不正クリック対策、本当に必要?アドフラウドの専門家と広告運用者に率直に聞いてみた

不正クリック対策、本当に必要?アドフラウドの専門家と広告運用者に率直に聞いてみた

運用型広告に携わる方なら、広告媒体やターゲティング選定、クリエイティブ改善、入札最適化など、改善を日々積み重ねているはずです。

しかし、その努力のすべては「データが正確であること」が前提になっています。もしクリックやコンバージョンの中に、一定割合の不正が混じっていたとしたら。機械学習の最適化は正しく機能しているでしょうか。

「うちの会社は規模が小さいから関係ない」「媒体側で対策してくれているから大丈夫」。そう考えている広告主やマーケティング担当者の方は多いかもしれません。実は、当社でも以前はそこまで優先度を高く捉えていませんでした。

今回は、不正クリック対策ツール「Spider AF アドフラウド対策」を提供する株式会社Spider Labsの西水さまをお招きし、当社マネージャーの山元との対談形式で、広告主が本当に知りたい疑問に率直にお答えいただきました。

なお、当社では一部のクライアント案件でSpider AF アドフラウド対策を導入しており、本記事はSpider Labs社との共同企画です。記事中のデータは特記のない限りSpider Labs社の調査・分析に基づいています。不正クリック対策ツールにはIAS、DoubleVerify、Momentum(HYTRA)など複数の選択肢があり、JICDAQ認証事業者との取引も有効な対策です。自社の状況に合った手法を比較検討されることをおすすめします。

話し手:
株式会社Spider Labs
営業部 Sales Executive
西水 葵 さま

アナグラム株式会社
運用型広告事業部 マネージャー
山元 勝雅

聞き手:
アナグラム株式会社
経営企画室
西尾美紗姫

※ このインタビューは2026年2月に行われました。

Q.不正クリック(アドフラウド)とはどんなものですか?

―――まず基本的なところから伺いたいのですが、不正クリックってそもそもどんなものなんですか?

西水さま:不正クリックとは、Web広告に対してBOT(自動プログラム)や悪意のある第三者が不正にクリックや表示を発生させる行為です。

Web広告は「クリックや表示された分だけ費用が発生し、最終的には広告が表示されたサイトの運営者やプラットフォームに支払われる」仕組みになっています。

不正クリックはこの仕組みを悪用し、広告費を不正に搾取しています。

Spider Labs社提供資料より

Q.不正クリックの被害は実際にどの程度ありますか?

―――実際、そんなに影響があるものなのでしょうか?

西水さま:弊社が2024年のSpider AF アドフラウド対策の解析データ(総クリック数:約41億件)と電通「日本の広告費」の市場規模をもとに試算したところ、国内全体で推定1,510億円以上の被害が出ているという結果になりました。年々増加傾向にあります。

なお、この数値は弊社のツールで検出した不正率を市場全体に当てはめた推計であり、調査手法によって異なる可能性があります。

―――とはいえ、被害が大きいのは一部の大企業だけですよね?

西水さま:不正クリックの被害は、企業の規模や広告費の大小に関わらず発生しています。

ただ、業界による被害割合の偏りはあって、クリック単価が高い業界は狙われやすい傾向にありますね。

アドフラウド被害の多い業界例:

  • 金融
  • 通信
  • 不動産
  • 教育業界
  • 人材

しかし、どの業界でも大体広告費の5%以上は不正クリックとして出ている傾向があります。「うちは関係ない」とスルーするのは、かなりリスクが大きいと思っています。

―――広告運用の現場でも影響を感じることってありますか?

山元:一番わかりやすいのは、GDN(Googleディスプレイネットワーク)で特定のサイトから過剰にコンバージョンが発生しているケースです。

キャンペーン全体のクリック率やコンバージョン率が異様に高いなと思い、プレースメント(配信面)ごとの成果を確認した際に、不正クリックだと気づきます。

運用現場での実体験を交えながら語る山元

ただ、怪しいプレースメントを発見して除外しても、新しいものが次々出てくるので、きりがないんですよね。

Q.広告費の5%程度の被害なら、誤差と捉えて問題ない?

