
買い物やコミュニケーションから健康管理などに至るまで、今や日常生活のあらゆる場面にスマートフォンのアプリの利用がごく当たり前となっていますよね。
一方、新しいアプリが次々にリリースされユーザーの選択肢がますます広がっている中で、どのように自社のアプリをユーザーの目に止まらせるかは大きな課題になっています。
そこで重要になるのが「アプリストア最適化(ASO)」です。本記事では、ASOがなぜ重要なのかを掘り下げながら、その具体的な施策について解説します。


目次
ASO(アプリストア最適化)とは
ASO(アプリストア最適化)とは、アプリストアページを改善することで、より多くのユーザーにアプリをみつけやすくし、インストールを促すための取り組みです。
ASOは、大きく2つの施策に分けられます。
- SEO施策
- CRO施策
SEO施策はアプリストア内の自然検索結果で自社アプリの上位表示を目指すものです。
CRO施策は「コンバージョン率(アプリインストール率)を上げる目的の施策で、アプリストアに来訪したユーザーが、よりアプリインストールしたくなるようにストア内の画像やテキストなどの要素を改善するものです。
こうしたSEO・CROの施策を両軸でまわすことで、よりインストールされるアプリとなることを目指していきます。
ASOが重要な理由
公式のアプリストアは、モールのようなものでお店の場所が分かりやすく、外観が魅力的でなければお店には入ってもらえにくく、集客が困難になります。
アプリストア内で検索した際にスマホのファーストビューに表示されるのは上位2位程度です。能動的にアプリを探しているユーザーがいるにも関わらず、ストアの最適化が不十分だと見つけてもらえず、大きな機会損失となりかねません。
さらに、せっかくアプリストアまでたどり着いたお客様にインストールしてもらうには、ストアページでアプリの良さが伝わる必要があります。
そのため、アプリストアに登録して終わりではなく、ASOに取り組むことが重要です。
ASOの構成要素
ASOに影響を及ぼす要素を、アプリストア上でデベロッパー(開発者)側が「コントロールできる要素」と「コントロール出来ない要素」で分けることができます。
コントロールできる要素には、アプリストアページに登録するアプリ名、説明文、画像などのデータが該当します。
コントロール出来ない要素には、「これまでどのくらいインストールされたか」や「評価やレビュー」「アンインストール率」などのデータが該当します。
今回の記事では直接コントロール可能な要素に対する施策をご紹介しますが、それ以外にも、そもそもユーザーにとって利便性の高いアプリ・サービスであるということもASOにおいて重要であるということです。
各アプリストアに設定できる項目について
では、実際にどんな情報を設定できるのか、ストア別に見ていきましょう。
App Store(iOS)
項目名 | 説明 |
---|---|
アプリ名 | アプリの名称。ユーザーの検索やストアページで目立つ部分。 |
アイコン | アプリのブランドを視覚的に表現する画像。ユーザーの注意を引くために魅力的で識別しやすいデザインが重要です。 |
サブタイトル | 短い説明文で、アプリの特徴や用途を簡潔に伝える部分。 |
アプリプレビュー | アプリの使い方や特徴を紹介する動画。視覚と音声でアプリの魅力を伝え、ユーザーの興味を引きます。 |
スクリーンショット | アプリの画面を示す画像。アプリの機能や操作感を視覚的に伝え、ユーザーにアプリの内容を理解してもらうためのものです。 |
プロモーション用テキスト | 説明の上部に表示される短いテキストで、一時的なキャンペーンや特別オファーを告知するために使用されます。 |
説明 | アプリの詳細ページに表示される詳細な説明文。 |
キーワード | アプリが検索されやすくなるように関連するキーワードを設定します。これにより、ユーザーが特定のキーワードで検索した際にアプリが表示されやすくなります。 |
Google Play(Android)
項目名 | 説明 |
---|---|
アプリのタイトル | アプリの名前であり、ユーザーがGoogle Playでアプリを検索する際に最初に目にする情報。 |
アイコン | アプリのブランドを視覚的に表現する画像。ユーザーの注意を引くために魅力的で識別しやすいデザインが重要です。 |
簡単な説明 | 検索結果やアプリのページ上部に表示される短い説明文。 |
詳しい説明 | アプリの詳細ページに表示される詳細な説明文。 |
プレビュー動画 | アプリの機能や使用方法を紹介するビデオ。 |
スクリーンショット | アプリの使い方や特徴を紹介する動画。視覚と音声でアプリの魅力を伝え、ユーザーの興味を引きます。 |
