
支援会社でのキャリアも数年経つと、「一人前になったあとのキャリア」をどう歩んでいこうか、迷うこともあるのではないでしょうか。職種変更が少なく、将来の選択肢が見えにくいと感じることもあるかもしれません。
アナグラムで新規事業の責任者を務める西村さんは、「偶然を受け入れながら、いま目の前の仕事に向き合うこと」で、新しい道が開けたと話しています。今回のインタビューでは、その軌跡を伺いました。
きっかけはM&A。「会社に依存しないスキル」を求め、Webマーケティングの世界へ
ーーーまずは、アナグラムに入社するまでのご経歴についてお聞かせください。
大学卒業後、3社で営業職を経験しました。新卒でコインパーキングの新規開拓営業を3年、その後リサイクルショップで販売・買取バイヤーを3年、そして建設業特化の人材派遣・紹介会社で法人営業を1年半ほど経験しています。
ーーー営業職から、未経験のWebマーケティング業界へ。大きなキャリアチェンジですが、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
営業からマーケティングへのジョブチェンジは、前職のときから考えていました。
営業という仕事自体が嫌いだったわけではありません。しかし、3社を経験する中で、自分が営業でトップになるという明確なイメージが持てずにいました。
そんな時期に、よく話していたマーケティング部署の部長から「マーケの部署に来ないか」と声をかけてもらったんです。成長の踊り場を感じていた時期だったので、ぜひ挑戦したいと考えていました。
でも、その話が進む直前に会社がM&Aされ、経営陣が総入れ替え、部署異動の話も白紙に……。

この環境の激変を目の当たりにし、「明日会社がなくなっても通用する、確固たるスキルを身に着けたい。」と強く感じました。そのとき、部署異動の話はなくなってしまったものの、やはり将来的な武器としてマーケティングの領域を極めていきたいと考え、転職を決意しました。
ーーーご自身の特性とキャリアの関係について、どのように考えていますか?
過去に自分の心が動いた瞬間に目を向けると、ある程度先が見通せたり、未来が想像できてしまったりすると、興味が薄れてしまう特性がありました。たとえば、RPGでラスボスのステージにたどり着くと、ゲームへの興味を失ってしまうのです。「もう倒せるからいいや⋯!」と。
また、転職活動を通じてよく聞かれる「5~10年後どうなりたいですか?」という質問がどうも苦手で⋯⋯。時代や変化が激しいなかで、キャリアを逆算して考えることは難しくなってきているのではないかと。

以前は、こうした長期的なビジョンを描けない自分には何か欠けている部分があるのではないかと悩んだ時期もありました。しかし、最近では「計画された偶発性理論(※)」のような考え方にも触れ、自分の特性をポジティブに捉えられるようになりました。
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(※)計画された偶発性理論:米国スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア理論。「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」とし、その予期せぬ偶然の出来事にベストを尽くして対応する経験の積み重ねで、よりよいキャリアが形成されるという考え方
引用元:計画された偶発性理論 - HRpro
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根底にあるのは、たとえ予想しない事態が起きても、自分でキャリアの選択肢を持ち続けたい、という思いです。そのために、常に自分自身のスキルを高め続ける必要があるのではと考えています。
「とにかく早く一人前に」未経験入社の危機感が成長の原動力
ーーー数ある企業の中から、アナグラムを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
一番の決め手は、採用ページに書かれていた当時の代表、阿部さんの言葉です。虚飾がなく、ただ優しいだけの会社ではないという誠実な印象を受けました。また、言語化は難しいのですが、面接でお会いしたリーダーの方々と直感的に「馬が合いそうだ」と感じたことも大きな理由です。
――未経験での入社後、具体的なキャリアプランはありましたか。
いいえ、全くありませんでした。とにかく「一人前になる」ことだけを目標にしていました。
転職活動の際に、SEO、広報、SNSなど、数あるマーケティング職の中からWeb広告を選んだのは、PDCAサイクルを早く回せるため、成長スピードも早いだろうと考えたからです。そのため、まずは早く一人前になることを目指していました。