―――正直、広告費の5%くらいなら対策にかけるコストの方がもったいない気もするのですが……。

西水さま:あくまで平均が5%というだけなので、まずは自社の状況を知るところから始めていただきたいですね。

実際に、弊社のツールで月200万円ほど配信しているアカウントの無料診断を行ったところ、クリックの50%以上がBOTだったケースもありました。

そのうえで、被害が小さくても放置するのはおすすめできません。

不正クリックを含んだデータを学習し続けると、機械学習が「このキーワードや配信面は成果が良い」と誤って判断してしまうんです。

その結果、最初は5%の被害だったとしても10%、15%と膨らみ、広告の配信精度が落ちて成果が悪化していく可能性もあります。

山元:BtoB商材だと、よくあるケースですよね。海外の怪しいサイトやデータ転送サイトでホワイトペーパーや資料ダウンロードが過剰に発生し、配信の最適化が機能しなくなる。

特にクリック単価が高い業界は、クリックやコンバージョンの絶対数が少ないぶん、機械学習への悪影響が大きくなりやすい印象です。

西水さま:まさにクリック単価の高い業界での事例で、一つご紹介したいものがあります。

リード獲得目的でP-MAX キャンペーン(入札・ターゲティング・配信先をAIが自動最適化するGoogleの広告メニュー)を配信していた不動産会社様で、コンバージョンの半分が不正だったケースがありました。

営業担当者が電話をかけると「資料請求した覚えがない」と言われ、マーケティング部門と営業部門で摩擦が起き、P-MAX キャンペーンの配信自体を止めざるを得なくなってしまったケースも存在します。

山元:営業現場にもしわ寄せがいくと、リソースの無駄遣いにもなってしまいますよね。しかも、本来うまく使えば成果が伸びたはずのメニューまで止めざるを得なくなるのは、すごくもったいない。

西水さま:はい。加えて、コンバージョンの「質」が下がると、事業計画や経営判断にも悪影響があります。

たとえば、管理画面上のコンバージョン数から、リードの引き上げ率や成約率といった中間KPIを算出している場合。その前提がズレてしまうと、採用計画や予算配分まで見直しが必要になってしまいます。

Q.広告プラットフォームが不正クリック対策をしてくれているはずでは?

―――でも実際、対策している企業は少ない気がします。本当に対策って必要なんですか?

西水さま:必要だと思います。対策が進まない一番の理由は、「広告プラットフォームが対策してくれているから大丈夫」という思い込みではないかと思います。

実際、不正クリック対策についての調査でも、広告主さまの対策としては「信頼できる大手プラットフォームを利用したい旨を広告会社へ伝達する」という回答が約9割でした。

Spider Labs社提供資料、JICDAQ デジタル広告課題意識調査 2025より

その依頼を受けた広告会社の対策内容も、媒体が対策を行っているかどうかの精査で終わっているケースが多く、完全にプラットフォーム任せになっているのが実情ですね。

―――でも、GoogleやMetaがちゃんと対策してくれているのでは?

西水さま:もちろん対策はされていますが、不正クリックの手口は日々巧妙化していて、すべてを除外できているわけではありません。

わかりやすい例では、闇バイトなどで人を雇い、直接競合の広告をクリックする「クリック代行」があります。人間が操作しているため、媒体側には「正しいクリック」と判定されやすいんです。

しかも、広告プラットフォームの具体的な対策内容は「非開示」になっています。開示してしまうと、「こうすれば課金対象になる」と仕組みを解析されてしまうためです。

もちろん、誰が見ても明らかな不正クリックは媒体側でも弾かれますし、返金されるケースもあります。ただ、1つ1つの細かい広告主さまの事象に合わせて対策するのは難しいのかなと思います。

―――P-MAXみたいなAIで自動最適化するメニューなら、不正も弾いてくれそうな気がしますが。

西水さま:むしろ逆で、加速させているケースが多いと感じています。

弊社のデータでも、入札やターゲティングを自動で最適化するメニューでの不正クリックの割合は、他のメニューと比べて3倍以上になることもありました。

山元:運用現場の実感としても、怪しいクリックに気づきにくくなりました。GDNや自動入札が導入される前の検索広告のように、ある程度人が調整する前提のメニューであれば、異常に気づきやすかったんです。

しかし、自動化が進んだメニューだと、配信内容がブラックボックス化していて実態の把握がしづらくなりました。たとえば、P-MAX キャンペーンのプレースメントレポートでは、配信面ごとの表示回数しか確認できません。(2026年3月現在)

P-MAX キャンペーンのプレースメントレポート

また、自動で最適化してくれるという思い込みから「問題があるかもしれない」という発想自体が生まれにくくなっているようにも感じます。

―――そうなると、結局広告主が自分で対策するしかないんですか?

