
仕事でのコミュニケーション、相手のことを考えて動いたつもりでもうまくいかないことってありますよね。
同じ業務内容でも「途中でこまめに確認してほしい」という人もいれば、「とにかくやってみて」という人もいる。丁寧に伝えようとすると、ある人には喜ばれるけど、別の人には「細かすぎる」と思われてしまう…。
私も広告代理店のデザイナーとして日々さまざまな立場の人と関わっていますが、「お互いにとって心地よく進められる“コミュニケーションの正解”ってなんだろう」と、ずっと悩んでいました。
そんな悩みに小さなヒントをくれたのが、「1対1の対話」です。
この記事では、相手が心地よいと感じる進め方を見つけ、仕事がスムーズになるヒントをお伝えします。


コミュニケーションに、たったひとつの正解はない
ある時広告運用の担当者から、「完成したバナーをまとめて渡すんじゃなくて、できたものから順に見せてほしい」と言われて驚いたことがあります。私は確認の手間が増えるだろうと思って、全て完成してから見せるようにしていたからです。
広告運用者にその旨を伝えたところ、「たしかに、やり取りは最小限で任せたいというクライアントさんもいます。でも、このクライアントさんは、途中経過をこまめに共有した方が安心するタイプなんです」と説明を受けて、ハッとしました。
「私の気遣いは、過去の経験に基づくやり方で、相手にとっての最適解ではなかったのだ」と。
思い返せば、前職では依頼者が固定されていて、コミュニケーションの型もある程度決まっていました。一方、今の環境では関わる人が増え、デザイナーに求められる役割も異なります。
正解は一つではなく、人や状況によってまったく違うのだと気づいた瞬間でした。
正解はないと知り、1対1の対話を開始
コミュニケーションに「たった1つの正解」はない。この気づきは、私に一人ひとりと向き合うことの大切さを教えてくれました。
けれど、大人数の場ではどうしても発言機会が分散してしまうため、当たり障りのない共通の話題にとどまりがちです。その結果、本当に知りたい相手の価値観や人柄にはなかなか触れられません。
だからこそ、1対1での対話を始めました。
「制作がやりやすかったなと思えた情報共有ってどんな感じでした?」
「会議やテキストのやり取りは、どれくらいの頻度が心地よいですか?」
「これを聞かずに進めて失敗した経験ってありますか?」
そんなふうに仕事上のコミュニケーションをきっかけに、相手の考え方を掘り下げて聞くようにしました。すると自然と、相手の本質に近い部分が見えてきたのです。
- 相手の行動原理が、大事にしている価値観に深く紐づいていること
- 得意なコミュニケーションが、生まれ育った環境に起因していること
- 何を第一に心掛けていて、それをどう実践しているのか
普段の会話ではなかなか知ることのできない心情に触れることで、相手をより理解した目で行動や態度を見ることができました。さらに相手の中に「私」という存在が明確に刻まれ、お互いの理解が深まった結果、その後のやり取りは驚くほどスムーズになったのです。
気づけば、入社してまだ1年足らずですが、1対1で話した人は60人を超えていました。
対話がもたらす、嬉しい変化
1対1で話す関係性ができると、仕事にも良い変化が生まれやすくなります。
①相談のハードルがぐっと下がる
「こんな初歩的なこと、今さら聞けないな…」と遠慮してしまうような小さな疑問も、気軽に聞けるようになります。たとえば、動画のナレーションに挑戦しようとしたとき、社内の経験者に聞く際、既に交流のある相手だったため相談するまでのハードルが下がり、よい助言をもらってとても助かった経験があります。
②相手に合わせた「かゆい所に手が届く」サポートができる
対話を通して相手の性格や仕事の進め方が分かると、相手に合わせた配慮が自然にできるようになります。
たとえば、同じクリエイティブ制作の確認でも、広告運用者に合わせてそれぞれ違ったコミュニケーションを取っています。
- Aさん:テキストよりも、対話の方が円滑に進むのでこまめにMTGにして共有。
- Bさん:基本的には資料を読み合わせてもらって、分からないところだけテキストコミュニケーション。
- Cさん:対面かつ、画面を一緒に見ながら、細かいニュアンスやデザインを話し合う。
よりよいコミュニケーションが取れることで、最終的な仕事の質もあがります。
③アドバイスが、もっと「自分ごと」として伝わる
相手の経験や興味を知っていると、何かを説明する時にぐっと伝わりやすくなります。逆の立場で、自分がアドバイスを受ける場合も同様です。
動画制作で、画面の緩急をどう付けようか悩んでいたとき、上司はわたしが漫画を描いていることを知っていたので、「漫画のネームと同じだよ」と言われて、とても理解しやすくなり、その後の制作が大きく捗りました。
④対話を通じて自分の強みも知れる
多くの人と対話する中で、「日比さんみたいに人は誘えないよ」と言われて、初めて自分が人を誘うのに苦労しないんだと気付きました。そこで人とのコミュニケーションに強みがあることにも気付き、今ではこの人と話してみたいんだよねと言われたら三人でご飯にいったり、自分だけではなくより周囲の交流の輪を広げることも始めてます!
「1対1の対話」から始める、心地よい関係づくり
対話によって仕事がスムーズになる…と言っても、いきなり「ご飯行きましょう!」と誘うのは、少し勇気がいりますよね。
実は、1対1の関係づくりはもっと小さなステップから始められます。
- 日常の小さな接点をつくる
- "事実ベース"の答えやすい質問からはじめる
- 少しずつ感情や価値観の理解を深める共通点を活かす
まずは毎日の挨拶やちょっとした雑談から始めて、「この人とは話しやすいな」と思ってもらうのが第一歩。
たとえば「この前、出張で九州に行ったと伺いましたが、どうでした?」のように、答えやすい事実についての質問から始めると相手も話しやすくなります。そこから少しずつ「その出来事があったとき、あなた自身はどう感じたか」と感情や価値観について掘り下げると、相手への理解が深まるでしょう。。
しかし、対話はお互いを知るためのキャッチボールです。
一方的な質問ばかりだと、相手も尋問されているように感じてしまうかもしれません。自分の考えや「こんなことがあって…」という経験を話してみると、相手も安心してくれて、お互いの距離がぐっと縮まりやすくなります!
まとめ
コミュニケーションに正解はなく、相手を知ることによって、それぞれに合ったよりよい方法を選べるようになります。
そして、相手の考えや経験を知るためには大人数での会話だけでなく、「1対1の会話」が大きなヒントになってくれるんです。
どのような仕事であっても、周りの人と連携し、チームとして動いてこそ、より大きな成果を出すことができます。円滑なコミュニケーションは、より良い結果を出すための何よりも大切な土台になります。
専門的な知識や経験値を今すぐ2倍にするのは難しいかもしれません。けれど、コミュニケーションのあり方を見直すことは、今日からすぐにでも始められます。
そして、その一歩が日々の業務に与える影響は、私たちが思う以上に大きいのです。
もしあなたが今、社内コミュニケーションに少しでも悩みを感じているなら、よく仕事で関わる誰かと、一緒にお昼ご飯でもどうですかと誘ってみませんか?
「〇〇さんは、どんな考え方で仕事を進めてるんですか?」
その一言から始まる対話によって、自己理解と他者への尊重が深まり、よりよいコミュニケーションを取るための選択肢が増えるかもしれません。
