「説得より納得」相手と一緒に意思決定するミーティングの進め方

「説得より納得」相手と一緒に意思決定するミーティングの進め方

皆さんはミーティングで、相手と意見が一致しないケースに遭遇したことはありませんか?

クライアントとの商談だけでなく、社内の企画会議やチーム内の方針決めなど、「こちらが良いと思っている提案を受け入れてもらいたいのに、なかなか同意を得られない」という場面はよくあることだと思います。

そういった際に大切なのは、どちらかが折れることではなく、双方が納得感をもったうえで前に進める意思決定ができるかどうかです。

今回は、相手に無理に同意を求めるのではなく、お互いが納得できる意思決定に進める方法をお伝えします。

以下では、私が以前、事業者向けに営業スペースを仲介するプラットフォーム企業で新規顧客の導入支援を担当していた時の実体験を例にお話しさせていただきます。

そのサービスでは、事業者が希望する条件(場所・時間帯など)で「枠」に応募し、利用実績の多い事業者から優先的にマッチングされる仕組みでした。新規事業者は実績がないため、すぐには人気の枠を案内できません。限られた選択肢の中で納得感のある提案をする必要があり、私は新規事業者専任の窓口として、この役割を一人で担当していました。


納得感のない合意が生みやすい問題

納得感のない合意が生み出す問題として、その場ではOKをもらったものの、あとから相手が不安になり、計画が途中で変更になったり、最悪の場合は中止になってしまうケースが考えられます。

相手に都合のよい情報だけを伝えてその場を取り持っても、計画を実行する段階になって認識のズレが表面化しがちです。「これは聞いていなかった」「想定とは違う」といった事態が起き、せっかく意思決定をしても計画がうまく先に進まなくなってしまいます。

これは特定の立場の問題というよりは、意思決定プロセスそのものに課題がある可能性を示唆しています。

納得感のある意思決定の前提スタンス

ミーティングで相手と違う意見になったとき、相手を説得しようと思ってしまう方もいるかもしれません。しかし、ミーティングのゴールは相手を説得することではないのです。

最終的に判断をするのはあくまでも相手ですので、相手の意思や意向を尊重することを前提としましょう。不都合な情報も隠さず正直にお話しすることで、計画の実行段階でうまくいかなくなるリスクを未然に防げます。決断を無理に急がせないことも大切なポイントです。

大切なのは「説得して同意をもらう」ことではなく、「一緒に考えて、一緒に決める」というスタンスにほかなりません。

判断しやすい状態を作るための4つの工夫

では、相手と一緒に納得感のある意思決定をするためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。ここからは、相手が判断しやすい状態を作るための4つの工夫をお伝えします。

工夫概要期待できる効果
①期限と数字で未来像を具体化「いつまでに」「どのくらい」を数値で示す不確実性への不安を軽減できる
②相手の状況・価値観に合わせる事前リサーチで提案をカスタマイズ「自分のことを考えてくれている」と感じてもらえる
③ネガティブ情報を先に伝える条件やリスクを最初に共有信頼関係の構築、後からのトラブル防止
④話し方・流れをマニュアル化経験をドキュメント化して再現性を高める安定した提案品質を維持できる

①期限と数字で「未来像」を具体化する

相手の希望通りの提案ができるとき、ミーティングはおそらくスムーズに進むでしょう。しかし、時として、相手の希望通りの提案ではなく別の提案がベストな場合や、希望通りの提案が物理的に難しい場面も存在します。

そんなときは、自分がした提案によってどんな未来になるかを、具体的な期限や数値を用いて示すと効果的です。数値で可視化することで納得感が向上し、意思決定のスピードも上がります。

実例

私が担当していた業務では、新規事業者の多くが実績のある人気の枠を希望されました。しかし、新規事業者にはすぐに人気の枠を案内できないルールがあり、こちらから提案できるのは平均的な実績の枠が中心です。そのため、「それって本当に成果が出るの?」とよく聞かれました。

解決策:具体的な期限と数字を伝える

「利用実績を積めば選考で有利になる」という仕組みを活かして、次のように提案しました。

  1. 実績は半年単位で評価されるため、まずは「半年後に希望の枠で利用すること」を目標に設定
  2. 「半年後に希望の枠を利用するには、どのくらいの実績が必要か」を一緒に計算
  3. それを達成するには「毎月どのくらい利用すればいいか」をマイルストーンとして設定

このように期限と数字を用いることで、不確実な未来に向かっていく相手の不安を取り除けます。「今すぐは難しいけれど、こうすれば届く」という道筋を一緒に描くことで、納得感をもって次のステップに進んでいただけました。

②相手の状況・価値観に合わせて情報を整理する

相手がどんな特徴や背景をもっているかによって、適した話し方や最適な提案は変わってくるはずです。相手のタイプごとに事前リサーチやシミュレーションをして、資料や話し方を変えることで、少ない候補提案でも納得感の高い合意を実現できます。

