「求人の質がすべて」で終わらせない。アグリゲーション媒体で成果を出すための運用アプローチ

「求人の質がすべて」で終わらせない。アグリゲーション媒体で成果を出すための運用アプローチ

「アグリゲーション媒体(求人検索サイト)は、結局『求人の質』がすべて。運用型広告として手出しできるレバーが少なすぎる……」

人材業界のWebマーケティングに携わる方なら、一度はこう感じたことがあるのではないでしょうか。

私自身、インハウスの運用担当者として、また現在は広告代理店の担当者として、長らくIndeedや求人ボックス、スタンバイの運用に携わってきました。正直、インハウス時代は「CPAを下げろと言うなら、いい求人を集めてほしい」と荒んでいた時期もあります。

しかし、本当に「できることは限られている」のでしょうか?

今回は、実際の運用経験をもとに、成果につながった打ち手を共有します。

なお、Indeedはスポンサー求人の配信ロジックや管理画面の構造が求人ボックス・スタンバイとは大きく異なるため、本記事では求人ボックス・スタンバイに絞って解説します。


アグリゲーション媒体とは?

アグリゲーション媒体とは、インターネット上に存在する膨大な求人情報を収集・整理し、一つのプラットフォームにまとめて提供するWebサービスのことを指します。人材業界ではIndeed、求人ボックス、スタンバイなどの「求人検索サイト」がアグリゲーション媒体にあたります。

求人の掲載にはXMLフィードと呼ばれるデータ連携の仕組みが使われており、人材会社が求人情報をXML形式で提供することで、アグリゲーション媒体上に自動的に反映されます。課金モデルはクリック課金(CPC)型が基本で、求職者が求人をクリックするたびに費用が発生する構造です。

この媒体のユニークな点は、そのビジネス構造にあります。

通常、求人サイト同士はユーザーを奪い合う競合関係にあります。しかし、多くのアグリゲーション媒体は、自社で求人を抱えるだけでなく、他社の求人サイトや企業の採用ページからも情報を集約します。結果として、「自社で集客したい人材会社が、競合にあたるはずのアグリゲーション媒体にお金を払って集客を依頼する」という、独特の共生関係(あるいは依存関係)が生まれています。

広告運用者としては、この「仕組み」を理解した上で、いかに効率よく自社にユーザーを流すかが鍵となります。

人材業界におけるアグリゲーション媒体の立ち位置

人材業界の集客ポートフォリオにおいて、アグリゲーション媒体は極めて大きなシェアを占めます。その理由は、リスティング広告やSNS広告といった「運用型広告」と比較した際の、ユーザー行動の違いにあります。

比較項目アグリゲーション媒体運用型広告(リスティング・SNS等)
主な媒体Indeed、求人ボックス、 スタンバイGoogle、 Yahoo!、 Meta
ユーザー行動「求人」そのものを探して応募するサービスの特徴を理解して登録する
広告の遷移先求人詳細ページWebサイトTOPや広告LPなど
CVR(応募率)応募までの工程が短い構造のため、高くなりやすいステップが多いため、相対的に低い
複数応募率低い傾向(1求人への応募で完結しやすい)高い傾向(サービスに登録し複数応募する)

アグリゲーション媒体は、ユーザーが「仕事探し」という明確な目的を持って検索していることに加え、広告の遷移先が「求人詳細ページ」であることが最大の特徴です。

サービスの特徴を説明する一階層上のLPを介さず、ユーザーが求めている「商品(求人)」に直接着地するため、応募までのプロセスが最短化されます。結果として離脱が抑えられ、高い獲得効率を実現しやすい構造になっています。

ただし、サービス全体への理解を深めるステップを飛ばすため、1人あたりの応募数は少なめになる傾向があります。近年では「Indeedエントリー」のように、媒体内で応募が完結し、さらに応募までの距離を縮める仕組みも普及しています。

こうした高い集客効率があるため、アグリゲーション媒体は人材業界の広告ポートフォリオで大きなシェアを占めます。

ただ、積極的に依存度を高めたいと考えている人材会社は多くありません。本来は競合関係にあるサービスへの広告費は抑えたい、自社で集客を完結させたいというのが本音です。

IndeedエントリーやSNS採用の台頭など環境が変化する中で、「依存度は下げたいが、CPAの面で頼らざるを得ない」というのが多くの担当者が抱えるジレンマではないでしょうか。