カテゴリ | アプリの種類や用途に応じて適切なカテゴリを選択します。これにより、ユーザーが特定のカテゴリでアプリを検索した際に見つけやすくなります。 |
※項目はアップデートにより変更される可能性があります。
各文字数制限や規定などは変更される可能性があるため、最新の規定は公式ヘルプページをご確認ください。
App Store:プロダクトページの作成 - App Store - Apple Developer
Google Play:ストアの掲載情報に関するおすすめの方法 - Play Console ヘルプ
App StoreとGoogle Playには共通する項目も多いですが、たとえば「サブタイトル」や「プロモーション用テキスト」など、それぞれのストアに特有の項目もあります。こうした違いを理解することで、各ストアに応じた最適なASO施策を実現できます。
SEO施策におけるポイント
ここでは、より多くのユーザーにアプリを見つけてもらうのに役立つ、SEO施策について説明します。
掲載順位に影響しそうな要素を知る
アプリの掲載順位を決めるランキングアルゴリズムの詳細は公開されていませんが、各アプリストアではユーザーの検索とアプリに登録されているメタデータとの関連性が、アプリの表示を左右する要素の一つになっていると考えられます。
App Storeではアプリのタイトル、キーワード、プライマリカテゴリとの一致、GooglePlayではアプリのタイトルや説明文、カテゴリなどが加味されているようです。
このように、アプリのストアページのテキスト要素にユーザーから検索された語句と関連性の高いキーワードが含まれているかどうかが重要となるので、まずは各種テキスト要素の分析と調整から始めましょう。
検索語句を分析し、各テキスト要素に追加する
タイトルや説明文などに適切な情報を追加できるように、ユーザーがアプリストア内でよく検索する語句を知ることも重要なポイントです。
例えば、以下のような方法で検索行動を把握できます。
App StoreやGoogle Playのサジェスト機能で確認する
各アプリストアの検索バーに特定のキーワードを入力すると、自動補完機能で関連するキーワード候補が表示されます。
サジェストには実際にユーザーがアプリストア内で頻繁に検索した語句が反映されているため、自社アプリに関連しそうなテーマについてヒントを発見できそうです。
Google Play Consoleで確認する
GooglePlayConsoleにアクセスできれば、自社アプリがどのような語句で検索されているかを確認できます。
確認方法は下記のとおりです:
- Google Play Consoleのダッシュボードにログイン。
- ナビゲーションメニューから「成長」 > 「ストアのパフォーマンス」> 「ストアの分析」セクションに移動。
- 「検索キーワード」テーブルで検索語句のリストを表示。
ヘルプページ:アプリのユーザー獲得データを測定、分析する
Apple Search Adsで確認する
もし、Apple Search Adsの「Search Ads Advanced」プランで広告を配信中の場合、App Store内で自社アプリがどのような語句で検索されているかを「検索語句レポート」で確認できます。
設定されているターゲティング次第で確認できる検索語句は限られているものの、こうしたインサイトからもApp Storeページのテキストの新しいアイディアを引き出せそうです。
※Googleアプリキャンペーンの場合は、現時点では検索語句を直接見ることができませんのでご注意ください。
ASO専用の有料ツールを利用する
MobileActionやAppTweakなど、ASO専用ツールを使用すると自社アプリや競合アプリに関する検索語句やボリューム、キーワード候補を見つけることができます。
基本的にこのようなツールは有料のため、ツール利用料と期待できスパフォーマンス向上の費用対効果を考えた上でご検討することを推奨します。
上記の方法で、ユーザーが検索しているキーワードを知り、関連度が高そうな情報を各アセットに登録しつつ最適化を図れます。また、検索語句は市場やトレンドの変化によって変わっていくため、定期的に検索語句の変化を観察し、各アセットの修正を行うことがおすすめです。
また、こうしたデータに加え、実際に自分で検索し、どのような結果が表示されるか確認することも大切です。ユーザーがどのように検索するかを考え、実際の検索結果を見てキーワードの有効性や競合の傾向を把握すると、より適切なキーワードが見つかるでしょう。
AppStoreでキーワード欄を活用する
AppStoreの場合はタイトルや説明文とは別に「キーワード欄」があります。
