食品のおいしさを伝える「シズル感」とは?バナーデザインでのポイントや表現方法を事例付きで紹介

食品のおいしさを伝える「シズル感」とは?バナーデザインでのポイントや表現方法を事例付きで紹介

料理、デザート、生鮮品、飲料などの食品は、「味」が購買決定の大きな要因になります。一方で直接味わえず、視覚に訴える静止画バナーにおいては「いかに五感にアプローチし、その食品を目の前にしたときの臨場感を伝えられるか」が大切です。

しかし、いざ食品の広告バナーを作ってみるとこんな悩みも少なくありません。

「なんだかおいしそうに見えない」
「商材の魅力をうまく伝え切れていない気がする」
「思うようなデザインが浮かばず、どう食品を引き立てたらいいのかわからない」

その原因は「シズル感」の不足かもしれません。今回は、食品のおいしさを伝える「シズル感」の表現方法やバナーデザインでのポイントを、事例付きでご紹介します。


「シズル感」とは?

「シズル感」とは、主に食欲を刺激するような視覚的・聴覚的な演出のことを指します。例えば、ジュワっと音を立てるステーキや、湯気の立つラーメンなど、実際にその食品を目の前にしたときの臨場感を伝える手法です。ちなみに語源は、英語の「sizzle(揚げ物などがジュージューいう)」で、そこからシズル感というようになりました。

このシズル感は料理やデザート、生鮮品、飲料など、あらゆる食品に適用可能です。食品の特徴に合わせて瑞々しさを伝えたり温度を伝えたり、盛り付け全体を見せるのかアップにするのか……シズル感を出すためのテクニックは多岐にわたります。

シズル感の表現方法

食品の見せ方や動きの出し方、温度感や質感を表現する具体的手法について事例を交えて解説していきます。商材ごとにどの表現が適しているかも合わせて紹介しますね。

断面・中身を見せる

断面を見せることで、安心感や期待感が高まり、「おいしそう!」という感覚が一層強まります。

この演出は、パンやケーキ、ハンバーグ、野菜や果物など、断面に特徴があり、層や具材に質感のある食品に特に向いています。食品の外観だけでなく、中身の魅力をどう引き出すかを意識することが大切です。

ズームアップする

食品をズームアップすることで、細部の質感を強調できます。

食品を小さめに配置すると全体像は分かりますが、代わりにシズル感が失われてしまいます。

食品全体や味のバリエーション、パッケージを見せたいときは左のバナーのように小さく配置し、その商品の「おいしさ」を伝えたい時は右のバナーのようにズームアップすると良いでしょう。

“箸上げ”や“フォーク上げ”も有効です。箸上げ、フォーク上げとは、実際に箸やフォークで料理を持ち上げる演出のことを言います。ユーザーに食品の細部を見せることができるうえに、実際に食べるときのイメージを湧かせることもできます。

表面のつやテカリ、みずみずしさを強調する

肉料理や揚げ物、デザートといった食品に共通する特性として、その表面のつややテカリがあります。

特にステーキや揚げ物の照り輝く表面は、ジューシーさを表現しています。見る人々の口の中に広がる香ばしさや、食べたときの満足感をビジュアルとして想像させ、食欲を刺激します。

一方でデザート類においては、例えばチョコレートのツヤ感やプリンのカラメルの艶が、そのデザートの口溶けや甘さを表現しています。デザートのなめらかなテクスチャーを見るだけで口に広がる甘さを想像してもらえます。

液体を注ぐ

飲料など液体をそそぐシーンを見せると、飲む前のワクワクした気持ちや、トポトポと注がれる音をイメージしてもらえます。

飲料などの商品はパッケージの状態とは別に、注ぐシーンを背景に合わせてデザインすると、よりユーザーが商品をイメージしやすくなります。

飛びちらせる、浮かせるなどの動きをつける

食品が宙に浮いたり飛び出したりする演出を加えると、躍動感が出てインパクトが強まります。

注目してほしい食品、インパクトを出したい食品などには最適です。飲料では、液体を商品の周囲に飛ばせることで、スタイリッシュな印象を与えられます。

肉汁、チーズ、はちみつなどが滴る様子を見せる

ハンバーグをナイフで切り分けたとき、肉汁がジュワッと滴り落ちる様子を目にするだけで、その味わいや食感を想像できますよね。旨味がつまった肉汁や、チーズ、はちみつが滴る様子は、まるで自分がその場にいるかのような臨場感を視覚から感じさせることができます。

バナーでは少しおおげさに感じるほど滴る様子にフォーカスするとシズル感が高まります。

今まさに滴り落ちそうなチーズを指ですくい取り、口に含むと濃厚なチーズの味が口に広がる……そんな瞬間を想像してしまいませんか?