また近年では、採用企業がATSを通じてIndeedへ直接出稿するケースも増えており、人材会社が広告費を払って集客する従来のモデル自体にも変化が生じています。こうした環境変化が進む中で、限られた予算でアグリゲーション媒体の効率を最大化することの重要性は、以前にも増して高まっています。

※Indeedエントリーの仕組みやメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

「運用でできることが少ない」と言われる理由

Google広告やSNS広告であれば、詳細なオーディエンスターゲティングや膨大なアセットを組み合わせたクリエイティブ最適化が可能です。

対してアグリゲーション媒体の検索結果は、極めてシンプルです。

ユーザーの目に触れる情報の大部分は「求人原稿」そのものであり、運用担当者が管理画面上で調整できるのは、主に入札単価や一部の配信条件に限られます。

実際に現場でも「CPAを下げるなら、現場からもっといい案件を持ってきてほしい」と、運用の限界を感じる声を聞くことがあります。しかし、視点を変えて検証を繰り返せば、小さなレバーの組み合わせが大きなインパクトを生むことが分かってきます。

それでも成果を出すための3つの打ち手

今回はこれまでの経験をもとに、求人ボックス・スタンバイでの具体的な打ち手とマインドセットを共有します。

1.タイトル(見出し)の最適化でクリック率を底上げする

アグリゲーション媒体において、タイトルはユーザーとの最大の接点です。限られた文字数の中で、どの情報を優先的に出すかのPDCAは欠かせません。求人の差別化が難しい領域だからこそ、「これは自分向けの求人だ」と瞬時に自分事化してもらうための情報設計が、最終的な応募数にも直結します。

仮説:求人を探すユーザーにとって、「いつから働けるか」は職種と同じくらい重要な判断基準になると仮定。

実施内容:当月中に開始する求人を除く全ての求人のタイトルに、【〇月開始】といった案件の開始時期を明記。

結果: 施策実施前後の22日間を比較したところ、クリック率(CTR)が約36%上昇し、クリック単価(CPC)は約19%低下。応募CPAの改善につながりました。なお同期間内で比較しても、【〇月開始】がついている求人のほうがCTRが高い傾向も見えました。

タイトル設計で検討すべき情報の優先順位

ターゲットユーザーの「最も譲れない条件」から逆算して、以下の要素を組み合わせ、重要なワードほど前半に配置するのが定石です。

どの要素がCTRに効くかは職種・エリア・雇用形態によって異なります。媒体担当者が他社事例の傾向情報を持っていることも多いため、推奨フォーマットや実績ある訴求軸を確認した上で自社のターゲットに合わせて検証するのが効率的です。

訴求カテゴリ具体的な要素(例)有効なケース・狙い
開始時期(緊急性)【〇月開始】【〇月入社】【即日勤務OK】派遣や短期案件など早く働きたい、希望する勤務開始時期が明確な層へ
給与・報酬(メリット)【時給1,800円〜】【月収30万可】給与条件面を重視する層へ
働き方・環境(安心感)【完全在宅】【残業少なめ】【未経験歓迎】ワークライフバランスや心理的ハードルを重視する層へ
勤務地・アクセス(利便性)【〇〇駅徒歩5分】通勤時間やエリアを重要視する層へ


※ 表内は参考例として記載しています。実際にご活用の際は、職業安定法および各媒体の掲載ガイドラインに沿って記載するのが前提です
※ 「時給1,800円~」のように具体的な条件をタイトルに入れる場合は、その条件に合致する求人にのみ付与するようにしましょう

2. 曜日・時間帯別調整の徹底

求人ボックスやスタンバイは手動入札がメインの媒体のため、曜日・時間帯別の入札調整が成果に直結しやすいのが特徴です。裏を返すと、「手間がかかる」という理由で競合他社が手を抜きやすい領域でもあります。

仮説:事務職求人が多いアカウントでは、深夜時間帯のCVRが低い傾向がありました。そこで過去の時間帯別実績をもとに、「応募率が高い時間帯に予算を集中させ、成果が出にくい時間帯は入札を抑える」という方針で調整を試みました。