西水さま:そうですね。2025年6月に総務省が発表した「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」では、広告主自身が不正クリックのリスクを理解し、主体的に対策を講じることが求められています。

Spider Labs社提供資料より

また、ブランドへの悪影響や、意図せず犯罪に加担してしまうリスクといった点についても注意喚起されています。

―――広告費が搾取される以外にも、リスクがあるんですか?

西水さま:大きく2つのリスクがあります。1つはブランド毀損のリスクです。

意図せず低品質なサイトや不適切なコンテンツの隣に自社の広告が表示されることがあります。

それを見たユーザーや株主から「なぜこんなところに広告を出しているのか」という問い合わせが来たり、SNSで炎上することもありますね。

ブランド毀損サイト・アプリのカテゴリ:

  • 違法コンテンツ
  • まとめコンテンツ
  • 公序良俗違反コンテンツ
  • 低クオリティコンテンツ

見落とされがちなもう1つのリスクは、搾取された広告費が反社会的勢力の資金源になっている可能性です。

誤情報や違法コンテンツを掲載するサイトに広告を配信してクリックされると、そのサイト運営者に広告費の一部が支払われることになります。

山元:つまり、エンドユーザーから得たお金が回り回って、社会的にも不正な活動の資金源になってしまうかもしれない、ということですね。

西水さま:はい。先ほどの総務省のガイダンスでも、企業の社会的責任の観点からも配慮が必要だと指摘されています。放置することで、利用者から被害の拡大に加担している企業とみなされるおそれもあります。

なので、まずは広告主さま自身が正しい知識を持つことが大事です。代理店で対策しているというなら、その内容まで把握していなければ不十分だと思います。

Q.具体的に何から始めればいいのか?

―――じゃあ実際、何から手をつければいいんでしょう?

西水さま:被害があるか分からない状態では動けないので、まず自社の状況を知ることから始めていただきたいですね。

代理店に「細かくデータを見てください」とお願いしたり、弊社のような対策ツールのベンダーが実施している無料診断を活用するのも有効です。

弊社の対策ツール「Spider AF アドフラウド対策」の無料診断では、「実際に不正クリックがどのくらいあるのか」を数値で可視化できます。

Spider AF アドフラウド対策の管理画面

―――社内にエンジニアがいれば、自前で対策できたりしませんか?

西水さま:判定に必要なデータ量やAIの学習基盤を考えると、自社で対策するのは正直、現実的ではないですね。

自社で広告管理ツールをすべて内製しているような広告主でも、不正クリック対策だけは弊社のツールを利用されているケースがあるぐらいなので、かなり難しいと思います。

Q.具体的な費用対効果は?

―――実際にアナグラムで「Spider AF アドフラウド対策」を導入してみて、効果はどうでしたか?

山元:弊社で運用している月間約1,000万円の案件では、先月だけでも約90万円のブロックをしてくれています。

※ブロックした金額は、各媒体の平均クリック単価をツール上であらかじめ設定し、ブロックしたクリック数と掛け合わせて算出。媒体側で既に無効判定されているクリックとの重複が含まれる可能性があるため、「ブロック金額=削減できた広告費」とは限らない点にご留意ください。

月額3万円のプランを利用しているので、費用対効果は高いと感じてますね。

ただ、不正クリックがブロックされて「機械学習の精度が高まったか?」と聞かれると、厳密に前後比較したわけではないので、正直答えるのが難しいです。

西水さま:それについては、参考になるデータがあります。

弊社のある事例で対策の有無を2ヶ月間ABテストしたところ、コンバージョン率が15%改善し、最終的なROAS(広告費用対効果)改善にもつながりました。ブロックされた広告予算の総額や一部媒体からの返金で、ツール費用自体も回収できたそうです。

山元:これだけ聞くと、導入して損することはない気がするのですが、無料診断をして導入されないことはあるんですか?