冷たいもの:水滴をつける

飲料などの商材でオススメな表現が、グラスや缶に水滴をつけることです。水滴をつけると、新鮮さや冷たさを表現できます。

例えば、グラスに付いた水滴を見ると、その飲み物がキンキンに冷えているという印象を受けます。ぬるい飲み物よりも、冷たい飲み物のほうがおいしいというのは自身の経験でも分かりますよね。

また、野菜や果物に水滴をつけると新鮮さや瑞々しさの演出になります。いかにも採りたて、洗い立ての雰囲気を感じますよね。

鮮度が重要な野菜の宅配サービスや、ネットスーパーなどのサービスでは新鮮さを意識してクリエイティブを制作しましょう。

温かいもの:湯気を追加する

温かい食品に湯気を加えることで、できたてアツアツ感を演出できます。湯気があるのとないのとでは、温かさの感じ方にかなりの違いを感じませんか?

湯気は素材があればCanvaやPhotoshopで後から合成することもできます。

<Canvaで使える湯気の素材一覧>

商品とは別に使用している食材を見せる

背景に食品の素材を敷いて、素材のイメージを先行させる手法です。

アイス、ジャム、飲料などペースト状になっていて本来の食材がわかりづらい場合に利用してみましょう。素材の味がイメージできて、なんだかおいしそうに感じませんか?

ただし、果実を使用した飲料のデザインでは、商品の果汁の割合によって使用できる画像やイラストが公正競争規約(景品表示法第31条に基づく協定又は規約)で決められています。

野菜や果物などの断面を映した「スライス」や果実から「果汁のしずく」が落ちている画像やイラストは、果汁100%のみ使用可能なので注意しましょう。果汁が5%未満の場合は写真はもちろん、リアルなイラストの使用もできません。使用できるのは簡略化した平坦なデザインのイラストのみになります。

オノマトペをつける

実は、シズル感はコピーでも表現できます。その一つがオノマトペです。

オノマトペとは、音や動作を文字で表した言葉のことです。例えば、「サクサク」「もちもち」「パリパリ」などが挙げられます。オノマトペを活用すると文字で味覚を刺激することができます。

また、動画では実際に出すことができない音もオノマトペなら表現が可能です。例えば、どらやきを指で押した時は「ふかふか」という音が聞こえて来そうですが、実際には「ふかふか」という音を動画で録ることは難しいですよね。静止画で「ふかふか」というオノマトペをつけると、実際にふかふかしているどらやきをイメージできます。オノマトペは実際に聞くことができない音をユーザーにイメージしてもらえるのです。

また、文字を遊ばせると味覚を刺激するオノマトペをさらに直感的にイメージさせることができます。

こちらのバナーはテキストにドットのテクスチャを載せることで炭酸の泡をイメージさせ、炭酸飲料のシュワシュワ感をさらに伝えられています。

シズル感がワンランク上がるレタッチの知識

撮影した写真をそのまま使用すると、思ったより暗く、くすんだ印象になってしまうことがあります。せっかくデザインが凝っていても、写真自体がおいしそうでなければ広告としてとてももったいないですよね。おいしそうな写真の効果は絶大です。シズル感を最大限引き出すためにも、レタッチをしていきましょう。

レタッチで意識するポイント

まず、シズル感を出すためにレタッチで意識するポイントは

  • 明るさ
  • コントラスト
  • 色温度

です。

明るさ

まずは、全体的に明るくします。

撮影した写真はそのままだと暗く見えることが多く、食品の魅力が十分に伝わらない場合があります。適切な明るさに調整することでより食品を見やすく、引き立てることができます。

明るさだけでなく影とのバランスも大切です。明るくしすぎてしまうと影が飛んでしまい、食品の質感が失われてしまいます。

とくに、お米やうどんなど白いものが映り込む時は注意が必要です。明るくしたい食品に合わせて全体をレタッチすると、白い食品は色が飛んでしまいます。白い食品にはマスクをかけるなどして色が飛ばないように気をつけましょう。

コントラスト

次に、コントラストをつけてメリハリを意識しましょう。

パンなど質感のある食品はコントラストをつけてディテールを強調するとシズル感が増します。

食器などの色を落として食品にフォーカスさせると色が締まってメリハリがつくのでオススメです。

彩度(色温度)

食品の色が沈んでいるより、ある程度鮮やかな色の方が食欲をそそられます。なので彩度(色温度)は高く設定しましょう。

しかし、野菜などの緑色は調整すると青々しく新鮮な印象にすることができますが転びやすい色であるため注意が必要です。彩度だけでなく色相も調整して理想の色に近づけましょう。

それでは、以上のことを踏まえ例題としてこちらの画像をレタッチしていきたいと思います。

Canvaでレタッチをしてみよう

広告バナーの制作ツールとしてよく使われるものとしてAdobe Photoshopがありますが、今回は初心者の方でも簡単に使え、導入のハードルも低い無料ツール「Canva」を使用していきます。