実施内容: スタンバイで「曜日時間帯別入札機能」がリリースされた直後に、過去のデータをもとにCVRの低い深夜帯の抑制とCVRの高い昼間帯の強化を実施。

結果: 応募につながりにくい深夜帯のコストを抑えることができ、全体のCPA改善につながりました。一方で、想定外だったのが昼間帯(12:00〜17:59)のCPAが高騰したことです。入札を引き上げても順位やCVRが改善されず、原因を探ると競合他社が同じ機能で昼間帯に傾斜をかけ始めていたことがわかりました。競合他社がすぐに動いてくるため、設定したら終わりではなく、競合他社の動向や時期・職種の変化に合わせて定期的に見直していくことが必要だと感じました。

新機能はリリース直後に試すことが欠かせません。「競合他社がまだ検討している間」に動いておくことで、先行者利益を得られるケースがあるためです。今回の事例でも、早期に設定できたからこそ深夜帯の改善効果につながりました。競合がすぐに追いついてくる以上、まずは試してみるスピード感こそが、運用の差を生む要因ではないでしょうか。

3.サイト全体の応募データを活用した「求人」の切り出し

アグリゲーション媒体では、ユーザーが1求人への応募で完結しやすい傾向があります。ただし、運用の設計次第で人気求人を入口にしたサイト内回遊が起き、別の求人への応募につながるケースもあります。

こうした特性もあり、媒体内で成果の良い求人を切り出して配信するという施策は、多くの運用者が試したことがあるのではないでしょうか。ただ、切り出しの起点を「媒体内の実績」に限定するのはもったいないです。おすすめしたいのは、サイト全体で反応の良い「人気求人」を特定してから切り出す、というやり方です。

仮説:サイト全体では人気の求人でも、求人ボックス・スタンバイでは応募数が思ったより伸びていないというケースがありました。媒体内の好調求人だけでなく、サイト全体で反応の良い求人を把握してから切り出して強化することで、更なる応募の積み上げになるのではないかと考えました。

実施内容:

1.サイト全体の応募実績から、直近で応募数が多い上位求人を抽出。
2.人気求人に専用のフラグを付与し、キャンペーンを切り分けて配信強化。

結果: 切り出したキャンペーンのCPAは他と比較して約30%改善。媒体全体のコンバージョン数の約3割をこの施策が占める結果となりました。

特定の求人を強化する際は波及応募を確認することも重要

特に求人検索サイトの場合は「特定の求人だけを優遇するのは、全体のバランスを欠く」という懸念が生じることもあると思います。そのような懸念が起きた際は、人気求人きっかけの波及応募を確認することが解決策の1つとなります。


波及応募とは、サイトへの初回応募が人気求人だったユーザーが、その後に別の求人へも応募したケースを指します。人気求人がなければそのユーザー自体がサイトに来ていなかったと考え、それ以降の応募は人気求人がきっかけで発生したものと定義。この数値を実際に確認できたことが、施策を根拠を持って推進する力になりました。

「できることは限られる」の壁を破るために

3つの打ち手を実践する中で、共通して感じたことがあります。最後に、そのマインドセットをまとめます。

媒体の推奨を、まずは検証してみる 

アグリゲーション媒体の多くは、Google広告やMeta広告などと比較すると複雑な学習ロジックを持ちません。検証の結果数値が悪化してもすぐ切り戻すことができればリスクは低いため、まずは「試す」スピードを優先すべきです。

新機能は「先行者利益」を狙って早めに試す 

キーワードの除外や時間帯調整など、新しくリリースされる機能はいち早く活用しましょう。競合が実施する前に活用することで、先行者利益を得られるケースも多いです。

「なんとなくできない」を数値とロジックで打破する

「特定求人の切り出し」のように、一見ハードルが高い施策でも、全体の利益(波及応募の増加など)を数字で証明できれば、運用できる施策は確実に広がります。

明日からできるアクションチェックリスト

  • 直近1ヶ月のタイトル別のクリック率を確認し、開始時期・給与・働き方条件のどれが効いているか整理する
  • 曜日・時間帯別のコンバージョンデータを確認し、入札を抑制できるまたは強化できる時間帯がないか検証する
  • サイト全体の応募実績から上位の求人リストを抽出して、現在アグリゲーション媒体で獲得できている求人と差異がないか確認する
  • 媒体担当者に「他社でクリック率や応募率が改善した施策事例があれば教えてほしい」と聞いてみる

アグリゲーション媒体の運用に向き合ってきて感じるのは、派手なテクニックよりも、地道な情報の整理と小さな仮説の検証の積み重ねが大事だということです。「できることが限られている」と感じるときこそ、その限られたレバーを丁寧に使いきることが結果の差につながります。

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