キーワード欄は、ユーザー側からは見えない項目となりますが、ここにアプリと関連性の高いキーワードを登録することでマッチングされやすくなります。
ただし、競合アプリ名やアプリと関連しない語句を入れた場合、掲載できなくなる可能性もあるので注意しましょう。また、キーワード欄に登録可能な文字数が100字までとなっているため、キーワードを慎重に選ぶのも大事なポイントです。
参考:プロダクトページの作成 - App Store - Apple Developer
より広範囲に見つけてもらえるように、敢えてタイトルや説明文に追加されておらず且つ関連性の高いキーワードをキーワード欄に追加することをおすすめします。
例えば、家計簿アプリの場合、「レシートスキャン」や「支払いリマインダー」など特定の機能や特徴に関するキーワードをキーワード欄に設定し、補足的な検索トラフィックを引き込みやすくするイメージです。
CRO施策におけるポイント
次はアプリストアに来訪したユーザーのアプリインストール率の引き上げを狙うポイントを見ていきましょう。
アプリの宣伝の場合においては広告の遷移先がアプリストアとなるケースが多いため、ストアのCRO施策に力を入れることが広告の費用対効果にもダイレクトに影響します。
ユーザーの検索意図から訴求ポイントを考える
まず重要なのが、ユーザーがどのような意図でアプリを探し、インストールしているのかを理解することです。
SEO施策の章で紹介した方法で検索キーワードの分析を行い、その意図を探りましょう。
CROの観点ではボリュームだけでなくインストール率により注目することも重要です。いくら検索数が多くとも、自社のアプリがそのニーズに応えられていなければインストールには繋がりません。もし露出が増えてもインストールに繋がらないという場合は、対策するべき方向性を見直すのをおすすめします。
ユーザーがアプリを探している意図の大枠を掴んだら、訴求の方向性をいくつかに絞り込みます。
例えば、次のようにユーザーのニーズに応じた訴求軸を作れそうです。
- 悩みや課題が明確なキーワード:その悩みや課題を解決する機能を伝える。
- 新しい体験を求めているキーワード:他のアプリでは得られない独自の特徴を打ち出す。
- コストパフォーマンスを重視しているキーワード:「無料で試せる」など価格に敏感なユーザーにアピールする。
- 安全性・信頼性を重視しているキーワード:「○○件インストール突破!」など、権威性を強調する。
こうしてユーザーの検索意図から絞り込んだ方向性を、テキストと画像や動画に落とし込みます。
では、それぞれのアセットを準備するときのポイントを見ていきましょう。
テキストに落とし込むときのポイント
テキスト要素には、上記の訴求軸を明確に伝えるメッセージが効果的で、ユーザーの具体的なニーズに焦点を当てましょう。
それぞれのテキストアセットの文字数は限られており、ユーザーはすべてを読むとは限らないので、キャッチフレーズや箇条書きなどで重要な情報を簡潔に伝えることが大事です。
アプリ名 / アプリのタイトル
アプリ名は検索結果で最も目立つテキスト要素でありつつ、アプリの名前そのものにも該当します。そのため、「どのアプリなのか」がユーザーに常にわかるように慎重にテキストを追加することをおすすめします。
テキストを付け加える場合、アプリの名前のあとに、特徴的でユーザーにとってメリットに感じやすいキーワードを付け加えると良いでしょう。ただし、文字数に制限があるため、過度に詰め込みすぎないよう注意が必要です。(App Storeで30文字、Google Playで50文字)
また、長すぎるタイトルは表示が途中で切れることもあるため、魅力を伝えつつ、読みやすさも意識すると良いでしょう。
サブタイトル(App Storeのみ)
タイトルでは伝えきれない具体的な機能やベネフィットを補足する役割があります。ユーザーの検索意図に基づいた訴求ポイントや、アプリのジャンル・メリットなどを簡潔に表現することがおすすめです。
アプリの説明文
アプリの説明文は、Google PlayとApp Storeでそれぞれ異なる仕様を理解し、適切に最適化することが重要です。
Google Playの場合
Google Playには「簡単な説明」と「詳しい説明文」の2種類が用意されています。
「簡単な説明」には全角40文字までの制限がありますが、すべてトリミングされずに表示可能なため、アプリの魅力を端的に伝えることに向いています。アプリが選ばれる理由などが明確な場合、「簡単な説明」で訴求しましょう。
一方、「詳しい説明」では4,000文字まで記載できるため、アプリの細かい特徴やメリットをユーザーに伝えることができます。