実例

担当する事業者ごとに、基本的な条件によって適している枠は異なります(商材・拠点からの距離・対応可能な規模など)。こういった条件面のほかにも、「売上を最優先したい」「移動の負担を減らしたい」など、個々人の価値観もさまざまでした。

解決策

まず、基本的な条件で提案する枠をおおまかに絞りました。

  • 相手は初めてサービスを利用する方か、経験豊富な方か
  • 提供している商材は何か
  • 重視しているのは売上か、移動距離か

また、提案する際には相手に合わせた話し方を意識しました。たとえば、初めての方にはサービスの基本的な仕組みから丁寧に説明し、経験豊富な方には要点を端的にお伝えするようにしています。

その他にも、相手の特性や状況を踏まえて提案をカスタマイズしていました。

  • 「平均的な実績の枠ですが、○○系の商材と相性が良い傾向があるのでおすすめです」
  • 「売上を少しでも上げたいとのことでしたが、午前の稼働後に近距離で移動できるこの枠で午後も稼働されてはいかがですか?」

相手の状況や価値観を理解したうえで提案することで、一見、最初に言われた条件とは違う提案をしたとしても、「自分のことを考えてくれている」と感じてもらえます。結果として、少ない候補でも「それなら試してみよう」と納得していただけることが増えました。

③ネガティブな情報ほど、先に正直に伝える

相手にとってネガティブな情報があった際、皆さんはきちんとお伝えしていますか?

時には相手にとって都合のよくない情報もお伝えしなければならないことがありますよね。そういった際は、相手の反応が心配な部分もありますが、先に正直にお伝えしましょう。

実例

新規事業者の場合、ルールとしてあまり実績が上がっていない枠からしかご案内できないときがありました。

解決策

その際に「ここなら成果が出ますよ」と言うのではなく、正直に「あまり大きな成果が出にくい枠かもしれないので、将来のために実績を積む目的で利用する枠です」とお伝えしました。

仮に「成果が出る」と言って利用していただいても、実際に成果が出なかった場合には早期解約につながりかねません。事実より良く伝えることは、相手にとっても会社にとってもデメリットです。

ネガティブな情報を正直に伝えることは、一見マイナスに思えるかもしれません。しかし、条件やリスクを最初の段階で共有しておくことで、「聞いていなかった」というトラブルを防ぎ、むしろ信頼関係を築けます。相手も情報を把握したうえで判断できるので、納得感のある意思決定につながるのです。

④話し方や流れをその場任せにしない

ミーティングは、相手の出方によってどのようにこちら側の対応を取っていくか、というのが慣れるまでは難しい部分があると思います。私も実は営業の経験がない状態で入社したので、最初は苦戦しました。しかも、まったく同じ立場で業務に携わる社員の方がいなかったため、似た業務をしている社員の方からレクチャーを受けて、それを実際の業務で数をこなす中で慣れていくしかありませんでした。

その中で、日々ミーティングの質を上げるために行っていたのが、ミーティングの流れをマニュアル化することです。経験を都度ドキュメント化することで、一人でも良い提案の再現性を高めたり、提案の改善につなげたりできます。

実例

自分とまったく同じ立場で仕事をする人がいない状況でした。

解決策

その業務の経験がある先輩にミーティングに10回ほど同席してもらい、その時の体験を参考に、一人でもミーティングができるようマニュアルを作りました。

今まで対応したことのないケースを経験したら、そこでの学びをマニュアルにその都度溜めていきました。できたマニュアルを先輩社員の方に見ていただき、フィードバックをもとに、より実態に即した使えるマニュアルへとブラッシュアップしていきます。

たとえ参照できるものが元からなかったとしても、自分で何かしらドキュメントを作る。そして、最低限のミーティングの土台を頭に入れて実行していく中で、さまざまなケースが来たときに新たな知見を溜めていく。そうすることで、うまく立ち回れることが増えていきます。

納得感のある意思決定がもたらす変化

お互いに納得感のある意思決定ができると、実行の段階がスムーズになります。

しっかりと議論をして納得感のある意思決定ができていれば、修正や相談もしやすくなり、より相手の意向を反映した計画を実行できるはずです。

また、「一緒に決めた」という感覚が残りやすく、相手の不満やストレスもほとんどない状態で計画を進められます。説得して無理に同意を得た場合とは、その後の関係性や進めやすさが大きく変わってくるのではないでしょうか。

観点納得感のない合意納得感のある合意
実行段階認識のズレが表面化しやすい修正・相談がしやすい
関係性不満やストレスが残りやすい「一緒に決めた」感覚が残る
継続性計画変更・中止のリスクがある前向きに取り組める

まとめ

ミーティングにおいて、相手から提案の同意を得ることはゴールではありません。

本当に大切なのは、相手が自分の判断として「この道で進もう」と思ってもらえることです。そのために、期限と数字で未来を具体化して情報を整理したり、正直に情報を共有し続けたりすることが欠かせません。

あくまで、この意思決定が相手のためになっているか、相手にとってベストな選択になっているかを意識しながら、「説得より納得」でミーティングを進めていきましょう。

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