブロッカー利用率は15.8%で、調査対象53ヵ国中で2番目に低い水準です(世界平均は31.5%)。とはいえ、約6人に1人が使用している計算です。

広告自体がブロックされている場合は、そもそもコンバージョンに至らないため、広告計測への直接的な影響は限定的ともいえます。しかしながら問題となるのは、アドブロッカーがGA4などのアクセス解析タグもブロックするケースがあり、サイト全体の計測精度に影響を与える点です。

なお、同調査でも触れられているように、広告ブロッカーが普及する背景には、ユーザー体験を損なう広告の存在があります。広告を配信する側としても、過度な表示頻度や煩わしいフォーマットを避け、ユーザー体験に配慮した広告運用を心がけることが、長期的には計測精度の維持にもつながるといえるのではないでしょうか。

その他の計測環境の変化

Safari ITPとアドブロッカー以外にも、広告計測に影響を与える環境変化があります。直接的な影響は限定的ですが、知っておくべき2つのトピックを紹介します。

iOS 14.5以降のATT(App Tracking Transparency)

2021年4月のiOS 14.5リリース以降、iOSアプリがユーザーをトラッキングするには明示的な許可が必要になりました。許可しないユーザーからはIDFA(広告識別子)を取得できず、アプリ広告の計測精度やリターゲティングに影響します。

Adjustの2023年調査によると、日本のATTオプトイン率は22%で、世界平均(34%)を大きく下回っています。約8割のユーザーがトラッキングを拒否している計算です。

ただし、ATTの影響範囲には注意が必要です。ATTはアプリ間のトラッキングに適用されるものであり、InstagramやFacebookのアプリ内ブラウザを経由したWeb広告には影響しません(この場合はITPの制限を受けます)。また、オプトインしなかったユーザーの成果がすべて失われるわけではなく、AppleのSKAdNetworkによる集計ベースの計測で一定のデータは取得可能です。

ChromeのサードパーティCookie廃止計画

Googleは当初、ChromeでサードパーティCookieを完全廃止する計画でしたが、現在は方針を転換しています。ユーザーがWebサイトごとにCookieの利用を管理できる現行の仕組みを維持しつつ、シークレットモードでは引き続きサードパーティCookieをブロックする形となっています。

代替技術として開発が進む「Privacy Sandbox」は、Topics APIやProtected Audience APIなど複数のAPI群を通じて、プライバシー保護と広告技術の両立を目指しています(参考:Google広告ヘルプ)。

広告計測に影響を与える外部要因 まとめ

外部要因影響度日本での影響範囲主な影響内容
Safari ITPiPhoneシェア52%サードパーティCookieは完全ブロック。ファーストパーティCookieは広告経由で24時間削除
アドブロッカー使用率18%タグ通信がブロックされ、外部通信が遮断される

Safari ITPは検討期間の長い商材で特に影響が大きく、アドブロッカーは使用率に応じた計測データ欠損のリスクがあります。

 ポイント

日本市場ではiPhoneシェアが52%と高く、Safari ITPの影響は特に大きいといえます。加えて、使用率18%のアドブロッカーによる計測漏れも発生しています。

これらの外部要因を理解し、次のセクションで解説する計測手法の効果を把握した上で、自社に適した対策を検討することが重要です。

計測精度を高める4つの手法とその効果

ここまで、広告計測の基礎知識と、計測精度に影響を与える外部要因を解説してきました。このセクションでは、これらの課題に対応する4つの計測手法を紹介します。

  1. クライアントサイド計測: 一般的なタグによる計測
  2. 拡張コンバージョン/詳細マッチング: Cookieに依存しない補完計測
  3. サーバーサイドGTM計測: サーバー経由でのCookie発行
  4. サーバーサイド計測: コンバージョンAPIによる直接通信

それぞれの特徴とメリット・デメリットを順に解説します。

1.クライアントサイド計測:標準的なタグ計測

クライアントサイド計測は、「2. Web広告計測の基礎知識」で解説した一般的な広告タグによる計測手法です。Googleタグマネージャー(無料)を利用すれば、コードを書かずに実装できます。

メリット

  • 実装が最も簡単で、技術的なハードルが低い
  • 基本的にコストがかからない

デメリット・課題

  • Safari ITPの影響を受け、Safari環境では広告クリック由来のCookieが24時間で削除される
  • アドブロッカーによって広告タグ通信がブロックされ、計測データが欠損する可能性がある

2.拡張コンバージョン:Cookieに依存しない補完計測

拡張コンバージョンは、Cookieに依存せず、ユーザーの識別情報(メールアドレスなど)を活用して計測精度を高める仕組みです。ITPの影響を受けにくいという特徴があります。

