
「クライアントのために依頼されたことは全部やる」
社会人であれば誰でも似たような経験があると思います。
一見誠実に見えるこの対応、実はクライアントとの信頼を築いていく上でマイナスとなる場合もあることをご存じでしょうか。
広告運用の現場でも、販促キャンペーン終了日時に合わせた調整を依頼されることがよくあります。業務時間外の「23:59の広告停止対応」を経験して思ったのは、受け身で身を粉にして頑張りすぎても、クライアントのためにならないという事実です。
本当に信頼を積み重ねるには、その時々の状況を加味した上でのベストな選択をすることが重要で、そのための“主体性ある広告運用”が欠かせません。
この記事では主体性を持った上でクライアントを支援していくことの重要性について、様々な視点からお伝えしていきます。


1. 受け身で頑張ったときに起きたこと
23:59広告停止という“あるある”対応。
販促キャンペーンの終了が23:59で、それに合わせて広告停止してほしいと、クライアントから依頼をもらうケースは広告運用においてはよくあることです。
自動化ルールなど便利な機能がありますが、場合によっては自動で対応できないこともしばしば。そのため業務時間外に深夜対応するケースもありました。
なぜそこまで頑張るかというと、クライアントの要望に全力で応えたいからという素直な気持ちでした。良かれと思った対応が、想定外の結果を生み出すとは思いませんでした。
深夜対応はヒューマンエラーを招き、翌日のパフォーマンスも落とす。
1日の疲労をしっかり蓄積した状態での深夜対応、確率的にヒューマンエラーも起こりやすくなってしまいます。深夜なので頼れる人もおらず、想定外の事態に陥っても自分1人で解決しなければならない孤独の戦いになるのも危険なポイント。さらに寝不足によるパフォーマンス低下も恐ろしいポイントです。
「その人しかできない」属人化対応になり、組織的には不安定。
特に業務時間外対応は対応できるメンバーが決まってしまいます。そのため会社としても業務時間外の業務を強制することは事実上難しくなります。結果的にクライアントのためを思った特別対応は、再現性のない対応となってしまう場合があります。
結果:短期的には「ありがとう」と言われても、長期的には信頼が積み上がらない。
依頼通りに対応するとクライアントには「遅い時間にありがとうございます」と感謝の言葉をいただくことはできます。ですが中長期的にサポートし続けることが難しい属人的な支援は、再現性がないと結果的にクライアントの信頼を失う可能性があります。
また、ヒューマンエラーが起きやすい深夜対応はリスクが高く、仮にミスをした場合クライアントに大きなご迷惑をおかけしてこちらでも信頼を失う可能性があります。
このことからクライアントのためになればと思っていた受け身の行動が、実は総合的にみるとクライアントのためになっていない事実に気付きました。
2. 受け身と主体性の違い
では受け身と主体性は何が違うのでしょうか。
「受け身」は相手の意思をそのまま受け取り、「主体性」は自分で判断すること
「受け身」は相手の要望をそのまま受け取り、実行していく様を指します。
一方で「主体性」は指示をそのまま受け取るのではなく、相手のことを第一に考えた上でその時に最善な選択をしていくことを指します。
広告運用の現場ではクライアントと代理店という関係性である以上、クライアントの指示に従わなければ!と思ってしまう場面もあります。ですが、広告のプロとして専門性を踏まえて考えると、クライアントの指示をより良い選択にアップデートすることが主体性を持った上での支援と考えています。
主体性がなければ、クライアントとの信頼構築の機会を失う
主体性がなければ一方通行のやりとりとなってしまい、クライアントとパートナーとしてかかわっていく中で更に生まれる戦略や施策のイノベーションも生まれません。そのようなパートナーとして意見を交わすことができる代理店こそ、クライアントの信頼を得て最終的にチームとしてより大きな目標を達成できると考えています。
3. 主体性ある広告運用のポイント
それでは主体性のある広告運用とは具体的にどのようなものでしょうか。
実例を交えてご紹介していきます。
パートナーという感覚を持ち、クライアントと共にゴールに向かう。
クライアントではあるものの、一緒に仕事をしていくパートナーという感覚を持ち合わせていくことが重要です。
クライアントのアイデアに意見することは最初は怖いかもしれませんが、主体性を軸に考えると良いアクションと言えると思います。より良い成果を出すという共通のゴールが明確になっていれば、主体的に意見することはむしろクライアントも快く受け入れてくれると思います。
安全性を優先する:人ではなく仕組みに任せる
業務時間外の広告停止については、クライアントと相談して営業時間内の停止に切り替えるという方法もありますが、各媒体の自動化ルール機能を利用することをおすすめします。
広告やキャンペーンの停止を日時指定で自動で行ってくれるので、ルールがあっていれば確実で非常に便利な機能です。
また、販促終了時に広告停止ではなく広告の内容を書き換えるといったことが必要な場合は、一時停止して翌日広告を書き換えることがより安全性が高くおすすめです。夜間の広告編集は多くのリスクを伴うので、業務時間内に編集する方が安全性が高いと言えます。
再現性を持たせる:誰でも同じ対応ができる体制に。
1社のクライアントを特定のメンバーが継続して担当し続けることは、代理店においては少ないことの方が多いです。新しい風を取り入れたほうがより高い効果をクライアントにお戻しできるケースがあるため、離職や移動以外にも担当者を入れ替えるケースは多々あるかと思います。
そんな中で誰が担当しても同じ対応ができる体制にすることは、クライアントへ高いパフォーマンスの支援を維持していく上でも非常に重要なポイントとなります。
具体的には深夜対応やレポートの自動化が該当しますが、タスクが増えてきた際はメンバーを拡充したりと適切な配置を考えることも大切です。
4. 主体性が信頼につながる理由
ではなぜ、主体性のある行動が信頼につながるのでしょうか。
主体性があると「その時の選択」を自分の言葉で説明できる。
受け身だと相手の意思を受け入れるため、なぜその方法に至ったのか全てを説明することが難しい場面もあるでしょう。ですが主体性があれば、自分で考え自分の意思で判断しているのでなぜその方法がいいのかを説明することができます。その中でクライアントが効果を出すために考えたことや配慮したことまで伝えられると、信頼を築いていくきっかけになると思います。
信頼は「便利だから」ではなく、「相談したい」から生まれる。
信頼できる相手になら、困っていることを相談したいって思いますよね。なぜならその人に相談したらより良い答えや結果にたどり着ける可能性が高いと、これまでのコミュニケーションから想定できるからです。
受け身を繰り返した末の便利で都合の良い関係は、便利屋止まりになってしまい「信頼できる相手」に移行することは非常に難しいと言えます。
信頼のおける相談したい相手になるには、普段のコミュニケーションの中で困ったことを一緒に解決してきた経験や、成果を残した提案があったなど信頼の種となる経験が必要になります。信頼の種は小さな成功体験からでOKです。一つ一つ着実に日々のコミュニケーションの中で積み重ねていくことが、最終的に強固な信頼に繋がります。
5. 便利屋ではなくパートナーになろう
クライアントとの関係において信頼の構築は重要なポイントです。結果を出せていたとしても、信頼のおける相手でなければその関係は長く続きません。受け身で頑張れば“便利な人”にはなれますが、信頼できる相手には移行は難しいでしょう。
日々の支援の中で愚直にクライアントと向き合い続け、「主体性のある広告運用」「主体性のあるコミュニケーション」を続けていくことで、信頼の種が蓄積されやがて強固な信頼関係に繋がります。
まずは日々のコミュニケーションの中から、受け身になってしまっている部分がないか、主体性を持ってみるとより良くできることがないか探すことから始めてみてください。