<Canvaでレタッチをする場合>

①素材をクリックして[画像を編集]
②左側サイドバーの中央のタブから[調整]
③各項目の目盛りを動かして調整する

今回は以下のように調整しました。

▼調整後

少し沈んだ印象の色合いが、明るく温かみを増してさらにおいしそうに見えるようになりました。

さらにクオリティを高くしたい場合は、Photoshopでレタッチをしてみましょう。

<Photoshopでレタッチをする場合>

Photoshopでレタッチする場合、以下の操作をするとシズル感を高めることができます。

  • トーンカーブを調整する
  • シャドウ・ハイライトを調整する
  • 彩度を調整する

トーンカーブ

まずは、トーンカーブを調整しましょう。

「トーンカーブ」とは、写真や画像の明るさやコントラスト、色調までを調節できる機能のことです。

Adobe Photoshopでトーンカーブの補正を適用するには、以下のいずれかの操作を行います。

  • 色調補正パネルでトーンカーブアイコン をクリックする。
  • レイヤー/新規調整レイヤー/トーンカーブを選択します。新規レイヤーダイアログボックスで「OK」をクリックする。

注意: イメージ/色調補正/トーンカーブを選択して、画像レイヤーに調整を直接適用した場合は、画像情報が破棄されることに注意してください。(Adobe公式より引用)

S字カーブを描くと「暗い部分はより暗く」、「明るい部分はより明るく」なるため、明暗差の大きい・コントラストの高い写真になります。

シャドウ・ハイライト

次に、シャドウ・ハイライトを調整しましょう。

シャドウ・ハイライトとは画像の影の部分を明るくしたり、明るい部分を落ち着かせたり、陰影部分の光量を補正する機能です。

  1. イメージ/色調補正/シャドウ・ハイライトを選択する。
  2. 調整を加えながら画像を更新したい場合は、ダイアログボックス内で「プレビュー」オプションを選択する。

量スライダーを移動するか、シャドウとハイライトのパーセント値のボックスに値を入力して、光の補正を行う量を調整します。大きい値を使用するとシャドウがより明るくなり、ハイライトがより暗くなります。画像内のシャドウとハイライトの両方に調整を加えることができます。(Adobe公式より引用)

彩度

最後に、彩度を調整します。彩度とは写真の色の鮮やかさや度合いのことです。

今回は自然な仕上がりになるように「自然な彩度」を調整していきます。

  • メニューバーで、レイヤー/新規調整レイヤー/自然な彩度を選択する。新規レイヤーダイアログボックスで自然な彩度の調整レイヤーの名前を入力し、「OK」をクリックする。
  • 色調補正パネルで、自然な彩度アイコンをクリックする。
    (Adobe公式より引用)

「自然な彩度」はあまり難しく考えなくてもいい具合に彩度を上げてくれるので使いやすい機能ですが、注意してほしい点があります。

「自然な彩度」の特徴として、もともと彩度が高い色にはあまり作用しません。ただし、青色には強く作用します。その理由は青色は空や海など自然界で大きな面積を占めるものが多く、かつ彩度がそこまで高くないからです。それ故、「自然な彩度」に頼りすぎてしまうと青色が強く出すぎて違和感が出てしまう場合があるので、被写体の色合いに注意しながら作業を進めましょう。

バナー広告で食品を際立たせる2つのポイント

最後に、どんな食品のバナーでも共通しているデザインのポイントを2つ紹介します。

背景はシンプルに

主役である食品を目立たせるには、背景にも気を遣う必要があります。柄物の背景画像や、オブジェクトがたくさんあるような背景画像は食品があまり目立たなくなってしまいます。食品を目立たせるために背景はシンプルなものを使いましょう。

背景のオブジェクトが削除できない場合は、背景をぼやかすことでメインの食品を目立たせることもできます。

背景色は食品が目立つ色に

例えば、茶色っぽい食品の背景に茶色の背景を敷くと、食品と背景が同化してしまい食品が目立たなくなってしまいます。

改善策として、背景色は食品と反対色に近い色を選ぶと食品が目立ちやすくなります。

シズル感を表現して、ユーザーがクリックしたくなる広告を作ろう

食品のデザインに慣れてないと、いきなりシズル感を出そうとしても難しいと感じてしまいますよね。

ですが、以下のことを理解、意識してアウトプットすることでシズル感を出せるようになります。

  1. 素材感を伝える:食品の断面を見せること、ズームアップすることなどによって、素材感を直感的に伝えることができる。
  2. 躍動感、臨場感を出す:液体を注いだり、商品に動きをつけることで躍動感、臨場感が増して食べる瞬間の期待をふくらませることができる。
  3. 味や食感をイメージさせる:料理とは別に使用している食材を見せる、オノマトペをつけることで商品をただ見るよりも味や食感をイメージできる。
  4. 具体的なテクニック:画像のレタッチをする。商品を目立たせるデザインを意識する。

ぜひこの記事を参考にして、よりユーザーの食欲を刺激する、シズル感のある広告を制作してみてくださいね。

関連記事

縦型動画広告で成果が出ないときに確認したい5つのこと
縦型動画広告で成果が出ないときに確認したい5つのこと
続きを見る