従来の計測方法では、Safari環境において広告クリックから24時間でCookieが削除され、計測不可となります。一方、拡張コンバージョンはCookieに依存せず、ユーザーのメールアドレスや電話番号を媒体のデータベースと照合することで、コンバージョンを計測します。ユーザーデータはハッシュ化(不可逆変換)されるため、個人情報は保護されます。

ハッシュ化したデータを媒体に送信する方法は2つあります。計測タグで送信する方法は実装が簡単ですが、アドブロッカーの影響を受けます。APIで送信する方法は技術的な知識が必要ですが、アドブロッカーの影響を回避できます。

導入時の注意点

拡張コンバージョンは単独ではなく、クライアントサイド計測と併用して実装するのが基本です。

すべてのユーザーがメールアドレスを入力するわけではなく、媒体側のデータベースとのマッチング率も30〜60%程度(Google公式では29〜62%とされ、媒体・業種・データ品質により変動)にとどまるためです。従来の計測と併用することで、計測の取りこぼしを最小限にできます。

また、ユーザー情報(メール、電話番号等)の取得が前提となるため、個人情報の取り扱いに関する社内体制の整備も必要です。

メリット・デメリット

メリットは、Cookieに依存しない計測により、Safari環境での大幅な改善を実現できる点です。既存のタグ設定への追加実装であれば、比較的容易に導入できます。

一方、デメリットとしては、マッチング率に依存するため100%の改善は期待できないこと、タグ送信ではアドブロッカーを回避できないこと(API送信なら回避可能だが高度な技術知識が必要)が挙げられます。

3.サーバーサイドGTM:Cookie保持期間を延長する

サーバーサイドGTMは、サーバー経由でCookieを設定できるため、ITPの影響を軽減し、Cookie保持期間を延長できます。Cookieを利用した計測方法としては、最大限のITP対策となります。

延長できる期間は、サーバーの構成によって異なります。

  • IPアドレス・ドメインが一致する場合: 最大400日まで延長可能
  • 一致しない場合: 7日間まで延長可能

※IPアドレスの「一致」とは、IPv4の場合は最初の2オクテット(例:192.168.x.xの「192.168」部分)が 同一であることを指します。

ECカートプラットフォームを利用している場合など、IPアドレスの一致が難しいケースでは、7日間の延長が現実的な選択肢となります。

また、サーバー間の通信となるため、多くの場合アドブロッカーの影響を回避できます。ただし、ブラウザからサーバーサイドGTMへの初期通信がブロックされた場合は、計測できない点に注意が必要です。

メリット

  • Cookie計測におけるITP対策として、最大限の効果を発揮する
  • 多くのアドブロッカーの影響を回避できる

デメリット・課題

  • サーバー費用やメンテナンス費用が継続的に発生する
  • 実装・運用にある程度の専門知識が必要
  • サーバー構成やDNS設定の調整が必要で、技術的難易度が高い

4.サーバーサイド計測(コンバージョンAPI):最高精度を実現する

サーバーサイド計測は、コンバージョンAPI(CAPI)を活用してサーバー間で直接通信する手法です。カスタマイズ性が高く、開発設計次第では最も高い計測精度を実現できます。

サーバー間通信のため、アドブロッカーの影響を完全に回避できます。

Cookie保持期間については、Cookieの設定方法(フロントエンドかサーバーサイドか)やサーバー構成によって変動します。サーバーサイドで設定し、IPアドレス・ドメインが一致する構成であれば、最大400日の保持が可能です。

適切な開発設計を行えば、現在のプライバシー保護環境において最も確実な計測を実現できます。ただし、実装の精度に依存するため、専門知識を持ったチームによる設計が求められます。

メリット

  • 適切な設計により、ITP・アドブロッカー双方の影響を完全に回避できる
  • カスタマイズ性が高く、今後のプライバシー規制強化にも柔軟に対応可能

デメリット・課題

  • 実装コストと開発工数が最も高い
  • 高度な技術知識と継続的なメンテナンスが必要
  • システム間の連携設計が複雑で、専門人材の確保が必須

計測手法の比較まとめ

ここまで解説した4つの計測手法を、Safari ITP対策、アドブロッカー対策、実装難易度の3軸で比較します。

計測手法Safari ITP対策アドブロッカー対策実装難易度
クライアントサイド計測× 影響を受ける× 影響を受ける
拡張コンバージョン○ 改善△ タグ送信では影響あり低〜中
サーバーサイドGTM○〜◎ 条件により変動○ 改善中〜高
サーバーサイド計測◎ 大幅改善◎ 大幅改善