西水さま:あります。アパレルや多品目のECサイトなどはクリック単価が非常に低いため、被害額よりツール費用の方が高くなり、見送られるケースがあります。

ツール費用はトラフィック数に応じて変動するので、クリック単価が低いと削減できるコストに対して、トラフィック数(ツール費用)が多くなりやすいんですよね。

山元:なるほど、認知目的で流入数をKPIにしている場合は特にそうなりやすそうですね。低いクリック単価でとにかく流入を増やそうとすると、質の低い面やユーザーにも配信が広がり、不正クリックの件数自体はかなり多くなる。

ただ、現場としてブロック見込みの金額とツール費用のバランス次第では、導入しづらいケースもありそうです。

西水さま:そうですね。被害が多かったとしても、さまざまな事情で導入が見送られることはあります。

また、被害が少ない場合は、健康診断で少し数値が悪くてもすぐ手術しないのと同じように、「今すぐ入れる必要はない」とフラットにお伝えしていますね。

導入の是非を率直に語る西水さま

山元:逆に、どういったケースだと導入されやすいんですか?

西水さま:クリック単価が150〜200円以上であったり、月間広告費が200万〜500万円以上の場合ですね。不正クリックによる被害額よりツール費用の方が安価なことが多く、導入していただけることがほとんどです。

ただ、ケースバイケースではあるので、いきなり導入することはなく、まずは無料診断からご案内しています。

―――仮に被害額とツール費用が同じくらいだったら、広告代理店としてクライアントには「入れましょう」って言いますか?

山元:被害額とツール費用がトントンであれば、クライアントには入れるべきと伝えます。手動でブロックする作業時間を、成果を10倍に伸ばすための施策を考える時間に使えると考えれば、広告運用者としてはありがたいので。

導入案件の広告管理画面のログを見たら、Spider AF アドフラウド対策のツール経由で、先月は6,645件もブロックされていたんです。これを手動でやるのは絶対無理だと思いました。

不正クリックが自動でブロックされている変更履歴

―――件数が多すぎて、正常なクリックまで誤ってブロックしていそうで怖いのですが……。どう判定しているんですか?

西水さま:IPアドレスや位置情報の偽装、デバイスの不自然な設定など、複合的なデータを掛け合わせて判定しています。

たとえば、端末のタイムゾーンがアメリカ・中国などに設定されているが、アクセス元の位置情報が日本に偽装されているケース。あとは、接続元のISP(インターネット接続を提供する事業者)がデータセンターになっているなど、一般的ではないケースなども感知できます。

山元:それは、広告運用者が管理画面を見ていても気付けないですね……。

Q.導入を検討されている広告主に伝えたいことは?

―――導入すべきか迷っていたり、社内への説明に悩んでいる方も多いと思います。そういった方へ、最後にメッセージをいただけますか?

西水さま:不正クリック対策は、「被害を防ぐ」といった守りの施策という印象が強いと思います。ですが、ブロックして削減できた予算を有効なトラフィックへ再配分することで、広告の投資効率改善にもつながります。

だからこそ、守りではなく攻めの施策として捉えていただきたいです。

山元:個人的には、不正クリック対策の話で「費用対効果」という言葉を使わなくていい世の中にしたいという気持ちがありますね。

自社の広告費が悪用されたり、反社会的な組織にお金が流れているかもしれない。それを放置するのはどうなんだろう、という視点は大事なのかなと思います。

西水さま:とてもわかります。 もちろん、費用対効果は一番重要だと考えています。

ですが、一個人の感情としては、「ちゃんと真面目にビジネスをやっている方が損をするような状況にはしたくない」という気持ちでご提案していますね。

広告の費用対成果を高めるためにも、企業としての信頼を守るためにも、まずは自社の現状を知ることから始めてみていただけたらうれしいです。

取材後記

インタビュー前は、不正クリックの存在自体は知っていたものの、対策の優先度は高くないと考えていました。しかし、汚染されたデータをAIが学習し続けることで被害が雪だるま式に膨らんでいくと聞き、たとえ数%でも無視できないと実感しています。

不正クリック対策を「守り」ではなく、広告の配信精度を高める「攻めの施策」として捉える視点も、今回初めて腑に落ちました。

また、広告の費用対成果の悪化やブランド毀損といった目に見えるリスクだけでなく、「ユーザーが信頼して支払ったお金がどこに流れているか」まで考えている。そうした姿勢が、企業とユーザーの信頼関係を守ることにもつながるのではないかと感じました。

「うちの会社は大丈夫」と思っている広告主の方こそ、まずは一度、自社の状況を確認してみていただきたいです。

株式会社Spider Labs
Spider AF アドフラウド対策

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