
Googleアナリティクス4 プロパティ(以下、GA4)を使っていると、「なんだか数値が合わない」「データが表示されない」といった現象に出会うことがありますよね。
たとえば、次のようなケースが挙げられます。
- レポートを変えるたびにユーザー数が変わる
- 数件しか発生していないキーイベントが表示されない
- 年齢や性別のデータが表示されない
これらの原因の多くは、「しきい値」が適用されたために発生している可能性があります。なんとなく表示されるデータが制限されていたり、それが「しきい値」によるものだと思っていても、正確に何が起こっているのか分かりにくいですよね。
本記事では、分かりそうで分からない「しきい値」の、仕組みから適用の条件、回避方法まで分かりやすく解説します。

監修:
森野 誠之(運営堂)
運営堂代表。
名古屋を中心に地方のWeb運用を支援する業務に取り組む。豊富な社会・業務経験と、独立系コンサルタントのポジションを活かしてWeb制作や広告にこだわらず、柔軟で客観的な改善提案を行っている。
理系思考&辛口の姿勢とは裏腹に皿洗いを趣味にする二児のパパ。尊敬する人はゴルゴ13。


しきい値とは
まずは「しきい値とはどんな仕組みか?」について見ていきましょう。
しきい値とは、GA4がユーザーのプライバシーを保護するために、特定の条件下でデータを隠したりぼかしたりする仕組みです。GA4では、対象となるユーザーに関するやデータ(例:年齢、性別、興味関心など)が含まれる場合に、しきい値が適用されます。これにより、個人を特定できないようにしながらレポートを提供することが可能になります。
しきい値が適用される条件
しきい値が適用されると、データが非表示になるか、数値が調整されることでプライバシーが保護されます。たとえば、以下のような場面でしきい値が適用されることがあります。
- 検索語句の情報が含まれており、少数のユーザーに対する分析
- ユーザーに関するデータ(例:年齢層や興味関心カテゴリー)を含む分析
しきい値の確認方法
GA4でしきい値が適用されているかどうかは、レポート画面右上の通知アイコン「▲」で確認できます。通知アイコンをクリックすると、どのデータにしきい値が適用されているかが表示されます。
しきい値の回避方法
しきい値はシステムによって自動的に適用され、ユーザーが直接調整することはできません。しかし、以下の方法でしきい値の適用を減らすことが可能です。
分析期間を広げる
短期間のデータではユーザー数が少なくなりがちです。分析期間を長く設定することで、対象となるデータの母数が増え、しきい値が適用されるリスクを低減できます。
BigQueryへのエクスポート
GA4のデータをBigQueryにエクスポートすれば、しきい値の影響を受けることなく詳細なデータ分析が可能です。
ただし、BigQueryの利用にはSQLの知識が必要となるため、データ分析に慣れていない場合は、設定や活用方法を事前に学習しておくことをおすすめします。
※BigQueryとは?
BigQueryはGoogleが提供するクラウド型のデータウェアハウスで、大量のデータを高速かつ柔軟に分析できるサービスです。GA4と連携することで、しきい値のかからない生データに直接アクセスでき、より詳細な分析が可能になります。
しきい値の適用範囲
唯一、BigQueryと連携した場合のみ、しきい値の影響を受けることなく生データを取得できます。 それ以外のレポートやツールでは、しきい値の適用に留意して分析を行いましょう。
レポート / ツール | しきい値の適用範囲 |
---|---|
標準レポート | 適用される |
探索レポート | 適用される |
Looker Studio | 適用される(GA4をデータソースとする場合) |
API(Data API) | 適用される |
BigQuery | 適用されない |
GA4のデータをより正確に活用するためには、しきい値の適用範囲を理解し、適切な分析手法を選択することが重要です。
しきい値とサンプリングとの違い
しきい値と混同しやすい概念に「サンプリング」があります。両者は混同されやすいですが、適用される目的や条件が異なるため、正しく理解しておくことが重要です。
サンプリングとは、大量のデータを効率的に処理するために全体ではなく一部のデータを選んで分析に利用する方法です。 GA4上でイベント数やセッション数が非常に多い場合にサンプリングが適用されます。これによりシステム負荷を軽減し素早くレポートを提供することが可能になっています。
それぞれ違いは以下の通りです。
項目 | しきい値 | サンプリング |
---|---|---|
目的 | プライバシー保護 | パフォーマンス向上 |
適用条件 | ユーザーに関するデータ(例:年齢、性別、興味関心など) | データ量が多い場合 |
影響 | データが非表示またはぼかされる | 抽出されたデータを基に表示 |
どちらもGA4のデータに影響を与える仕組みですが、しきい値はプライバシー保護を目的に適用され、サンプリングはデータ量が多すぎる場合に処理負荷を軽減するために適用されます。この違いを理解することで、データの非表示や数値の変動が「何が原因で起きているのか」判断できるようになります。
サンプリングについては以下をチェック:
まとめ
GA4の「しきい値」は、一見するとデータ分析の正確性を妨げる制約のように思えます。しかし、その背後には、ユーザーのプライバシーを守るという重要な目的があります。適用条件を理解し、適切な回避策を講じることで、データの欠損を最小限に抑えながら、より正確な分析を行えます。
これらの対策を実践し、GA4をより効果的に活用して、精度の高いデータ分析を行っていきましょう。