ポイント

  • 拡張コンバージョン: 実装が比較的容易でCookieに依存しない計測を実現。ただしマッチング率(40〜70%)に左右される
  • サーバーサイドGTM: Cookie保持期間を7日(条件次第で400日)まで延長でき、アドブロッカーも回避できる。多くの企業にとって現実的な選択肢
  • サーバーサイド計測: 最も確実な計測が可能だが、高度な技術力と継続的なコストが必要

自社のリソースや予算に応じて、適切な手法を選択することが重要です。

シミュレーション:計測精度の改善率

導入しないよりもしたほうがいいことは間違いありませんが、いずれも手間や時間がかかる施策です。どの程度の改善が見込めるかは気になるポイントですよね。

ここまで解説した計測手法が、実際にどの程度の改善効果をもたらすのかをシミュレーションします。日本市場特有のブラウザシェアを考慮し、各手法の計測精度を数値化しました。

算出方法

計測精度は、以下の計算式で算出しています。

計測精度 = 通信精度 × Cookie保持期間の有効率

変数算出方法備考
通信精度100% − アドブロッカー使用率(18%)82%として計算
Cookie保持期間の有効率Cookie保持期間 ÷ 30日ルックバック期間30日を基準

前提条件

  • 拡張コンバージョンのマッチング率: 40%(マッチした40%は30日間計測可能、残り60%はCookie制限に依存)
  • 日本市場のiPhoneシェア: 52%
  • ルックバック期間内のコンバージョン分布は考慮せず、平均値として算出

日本市場のブラウザシェア(2025年11月)

ブラウザシェア
Chrome55%
Safari25%
Edge12%
その他8%

※データ出典:StatCounter 2025年11月(PC+モバイル合計)

上記の前提をもとに、「ブラウザシェア × 各環境での計測精度」を掛け合わせて理論上の計測精度を数値化しました。

日本市場全体での計測精度のシミュレーション

計測方法計測精度改善幅実装難易度
クライアントサイド計測のみ63%-
+ 拡張コンバージョン71%+8%
sGTM(ドメイン/IP不一致)82%+19%
sGTM(ドメイン/IP一致)99%+36%
完全サーバーサイド99%+36%

注意:計測精度とコンバージョン増加の関係

ここでいう「計測精度」とは、計測可能な期間・ブラウザが広がることを意味します。実際のコンバージョン件数が同じ割合で増加するわけではありません。

これは、コンバージョンの多くが広告クリック直後に発生し、翌日以降は漸減していく傾向があるためです。計測日数が延びても、延長された期間に発生するコンバージョンは限定的です。

ただし、データ欠損は次のような問題を引き起こすため、計測精度を高める意義は大きいといえます。

  • 全体の費用対効果を見誤る
  • コンバージョン件数の不足により機械学習が進みにくくなる
  • 認知に近い役割の広告が過小評価される

まずは現状を正しく認識した上で、実装可能な計測手法から着手することを推奨します。

費用対効果から見た導入の優先順位

シミュレーション結果をもとに、費用対効果の観点から各手法の導入優先順位を考えてみましょう。

まず検討したいのは拡張コンバージョンです。 改善幅は+8%と控えめですが、既存のタグ設定に追加する形で実装できるため、コストと工数を抑えられます。

特にECサイトや会員登録を伴うサービスなど、メールアドレスを取得しやすいビジネスモデルでは、比較的早く効果を実感できるでしょう。

次のステップとして現実的なのが、sGTM(IP/ドメイン不一致)です。 計測精度は82%まで向上し、クライアントサイド計測のみ(63%)から大幅な改善が見込めます。

サーバー費用やメンテナンスコストは発生しますが、多くの企業にとってはこのレベルで十分な効果を得られます。

最高精度を目指す場合は、sGTM(IP/ドメイン一致)が推奨されます。 計測精度99%を実現でき、完全サーバーサイド計測と同等の効果が得られます。技術的難易度は高いものの、サーバーサイドGTMの方が柔軟性に優れ、運用もしやすい傾向があります。

ただし、ECカートプラットフォームを利用している場合など、IPアドレスの一致が困難なケースでは、完全サーバーサイド計測の検討が必要になります。

どの手法を選ぶかは、自社の技術リソース、予算、そして計測課題の深刻度によって異なります。まずは現状を正しく把握し、段階的に導入を進めていくのがおすすめです。

まとめ

広告計測の精度向上は、単なる技術的な課題ではなく、ビジネス成果に直結する重要な取り組みです。Cookie規制やブラウザ仕様の変化が進む中で、「これまで通り計測できている前提」での広告運用は、気づかないうちに判断を誤ってしまうリスクがあります。

まずは、自社の計測環境がどの制限の影響を受けているのか、どの選択肢が現実的なのかを整理するところから始めてみてください。

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