その意気込みとは裏腹に、現実は想像以上に厳しいものでした。
入社初日には阿部さんから「未経験だから、相当必死にやらないと厳しいよ」と言われ、身が引き締まる思いでした。さらに翌日の「グロースハック」では、周囲のレベルの高さに圧倒され、「何を言っているのかわからない」と愕然としたのを覚えています。
――厳しい環境だと感じていた中で、どのようにして一人前になっていったのでしょうか
入社後1年間は、とにかく「グロースハック」にコミットしました。
当時、毎週あるグロースハックで、全社員(当時40人ほど)のアウトプットに目を通し、参考になった点や分からなかった点を全て書き出し、チームミーティングで質問する、ということを繰り返しました。グロースハックのアウトプットは誰でも見られる状態にあるため、常に見られているという良い緊張感がありましたね。
この経験が、運用型広告のコンサルタントとしての土台を築いてくれたと断言できます。人のアウトプットから学び、自分の血肉としていく。この地道なインプットとアウトプットの繰り返しが、成長の糧になったと思ってます。
あとは、アナグラムでは挙手制のカルチャーがあるので、リソースに少しでも余裕ができそうであればその時に話が来ている新規の案件に挙手していました。
自分がやってみたいと思う仕事を待っているといつになるかわからないですし、それよりも、さまざまなビジネスに関わる経験を積みたかったので。
リーダー、そして新規事業責任者へ。コミットの先に見えた新たな選択肢。
――そして、リーダーに就かれましたね。ご自身に変化はありましたか。
一番の変化は、複数のチームメンバーの案件を見ることで、物事を俯瞰的・客観的に捉えられるようになったことです。

リーダーになる直前、6案件ほど担当していたのですが完全にキャパオーバーで業務が回らずミスが重なることがありました。プレイヤーとしての適性がないのではないかと深く悩み、本気で辞めようかと考えたこともあったのです。ただ、そのような経験があったからこそ、切羽詰まったメンバーからの相談に対しても、一歩引いた視点から冷静にアドバイスできるようになったのかなと。
この視座の変化は、自分自身のクライアントワークにも良い影響があり、広告の話だけでなく、クライアントのマーケティング全体に目が行くようになったのです。
――リーダーとしての経験も積まれた後、縦型ショート動画プラットフォームの新規事業に挑戦されています。どのような経緯があったのでしょうか。
理由は大きく2つあります。1つは、これまでの支援側の経験に加え、事業運営の視点を持ちたいと考えたからです。
たとえば、リード獲得をKPIとして広告運用をしていたクライアントさんで、問い合わせのリードには電話をかけているが、資料請求のリストには全くアプローチしていない、といったケースがありました。資料請求のリストにも架電をしたほうがいいと提案をしたものの、事業運営の経験がなかったので、どうしても一般論に終始してしまい、説得力に欠けると感じていました。
同時期に事業会社からアナグラムに戻ってきた中島さんや、事業会社出身の二平さんのアウトプットを見ると、現場を経験したからこその「手触り感」があり、自分もそうした経験を積む必要があるなと。
2つ目は、ビジネスの「0→1フェーズ」に携わりたいと考えたことです。広告運用は、クライアントがすでに持つ事業や商品を広げていく支援が中心です。ですが、自分自身でゼロから事業を立ち上げ、仮説検証を繰り返しながら育てていく経験をしたいと考えるようになりました。
ただ、コンサルタントを辞めるつもりはなく、あくまでコンサルタントとしての提供価値を高めることが目的でした。そんな時に、偶然にもコンサル業務と兼務という形でグループ内の別事業に関われる制度が始まり、まさに渡りに船でした。
――新規事業の責任者として、コンサルタント時代とは違うどのような学びがありましたか。
すべてが違いましたね。事業のPL(損益計算書)を自分で管理するようになり、ビジネスそのものを“生き物”として捉えるようになった感覚があります。
特に大きな学びは、プライシングの重要性です。「儲かる構造」になっていなければ、どれだけ集客を頑張ってもビジネスはうまくいかないということを肌で感じています。

また、仮説検証に対する考え方も変わりました。「仮説立てよりも実行により時間をかけるべき」と考えるようになったのです。1つの良い仮説を考える時間があるなら、3つの新しいことを試した方が良い。リソースが許す限り、試せることはすべて試すべきだと考えるように変わってきました。
時代やユーザーの行動が変化するスピードが早いので、たくさんの選択肢のなかから1つ選びだすより、いくつかスモールトライして当たりどころを見つけるほうが事業の伸びしろに直結するのではと感じています。
これまでを振り返って
ーーー最後に、これまでのご経験は、西村さんのキャリアにとってどのような意味があったと感じていますか。
運用型広告コンサルタントや事業責任者として、広告、プライシング、サービスサイト制作、営業、ウェビナー、資料作成、PR、採用活動など、あらゆる業務を経験しました。この経験を通して、ビジネス全体を俯瞰する視点が得られたことが、コンサルタントとしての自分を大きく成長させてくれたと感じています。
アナグラムは、自分でコミットすると決めた人にとって、挑戦の機会がたくさんある環境だと思います。裁量がある分、責任も伴うので決して楽ではないですが、その先には成長とキャリアの選択肢が得られるはずです。
失敗もしますし、計画通りにはいかないですが、目の前の仕事に全力で取り組み続けることが、結果的に自分らしい道を切り拓くことに繋がっているのかなと感じています。