ただし、「このアプリについて」をクリックして展開しない限り、最初に表示されるのは数行のみなので、冒頭に優先度の高い訴求ポイントを配置することがユーザーの興味を引くために重要です。
また、リスト形式やセクション分けを使って、視覚的に整理された読みやすい構成を心がけましょう。
App Storeの場合
App Storeには「簡単な説明」という要素はなく、説明文全体が1つのテキストとして表示されます。
また、Google Playの「詳しい説明」と同様に最初に冒頭の3行のみが表示されるため、最初に重要な訴求ポイントをもってくる、また視覚的に整理するために箇条書きや短い段落を使うのがおすすめです。
プロモーションテキストの活用(App Storeのみ)
iOSの場合、説明文とは別にプロモーションテキストというアセットが用意されています。セールや期間限定のキャンペーンは、プロモーションテキストで告知しましょう。
説明文やサブタイトルなどと異なり、アプリの新バージョンを提出せずに更新できるため、頻繁に変更が必要なオファーに迅速に対応でき、コンバージョン率の向上のための効果的な機能です。
動画・画像に落とし込むときのポイント
アプリストアで特に目立つ要素の一つがスクリーンショット画像だと言えます。ただ、ファーストビューに表示されるのは縦型3枚分、横型1枚分なので、限られたスペースでも主要な訴求ポイントが伝わる画像を作成しましょう。
アプリの種類に応じた画像フォーマット
アプリの種類や強みによって魅力の伝え方も異なってくると言えます。その中で一つのポイントは画像のフォーマットを有効に使い分けることです。
たとえば、機能が多いフィットネスアプリの場合では、縦型3枚のスクリーンショットを使用し、それぞれの画像で主要機能にフォーカスするのが効果的なことがよくあります。こうすると、トレーニング機能、栄養管理、進捗トラッキングなどをそれぞれの画像で機能を紹介しユーザーが持つであろうニーズや課題にアピールできます。
一方、ゲームアプリの場合は、世界観やキャラクターのデザインを強調する横型1枚の画像が視覚的なインパクトを与える方を選ぶとより伝わりやすいことがあります。アプリの特性やユーザーのニーズに応じて最適な画像フォーマットは何かを検討しましょう。
キャッチコピーの活用
画像に短いキャッチコピーを加えることで、視覚的な訴求力を高めることができます。ユーザーが具体的にアプリの利点を理解しやすくなるため、効果的です。
例えば、簡潔なフレーズでアプリのユニークな機能を強調することで、ユーザーの興味を引きつけることができます。
使用シーンを具体的に見せる
アプリが実際に役立つ場面から、操作性まで具体的に示す画像や動画を活用することで、ユーザーが自分の生活にアプリを取り入れるイメージをより簡単に伝えられます。
特にスクリーンショット画像だけでは伝えきれない場合は、動画で補足することをお勧めします。例えば、フィットネスアプリであれば、実際にトレーニングを行っているシーンや、ユーザーがアプリを使っている様子を映すことで、利用シーンを具体化し、アプリの実用性をアピールできます。
このような要素がダウンロードの決め手にもなり得るので、テキストと画像(動画)でそれぞれのポイントを抑え、アプリのコンバージョン率を改善していきましょう。
ABテストの実施
また、訴求軸ごとにいくつかの画像・動画やテキストパターンを作成できたら、効果の検証もCROを考える上での重要なポイントになります。
GooglePlay、AppStoreともにストアのアセットをABテストできる機能がありますので、最も訴求力の高い組み合わせを見つけるために、活用していきましょう。
GooglePlay:ストア掲載情報のテスト機能 | Google Play Console
App Store:プロダクトページの最適化 - App Store - Apple Developer
変化にあわせて継続的な取り組みが大切
ASO(アプリストア最適化)は、単なる技術的な施策ではなく、ユーザーにアプリの魅力をしっかりと伝えるための重要なステップです。SEOとCROの両方の観点から継続的に改善を続けることで、アプリをより多くの人に発見してもらいインストール率を向上させることが見込めます。
また、アルゴリズムもトレンドキーワードも常に変化していきますので、定期的なメンテナンスや効果測定を怠らないことも成功の鍵となるでしょう。変化に合わせた継続的な取り組みが不可欠であり、この姿勢が競合の激しい市場での成功を左右します。常に新しいトレンドをキャッチし、アプローチを見直すことが大切です。
ストア別の仕様をもとにキーワードの試行錯誤をしていくことはもちろん、ストアページの勝ちパターンをみつけることで、SEO施策とCRO施策が相互作用を生み出し強いストアページにしていきましょう。
